平行四辺形 – 定義 | 定義と同値な条件たち【一般教養の数学の目次つき】

平行四辺形-定義-表紙

" 平行四辺形 – 定義 “について、定義と同値な条件について解説をしています。

中学の数学で学習する内容を使うことで、高校の数学の論理への理解を深め易くしようという目的で投稿した記事になります。

この数学サイトでは、一般教養の数学というカテゴリーがあり、算数や中学の数学、実用数学などの内容を述べることもしています。

今まで、それらの記事へのリンクの一覧を設定していなかったので、この記事につけておきます。


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平行四辺形の定義は、「向かい合う2組の辺がそれぞれ平行である」という条件を満たす四角形です。

この定義に使われている条件と同値な条件について、同値であることを証明します。

内容は公立の中学2年生の内容ですが、そういった比較的に扱いやすい内容を題材にして高校の数学の論理に親しむことができるかと思います。

この内容を解説するにあたり、平面図形の内容を記述するために使う記号の記述の仕方について述べておきます。

自分で問題文に書かれていない点や補助線を利用して証明を進めることもあるので、よく使う記号のつけ方について準備として述べておきます。

平行四辺形 – 定義 :準備の内容

平行四辺形-定義-準備

平行四辺形だけでなく、四角形が出てきたときに、よく自分で設定する記号についてです。

【内角を分割するとき】

イメージ①と②の内容です。

四角形ABCD について、対角線AC を引きます。

このとき、∠DAC = x, ∠BAC = y と置きます。

∠ACB = x となっていれば、錯覚が等しいことから、直線AD と直線BC が平行ということになります。

∠ACD = y となっていると、同様に錯覚が等しいため、直線AB と直線DC が平行ということになります。

イメージ②についても、同じ様な内容です。

向かい合う辺が平行になっているということを示すのに、イメージ①やイメージ②を思い浮かべて補助線を引き、角の大きさを x や a といった文字で置き議論を進めることがあります。

内角と外角を意識する

図形の角の大きさについて、1 つの頂点について、内角と外角を意識することもあります。

与えられた四角形の辺を延長することで、外角と内角の大きさを関連づけることができます。

しかし、与えられた四角形について、辺が延長されていないときに、自分で辺を延長することについては記述の練習をしておかないと、いざという時に内容を表現できないかもしれません。

記述の例としてイメージ③の内容を説明します。

「半直線BA の延長上に点 P をとる」と自分で宣言します。

そうすると、∠PAD という頂点 A における外角を表すことができます。

客観的な角の大きさについての計算で、角度についての等式や不等式を導くときに、この記述は役に立ちます。

∠BAD = x と、内角の大きさを文字で表しておくと、
∠PAD + ∠BAD = 180 より、
∠PAD = 180-x となります。

内角だけを x と文字で置いておくと、外角についても同じ文字で表せます。

未知数の文字は少ない方が扱いやすいので、辺の延長上に自分で点をとるという記述の仕方は押さえておくと良いかと思います。

半直線CB 上に点 R をとる、半直線BC 上に点 S をとるというように、半直線がどちらに向けて伸びているのかということの意識も大切になります。

それでは、これらの記述の仕方に注意しつつ、平行四辺形の定義となっている条件と同値な条件について解説します。

平行四辺形 – 定義 :同値な条件

【平行四辺形の定義】

四角形ABCD について、
向かい合う2組の辺がそれぞれ平行であるとき、四角形ABCD を平行四辺形という。


これが平行四辺形の定義です。

四角形について、この条件を満足すると平行四辺形ということです。

また、四角形が、この条件を満たしていなければ平行四辺形ではありません。

定義の条件を満たすか満たさないかで、平行四辺形かどうかを判断することになります。

ただ、平行四辺形には、この定義に使っている条件と必要十分条件となっている条件が知られています。

平行四辺形かどうかを判断するときに、他にも同値な条件があるとアプローチをする幅が広がります。

まずは、次の十分条件を証明します。

【命題1】

四角形ABCD について、
AB = CD かつ BC = DA ならば、四角形ABCD は平行四辺形である。
※ これは向かい合う2組の辺がそれぞれ等しいならば平行四辺形であるということを意味しています。

<証明>

対角線AC を引き、三角形ABC と三角形CDA が合同であることを示します。

仮定より、
AB = DC …①
BC = DA …②

また、共通の辺より、
AC = CA …③

①、②、③より、
3辺がそれぞれ等しいため、
三角形ABC ≡ 三角形CDA です。

合同な図形の対応する角の大きさは等しくなっています。

ゆえに、
∠BAC = DCA となっています。

よって、錯覚が等しいため、
AB // DC …④

また、対角線BD を引き、三角形ABD と三角形CDB が合同であることを示します。

同様にして、3組の辺がそれぞれ等しいため、合同となっています。

そのため、
∠ADB = ∠CBD となり、
錯覚が等しいため、
AC // BC …⑤

④と⑤より、向かい合う2組の辺がそれぞれ平行なので、四角形ABCD は平行四辺形の定義の条件を満たしています。

したがって、四角形ABCD は平行四辺形です。【証明完了】

これで、「向かい合う2組の辺がそれぞれ等しいならば、向かい合う2組の辺がそれぞれ平行である」ということを示すことができました。

そのため、「向かい合う2組の辺がそれぞれ等しい」という条件は、「向かい合う2組の辺がそれぞれ平行である」という条件の十分条件となっています。

この逆も示すことができると必要十分条件ということになります。

必要であることも確認

【命題2】

四角形ABCD について、
AB // DC かつ AC // BC ならば、
AB = DC かつ BC = AD である。
※ 向かい合う2組の辺がそれぞれ平行であるならば、向かい合う2組の辺がそれぞれ等しいという内容です。


