媒介変数の微分 | 関数の合成と逆関数の存在を意識して導関数を求める
" 媒介変数の微分 “についての公式を導くための条件を確認しつつ、求める方法を解説しています。
関数の合成と逆関数の存在を意識して、公式が使えるときに、媒介変数の微分の公式を使います。
典型的な例を通して、媒介変数の微分の公式を使う練習問題も解説しています。
分母に 0 を置くことができないということと、区間において関数単調関数となっている関数は、その区間において逆関数をもつということが大切になります。
(dy/dt)/(dx/dt) と書くと縦長ですが、分子÷分母と思うと気分が楽です。
つまり、(dy/dt)÷(dx/dt) のことです。
媒介変数の微分 :理論の証明
媒介変数の微分を理解するために、逆関数の存在についての基本となる内容を述べておきます。
関数 y = f(x) が、ある区間において、
a < b のとき必ず f(a) < f(b) となるとき、単調増加といいます。
また、ある区間において、
a < b のとき必ず f(a) > f(b) となるとき、単調減少といいます。
関数が、ある区間において単調増加または単調減少となっているときに、その区間において逆関数をもちます。
この内容を使って、媒介変数の微分の公式を導きます。
媒介変数の微分の公式
ある区間において、
x = f(t), y = g(t) となっていたとします。
この f(t) と g(t) は t についての関数で、この区間において、どちらも t で微分可能だとします。
さらに、dx/dt ≠ 0 という条件を満たしているとします。
dx/dt = df/dt = f'(t) と表し方は、いくつかありますが、区間において常にこのようになっていると、平均値の定理から、この区間において、f(t) は単調増加または単調減少ということになります。
増減表について、単調増加や単調減少を判断するのが導関数の符号でした。
dx/dt = f'(t) ≠ 0 という設定で議論をしているので、
f'(t) > 0 で単調増加か、
f'(t) < 0 で単調減少かという状況です。
そのため、関数 x = f(t) は、この区間において、逆関数をもちます。
※ ロルの定理という記事で、平均値の定理を証明しています。
x = f(t) の逆関数を t = φ(x) とします。
今、y = g(t) だったので、t = φ(t) との合成関数を考えます。
すると、
y = g(φ(x)) となります。
これで、y が x の関数となったので、y を x で微分することができます。
合成関数の微分の公式より、
dy/dx = dy/dt × dt/dx … (1)
今、t = φ(x) という逆関数の微分を考えると、
逆関数の微分の公式より、
dt/dx = 1 ÷ dx/dt = 1/(dx/dt)… (2)
※ dx/dt ≠ 0 という設定なので、分母に置くことができます。
これで、dy/dx = (dy/dt)÷(dx/dt) という媒介変数の微分の公式が得られました。
y = g(t) なので、
dy/dt = g'(t) です。
x = f(t) なので、
dx/dt = f'(t) です。
そのため、
dy/dx = g'(t)÷f'(t) となっています。
dx/dt = f'(t) ≠ 0 の区間で公式を使うことになるので、グラフの概形を考えるときに、焦らずに場合分けをすることが大切になります。
媒介変数の微分 :サイクロイドで練習
【練習問題1】
0 ≦ t ≦ 2π とし、
x = t-sin t, y = 1-cos t とします。
このとき、dy/dx を求めてください。
媒介変数の微分の公式を使うと、
dy/dx を簡単に計算できます。
ただし、dx/dt ≠ 0 という範囲に注意します。
dy/dx を求めてグラフの概形を描くときに、場合分けをして媒介変数の微分の公式を適切に使っていることが大切になります。
まず、dx/dt = 1-cos t です。
dx/dt ≠ 0 となっている区間を考えて場合分けをすることになります。
0 ≦ t ≦ 2π ですが、
t = 0 または 2π のとき、
dx/dt の値が 0 となってしまいます。
dx/dt という t についての関数が、0 という値を一切とらない範囲を考えます。
そのため、0 < t < 2π の範囲で、媒介変数の微分の公式を使います。
この範囲で、媒介変数の微分の公式を適用します。
x = t-sin t より、
dx/dy = 1-cos t です。
また、y = 1-cos t より、
dy/dt = sin t です。
よって、
dy/dx = (dy/dt)÷(dx/dt)
