増減表 | 一次導関数の符号から増加区間と減少区間を【3次関数の例も】
" 増減表 “を作るときに、一次導関数 f'(x) の符号を調べます。
数学IIから微分して、" 3次関数 “の増減表を作成する流れを学習し、その背景となる理論は数学IIIで学習します。
平均値の定理の不等式の厳密証明を抜きにすると、文理共通の内容です。
平均値の定理を認め、増加もしくは減少区間を把握できる根拠を解説しています。
平均値の定理の厳密証明は他のブログ記事で解説することとして、結果だけを使うことにします。
定理の証明が数学IIIの内容を使うのですが、認めてしまうと数学IIの内容で増減表の内容を扱うことができます。
増減表 :背景となる理論
【平均値の定理】
関数 f が閉区間 [a, b] で連続、かつ 開区間 (a, b) で微分可能とする。このとき、ある実数 c が存在して、
ロルの定理より
a < c < b かつ
f(b) – f(a) = f'(c)(b – a) を満たす。
以前に書いたブログ記事で、理系の方に向けて厳密証明の部分を解説しています。
今回の記事では、この内容を使う応用として、増減表について解説をします。
ある実数 c が存在して、
a < c < b かつ
f(b) – f(a) = f'(c)(b – a) という部分が増減表の内容になります。
a < c < b という範囲が増減表に記述する区間となります。
導関数の符号と増加区間
【命題1】
a と b を実数とし、開区間 (a, b) 内の任意の実数を c とする。
また、関数 f(x) は (a, b) において微分可能であるとする。
このとき、f'(c) > 0 が常に成り立つならば、
関数 f(x) は開区間 (a, b) において増加関数である。
<証明>
今、a < c < b より、
開区間 (a, c) において f(x) は微分可能となっています。
よって、平均値の定理を適用すると、
ある実数 d が存在し、
a < d < c かつ
f(c) – f(a) = f'(d)(c – a)
d は (a, b) 内にも含まれているので、
仮定より、f'(d) > 0
a < c なので、c – a > 0 であり、正の実数どおしで掛け算を計算した値は正となります。
そのため、
f(c) – f(a) = f'(d)(c – a) > 0
つまり、f(a) < f(c)
任意に取った開区間 (a, b) 内の c に対して、
c < e < b である任意の実数 e を取ります。
そして、先ほどと同様の議論を繰り返すと、
f(c) < f(e) です。
これは、(a, b) 内から c < e となっている実数 c と e を任意にとると、f(c) の値よりも f(e) の値の方が大きな値となっていることを示しています。
ゆえに、関数 f(x) は (a, b) において増加関数となっていることが示せました。【証明完了】
この手の不等式を絡めた証明ですが、< を > と逆にして同様の議論を繰り返すことができるときがあります。
この不等式の双対性から、減少区間についての命題も証明できます。
減少区間となる理由
【命題2】
a と b を実数とし、開区間 (a, b) 内の任意の実数を c とする。
また、関数 f(x) は (a, b) において微分可能であるとする。
このとき、f'(c) < 0 が常に成り立つならば、
関数 f(x) は開区間 (a, b) において減少関数である。
この【命題2】は、【命題1】と導関数の符号が逆になっています。
不等号の向きを逆にして、同様の考察をすると、減少区間となっていることが証明できます。
f'(d)(c – a) が先ほど正の実数どおしの積だから、値が正となっていたところが、負の数と正の数の積だから値が負となります。
この双対的な証明は、同じ要領のものを書くだけなので省略します。
それでは、具体例を通して【命題1】と【命題2】の内容を説明します。抽象的な理論ですが、具体的な例を用いて考えてみると、より理解しやすいかと思います。
増減表 :具体例で確認
公立の中学数学で学習する二次関数のグラフ(放物線)は原点が頂点となっています。
二次の係数が正のときが下に凸で、二次の係数が負のときが上に凸です。
f(x) = 3x2 という下に凸の放物線について、【命題1】を確認しています。
p < q < 0 という原点よりも左側が増加区間となっている様子を論理的に考察します。敢えて論理の練習のために、グラフを描かずに不等式の性質だけからアプローチを試みます。
開区間 (p, 0) 内の任意の点 q について、一次導関数の符号がどうなっているのかを確認します。
f'(x) = 6x より、p < q < 0 だから、
f'(q) = 6q < 0 です。
【命題1】より、開区間 (p, 0) において、関数 f(x) は減少関数となっていることが分かります。
実際、先ほどの証明の内容と照らし合わせて見てみます。
p < q1 < q2 < 0 とすると、
開区間 (p, q1) について、
p < d < q1 となる実数 d が存在して、
f(q1) – f(p) = f'(d)(q1 – p)
= 6d × (q1 – p)
d < q1 < 0 で q1 – p > 0 なので、
6q1 × (q1 – p) < 0 だから、
f(q1) – f(p) < 0 です。
つまり、f(p) > f(q1) … (1)
開区間 (q1, q2) について、
q1 < t < q2 である実数 t が存在して、
f(q2) – f(q1) = f'(t)(q2 – q1)
= 6t × (q2 – q1) < 0
よって、f(q1) < f(q2) … (2)
(1) と (2) から、
p < q1 < q2 < 0 のとき、
f(p) > f(q1) > f(q2) と値が段々と減少していくことが分かります。