<証明>

対角線AC を引きます。

三角形ABC と三角形CDA が合同であることを示します。

共通の辺より、
AC = CA …①

AB // DC より、
錯覚が等しいため、
∠BAC = ∠DCA …②

AC // BC より、
同様に、
∠ACB = ∠CAD …③

①、②、③より、
1辺とその両端の角がそれぞれ等しいため、
三角形ABC ≡ 三角形CDA です。

合同な図形の対応する辺の長さが等しくなっています。

ゆえに、
BC = DA、
すなわち、
BC = AD …④

対角線BD を引くと、三角形ABD と三角形CDB が同様にして合同となります。

そのため、
AB = DC …⑤

④、⑤より、結論が示せました。【証明完了】

これで、「向かい合う2組の辺がそれぞれ平行であるならば、向かい合う2組の辺がそれぞれ等しい」ということが示せました。

つまり、「向かい合う2組の辺がそれぞれ等しい」という条件は、必要条件にもなっています。

よって、【命題1】と【命題2】から、「向かい合う2組の辺がそれぞれ平行」という条件は、「向かい合う2組の辺がそれぞれ等しい」という条件の必要十分条件となっていることを示すことができました。

必要条件-十分条件は高校の数学を学習するときに、基本となるので、早い段階から理解をしておくと良いかと思います。

次に、【命題2】の証明を内容を利用して新しい命題を証明します。

平行四辺形 – 定義 :つの証明から広げて

先ほどの【命題2】の証明の内容から、他の命題を導くことができます。

1つの証明の内容を他へ転用するということも数学では、しばしば使う手となります。


【命題3】

四角形ABCD について、
AB // DC かつ AC // BC ならば、
∠ABC = ∠CDA かつ
∠BAD = ∠DCB である。
※ 平行四辺形ならば、向かい合う2組の角がそれぞれ等しいという内容です。


<証明>

【命題2】の証明から、
四角形ABCD について、
AB // DC かつ AC // BC という条件を満たすと、三角形ABC と三角形CDA が合同であり、かつ、三角形ABD と三角形CDB が合同となります。

三角形ABC ≡ 三角形CDA より、
∠ABC = ∠CDA です。

また、
三角形ABD ≡ 三角形CDB より、
∠BAD = ∠DCB です。【証明完了】

この【命題3】についても逆が成立します。

角の大きさを文字で表す証明

【命題4】

四角形ABCD について、
∠ABC = ∠CDA かつ
∠BAD = ∠DCB ならば、
四角形ABCD は平行四辺形である。

※ 向かい合う2組の角がそれぞれ等しいならば、向かい合う2組の辺がそれぞれ平行であるという内容になります。


<証明>

∠BAD = ∠DCB = x,
∠ABC = ∠CDA = y と置きます。

そして、半直線BA の延長上に点 P をとります。

四角形の4つの内角の和は 360°なので、
x+x+y+y = 360 です。

つまり、
2(x+y) = 360 より、
x+y = 180 です。

よって、
∠ABC = y = 180-x

一方、頂点 A の内角と外角について、
∠PAD = 180-∠BAD
= 180-x です。

よって、
∠ABC = ∠PAD となっています。

これは、同位角が等しいということなので、直線AD と直線BC は平行です。

また、半直線BC の延長上に点 S をとります。

頂点 C について、内角と外角の和が 180°となっています。

そのため、
∠SCD = 180-∠DCB
= 180-x です。

よって、
∠ABC = 180-x = ∠SCD

同位角が等しいため、直線AB と直線DA が平行となっています。

これで、四角形ABCD の向かい合う2組の辺がそれぞれ平行ということが示せたので、四角形ABCD は平行四辺形です。【証明完了】

以上の【命題1】から【命題4】までの内容を1つにまとめておきます。

【同値な書き換え】

四角形ABCD について、次の [1] から [3] は、同値である。

[1] 向かい合う2組の辺がそれぞれ平行(定義)
[2] 向かい合う2組の辺がそれぞれ等しい
[3] 向かい合う2組の角がそれぞれ等しい

四角形について、[1] から [3] のうち、どれか1つでも条件を満たすと、定義を満たすということになります。

そのため、四角形が平行四辺形であることについて、三つのアプローチができるようになりました。

実は、中学の数学では、あと二つ同値な条件を学習するのですが、長くなったので、今回のタロウ岩井の記事を終了します。

読んで頂き、ありがとうございました。