= sin t / (1-cos t) となります。
これで、dy/dx が 0 < t < 2π の範囲で求まりました。さらに、この導関数の符号について考えます。
dy/dxの正負を考える
グラフの概形を描くときに、導関数の符号によって、単調増加か単調減少かを判断します。
今、0 < t < 2π の範囲で考えているので、
-1 ≦ cos t < 1 です。
そのため、分母の 1-cos t の値は正の実数となっています。
つまり、1-cos t > 0 です。
このため、dy/dx の正負は、sin t の正負と一致します。
分子の sin t は 0 < t ≦ π の範囲で、
sin t ≧ 0 です。
π < t < 2π の範囲で、
sin t < 0 です。
これらの内容をまとめます。
0 < t ≦ π のとき、dy/dx ≧ 0
(等号は t = π のときのみ)
t = π のとき、
x = π-sin π = π,
y = 1-cos π = 2 です。
そのため、この媒介変数表示で表された曲線は、
点 (π, 2) を通るということが分かります。
π < t < 2π のとき、dy/dx < 0 です。
はじめに除いていた t = 0 と t = 2π のときの値は、個別に求めておきます。
t = 0 のとき、
x = 0-sin 0 = 0,
y = 1-cos 0 = 0 です。
そのため、この曲線は点 (0, 0) を通ります。
t = 2π のとき、
x = 2π-sin2π = 2π,
y = 1-cos2π = 0 です。
この曲線は点 (2π, 0) を通ります。
まとめると、
t = 0 のとき、xy-座標平面上で、
点 (0, 0) が曲線のスタート地点です。
dx/dt = 1-cos t なので、
0 < t < 2π の範囲で、x の値は単調増加しています。
そのため、t = 0 のとき、x = 0, t = 2π のとき、x = 2π だったので、
0 ≦ t ≦ 2π の範囲で、x の値は 0 から 2π への単調増加します。
そのため、グラフの概形はシンプルなものとなります。
0 < t < π の範囲で、dy/dx > 0 なので、
曲線上の点の y 座標の値が単調増加します。
そして、t = π のとき、曲線は、
点 (2π, 0) に到達します。
そして、π < t < 2π の範囲で、
dy/dx < 0 だから曲線上の点の y 座標の値が単調減少します。
最後に、t = 2π のとき、曲線は、
点 (2π, 0) に到達します。
これで、0 ≦ t ≦ 2π の範囲におけるグラフの概形が分かりました。
サインとコサインの周期は 2π なので、実数全体で考えたときに、このグラフの概形が繰り返されることになります。
もう一つ具体的な例で、どのような曲線になっているのかを考えてみます。
媒介変数の微分 :曲線の概形
先ほどのサイクロイドの例だと、t の値が 0 から 2π まで増加したときに、x の値も順に 0 から 2π まで増加しました。
このため、グラフの概形について、比較的に見やすい曲線だったと思います。
次の例は、媒介変数である t の値が増加しても、x の値が増加しないというものです。
この手の内容は、xy-座標平面で左から右へと x の値が増加する見方をするときに、概形を考えると混乱しやすいので注意です。
【練習問題2】
0 ≦ t ≦ π とします。
x = cos t, y = 3sin t のとき、
dy/dx を求めてください。
t が 0 から π/2 へまで増加するときに、
x の値は、1 から 0 へと減少します。
また、t が π/2 から π まで増加するとき、
x の値は、0 から -1 へと減少します。
t の増加や減少と、x の増加や減少が一致しないときに、注意深く状況を観察する必要があります。
最終的に、xy-座標平面における曲線の概形を考えるときには、第 1 象限、第 2 象限、第 3 象限、第 4 象限という場合に分けて正確に内容を把握することが大切になります。
dy/dx が正の範囲だと、x の値が増加すると y の値が増加したりします。
この dy/dx の正負は、曲線上の点の x 座標の増加に対して、y 座標の値が増加するか、減少するかを判断するものになります。
それとは別に、dx/dt の正負で、t の値が増加したときに、x の値がどうなるのかを判断します。
dy/dt の正負では、t の値が増加したときに、y の値がどうなるのかを判断します。
このように、考える視点をいろいろあるので、落ち着いて正確に状況を把握することが大切になります。
今、x = cos t なので、
dx/dt = -sin t です。
