内心 – 外心 | 三角形に内接する円の中心をベクトル表示する【平面図形の定理を利用】

内心-外心-表紙

" 内心 – 外心 “を位置ベクトルで表示することを解説しています。

はじめに、三角形の3本の内角の二等分線が、ただ1点でのみ交わることを示します。

その後で、ベクトルの分点について、適切に公式を使うことで交わった1点である内心を位置ベクトルで表示します。

三角形の五心について、比較的に取り組みやすい内容になるので、平面図形の単元で学習した内容を思い出しつつ、ベクトルについての練習ができます。

この記事では、与えられた三角形ABC の外部に位置ベクトルの基準を取り、点 A(a) というように、位置ベクトルを小文字を使って表すことにします。

まずは内心について述べ、後で外心について解説します。

内心 :内部で交わる1点

三角形ABC が与えられたとします。

BC = p, CA = q, AB = r という辺の長さとします。

そして、∠A, ∠B, ∠C の二等分線が、それぞれの対辺と交わる点を D, E, F とします。

次の図のような状況になっています。

内心-位置ベクトル表示

ここで、直線AD と直線BE は平行でないため、1点 X で交わります。

しかし、直線CF も点 X で他の二本の角の二等分線と交わるかどうかは、これだけでは不明です。

そこで、まずは直線CF も点 X を通るということを証明します。

つまり、三本の角の二等分線が、すべて点 X の1点のみで交わるということを証明します。

この内容が証明できると、この点 X が三角形ABC の内接円の中心ということになります。

点 X から、三角形の三辺に垂線を引くと、直角三角形の合同条件から、下した3本の垂線の長さが全て等しいことが分かり、点 X を中心とする円の半径だと分かるからです。

この中学の数学で学習した内容の前提となるのが、ただ1点 X のみで三本の角の二等分線が交わっているということになります。

ここから、中学の相似の単元で学習した有名な比の内容を使います。

角の二等分線と辺の交点と内分比

∠A の二等分線について、
BD : DC = AB : AC
= r : q となっています。

この中学の相似の単元で学習した内容ですが、高校の図形でも使います。

∠B についても、
CE : EA = BC : BA
= p : r となっています。

∠C に関しても、
AF : FB = CA : CB
= q : p です。

ここまでの内容を比の値の形でまとめます。

すると、高校一年の平面図形の単元で学習した有名な定理が使えることが分かります。

比の値をよく見る

今、
BD/DC = r/q,
CE/EA = p/r,
AF/FB = q/p となっています。


これら三つの等式を辺々掛け合わせます。

すると、
BD/DC・CE/EA・AF/FB
= r/q・p/r・q/p
= p/p・q/q・r/r
= 1・1・1 = 1 となります。

よって、チェバの定理の逆より、
直線AD, BE, CF は、ただ1点のみで交わることになります。

これで証明が完了しました。

三角形の面積比という記事で、チェバの定理の逆の証明を解説しています。

ここまでは、高校一年の平面図形の内容でしたが、ここからはベクトルの内容も加えて議論を進めます。

点 X の位置ベクトル x を三角形の三つの頂点の位置ベクトルと三辺の長さを用いて表すことを目標として考えます。

内心 : 位置ベクトルで表示する

BD/DC = r/q,
CE/EA = p/r,
AF/FB = q/p と内分比が、辺の長さを用いた比で得られています。

この内容を、ベクトルの分点公式と合わせます。

点 X は線分AD の内分点です。

そして、点 D は線分BC の内分点です。

そのため、点 D を内分点の公式で位置ベクトル表示をし、線分AD にも内分点の公式を使うことで、点 X の位置ベクトル表示が得られるというわけです。

点 D が r : q に線分BC を内分していることを位置ベクトルを使って表示します。

d = 1/(r+q)(qb+rc) です。

与えられたのは三角形ABC の1つでしたが、今や三角形は他にもあります。

ここで、直線BE は三角形ABD における ∠B の二等分線にもなっています。

同様の議論をもう一度

直線BE と辺BD の交点 X について、中学の相似の単元で学習した内分比の式を使います。

AX : XB = AB : BD です。

点 D が r : q に線分BC を内分していることから、線分BD の長さを与えられた p, q, r という三辺の長さを使って表示することができます。

BD = r/(r+q) × BC
= pr/(p+r) です。

AB = r なので、
AX : XD
= r : pr/(r+q)
= (r+q) : p です。

これで、目標が補足できました。

点 X の線分AD の内分比が得られたので、内分比の公式が使えます。

点 D の位置ベクトル表示と合わせて、点 X の位置ベクトル表示を求めます。

位置ベクトル表示を完了

内心-位置ベクトル-証明

これで、点 X の位置ベクトル表示が完了しました。

ベクトルの内分点の公式を2回使い、スカラー倍の部分を正確に計算することで得られた式になります。

内心については、三本の角の二等分線ということから、中学の相似の単元で学習した辺の内分比の式が役立ちました。

これと似たような類推で、
BD : DC = p : q,
CE : EA = r : p,
AF : FB = q : r という状況から三角形の内部に交わる1点の位置ベクトルの表示を得ることができます。

