二次曲線の接線 | 曲線の方程式から接線の傾きを求めることが大切
" 二次曲線の接線 “を求めるということについて解説をしています。
数学3で学習する微分についての公式を使って、二次曲線を表す方程式から接線の傾きを求めます。
接線の傾きが分かると、接線が通る点の座標と傾きから、接線の方程式が分かります。
接線の傾きを求めるためには、dy/dx を明確に x の式で表すことが大切になります。これを求めるために、数学3の微分についての公式を使います。
dy/dx を求めるときに、合成関数の微分の公式が役に立ちます。
二次曲線の接線 :楕円の接線
x2/a2+y2/b2 = 1 という楕円を表す方程式から、
点 (s, t) という楕円上の点における接線の方程式を求めます。
ただし、実数 a と b は 0 でない定数で、y の値が 0 ではない範囲で考えることにします。
そのため、t は 0 でないという設定です。
接線の傾きは、dy/dx の式の x に s を、y に t を代入すると得られます。
このことは、dy/dx を x と y の式として求める必要があるということを意味します。
そこで、合成関数の微分の公式を使います。
【合成関数の微分の公式】
u = f(y), y = g(x) のとき、
du/dx = du/dy × dy/dx
この合成関数の微分の公式に、
dy/dx が現れています。
x2/a2+y2/b2 = 1 という楕円を表す方程式を見たときに、u が使われていません。
そこで、自分で u = y2/b2 と置きます。
すると、b は定数なので、
u = f(y) = y2/b2 となります。
u は y を変数とする二次関数というわけです。b は定数なので、u を y で微分するのは、二次式の微分なので、数学2で学習した微分の計算です。
それでは、点 (s, t) における接線の傾きから求めます。
楕円の接線の傾きを求める
x2/a2+y2/b2 = 1 という楕円の方程式について、
u = y2/b2 と置くと、次の等式が得られます。
x2/a2+u = 1 です。
この両辺を u で微分すると、
a は定数なので、
2/a2・x+du/dx = 0 … (1)
ここで、合成関数の微分なので、
du/dx = du/dy × dy/dx … (2)
u = y2/b2 を y で微分すると、
du/dy = 2/b2・y … (3)
(3) を (2) に代入すると、
du/dx = 2/b2・y × dy/dx … (4)
(4) を (1) に代入すると、
2/a2・x+2/b2・y × dy/dx = 0
a, b, y が 0 でないという設定の下で議論をしていたので、移項して整理すると、
2/b2・y × dy/dx = -2/a2・x,
dy/dx = -b2/a2・x/y … (5)
点 (s, t) における接線の傾きを求めるので、(5) の x に s を、y に t を代入します。
t も 0 でないという設定なので、y に t を代入して分母に置くことができます。
dy/dx = -b2/a2・s/t
= -(b2s)/(a2t) です。
これで、点 (s, t) における接線の傾きが求まりました。
求める楕円の接線の方程式
dy/dx = -(b2s)/(a2t) が接線の傾きで、
点 (s, t) を通る直線が接線だから、
y-t = -(b2s)/(a2t)(x-s) が求める接線の方程式です。
もう少し簡単な覚えやすい式に書き換えることができます。
t/b2 を両辺に掛けると、
ty/b2-t2/b2 = -sx/a2+s2/a2
これが、求める接線の方程式です。
この調子で、次は双曲線の接線の方程式を求めます。やはり、合成関数の微分が効いてきます。
二次曲線の接線 :双曲線の接線
x2/a2-y2/b2 = 1 という双曲線の接線を求めます。
a, b は 0 でない実数で、y は 0 でないという範囲で考えます。
x2/a2-y2/b2 = 1 上の点 (s, t) における接線の方程式を求めます。
y が 0 でない範囲で考えているので、t は 0 でない実数という設定です。
u = y2/b2 と置くと、
x2/a2-u = 1 です。
両辺を x で微分すると、
2/a2・x-du/dx = 0 です。
du/dx = du/dy × dy/dx であり、
du/dy = 2/b2・y だから、
2/a2・x-2/b2・y × dy/dx = 0 です。
よって、
dy/dx = b2/a2・x/y
x = s, y = t を代入すると、
dy/dx = (b2s)/(a2t) となります。
これで、接線の傾きが求まりました。
ここから、接線の方程式を求めます。
求める双曲線の接線の方程式
求める接線は、点 (s, t) を通る直線なので、
y-t = (b2s)/(a2t)(x-s) です。