そのため、0 ≦ t ≦ π の範囲では、t の値が増加すると、x の値が減少することになります。
dy/dx を求めるときには、dx/dt が 0 でないときに、媒介変数の微分の公式が使えます。
そのため、t = 0, π/2 を除外して考察を進めます。
0 < t < π の範囲では、
dx/dt ≠ 0 です。
ゆえに、媒介変数の微分の公式より、
dy/dx = (dy/dt)÷(dx/dt)
そして、y = 3sin t なので、
dy/dt = 3cos t です。
よって、(3cos t)÷(-sin t) より、
dy/dx = (-3cos t) / sin t です。
これで、0 < t < π の範囲において、
0 < t < π/2 のとき、dy/dx < 0,
π/2 < t < π のとき、dy/dx > 0 と分かりました。
t = π/2 について、
x = 0, y = 3 だから、
点 (0, 3) を通るということを押さえておきます。
曲線の概形を考える
0 < t < π の範囲で、dx/dt < 0 でした。
そのため、t : 0 → π のとき、
x : 1 → -1 です。
曲線の概形を dy/dx の正負から考えるときには、
x : -1 → 1 のときに、
t : π → 0 で、
この変化において y がどのように変化するのかを押さえます。
先ほど、dy/dx の分母が 0 でないように、
t = π/2 のときを除外しました。
t = π/2 は t が π から 0 へと動く途中の値です。
そして、t = π/2 のとき、
(x, y) = (0, 3) でした。
-1 < x < 0 なので、y 軸より左側をまず意識します。
y = 3sin t ≧ 0 なので、第 2 象限から曲線の概形を押さえます。
x : -1 → 0 のとき、
t : π → π/2 です。
π/2 < t < π のとき、dy/dx > 0 と先ほど求めています。
そのため、-1 < x < 0 の範囲では、x の値が増加すると、曲線上の点の y 座標の値も単調増加します。
よって、
t = π のときの点 (-1, 0) から、
t = π/2 のときの点 (0, 3) へ向けて、曲線上の点の y 座標の値が単調に増加します。
また、π/2 < t < 0 のとき、
dy/dx < 0 でした。
そのため、
t = π/2 のときの点 (0, 3) から、
t = 0 のときの点 (1, 0) へ向けて、
x の値が増加するにつれて、
曲線上の点の y 座標の値は減少することになります。
これで、曲線の概形が分かりました。
この曲線は、実は数学Cで学習した曲線になっています。
媒介変数を消去できるとき
x = cos t, y = 3sin t (0 ≦ t ≦ π) でした。
y/3 = sin t なので、
y2/9 = sin2t です。
また、x2 = cos2t です。
そのため、
x2+y2/9 = cos2t+sin2t = 1 となっています。
つまり、
x2+y2/9 = 1 なので、この曲線は楕円です。
この等式を変形すると、
y2 = 9(1-x2) です。
よって、
y ≧ 0 のとき、
y = 3(1-x2)1/2 となっています。
0 ≦ t ≦ π で考えていたので、楕円の上の部分です。
π < t < 2π の範囲だと、
y = 3sin t < 0 となっています。
このときは、楕円の下の部分です。
y < 0 だと、
y2 = 9(1-x2) より、
y = -3(1-x2)1/2 です。
このように、y の値を場合分けて、y を x の関数として表示できるときには、今まで学習した通りに y を x で微分して増減表から曲線の概形を考察することもできます。
先ほど、dy/dx = (-3cos t) / sint と求めました。
x = cos t, y = 3sin t ということから書き換えると、
sin t = y/3 より、
y ≠ 0 の範囲で
dy/dx = -3x × 3/y = -(9x)/y となります。
x2+y2/9 = 1 という楕円を表す方程式の両辺を x で微分すると、合成関数の微分の公式から、次のようになります。
2x+(2y)/9・dy/dx = 0
よって、y ≠ 0 の範囲で、
dy/dx = -(9x)/y です。
媒介変数の微分の公式を使ったときと、同じ導関数になっています。
状況によって、どの解き方が良いのかを判断することも大切になる内容なので、様々なタイプの問題で、よく練習をしておくと良いかと思います。
それでは、これで今回の記事を終了します。
読んで頂き、ありがとうございました。