この手の不等式による論理が増減表を記述するときの根拠となっています。
符号の向きを逆にすると
先ほど、符号の向きを逆にすると双対的と難し内容を述べましたが、具体的に考えると、より分かりやすいかと思います。
f(x) = 3x2, f'(x) = 6x について、
0 < r < s だと、
開区間 (r, s) において、r < k < s である実数 k が存在して、
f(s) – f(r) = f'(k)(s – r)
0 < k なので、f'(k) = 6k > 0 と、一次導関数の符号が逆になっています。
s – r > 0 なので、
f(s) – f(r) = f'(k)(s – r) > 0
よって、f(r) < f(s) と、原点よりも右側で増加関数となっていることが分かります。
区間において単調に関数が増加する、もしくは単調に減少するということを放物線を通じて確認しました。
今度は、数学2 の三次関数について増減表を作成します。
増減表 – 3次関数 – 作成
f(x) = x3 – 9x2 + 24x という三次関数についての増減表を作成します。
結果の表を先に述べておきます。
f'(x) = 3×2-18x+24
= 3(x-2)(x-4) より、
f'(x) = 0 は、「x = 2 または x = 4」と同値です。
[1] x < 2 のときは、関数 f(x) は増加関数。
[2] 2 < x < 4 のとき、f(x) は減少関数。
[3] 4 < x のとき、f(x) は増加関数。
この増減表の内容に基づいて、三次関数のグラフを描くと次のようになっています。
x < 2 の範囲では、単調に増加し、
2 < x < 4 の範囲では、単調減少です。
そして、4 < x の範囲では、再び単調増加です。
グラフから x = 2 で極大値 20 をとり、x = 4 で極小値をとるということが分かります。
ただし、定義域を実数全体で考えていると、最大値と最小値は存在していません。グラフから、+∞ と-∞ に発散しています。
※ max-min というブログ記事で、最大値と最小値について解説をしています。
最後に、平均値の定理から、この内容を不等式で確認しておきます。
b-a = f'(c)(b-a) を満たす
実数 c が、
a < c < b となる範囲に存在するという定理を基礎として議論を進めます。
三次関数 – 例
f(x) = x3 – 9x2 + 24x について、不等式を平均値の定理から考察してみます。
開区間 (p, 2) において、単調に増加していることを確認します。
f'(x) = 3x2 -18x + 24
= 3(x -2)(x – 4)
f'(x) は二次関数になっていて、x < 2 の範囲では、f'(x) の値は正となっています。
p < t < 2 である任意の実数 p と t について、
開区間 (p, t) において【命題1】より、
p < d < t である実数 t が存在して、
f(t) – f(p) = f'(d)(t – p)
※ 平均値の定理に関連する内容です。
f'(d) > 0, t – p > 0 より、
f(p) < f(t) です。
開区間 (t, 2) においても同様にして、
f(t) < f(2) となります。
よって、f(p) < f(t) < f(2)
x < 2 の範囲では、関数 f(x) は単調増加関数となっています。
このため、先ほどの三次関数のグラフの x < 2 の部分が描けました。
今度は 2 < r < s < 4 の範囲で平均値の定理を考えます。
開区間 (2, s) において、f(x) は微分可能で、
f'(x) = 3(x – 2)(x – 4) であり、
2 < x < 4 について、f'(x) < 0
開区間 (2, r) で【命題2】を適用すると、
2 < d < r である実数 d が存在して、
f(r) – f(2) = f'(d)(r – 2) < 0
※ f'(d) < 0, s – 2 > 0 より不等号ができました。
よって、f(2) > f(r)
開区間 (r, s) において【命題2】を適用すると、
r < e < s である実数 e が存在して、
f(s) – f(r) = f'(e)(r – s) > 0
つまり、f(r) > f(s)
ゆえに、2 < r < s について、
f(2) > f(r) > f(s) となっています。
開区間 (s, 4) についても、
同じ要領で考えると、
f(s) > f(4) となります。
これで、区間 2 < x < 4 において、関数 f(x) が単調減少関数だということが分かりました。
4 < x の範囲については、
f'(x) > 0 となることから、【命題1】から、再び増加関数になっていることが示せます。
自分で文字を設定
理系の方だと、大学受験などで、平均値の定理を使って、不等式を証明することも必要になります。
そのときに、自分で文字を設定するとうまく説明ができるときがあります。
4 < x において f'(x) > 0 ということを利用して、単調増加であることを示すときには、
4 < a < b である任意の実数 a と b を考えます。
開区間 (a, b) において、
f'(x) > 0 なので、【命題1】が適用できるようになります。
a < k < b である実数 k が存在して、
f(b) – f(a) = f'(k)(b – a) > 0
よって、f(a) < f(b)
開区間 (4, a) についても同様にして、
f(4) < f(a) です。
したがって、
4 < a < b について、
f(4) < f(a) < f(b) となっているので、
4 < x の範囲で f(x) は単調増加関数となっています。
それでは、これで今回のブログ記事を終了します。
読んで頂き、ありがとうございました。