対数関数の微分 | 底がeのときの公式から始めて底がaのときの微分へと
" 対数関数の微分 “は、底が e のときはシンプルな形になります。
しかし、底が a のときはというと、覚えにくい形になります。
公式を忘れた頃に、底が a のときの微分が必要になるときもあるので、自分で公式を導くことが重要になる内容になります。
また、ネイピア数 e の定義から変形をしていくので、ネイピア数の定義に関連する証明問題の練習にもなります。
記事の最後に、対数微分法についても解説をしています。
対数関数の微分 :まずは自然対数の微分から
自然数 n が n → ∞ のとき、
(1+1/n)n は収束します。
この収束値をネイピア数 e と定義しました。
ここで、h = 1/n と置くと、
n → ∞ のとき、h → 0 となります。
そこで、h → 0 のとき、
(1+h)1/h → e と書き換えることができます。
この e を底とする対数関数のことを自然対数といいます。
自然対数については、底 e を省略して、
loge x を log x と表すことが多いです。
この自然対数の微分の公式を導きます。
h → 0 のとき、(1+h)1/h → e ということが、公式を導く決め手になります。
定義に基づいて微分の公式へ
y = log x について、x の増分(増加量) Δx と y の増分 Δy を用いた平均変化率を考えます。
Δy = log (x+Δx)-log x です。
よって、1/Δx を両辺に掛けると、
Δy/Δx =
{log (x+Δx)-log x}/Δx となります。
log (x+Δx)-log x は、
log {(x+Δx)/x} で、真数の部分を整理すると、
log (x+Δx)-log x = log (1+Δx/x)
そのため、
Δy/Δx = 1/Δx・log (1+Δx/x) です。
log e = loge e = 1 なので、
Δy/Δx → 1/x です。
この Δy/Δx の収束値が、
y’ = (log x)’ です。
これで、自然対数の微分の公式が得られました。
【自然対数の微分】
d/dx(log x) = (log x)’ = 1/x
今度は、底が a のときの微分の公式を導きます。
先ほどの証明を見ると、底が e であることが効いているのは、
log e = 1 というところだけです。
この最後の部分以外は、全く同じ証明の過程が成り立ちます。
対数関数の微分 :底がaのとき
y = loga x を定義に基づいて微分します。
Δy = loga (x+Δx)-loga x です。
よって、1/Δx を両辺に掛けると、
Δy/Δx =
{loga (x+Δx)-loga x}/Δx となります。
loga (x+Δx)-loga x は、
loga {(x+Δx)/x} で、真数の部分を整理すると、
loga (x+Δx)-loga x = loga (1+Δx/x)
そのため、
Δy/Δx = 1/Δx・loga (1+Δx/x) です。
ここで、h = Δx/x と置くと、
Δy/Δx = 1/(hx)・loga (1+h)
= 1/x・loga (1+h)1/h となります。
Δx → 0 のとき、h → 0 です。
そして、h → 0 のとき、
(1+h)1/h → e ということを先ほどと同じく使います。
よって、Δx → 0 のとき、
h → 0 だから、
Δy/Δx → 1/x・loga e となります。
底が a なので、さっきのように 1 と簡単な形になりません。
1/x・loga e も導関数なのですが、分数の分子が 1 になるように、底の変換公式を用いて書き換えます。
loga e = loge e / loge a
= 1 / log a です。
よって、Δx → 0 のとき、
Δy/Δx → 1 / (xlog a) となります。
底が a のときの微分の公式をまとめておきます。
底aのときの微分公式
【底aのときの微分】
(loga x)’ = 1 / xlog a
公式を導くときに、数学2で学習した底の変換公式を使っていました。
そのために、微分した後の導関数の底が、e となっています。
分母が、x と log a の積となっているので、忘れやすい公式になるかと思います。
忘れたときには、自力で復元できるように、公式を導けるようになっておくことが大切かと思います。
遠回りのようですが、e についての定義を使う証明問題の練習にもなるので、対数関数の微分の公式は、暗記というよりも、公式を導く考え方の理解が大切になるかと思います。
それでは、対数関数の微分の公式を使う練習問題です。
対数関数の微分 :公式を使う練習
y = log 5x を x で微分します。
底が e のときの微分です。
ただ、u = 5x と置き、合成関数の微分の公式も使います。
dy/dx = dy/du・du/dx なので、
dy/du と du/dx をそれぞれ計算します。
y = log u より、
dy/du = 1/u です。
u = 5x より、
du/dx = 5 です。
よって、
y’ = dy/dx
= 1/u × 5 = 5/u
u = 5x に戻すと、
y’ = dy/dx = 1/x です。
もう一つ練習問題を扱います。
底がaのときの練習
y = log2 (x+3) を x について微分します。
t = x+3 と置くと、
y = log2 t です。
dy/dt を計算するときに、底 a = 2 についての微分の公式を使います。
dy/dt = 1/tlog 2 です。
また、dt/dx = 1 です。
dy/dx = dy/dt・dt/dx より、
dy/dx = 1/tlog 2 です。
t を元に戻すと、
y’ = 1/(x+3)log 2 となります。
対数関数の微分では、真数部分に絶対値が絡むときがあります。そのタイプを計算するときの基礎となる公式を導きます。
対数関数の微分 :絶対値があるとき
y = log |x| の微分を考えます。
x > 0 のときは、y = log x なので、先ほどの公式が使えます。
y’ = 1/x です。
x < 0 のときも考えます。
このとき、y = log (-x) となっています。
ここで、合成関数の微分を使います。
u = -x と置くと、
