Reflection 鏡映 | 対称変換を二次元において考える!

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" Reflection (鏡映変換)" は線形変換の一つです。そして、 形を変えない対称変換でもあります。

このブログで、指定された一つの直線について折り返すという鏡映変換をサイズ2の行列を使いながら説明をしています。

xy 座標平面において、図形は点たちで構成されています。

そのため、点を動かす対称変換という意味で、直線に対する折り返しについて説明をしていきます。

対称変換は図形の形を変えない変換のことです。

Reflection: 鏡映という対称変換

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直線 l : y = 3x について、点 P を対称な点 P’ に移すという線形変換(対称変換)について考えます。この直線についての折り返すという操作を鏡映といいます。

直線 l が x 軸の正の向きでのなす角を θ と表すことにします。直線 l の傾きが 3 なので、 tan θ は 3 ということになります。 そして、点 M を点 P と点 P’ の中点とします。

直線 l について折り返すという線形変換を f と表します。 f は線形写像なので、サイズ 2 の行列を用いて表すことができます。

写像の記号を使った表し方をすると、 f(P) = P’ です。点 P が f によって点 P’ に移されたということを表しています。

写像の対応を行列を使って表すことを考えます。

線形写像 f の行列表現

点 M は直線 l 上にあるので、

(y + b)/2 = 3 × (x + a)/2

すなわち、
b – 3a = 3x – y … ①

さらに、直交する二直線の傾きの積が -1 となることから、

(b – y)/(a – x) × 3 = -1

整理すると、
a + 3b = x + 3y … ②

直線 PP’ と直線 l は垂直に交わっていました。 そのため、 直線の傾きどおしの積が -1 となります。

これが、 ②を導いた理由です。直線 l の傾き 3 との積が -1 となっているので、分母を払うと②となります。

①と②を行列計算によって表してみます。そうすると、線形変換 f を表す行列が確認できます。

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赤で書いた行列が、 f を表す行列です。

表現した行列を書き換える

今、 tan θ = 3 です。これを三角関数についての関係式に当てはめて、次のように書き換えをします。

黄色の矢印のところが、この関係式です。

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この書き換えで辿り着いた最終的な行列の成分を見ると、直線 l と x 軸の正の向きとのなす角にだけ依存していることが分かります。

この cos2θ と sin2θ をそれぞれ tanθ を使った式へ書き換える方法について、証明をしておきます。

倍角の公式と三角比で学習した tanθ の相互関係の式を使います。

まず、cos2θ を書き換えます。

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1 + tan2θ を逆数にすると、cos2θ になることを利用しています。

あとは、分母と分子が同じときに 1 ということを使って、1 を敢えて複雑な tan2θ を使った式にしています。

この三番目の式を計算すると、最後の示したかった形になります。

同じような要領で、sin2θ についての書き換えも証明します。

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これで sin2θ についての書き換えも示すことができました。

二番目の式は、分母の cosθ を掛け算の計算で約分すると、一番目の式に一致します。

等しい式どおしをつないだのが等式ということを利用して書き換えました。

そうすると、また cos2θ を tan2θ を使って書き換えるチャンスが出てきます。

分子が sinθ で分母が cosθ というのが tanθ の定義なので、これも使います。

よって、2tanθ が分母に来て、求める形の式になります。

cos2θ と sin2θ の式の書き換えは、数学Iと数学IIで学習する内容をどちらも使っています。

学習が途切れた後に、新しく習う公式を使うところが気づきにくいところです。

三角関数に関連する式の書き換えの良い練習になる内容かと思います。

この証明した高校数学の三角関数の書き換えを、内容上の行列計算で、tanθ の値が 3 のときに使いました。

傾き 3 を文字にして、一般化します。

さらに一般化

鏡映変換 f を行列で表しました。

直線 l の傾きが 3 だったので、tan θ = 3 でした。

実は、直線の傾き 3 について行った上の議論は、一般の傾き m についても同様に成立します。

つまり、 3 を m に置き換えて、同様の議論をすることが可能です。

関連するブログ記事

線形変換の行列表示 というブログ記事で、線形変換を行列で表す表現について説明をしています。この方法は、線形代数学を学習するときに、基本的になります。

線形変換の行列表示において、線形空間の基底を考えることが重要になります。

※今回のブログ記事で行列で表した方法では、基底を特に意識していませんでした。

可逆な線形変換

2 行 2 列の行列 A の 1 行目と 2 行目が次のようになっていたとします。


p q
×
r s


このときに、行列式 |A| の値は成分をクロスに掛けると得られます。

|A| = ps – qr となります。

今回のブログ記事で説明した一本の直線について点を折り返すという鏡映変換で、点 P を折り返すと点 P’ になりました。

さらに、点 P’ を直線について、もう一度折り返すと、点 P に戻ります。

この幾何的な考察から、鏡映変換は可逆的な操作ということが分かります。

実は、線形変換 f が可逆かどうかは、f を表す行列 A の行列式から判断をすることができます。

サイズ 2 の行列についての行列式は、上の図に記している

|A| = ps - qr です。

● |A| ≠ 0 ならば f は可逆である
● |A| = 0 ならば f は可逆でない

線形変換 f が可逆であるときに、逆写像 f-1 が存在します。

そして、逆行列 A-1 が f-1 を表す行列になっています。

微分作用素というブログ記事では、微分するということが線形変換となる舞台を設定して、行列表示をしています。

合同変換については、群論の入門内容を使って、具体的な変換を解説しています。座標平面で横軸についての折り返しという鏡映変換が生成元の一つで、今回の記事内容と群論を合わせた内容になります。

また、End(V) という記事では、線形変換全体が環となっていることを定義に基づいて確認しています。

このような線形変換の行列表示ですが、行列論について、ブロック分割という記事も投稿しています。

これで、今回のブログ記事を終了します。

読んで頂き、ありがとうございました。