この内容は、チェバの定理の逆という記事で解説をしています。

ここまで、ベクトルについての計算を扱ってきましたが、実数についての計算も大切になります。

実数の計算が役立つ例として、三角形の内接円について、三角形の面積と内接円の半径を結び付ける公式について説明をします。

内接円の半径

【面積】

三角形ABC について、
BC = a, CA = b, AB = c とする。

また、三角形ABC の内接円の半径を r とする。

ただし、a, b, c, r は定数で実数とする。

このとき、
△ABC = r/2 × (a+b+c) である。


<証明>

三角形ABC の内接円の中心を O と置きます。

3辺BC, CA, AC は、内接円に接しています。

そして、点 O と BC, CA, AC の距離は半径 r です。

さらに、△ABC の面積は、
△OBC, △OCA, △OAB の面積の和です。

ここで、△OBC, △OCA, △OAB の高さは r となっています。

そのため、
△OBC = a × r ÷ 2
= r/2 × a,
△OCA = r/2 × b,
△OAB = r/2 × c です。

ここまでの内容をまとめます。

実数についての計算

以上の内容より、
△ABC の面積は、
r/2 × a+ r/2 × b+ r/2 × c です。

ここで、実数についての計算なので、共通因数 r/2 でくくり出します。

因数分解をすると、
r/2 × a+ r/2 × b+ r/2 × c
= r/2 × (a+b+c) です。

すなわち、
△ABC = r/2 × (a+b+c) です。【証明完了】

ベクトルの和とスカラー倍に他に、通常の実数の計算規則も大切なので、日頃からトレーニングをしておくと良いかと思います。

ここからは、外心の位置ベクトル表示について解説します。

外心 :位置ベクトルで表す

【命題】

三角形ABC と、その内部の点 X が与えられたとする。

そして、
△XBC : △XCA : △XAB
= p : q : r とする。
(ただし、p, q, r は正の実数)

さらに、AX と辺BC の交点を D、BX と辺CA の交点を E、CX と辺AB の交点を F とする。

このとき、点 X を位置ベクトル表示することができる。


どういう位置ベクトル表示かは、後で図とともに述べます。

まず、この命題の仮定の内容から、三角形の面積比と各辺の内分比の関連について述べておきます。

数学Aの平面図形の単元で学習する内容を使います。

辺AX を共通の底辺と考えると、
△XAB と△XCA の面積比は、
辺BD と辺DC の長さの比となります。

そのため、
BD/DC = △XAB/△XCA
= r/q となります。

これで、BD : DC = p : q で、点 D が辺BC を内分する比が分かりました。

比の値から分点の比へ

外心-ベクトル-命題

この点 X の位置ベクトル表示を導きます。

三角形の外部に位置ベクトルの基準となる点を考え、その点を始点として、各点を a というように位置ベクトルで表します。

点 E と点 F についても、同様に面積比から辺の内分比が導けます。

XB を共通の底辺とし、
CE/EA = △XBC/△XAB
= p/r です。

XC を共通の底辺とすると、
AF/FB = △XCA/△XBC
= q/p です。

ここで、
BD/DC × CE/EA × AF/FB
= (r/q) × (p/r) × (q/p)
= 1 となります。

このため、チェバの定理の逆より、
AD と BE と CF が1点 X で交わっているという状況になります。

このチェバの定理の逆が成立する状況では、三角形の内部の点を表す点を位置ベクトルで表すことができます。

このため、点 X の位置ベクトル x は、図の左側に記述している式となります。

△XBC : △XCA : △XAB という比が分かれば、【命題】から、X の位置ベクトル表示が得られるというわけです。

その位置ベクトル表示に現れる p, q, r の値が三つの面積の比です。

そこで、今度は三角形ABC の外心を E とし、その位置ベクトル e を求めることを考えます。

図の右下に記述しているベクトルの式となります。

意見すると、複雑そうですが、三角形の面積を表す三角比で学習する公式を使って、図の右上の外接円の内容に関して、△EBC、△ECA、△EAB の値を表しているだけです。