y = log t です。
dy/dt = 1/t,
dt/dx = -1 です。
そのため、
y’ = dy/dx
= dy/dt × dt/dx
= 1/t × (-1)
ここで、t を元に戻すと、
y’ = -1/t × (-1) = 1/t
よって、x > 0, x < 0 のどちらについても、同じ結果になりました。
まとめると、y = log |x| を x で微分すると、
y’ = 1/x です。
y = loga |x| を x で微分することも考えてみます。
今、導いたことを使えるように、先に底の変換公式を使います。
loga |x| = log |x| / log a です。
つまり、
y = 1/log a × log |x| です。
ここで、1/log a は定数です。
そのため、y = log |x| を x で微分すると、
y’ = 1/x ということが、すぐに使えます。
y = 1/log a × log |x| を x で微分すると、
y’ = 1/log a × 1/x です。
すなわち、
y’ = 1/xlog a です。
まとめます。
【絶対値があるとき】
(log |x|)’ = 1/x,
(loga |x|)’ = 1/xlog a
さらに、一般化をすることができます。
より一般化した公式
y = log |f(x)| を x で微分します。
u = f(x) と置いて、合成関数の微分の公式を使います。
y = log |u| です。
先ほど導いたことから、
dy/du = 1/u です。
また、du/dx = f'(x) です。
合成関数の微分の公式から、
y’ = dy/dx
= dy/du × du/dx
= 1/u × f'(x) となります。
u を元に戻すと、
y’ = f'(x) / f(x) です。
y’ は、分子が f'(x) で、分母が f(x) となります。
抽象的なので、具体的な関数について、この公式を使ってみます。
y = log |3x+2| を x で微分します。
f(x) = 3x+2 として考えます。
y = log |f(x)| なので、
y’ = f'(x) / f(x) です。
f'(x) = 3 なので、
y’ = 3/(3x+2) と、すぐに導関数が求まります。
最後に、対数微分法について説明します。
対数関数の微分 :対数微分法
y = f(x) が x で微分可能だとします。
y’ = f'(x) ですが、他の計算方法である対数微分法というものがあります。
t = log y と置きます。
すると、t は x についての関数となり、x で微分することができます。
dt/dy = 1/y,
dy/dx = f'(x) です。
合成関数の微分の公式より、
dt/dx = dt/dy × dy/dx
= 1/y × y’ = y’/y となります。
dt/dx = (log y)’ と表すと、
(log y)’ = y’/y となります。
さらに、y’ = y(log y)’ であり、
y = f(x) だったので、次の公式を得ます。
【対数微分法】
y = f(x) が x で微分可能であるとき、
y’ = f(x){log f(x)}’
敢えて対数を絡ませることで、計算しやすくなるときに有効な方法です。
具体例を通じて、対数微分法を使ってみます。
具体例で対数微分法を練習
y = xx を x で微分します。
公式を覚えるというより、考えながら計算を進めるのが良いかと思います。
f(x) = xx と置きます。
y = f(x) = xx です。
よって、対数をとると、
log y = xlog x です。
t = log y と置き、左辺の t を x で微分すると、
合成関数の微分の公式から、
dt/dy = 1/y × y’ = y’/y
右辺を x で微分すると、
積の微分の公式から、
(xlog x)’ = log x+x・1/x
= log x+1
よって、左辺を x で微分したものと、右辺を x で微分したものは等しいので、
y’/y = log x+1 となります。
両辺に y を掛けると、
y’ = y(log x+1) です。
y = f(x) = xx なので、
y’ = xx(log x+1) となります。
実は、この対数微分法で、指数関数の微分の公式が導かれます。
xx だったので、積の微分が絡みましたが、ax の微分だと、よりスムーズに計算できます。
指数関数の微分
y = ax を x で微分します。
指数関数の微分の公式は、対数微分法から導かれます。
両辺の対数をとると、
log y = x・log a です。
左辺を x で微分すると、合成関数の微分より、
1/y × y’ = y’/y です。
右辺を x で微分すると、
log a は定数なので、
log a・(x)’ = log a です。
よって、y’/y = log a となります。
両辺に y を掛けると、
y’ = y・log a です。
y を元に戻すと、
y’ = axlog a となります。
特に、a = e のときは、
log e = 1 なので、
y = ex に対して、y’ = ex です。
【指数関数の微分】
(ax)’ = axlog a
特に a = e のとき、(ex)’ = ex
指数関数の微分の公式を具体的な例で使ってみます。
y = 32x を x で微分します。
もし、試験中に微分の公式を忘れたら、対数微分法を使って自力で計算をすれば大丈夫です。
両辺の対数をとります。
log y = 2xlog 3 です。
両辺を x で微分すると、
左辺は合成関数の微分より、
1/y × y’ = y’/y です。
右辺は、log 3 が定数だから、
log 3 × (2x)’ = 2log 3 です。
よって、y’/y = 2log 3 です。
両辺に y を掛けると、
y’ = y・2log 3 です。
y を元に戻すと、
y’ = 32xlog 3 となります。
指数関数の微分の公式を覚えていたら即答ですが、公式を忘れても、落ち着いて対数微分法で計算をすると、復元ができます。
関連する記事として、数IIの対数についてです。
常用対数という底 10 の対数についての記事を投稿しています。
それでは、これで今回の記事を終了します。
読んで頂き、ありがとうございました。