a, b, s, t が具体的な数字の問題だと、これを整理すると接線の方程式となります。文字を使った公式として、より簡単な形に変形します。
t/b2 を両辺に掛けると、
ty/b2-t2/b2 = sx/a2-s2/a2
移項して整理すると、
sx/a2-ty/b2 = s2/a2-t2/b2 … (8)
ここで、点 (s, t) は、
x2/a2-y2/b2 = 1 という双曲線上の点だったので、
s2/a2-t2/b2 = 1 … (9)
(8) の右辺を (9) で書き換えると、
sx/a2-ty/b2 = 1 となります。
これが、求める双曲線の接線の方程式です。
次は、数学Cで学習する放物線の接線の方程式を求めます。
二次曲線の接線 :放物線の接線
放物線 y2 = 4px 上の点 (s, t) における接線の方程式を求めます。
ただし、y ≠ 0 の範囲で考えることとして、定数 t は 0 でないという設定です。
放物線を表す方程式を移項して書き換えます。
-4px+y2 = 0 です。
u = y2 と置くと、
-4px+u = 0 です。
両辺を x で微分すると、
-4p+du/dx = 0 です。
du/dx = du/dy × dy/dx で、
du/dy = 2y だから、
-4p+2y×dy/dx = 0
よって、dy/dx = 2p/y
y = t を代入すると、
dy/dx = 2p/t と接線の傾きが求まります。
求める放物線の接線の方程式
求める接線は、点 (s, t) を通るので、
y-t = 2p/t × (x-s) が求める接線の方程式です。
両辺に t を掛けると、
ty-t2 = 2px-2ps … (10)
点 (s, t) は、放物線 y2 = 4px 上の点だから、
t2 = 4ps … (11)
(11) を (10) の左辺に代入すると、
ty-4ps = 2px-2ps
4ps を右辺に移項して整理すると、
ty = 2px+2ps
つまり、
ty = 2p(x+s) が求める接線の方程式です。
数Cの放物線を扱いましたが、数学Iの絶対値付きの二次関数については、放物線の軸という記事で解説をしています。
最後に、一般的な曲線の接線の求め方について述べます。
二次曲線の接線 :陰に関数を表示
f(x, y) を x と y の2変数関数とします。
f(x, y) = 0 という形に二次曲線の方程式は書き換えることができます。
楕円などを表す方程式の右辺を移項して 0 にした形です。
楕円などの方程式から、y を x の関数として表すことができます。このように、片方の文字を、もう片方の文字を使って関数の式として表せることから、陰関数表示と大学の数学で学習します。
難しいことは、おいておいて、
x と y の二次式 = 0 という形から、合成関数の微分を使って、接線の方程式を求めることは大学受験の問題で頻出です。
f(x, y) = 0 という形から、曲線の接線の方程式を求めるシンプルな練習問題を扱ってみます。
【練習問題】
y2 = 4x-4 で表される曲線上の点 (2, 2) における接線の方程式を求めてください。
-4x+y2+4 = 0 という形の方程式から、dy/dx を求めます。
u = y2 と置くと、
-4x+u+4 = 0 です。
両辺を x で微分すると、
-4+du/dx = 0 です。
du/dy = 2y なので、
du/dx = du/dy × dy/dx
= 2y × dy/dx です。
これを -4x+u+4 = 0 に代入します。
すると、
-4+2y × dy/dx = 0 です。
慣れてくると、
-4x+y2+4 = 0 の両辺を x で微分して、
-4+2yy’ = 0 と瞬時に計算できます。
よって、y’ = dy/dx = 2÷y です。
点 (2, 2) における接線の傾きを求めたいので、y に 2 を代入します。
すると、y’ = dy/dx = 2÷2 = 1 となります。
これで、求める接線が、点 (2, 2) を通る傾きが 1 の直線ということから、接線の方程式が求まります。
y-2 = 1・(x-2) です。
移項して整理すると、
y = x となります。
先ほどは、楕円などの接線の公式の形にするために、複雑な文字式の計算をしましたが、具体的な数字のときは、直線の方程式を移項したりして整理すると、すぐに接線の方程式が得られます。
y2 = 4x-4 で表される曲線のグラフの概形なしで、合成関数の微分の公式から、接線の方程式がすぐに導けるので、この手の計算に慣れておくと良いかと思います。
これで、今回の記事を終了します。
関連記事の円の接線の方程式では、合成関数の微分の公式を使わずに、ベクトルを用いて円の接線の方程式を求めています。
また、数学IIIについての記事では、ネイピア数という記事で、e の定義について解説をしています。
読んで頂き、ありがとうございました。