このときに三角比を使うため、p, q, r の値としてサインが現れているというわけです。

ですので、本質は先ほど述べた【命題】の x の表し方になります。

外心 : 三角形の面積をサインで

点 X として、三角形ABC の外心 E を考えます。

【命題1】の p, q, r の値となる面積をサインを用いて表すことを考えます。

先ほどの図の右の外接円の内容を考えます。

円に内接する三角形ABC なので、円周角と中心角の関係を使うことができます。

角A, B, C の大きさを A, B, C と表すことにします。

∠BEC = 2A,
∠CEA = 2B,
∠AEB = 2C となっています。

そして、三角形ABC の外接円の半径を R とします。

EB = EC = EA = R となっています。

ここで、三角比の公式で、三角形の面積を表す公式を使います。

二辺とその間の角を使う三角形の面積を表す公式になります。

△EBC = 1/2 × R2 × sin2A,
△ECA = 1/2 × R2 × sin2B,
△EAB = 1/2 × R2 × sin2C となっています。

比を簡単にすると、
△EBC : △ECA : △EAB
= sin2A : sin2B : sin2C です。

これで先ほどの【命題】を適用することができます。

正しい命題を使う

既に示した【命題】の点 X として、外心 E を考えます。

【命題】の仮定の三つの三角形の比である p, q, r の値が、それぞれ sin2A, sin2B, sin2C です。

これで、【命題】の位置ベクトルの x の式において、p, q, r に、それぞれ sin2A, sin2B, sin2C を代入すると、先ほどの図の e の式となります。

見た目が複雑そうでしたが、実は知っている公式を使ってサインで三角形の面積比を表しただけです。

既に証明された命題を適用するときに、何に何が該当するのかを正確に押さえることが大切になります。

この e の位置ベクトル表示ですが、別に公式として覚える必要のない式です。

それよりも、大学受験を考えたときに大切になるのは【命題】の証明のときの考え方の方です。

三角形の面積比を考えたときに、共通の底辺を考え、面積比を線分の長さの比に書き換えました。

この平面図形で学習する基本内容は、受験頻出となります。

その上で、チェバの定理の逆に関連する内部の1点の位置ベクトル表示の考え方を使いました。

注意点

実際に、外心を位置ベクトルで表示することを考える入試問題が、今までに出題されています。

e を先ほどサインを使って表しましたが、実際の試験問題を具体的な数字について解くときに、サインの式に代入するわけではありません。

サインを用いて三つの三角形の面積を求め、その求めた三角形の面積について比を考えて【命題】の内容を踏襲する流れになるかと思います。

やはり、特別な暗記ではなく、高校の数学で学習する基礎となる公式たちの積ん重ねで議論を進めるという姿勢が大切になります。

最後に関連する記事たちについてです。

三角形の五心について

三角形には、五心といって特徴的な点が考えられています。

今回の記事で述べた内心や外心は、そのうちの一つになります。

内心と同様に、位置ベクトルの分点公式から、重心の位置ベクトル表示を得ることができます。

三角形の各辺の中点と頂点を結んだ線分が、必ず1点で交わるということと、内分比の位置ベクトルの公式を使います。

1/1・1/1・1/1
= 1 だから、重心が確かに1点で交わっているということがチェバの定理の逆から分かります。

各辺を 1 : 1 に内分する中点ということから、内心を位置ベクトル表示したことの類推で、重心の位置ベクトル表示が得られます。

先ほど述べたチェバの定理の逆という記事で解説している結果を使うことができます。

また、三角形の各辺の垂直二等分線は、三本とも1点で交わることが図形的に分かります。

この1点が外心といって、外接円の中心となります。

三角形の各頂点から、それぞれの対辺に引いた垂線は、三本とも1点のみで交わることが図形的に証明できます。

この点が垂心です。

垂心の位置ベクトル表示についても、解説をしています。

最後に、三角形の外角の二等分線に関連した傍心の位置ベクトル表示についての記事です。

1つの三角形には外角が三つあり、傍接円が三つできます。

どの傍接円についても、同様の議論で傍心の位置ベクトル表示が得られます。

三角形の五心は、平面図形で学習する内容を復習しつつ、ベクトルの練習ができるので、位置ベクトルで表示することにチャレンジしておくと良い学習になるかと思います。

それでは、これで今回の記事を終了します。

読んで頂き、ありがとうございました。