平方完成 | 基本形に二次式を書き直す【解の公式を数学Iで】
" 平方完成 " をすることにより、二次式の最大・最小を求められるときがあります。
高校の数学Iで頻出の式の書き換えについて、具体的な数字を使って、計算の手順を解説しています。
まずは、x2 の係数が 1 のときに、平方完成を着実に計算する方法を押さえます。
その後で、係数が 1 のときの計算を活用することで、係数が 1 でないときでも計算ができるようになります。
数学では既に導かれた内容を活用して、さらに議論を広げることをします。
今回は、計算について、係数 1 のときの考え方を係数が 1 でないときへと活用するという内容です。
また、記事の後半では、二次方程式の解の公式を導いています。
平方完成 ; 基本形:二次の係数が1のとき
【例】
x2+4x の平方完成
x2 の係数が 1 のときに平方完成をする方法を説明します。
【ステップ1:1 次の項を 2 で割る】
もとの式と同じ値にしておきたいので、同時に 2 も掛けます。
2 で割ってから、2 を掛けるので、値は元のままです。
2 で割るということは、
1/2 という分数を掛けるということです。
割り切れないときは、1/2 を掛けます。
それでは、計算をします。
x2+4x
= x2+2×(4x÷2)
= x2+2×(4÷2)x
【ステップ2 :文字で置く】
ここで、4÷2 を p と置きます。
x2+4x = x2+2×px …(1)
【ステップ3 :二乗の展開公式】
(x+p)2 = x2+2×px+p2 です。
移項すると、
(x+p)2-p2 = x2+2×px …(2)
(1) の x2+2×px を (2) の左辺に書き換えることができます。
そのため、
x2+4x = (x+p)2-p2 となります。
p = 4÷2 だったので、
p = 2 にします。
x2+4x = (x+2)2-22 です。
後は、22 を 4 にして、完成です。
x2+4x = (x+2)2-4 です。
この三つのステップを踏むことで、二次の係数が 1 のタイプを平方完成することができます。
a(x+s)2+t という形の二次式を基本形といいます。
この例だと、
a = 1, s = 2, t = -4 です。
このの「例」だと、定数項が 0 だったので、自由に計算を進めることができました。
今度は、定数項が 0 でないタイプを計算します。
最もシンプルな状況で計算方法を押さえておき、その方法を複雑な計算へと活用させる流れになります。
定数項があるとき
【例】
x2+4x-3 の平方完成
x2+4x-3
= (x2+4x)-3 …(1)
よく見ると、定数項が 0 の多項式に-3 が加わっているという状態です。
x2+4x は先ほど計算した定数項が 0 の二次式です。
先ほどの三つのステップで、平方完成をします。
全く同じ計算になるので、結果のみを書きます。
x2+4x = (x+2)2-4 …(2)
(2) を (1) に代入します。
x2+4x-3
= {(x+2)2-4}-3
中括弧の中の多項式の定数項 -4 と -3 が、まだ計算できます。
x2+4x-3 = (x+2)2-7 となります。
(x+2)2-7 は基本形なので、平方完成できました。
このように、二次の項の係数が 1 のときは、上で述べた三つのステップを中心にして、微調整をすることで平方完成をして基本形へと書き換えることができます。
では、二次の項の係数が 1 でない場合について、平方完成をする方法を解説します。
平方完成 ; 基本形 :二次の係数が1でないとき
【例】
3x2+6x+5 の平方完成
二次の項の係数が 1 のときの三つのステップを活用します。
活用するために、
3x2+6x の部分を二次の項の係数 3 でくくります。
3x2+6x = 3(x2+2x) となります。
そのため、
はじめに与えられた式は、
3x2+6x+5
= 3(x2+2x)+5 …(1)
x2+2x の部分は、二次の項の係数が 1 の式です。
この部分を先ほどの三つのステップで平方完成し、(1) の括弧の中に代入するという流れになります。
