ロピタルの定理 | 証明を理解して正しく使用【不定形の極限値を微分を利用して求める方法】
" ロピタルの定理 “は、不定形の極限値を求めるときに役立つときがあります。
微分を利用して分数の形の関数の極限を求めるのですが、条件が複雑です。
そこで、証明を理解して、どういった条件が使われているのかを意識します。
証明を通じて条件を確認し、ほど良い具体例で練習すると良いかと思います。
高校の数学で、ロルの定理から平均値の定理を導くことを学習します。
この平均値の定理は、ラグランジュの平均値の定理のことです。さらに、コーシーの平均値の定理が証明され、そのコーシーの方の定理を使うことで、ロピタルの定理が導かれます。
複雑な発展内容のために、記述の答案の途中過程で、ロピタルの定理を使うということは避けた方が無難です。
しかし、不定形の極限値を楽に求められるときもあります。
見直しに問題用紙の余白に計算をするといったことができるので、ロピタルの定理を押さえておくと数学3で役に立つかもしれません。
また、大学の微分積分学でもロピタルの定理が出てくるので、高校の段階から慣れておくと良い橋渡しになります。
まずは、コーシーの平均値の定理を証明します。ロピタルの定理を導くために、越えるべき壁になります。ここを押さえることができると、ロピタルの定理が、ぐっと近づきます。
ロピタルの定理 :コーシーの定理から証明
【ロルの定理】
実数 a, b が a < b だとする。
関数 f(x) が閉区間 [a, b] で連続、
開区間 (a, b) で微分可能とする。このとき、f(a) = f(b) ならば、
f'(c) = 0, a < c < b を満たす実数 c が存在する。【平均値の定理】
関数 f が閉区間 [a, b] で連続、
かつ 開区間 (a, b) で微分可能とする。このとき、ある実数 c が存在して、
ロルの定理より
a < c < b かつ
f(b) – f(a) = f'(c)(b – a)
これが、ロルの定理とラグランジュの平均値の定理です。
これらの定理を用いて、コーシーの平均値の定理を導きます。
ちなみに、高校数学で学習するロルの定理は、「有界閉区間上で定義された連続関数は、必ず最大値および最小値をもつ」という連続関数の定理を前提として導いています。
※ これは大学数学の内容になります。
では、コーシーの定理を証明します。
コーシーの定理の証明
【コーシーの平均値の定理】
二つの関数 f, g が閉区間 [a, b] において連続、かつ開区間 (a, b) で微分可能であり、かつ (a, b) におけるどんな実数 x に対しても g'(x) ≠ 0 だとする。
また、g(a) ≠ g(b) とする。
このとき、ある実数 c が開区間 (a, b) において存在し、
{f(b)-f(a)}÷{g(b)-g(a)}
= f'(c)÷g'(c)
<証明>
k = {f(b)-f(a)}÷{g(b)-g(a)} と置き、
F(x) = f(b)-f(x)-k{g(b)-g(x)} と置きます。
この F(x) は閉区間 [a, b] で連続、かつ開区間 (a, b) で微分可能です。
そして、g(a) ≠ g(b) より、
F(a) =
f(b)-f(a)-k{g(b)-g(a)}
= f(b)-f(a)-{f(b)-f(a)} = 0
同様に、
F(b) =
f(b)-f(b)-{f(b)-f(b)} = 0
つまり、F(a) = 0 = F(b)
よって、ロルの定理より、ある実数 c が開区間 (a, b) 内に存在して、F'(c) = 0
F'(x) = -f'(x) + kg'(x) だから、
-f'(c) + kg'(c) = 0
仮定より、g'(c) ≠ 0 なので(分母に g'(c) をもってこれるので)、k = f'(c) ÷ g'(c)
つまり、
{f(b) – f(a)}÷{g(b) – g(a)}
= k = f'(c)÷g'(c)【証明完了】
今、証明したコーシーの平均値の定理を使って、次のロピタルの定理を証明します。
先ほどの定理では、分母が 0 でないということを目立たせようと、f'(c)÷g'(c) などと「÷」を用いて述べました。
ここからは、f'(c)/g'(c) というように分子と分母を表すようにします。
ロピタルの定理 :定理を証明
【ロピタルの定理】
2 つの実数値関数 f(x) と g(x) が、x = a を含む区間で連続で、x ≠ a のとき微分可能であるとする。
また、g'(x) ≠ 0 で、
f(a) = 0 = g(a) とする。
このとき、x → a と近づけると、
