傍接円 傍心 | 中心を位置ベクトルで表示する

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" 傍接円 “の中心である" 傍心 “は、三角形の一つの頂点と内心を通る直線と、外角の二等分線の交点になっています。

この内容を位置ベクトルを用いて表すことで、傍心をベクトルで表せます。

平面図形で学習した内容を、ベクトルを用いて表現する良い練習になるかと思います。

内角や外角の二等分線について、ベクトルを用いることで、傍心の位置ベクトル表示が可能となります。

三角形ABCの内心を I とし、頂点 A と I を通る直線上にある傍心を IA と表すことにします。頂点 A の外角の二等分線と頂点 B の内角の二等分線の交点が IA です。

この図のように、一つ三角形が与えられると、傍心(傍接円)が存在することになります。

傍接円 傍心 :二つの角の二等分線

三角形ABCが与えられたときに、二つの内角の二等分線は、1点で交わります。その1点が内心で、内接円の中心です。

この内容は中学の数学や高校の平面図形の単元で学習した通りです。

さらに、三角形の一つの頂点に注目して、その頂点と内心を通る半直線を引きます。

そして、外角の二等分線と、その半直線の交点が傍接円の中心である傍心です。

ここまでの過程を考えたとき、内角の二等分線と外角の二等分線が出てきています。そのため、角の二等分線をベクトルで表現できると、傍心の位置ベクトル表示が可能になります。

角の二等分線は、中学の数学でコンパスを使って作図したりして、性質がよく知られています。

半直線OPと半直線OQが点Oで交わっていると、∠POQが形成されています。

このとき、半直線OPとOQから等しい距離にある点をすべて集めたものが、∠POQの二等分線となっています。

この∠POQの二等分線上の点をベクトルで表すことを考えます。

角の二等分線をベクトルで考える

点Oを始点として、点Pや点Qを終点とする位置ベクトルを使います。

ベクトルOPを p、ベクトルOQを q とします。

∠POQが形成されている状況のもとで議論をしているため、これら二つのベクトルは零ベクトルではありません。

零ベクトルでないため、ベクトルの大きさ(長さ)は、0 でない実数です。そのため、分母に置くことができます。

p, q というベクトルを、それぞれの大きさを表す絶対値記号を用いて、単位ベクトルを作ります。

p/|p|, q/|q| は、大きさが 1 なので、単位ベクトルです。絶対値が 0 でないことから、分母に絶対値をもってくることで、大きさを 1 にするスカラー倍を考えることができました。

実際、
|p/|p|| = |1/|p||×|p| = 1,
|q/|q|| = |1/|q||×|q| = 1 となっています。

ベクトルの絶対値は、ベクトルの大きさ(長さ)で、その値は実数なので、スカラー倍をする実数として考えることができます。

p/|p|, q/|q| のそれぞれの終点をP’, Q’ と置くと、線分OP’, OQ’ の長さは、どちらも 1 です。

線分OPを伸縮させて長さ 1 の線分OP’ とし、線分OQを伸縮させて長さ 1 の線分OQ’ としました。

そのため、∠POQ と ∠P’OQ’ は同じ角です。

ゆえに、∠POQ の二等分線と ∠P’OQ’ の二等分線は一致しています。

線分OP’, OQ’ の長さは、どちらも 1 なので、三角形P’OQ’ は二等辺三角形となっています。そして、辺P’Q’が底辺です。

線分P’Q’の中点をMとします。すると、二等辺三角形についての性質から、OMとP’Q’が垂直に交わっていることが分かります。

まとめると、
P’M = Q’M, P’M⊥Q’M なので、点Mと半直線OPとの距離は、点Mと半直線OQの距離が等しいということを表しています。

よって、点Mは∠POQの二等分線上の点です。

このことから、∠POQの二等分線上のどの点Xも、ベクトルOMを実数でスカラー倍すると表せます。

また、点Mは線分P’Q’ の中点、つまり、1:1 の内分点だから、点Mを位置ベクトルで表すと、
分点公式より、
m = 1/2(p/|p|+q/|q|) となっています。

