アボガドロ定数 – 高校 | 化学基礎の勉強に正比例の関係を応用しよう
" アボガドロ定数 – 高校 “ということで、化学基礎の内容で使われている正比例の関係を通じて、一対一対応の応用例を説明します。
個数についての単位モル (mol) に対して、数学の考え方が、どのように使われているのかを解説します。
化学の内容と数学の内容が混ざっているために、理解が滞ってしまうというときには、学問分野を分けてそれぞれを理解すると内容が見えてくるかと思います。
普段は数学についての記事を投稿していまして、化学の法則について成立しているとして、使われている数学の内容に集中した内容となっています。
アボガドロ定数 – 高校 :個数を表す単位
アボガドロ定数について、大きく複雑な数が出てくるので、準備運動として、単純な数を使った内容で、単位あたりの量について復習をしておきます。
1 箱に 2 個のケーキが入っている箱が、5 箱あったとします。
このときに、5 箱に入っているケーキが全部で何個あるのかを計算します。
2 個のケーキが 5 セットあるということから、
2 × 5 = 10(個)が答えとなります。
この単位あたりの量ですが、算数で比として学習をしています。
先ほどの求めるケーキの個数を y 個とすると、
1 : 2 = 5 : y という正比例の関係が成立しています。
そのため、
1 × y = 2 × 5 より、
y = 10(個)となります。
※ 比の相当という記事で算数や数学の比についての基礎的な内容を解説しています。
アボガドロ定数についての計算の内容に使われている数学は、正比例の関係です。
x 箱に入っているケーキの個数 y 個と一般化しておきます。
1 : 2 = x : y より、
y = 2x (比例定数は 2 )となります。
中学一年のときに学習する正比例の関数が背後で活躍しています。
この正比例の関係が分かると、5 箱だと、
y = 2 × 5 = 10(個)というように、一対一対応で入っているケーキの個数が得られます。
アボガドロ定数については、定数となっている数が複雑になっているので、一般的な数式の計算が客観的な定量計算を行う上で大切になります。
複雑な定数
化学では、6.02×1023 個を 1 mol(モル)といいます。
先ほどの 1 箱に 2 個のケーキが入っているということを、1 mol だと 6.02×1023 個と考えるわけです。
個数についての関係ですから、比例の関係が使われます。
1mol : 6.02×1023個 という単位あたりの量です。
モルの方の数字が 2 倍 3 倍になると、個数の数字も 2 倍 3 倍となるというわけです。
一般的に x mol が y 個ということについて、正比例の式を導きます。
1 : 6.02×1023 = x : y より
y = 6.02×1023x です。
ここで、比例定数が 6.02×1023 と複雑なので、数学でよく使う文字の置き換えを行います。
アボガドロにちなんで
NA = 6.02×1023 と置くことにします。
すなわち、
y = NAx という正比例の関係が得られました。
同じ文字が使われていますが、x mol の x が正比例の関数の変数で、NA が一定の値である定数です。
一対一対応を示す式が得られると、後は簡単です。
5 mol だと何個かというと、
x = 5 を代入して、
y = 5NA(個)とすぐに求まります。
※ 高校の化学だと有効数字が指定され、指数を調整しつつ四捨五入するということをすることが多いですが、この記事では分かりやすさを狙って文字式のまま議論を進めます。
ここまで、化学の内容と数学の内容を分離して述べました。
どうしてアボガドロは、6.02×1023 という数字に注目したのだろうかという部分は、めちゃくちゃハイレベルな化学の内容となります。
それに対して、適用した関数モデルは、正比例の関数という中学一年で学習する数学の内容になります。
高校で、化学の先生と数学の先生が分かれているように、数学の内容は、中学一年のレベルで押さえることができました。
化学の内容を深く追求するということについては、「どうしてアボガドロは 6.02×1023 という特徴的な数字に注目したのだろう」というような背景を突き詰めることになります。
ただ、このブログサイトはあくまでも数学についての記事を扱うものでして、化学には深く立ち入らない立場で述べています。
その代わりに、数学IIIの逆関数の具体例となる内容について、これから述べることにします。
アボガドロ定数 :インバースを考える
【正比例の関数】