f'(x)/g'(x) と f(x)/g(x) は同じ極限値である。
<証明>
f(a) = 0 = g(a) より、
f(x) / g(x) =
{f(x)-f(a)}/{g(x)-g(a)}
x ≠ a なので、この二点で閉区間と開区間を考えて、連続で微分可能なことからコーシーの平均値の定理を適用します。
よって、コーシーの平均値の定理から、
x < c < a または a < c < x を満たす実数 c が存在して、
f(x) / g(x) =
{f(x)-f(a)}/{g(x)-g(a)}
= f'(c) / g'(c)
f(x) / g(x) = f'(c) / g'(c) なので、
「x → a のときの f(x) / g(x) の極限値」と
「x → a のときの f'(c) / g'(c) の極限値」は一致しています。
さらに、x → a のとき、
c → a であり、x → c となります。
よって、
「x → a と近づけたときの f(x)/g(x) の極限値」は、「c → a のときの f'(c)/g'(c) の極限値」と一致しています。
a, c, x の間隔が、すべて接近する状況なので、
c → a は、x → c ということでもあります。
そのため、
「c → a のときの f'(c)/g'(c) の極限値」は、「x → c のときの f'(c) / g'(c) の極限値」です。
そして、
「x → c のときの f'(c) / g'(c) の極限値」は、「x → a のときの f'(x) / f'(x) の極限値」です。
以上より、x → a のとき、
f'(x)/g'(x) と f(x)/g(x) は同じ極限値であることが示せました。【証明完了】
文章だけだと、ややこしいので、証明で述べた極限操作の内容をまとめておきます。
最後の 4 つの極限操作が、同じ極限値となっていることを、先ほどの証明で述べました。
ここまでの内容で、既に証明した定理(命題)を適用しました。正しく定理を使うために、意識すると良いことを述べておきます。
注意点
数学では、議論している内容の真偽に関わらず既に成立している証明された命題(定理)を適用できるときがあります。
証明された命題の結論以外の全ての内容に該当しているときに、その証明された命題の結論へとジャンプすることができます。
まるでブログのリンクのようです。このジャンプをして良いのかどうかを確かめるためには、命題がどのような構成になっているのかを理解しておく必要があります。
命題・仮定・結論というブログ記事で、既に証明された定理を適用したり、背理法や対偶を正しく運用できるように解説をしています。
数学を学習するときに、正しい論理の運用が必要になります。
普段の学習において、どの単元でも論理を意識しておくと、徐々に数学が得意になってくるかと思います。
最後に、ロピタルの定理を用いた具体例を扱います。
ロピタルの定理 :具体例
証明した定理の f(x) と g(x) として、
f(x) = x – log(1 + x), g(x) = sin x を考えます。
x → 0 のとき、分母の sin x が 0 に近づくため、不定形です。
微分して不定形を解消して、極限値を求めたいところです。ロピタルの定理を適用できるのかどうかを確認します。
2 つの実数値関数 f(x) と g(x) が、x = 0 を含む区間で連続です。
また、x ≠ 0 のとき f(x) も g(x) も微分可能です。
さらに、g'(x) ≠ 0 です。
そして、f(0) = 0 - log 1 = 0 で、
g(0) = sin 0 = 0 です。
これで、ロピタルの定理を使えることが確認できました。
ロピタルの定理を適用
f'(x) = 1 - 1/(1 + x),
g'(x) = cos x となっています。
よって、x → 0 としたとき、
f'(x) / g'(x)
→ f'(0) / g'(0) = (1 – 1) / cos 0
= (1 – 1) / 1 = 0
これが、求める極限値です。
分子と分母をそれぞれ微分してから極限をとるので、極限値を求められました。
微分すると、分母が cos になり、
x → 0 としたとき、分母が 1 に近づくので、スムーズに極限値を計算できるようになったというわけです。
不定形の極限値を求めるときに、ロピタルの定理が役に立つことがあります。
これで、今回の記事を終了します。
ロピタルの定理は、記述の答案で書かない方が無難でしたが、中間値の定理は答案に根拠として使えます。
ただ、中間値の定理の証明には、大学の数学を使います。
これで、今回の記事を終了します。
読んで頂き、ありがとうございました。