したがって、
∠POQの二等分線上のどの点Xに対しても、
x = k(p/|p|+q/|q|)(ただし、k は実数)
と表すことができます。

これが、角の二等分線上の点の位置ベクトル表示です。

この角の二等分線上の点を位置ベクトルで表示するということを、三角形の内角の二等分線と外角の二等分線について使います。

三角形の内角の二等分線が出てくると、その二等分される角と向かい合う辺の上に、二辺の長さが内分比となる点をベクトルで表示させることができます。

三角形の外角の二等分線については、外分点の公式が使えます。

内角の二等分線と内分点、外角の二等分線と外分点について、さらにベクトルを用いての考察を進めます。

傍接円 傍心 :分点の比と三角形の辺の長さ

三角形OPQについて、∠POQの二等分線と、辺PQの交点をTとします。

中学の数学の相似の単元で学習したように、
PT : TQ = OP : OQ となります。

点Oを始点として、点P, Q を位置ベクトル表示すると、辺OP, OQの長さをベクトルの絶対値を用いて表すことができます。

OP = |p|, OQ = |q| なので、
PT : TQ = OP : OQ
= |p| : |q| となります。

ここで、内分点の公式を用いると、
{|p||q|/(|p|+|q|)}(p/|p|+q/|q|) が、点Tの位置ベクトル表示となります。

また、p/|p|, q/|q| のそれぞれの終点をP’, Q’ と置くと、∠POQの二等分線上の点は単位ベクトルを用いて位置ベクトル表示できました。

そして、点Tは、二等分線上の点なので、
直線OT上のどの点も、二つの単位ベクトルを用いて表せるということになります。

今度は、三角形の外角の二等分線について、ベクトルで考察します。

外角の二等分線とベクトル

外角の二等分線

三角形OPQと∠OPQの二等分線が与えられたとき、その二等分線と直線PQの交点をTとします。

ただし、OP ≠ OQ とします。

点Oを始点とし、点P, Qの位置ベクトル表示を p, q とします。

-1 でスカラー倍することで、ベクトル -p の終点を点Sと置きます。

ここで、向きを逆転させただけなので、ベクトルの長さが等しいことから、
OP = OS となっています。

このとき、PT : QT = OP : OQ という外分比になっています。

このことを、外分比の公式を使って見てみます。

∠SOQの二等分線上の点が T なので、点Tの位置ベクトル t は、
t = k(-p/|-p|+q/|q|) と実数 k を用いて表すことができます。

|-p| = |p| なので、
t = k(-p/|p|+q/|q|) …(1)

t を表すときの k として、
線分PQ を |p| : |q| に外分する分点公式のスカラー倍を考えます。

仮定より、OP ≠ OQ より、
|p| ≠ |q| なので、
|p|-|q| ≠ 0 です。

そのため、分母に置くことができます。

{|p||q|/(|p|-|q|)}(-p/|p|+q/|q|) =
{-|q|/(|p|-|q|)}p+{|p|/(|p|-|q|)}q となっています。

このベクトルの終点が、点Tです。

そのため、(1) の k として、
|p||q|/(|p|-|q|) という実数を考えると、点Tを位置ベクトルで表示できます。

ちなみに、pq は一次独立なので、一次結合での表し方は、ただ一つです。

ここまでの、内角の二等分線と外角の二等分線についての位置ベクトルを使った内容を基礎として、傍接円の中心(傍心)を位置ベクトル表示します。

傍接円 :傍心の位置ベクトル表示

傍接円-傍心と内心

三角形ABCについて、AB = c, BC = a, AC = b とします。また、点Aを始点として、点Bと点Cの位置ベクトルをそれぞれ b, c とします。

三角形ABCの内心をIとし、半直線AIと頂点Bの外角の二等分線との交点をIAとすると、この点IAが傍接円の中心となります。

半直線AIと辺BCの交点をDとします。AIは、∠BACの二等分線となっています。

そのため、
BD : CD = AB : AC = c : b となっています。

点Dの位置ベクトルを d と置くと、
内分点の公式から、
d =
{c/(b+c)}c+{b/(b+c)}b …(2)

ゆえに、BDの長さは、
BD = c/(b+c)・a です。

また、BIは、∠ABCの二等分線なので、
AI : ID = AB : BD
= c : c/(b+c)・a
= (b+c) : a となっています。

点Iの位置ベクトルを i と置くと、
i =
{(b+c)/(a+b+c)}d+{a/(a+b+c)}a …(3)

さらに、辺ABの延長上に点Eをとり、∠EBCの二等分線を考えます。

この二等分線が半直線BIAです。

BIA が三角形BAIAの外角の二等分線であることから、
AIA : IAD = AB : BD
= c : c/(b+c)・a
= (b+c) : a となっています。

点IAの位置ベクトルを iA と置きます。

点IAは、線分ADを
(b+c) : a に外分しているので、外分比の公式が使えます。

iA =
{(-a)/(b+c-a)}a+{(b+c)/(b+c-a)}d

(2) を d に代入すると、傍心の位置ベクトル表示が得られます。

iA =
1/(-a+b+c)(-aa+bb+cc)

辺AB, BC, CA の長さをスカラー倍として、頂点A, B, Cの位置ベクトルたちの一次結合として傍心の位置ベクトル表示が完成しました。

三角形ABCの頂点Aに着目したときの傍接円の中心を位置ベクトル表示しましたが、頂点Bや頂点Cに着目したときの傍心IB, ICを、同様にして求めることができます。

三つの傍心の位置ベクトル表示

頂点B内についての傍心の位置ベクトル表示です。

iB =
1/(a-b+c)(aa-bb+cc)
です。

視点を変えて同様の議論をするだけなので、-1 の部分が変化するだけです。

同様に、頂点C内の傍心の位置ベクトル表示です。

iC =
1/(a+b-c)(aa+bb-cc)

そして、はじめに求めた頂点A内の位置ベクトル表示です。

iA =
1/(-a+b+c)(-aa+bb+cc)

-1 部分が一周して、もとに戻りました。

一つの平面において、360°の視点の変化で、同様の議論を繰り返すことで、得られる三つの傍心の位置ベクトル表示でした。

関連する記事として、チェバの定理の逆という平面図形とベクトルの内容を合わせた記事を投稿しています。

傍心と同じように、1 点で交わった点を位置ベクトルを使って表すことについて解説をしています。

この考え方から、垂心についても位置ベクトルで表示できることを解説しています。

これらよりも簡単に位置ベクトルで表示できるものもあります。

重心の位置ベクトルや内心の位置ベクトルの表示は、より簡単なので、五心については、これら二つからが学習しやすいかと思います。

また、平面図形についてメネラウスの定理という記事も投稿しています。

それでは、これで今回の記事を終了します。

読んで頂き、ありがとうございました。