【ステップ1:1 次の項を 2 で割る】
x2+2x = x2+2×(2÷2)x です。
【ステップ2 :文字で置く】
p = 2÷2 = 1 と置きます。
x2+2x = x2+2px …(2)
【ステップ3 :二乗の展開公式】
(x+p)2 = x2+2×px+p2 です。
移項すると、
(x+p)2-p2 = x2+2px …(3)
(3) の左辺を (2) の右辺に代入します。
x2+2x = (x+p)2-p2 となります。
p = 1 だったので、元に戻します。
x2+2x = (x+1)2-1 です。
これを (1) の式の括弧の部分へ代入します。
3x2+6x+5
= 3(x2+2x)+5
= 3{(x+1)2-1}+5
後は、分配法則を使って中括弧を外し、整理します。
3x2+6x+5
= 3(x+1)2-3+5
= 3(x+1)2+2 です。
確かに基本形になっているので、平方完成ができました。
平方完成をして、二次式を基本形にすると、二次式のとる値の最大や最小を求めることができます。
最大や最小を求める
【例】
3x2+6x+5 (-1 ≦ x ≦ 5) の最大値と最小値を求める。
x に代入する値は実数です。
実数を二乗すると、必ず 0 以上の値となります。
このことを利用して、
3x2+6x+5
= 3(x+1)2+2 の最大値と最小値を求めます。
(x+1)2 の部分の値は、実数の二乗がとる値なので、0 以上となります。
そのため、x+1 の値の絶対値が大きいほど、二乗したときの値が大きくなります。
-1 ≦ x ≦ 5 が x に代入する実数の範囲なので、x の値が 5 のときに、最大の値となります。
x = 5 のとき、
3×(5+1)2+2
= 3×36+2 = 110
これで最大値が 110 と分かりました。
今度は、x+1 の値の絶対値が最も小さくなるときを考えます。
-1 ≦ x ≦ 5 なので、
x = -1 のときに最小となります。
x = -1 のとき、
3×(-1+1)2+2
= 3×0+2 = 2 です。
最小値が 2 と分かりました。
このように、平方完成をして基本形にすることで、二次式の最大や最小を求めることができます。
※ max-minという記事で、最大と最小についての厳密な定義について解説をしています。
ここまでで、平方完成についての基礎的な内容を述べました。
ただ、やり方を知っていたとしても、分数が係数に使われていると計算は複雑になります。
平方完成 :分数係数は計算が複雑
【例】
3x2+7x+4 の平方完成
二次の項の係数が 1 でないので、
3x2+7x を 3 でくくります。
3x2+7x+4= 3(x2+7/3 ・x)+4
割り切れないときは、割る数を分母に置き分数で表します。
すると、7/3 という分数が現れました。
分数が絡むと、同じやり方ですが、計算が複雑になります。
先ほどの三つのステップで、
x2+7/3 ・x の部分を平方完成し、
3x2+7x+4= 3(x2+7/3 ・x)+4 の括弧の部分へ代入します。
3x2+7x+4 を平方完成し、基本形にした式が、この緑色の枠で囲っている式です。
計算に使った考え方は同じ三つのステップですが、分数が絡むと、計算が大変になります。
まずは、整数係数のときに着実に計算できるように練習をしておき、段々と分数係数の複雑な平方完成の練習へと学習を進めると良いかと思います。
先ほど、平方完成をして基本形にすることで最大値と最小値を求めました。
今度は平方完成の応用で、二次方程式の解の公式を導きます。
解の公式 – 平方完成
実数 a, b, c を定数とし、a は 0 でないとします。
ax2+bx+c = 0 という二次方程式の解の公式を導きます。
a < 0 の場合は、-1 を両辺に掛けて -b と -c を d や e と他の文字に置き直すことができます。
そのため、以下では a > 0 の場合にのみ議論をします。
f(x) = ax2+bx+c と置き、この二次式を平方完成の考え方で変形します。
