三角形の面積比 | 高さの比を線分比に書き換える【目標チェバ】
" 三角形の面積比 “についての考察から、高校の平面図形で学習する皆がよく知っている定理を導きます。
共通の底辺をもつ三角形について、それら二つの三角形の面積比は、高さの比となります。
さらに、この高さの比を、他の線分の比へと書き換えることをします。
その結果として、定理の証明が完成するという流れになります。
注目する点が、三角形の内部にある場合と三角形の外部にある場合が考えられますが、どちらについても同じアルゴリズムで証明が進みます。
三角形の面積比 :高校内容【目標チェバ】
【チェバの定理】
三角形ABC の頂点 A, B, C と、この三角形の辺上もしくは辺の延長上にない点 O を結ぶ。
これら三本の直線が三角形ABC の辺もしくは辺の延長と交わる点を、頂点 A の対辺から順に P, Q, R とする。
このとき、
BP/PC・CQ/QA・AR/RB = 1 となる。
この点 O は、三角形の内部にあるか、三角形の外部にあるかのいずれかとなります。
しかし、どちらの場合についても同じ証明の記述となります。
<証明>
三角形OAB と三角形OAC に注目します。
線分OA が共通なので、これを共通の底辺と考え、面積比を考えます。
点 O が内部にあろうが、外部にあろうが、点 B, C から、それぞれ直線 OA に垂線を引き、三角形の高さとなる線分を作図すると、その高さとなる線分をもつ二つの三角形が相似になります。
そのため、相似な三角形の対応する線分の長さの比が等しいということから、次の比が得られます。
△OAB : △OAC
共通の底辺(note記事)より
= BP : PC
※ この詳細な図を用いた証明は、リンク先の記事で解説をしています。
比の値の形で表すと、
BP/PC
= △OAB / △OAC …①
となります。
次に、線分OB を共通の底辺とする三角形OBC と三角形OBA に注目します。
同様に、点 C, A から直線 OB へ垂線を引き高さとします。
同じく、高さとなる線分を一辺とする二つの三角形が相似となります。
そのため、
CQ/QA =
△OBC / △OBA …②
さらに、線分OC を共通の辺とする三角形OCA と三角形OCB についても同様の考察を進めます。
点A, B から直線OC へ垂線を引き、高さとなる線分を一辺にもつ三角形どうしが相似となります。
これで、
AR/RB =
△OCA / △OCB …③
得られた①、②、③の等式をすべて辺々掛け合わせます。
得られる等式について、右辺が 1 となっているわけです。
同じ数量を約分する
BP/PC・CQ/QA・AR/RB が左辺です。
等式の右辺の掛け算について、三角形の面積を表している値たちが分子と分母で約分されて 1 となる様子を見てみます。
(△OAB/△OAC)(△OBC/△OBA)(△OCA / △OCB) が右辺の値です。
△OAB と △OBA は同じ三角形OAB の面積なので、同じ値です。
△OAC と △OCA についても、同じ三角形の面積を表す値なので、等しい値です。
△OBC と △OCB も同じ値です。
これで、分子と分母の同じ値を約分すると、分子と分母が、どちらも 1 となっていることが分かりました。
よって、
BP/PC・CQ/QA・AR/RB = 1【証明完了】
これで、チェバの定理が証明できました。
点 O が内部にある場合と外部にある場合で、内分点か外分点かの違いが起きていますが、定理の証明を述べると同じ内容となっています。
定理の使い方は、メネラウスの定理と同じ要領になります。
※ 平行線と線分の比という記事で、こちらの定理については解説をしています。
一筆書きのイメージで定理を使うわけですが、大学の計算機数学のような計算機への入力を視野に入れて、定理を使うときの手順を正確にリンク先の記事では述べています。
状況によって、点を表す記号は様々です。
そんな中で、どうやってチェバの定理の結論の等式を計算機に認識させるのかという観点で述べた内容となります。
では、ここからは、チェバの定理について、その逆を証明します。
逆の証明に、既に証明したチェバの定理を使います。
三角形の面積比 :二つの点は同じ点
【チェバの定理の逆】
三角形ABC が与えられたとする。
三つの点 P, Q, R が、それぞれ辺 BC, CA, AB 上もしくは辺の延長上にあったとする。
そして、直線BQ と直線CR が交わっているとする。
このとき、
BP/PC・CQ/QA・AR/RB = 1 となっているならば、直線AP, BQ, CR は1点のみで交わる。
<証明>
直線BQ, CR は平行でないので、1点で交わります。
この交点を O と置きます。
そして、直線AO と辺BC の交点を P’ とします。
この点 P’ が、仮定で述べられている点 P と一致していることを示せば、直線AP, BQ, CR が1点のみで交わるということになります。
これで、証明の方針ができたので、後は証明を実行します。
仮定より、
BP/PC・CQ/QA・AR/RB = 1,
つまり、
CQ/QA・AR/RB = PC/BP …①
今、直線AP’, BQ, CR は1点 O で交わっています。
つまり、三角形ABC と三点 P’, Q, R はチェバの定理の仮定を満たしています。
そのため、チェバの定理の結論が成立します。
よって、
BP’/P’C・CQ/QA・AR/RB = 1 となっています。
この等式の左辺へ①を代入します。
つまり、CQ/QA・AR/RB を書き換えます。
すると、
BP’/P’C・PC/BP = 1 です。
両辺に BP/PC を掛けると、
BP’/P’C = BP/PC を得ます。
この等式は、点P’ と線分 BC の分点比が、点 P と線分BC の分点比が等しいということを意味しています。
したがって、点 P と P’ は同じ直線BC 上の点だから、点 P と点 P’ が一致しています。【証明完了】
チェバの定理の逆を証明しました。
このチェバの定理の逆から、三角形の三つの内角の二等分線が1点のみで交わるという三角形の内接円の中心の存在が導けることが有名です。
また、ベクトルを学習すると、五心の位置ベクトルに関わる内容となります。
リンク先の記事では、この五心との関わりについて基本となる三角形の内部で交わった1点の位置ベクトルについての定理を解説しています。
関連する記事について
三角形の五心に関連した記事たちになります。
垂心については、一つ前の記事で解説をしています。
これらの内容は、公式を暗記するというよりも平面ベクトルと分点公式の練習という内容で取り組むと良いかと思います。
高校の数学で学習する平面図形の内容は、ベクトルと合わせることで、数学的な表現力が増します。
また、中学の数学からの流れを受け、三角比の単元でも図形についての学習に関わる内容がでてきます。
外接円の中心である外心と、その半径についての内容として、外心がどこにあるのかということを証明しています。
この内容と合わせて、正弦定理を理解すると、円についての理解も進むかと思います。
高一の平面図形の記事として、
トレミーの定理という記事も投稿しています。
それでは、これで今回の記事を終了します。
読んで頂き、ありがとうございました。