y = 6.02×1023x
これは、0 以上の実数 x (mol) に対して、対応する個数 y の値を一対一に対応させる関係を述べた式です。
0 以上の実数なので、1.2 mol というようなことも想定しています。
より数学として、定義域-値域ということについて述べると、定義域 S は 0 以上の実数全体です。
値域 T も 0 以上の実数全体となっています。
ここで、T の要素 a(個)に対して、S の要素 b(mol)を対応させるという逆関数を定義することができます。
何十年か前の高校の数学を見てみると、高校一年のはじめの段階で関数の一対一対応が取り挙げられていました。
今は、数学IIIの内容になっていますが、文系理系を問わず、逆関数の内容を触れるのに、化学の内容も良い教材となっています。
値域 T の要素 18.06×1023 に対応する定義域 S の値 b を求めてみます。
y = 6.02×1023x という関係ですから、
18.06×1023 = 6.02×1023b です。
そのため、
b = (18.06×1023)÷(6.02×1023)
= 18.06÷6.02 = 3(mol) となります。
算数のときは、身近な事柄を通じて、適用されている数学モデルに親しむという学習の流れでした。
しかし、高校になると一般的な数学モデルを適用して化学の事柄を定量的に分析するという側面が強くなります。
そこで、先ほど値域の要素 18.06×1023(個)に対応する値である 3(mol)を求めた内容を、値域の各要素に対して定義域の要素を対応させる関数として表すことを考えます。
逆対応を表す式を求める
y = f(x) = NAx の逆関数を求めるという内容になります。
この関数 f の定義域が S で、値域が T でした。
a∈T に対して、b∈S を、どのように定めるのかということを考えます。
つまり、b = g(a) という関数 g を表す式を考えるということです。
逆関数については、定義域が T で値域が S となります。
名前の通り、f の逆対応が逆関数 g です。
ここで、大元の正比例の関係に注目します。
1(mol) : NA(個)
= g(a)(mol) : a(個) という正比例の関係です。
※ g の定義域の要素が a で、g(a) を表す式を求めたいわけです。
よって、
NA × g(a) = 1 × a です。
NA > 0 より、
g(a) = a÷NA です。
これで、定義域の要素 a を用いて a に対応する値域の要素 g(a) を表すことができました。
関数の記号の習慣
高校の数学では、関数の定義域の要素を表す記号を x で統一していることが多いです。
はじめの f(x) = NAx = 6.02×1023x と混同しないように注意しつつ、逆関数の式も x を使って表すことにします。
f(x) の方の x は、S の要素です。
これから述べる g(x) の x は、T の要素です。
NA も 6.02×1023 に戻しておきます。
g(a) = a÷NA で、a が g の定義域 T の要素 a だったので、a を x に置き換えるというわけです。
すると、
g(x) = x÷NA (x∈T) となります。
逆関数 y = g(x) も正比例の関数となっています。
これで逆関数を表す式が求まりました。
ちなみに、グラフを考えるときは、値域の要素を y で表します。
そのため、y = g(x) という形で逆関数の式が表されます。
数学でも、高校化学の問題を解くときでも、対応関係を正確に把握することが大切になります。
そこで、本当に逆対応となっているのかを確認してみます。
高校 : 逆対応の確認
定義域の要素に、どのような値を対応させているのかを追跡します。
f(x) = NAx (x∈S),
g(x) = x÷NA (x∈T) について、逆対応ということを見ておきます。
s∈S に対して、
f(s)∈T が対応します。
T は g の定義域なので、f(s) を g で移すことができます。
すると、
g(f(s)) = (NAs)÷NA
= s × NA/NA
= s となり、再び s に戻ります。
そのため、f に g を合成させた合成関数は、恒等関数(恒等写像)となっています。
つまり、g(f(s)) = s と、何も動かさなかったということ同じ結果になっています。
今度は、a∈T を g で g(a)∈S に移します。
S は f の定義域なので、g(a) を f で移してみます。
f(g(a)) = (a÷NA) × NA
= a × NA/NA
= a となり、a に戻っています。