f(x) = 0 という二次方程式の解を求める形にするため、左辺を変形するわけです。
f(x) = ax2+bx+c
= a(x2+b/a × x)+c
= a(x2+2 × b/2a × x)+c
= a{(x+b/2a)2-(b/2a)2}+c
= a(x+b/2a)2-a(b/2a)2+c となります。
ここで、f(x) = 0 について、
-a(b/2a)2+c を左辺から右辺へ移項します。
すると、
a(x+b/2a)2 = a(b/2a)2-c …★となります。
この右辺を計算すると、
a(b/2a)2-c
= b2/4a-c
= (b2-4ac)/4a です。
これで★の右辺を置き換えると
a(x+b/2a)2 = (b2-4ac)/4a となります。
a > 0 という設定で議論をしているため、分母の 4a は正の実数です。
ここで、次の二つの場合に分かれます。
b2-4ac < 0 の場合と
b2-4ac ≧ 0 の場合が考えられます。
b2-4ac < 0 の場合は、
左辺 a(x+b/2a)2 ≧ 0 なので、二次方程式を満たす実数解が存在しないということになります。
※ 数学II で複素数を学習すると、二次方程式が二つの虚数解をもつ場合となります。
そのため、数学I の範囲では、
b2-4ac ≧ 0 の場合について考えることになります。
このとき、
(b2-4ac)/4a ≧ 0 です。
a > 0 より、
両辺に 1/a を掛けても不等号の向きは同じです。
よって、
(x+b/2a)2 = (b2-4ac)/4a2 ≧ 0 です。
これで、ルートの中身が負の数にならないので、両辺にルートをつけることができます。
ルートをつけるということは、1/2乗するということになります。
よって、
x+b/2a = ±(b2-4ac)1/2/2a です。
b/2a を移項すると、
x = -b±(b2-4ac)1/2/2a となります。
これが、解の公式です。
b2-4ac > 0 のときは、二つの異なる実数解となっています。
b2-4ac = 0 のときは、
ルートの中身が 0 で、
x = -b/2a だけが解となります。
このときを重解といいます。
この解の公式から、2つの解の和と積についての解と係数の関係が得られます。
二次方程式が「実数解なし・異なる二つの実数解をもつ・重解をもつ」の三通りについて、b2-4ac の部分を見て判断をすることができます。
この b2-4ac を判別式といいます。
※ リンク先の記事では、三次方程式の判別式について大学の数学を見据えて解説をしています。
また、放物線の軸という記事で、文字が絡んだ二次関数の最大・最小について解説をしています。
二次関数の軸については、上で述べたように平方完成をして求めることができます。
ただ、数学IIの微分の知識があると、放物線が唯一の極値を頂点においてもつグラフということから、微分をして頂点の座標を求めることができます。
頂点の座標について
【例】
y = 2x2 +4x + 5 の頂点の x 座標を微分して求めます。
y’ = 4x + 4 となります。
y’ = 0 とすると、4x + 4 = 0
よって、x = -1
これが頂点の x 座標の値です。
x = -1 を代入すると、対応する値である頂点の y 座標の値が分かります。
y = 2 × (-1)2 + 4 × (-1) + 5
= 2 - 4 + 5 = 3
これで、(-1, 3) が頂点の座標ということが分かりました。
ちなみに、平方完成をして頂点の座標を求めると次のようになります。
y = 2(x + 1)2 + 3 という標準形になります。
そのため、(-1, 3) が頂点だと分かります。
関連する数学Iの内容
さらに、発展的な内容では、論理と定義域・値域という集合を意識します。
より難しい二次式の問題として、解の存在範囲についても解説をしています。
他の高校一年の単元についての記事です。
個数定理という記事で、事象という集合に含まれる要素の個数について解説をしています。
それでは、これで今回の記事を終了します。
読んで頂き、ありがとうございました。