つまり、
g に f を合成させた合成関数は、恒等関数(恒等写像)となっています。
やはり、
g(f(a)) = a と、何も動かさなかったということ同じ結果になっています。
これで、f の逆関数が g だということが確認できました。
算数や中学で学習した正比例の関係ですが、アボガドロ定数にまつわる個数の内容は、高校の数学IIIで学習する逆関数や合成関数の良い例にもなっているかと思います。
※ 平行四辺形-定義という記事で、中学で学習した図形を使って高校の論理と集合について解説をしています。
最後に、気体についての化学的な定理について、同様の考察を述べておきます。
アボガドロの法則 :気体の体積
【化学法則】
0℃、1.013×105Pa(標準状態)において、気体が 1 mol 個だけ集まると、その体積は 22.4 L である。
こういうことに気づくのが、化学の内容です。
そして、この法則が成立するものだとすると、数学を応用するチャンスというわけです。
ちなみに、1.013×105Pa は 1 気圧に相当します。
また、このアボガドロの法則は、あくまで気体の体積についてのものです。
水溶液の体積ではないので、区別をしておかなければなりません。
では、先ほどと同様に、比例の関係から関数の対応を考えます。
1 mol : 22.4 L という関係です。
そのため、x mol 個だと、何 L かを計算で求めることができます。
x mol の体積が y L として、等式をつくります。
1 : 22.4 = x : y という関係です。
これより、
1 × y = 22.4 × x です。
つまり、
y = 22.4x ということです。
これで、x mol に応じて気体の体積 y L がどうなるのかを表すことができました。
この関係を、関数の対応を意識して表しておきます。
対応を意識して
x mol 個について、対応する気体の体積を f(x) L だとします。
そうすると、
f(x) = 22.4x ということになります。
関数の一対一対応なので、個数を表すモルの値を与えると、自動的に体積の値が出力されるというわけです。
x mol を 22.4 倍すると、体積の値 f(x) となるので、逆対応は気体の体積を 22.4 で割るということになります。
例えば、67.2 L の気体があったとすると、mol の値を計算で求めることができます。
22.4 で割るという逆関数の対応から、
67.2 ÷ 22.4 = 3 より、
3 mol 集まって、67.2 L の体積を形成していたということが分かります。
ちなみに、化学では平均分子量の計算問題が出題されることもあります。
この化学の内容に絡む数学の内容は、期待値です。
この記事の最後の方で、原子量についての内容を扱っています。
アボガドロ数という個数についての単位は大きな数なので、最後に簡単な復習としてダースを取り挙げます。
復習にダースでも同じく対応を
個数について、12 個で 1 ダースです。
算数で学習するようなシンプルな内容ですが、アボガドロ定数のときと同じく比の考え方から対応関係を考察する練習ができます。
鉛筆が 12 本で 1 ダースです。
1 : 12 という関係です。
そのため、3 ダースの鉛筆の本数を α 本とすると、簡単に計算で求めることができます。
1 : 12 = 3 : α です。
1 × α = 12 × 3 より、
α = 36(本)です。
1 アボガドロ定数個だと 6.02×1023 という大きな個数でしたが、1 ダースだと 12 個なので、シンプルな数字で同様の考察を練習することができます。
一般的な関数の対応の式でまとめておきます。
x ダースの個数を y 個とすると、
1 : 12 = x : y より、
y = 12x です。
正比例の関数の式として表すことができました。
この逆関数も考えてみます。
24 本の鉛筆が何ダースかを計算します。
1 あたりの個数が 12 なので、
24÷12 = 2 だから 2 ダースです。
この内容から、y = 12x の逆関数を定める式は次のようになります。
y = x÷12 が逆関数を表す式です。
24 本の鉛筆が x = 24 です。
そのとき、y ダースということから、
y = 24÷12 = 2 ということになります。
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物理基礎については、
運動方程式という記事も投稿しています。
それでは、これで今回の記事を終了します。
読んで頂き、ありがとうございました。