4乗のシグマ | Σ(kの4乗)という4乗の和を3乗や2乗の和を求めた手順で【5乗和も】

4乗のシグマ-表紙

Σ(kの4乗)という" 4乗のシグマ “を、Σ(kの2乗)やΣ(kの3乗)を求めた流れで計算します。この流れで、Σ(kの5乗)以降へとつながっていきます。

同じ手順の繰り返しを考える良い練習になり、計算の練習にもなるかと思います。

また、因数定理を使う良い例にもなり、Σ(kの4乗)は数学2Bの理解を深める良い場面かと思います。

【理解を深める内容】
■ 同じ手順の繰り返し
■ シグマの定義
■ 二項展開
■ 階差数列の発想
■ 因数定理
■ 展開と因数分解

まずは、4乗の和を、二項展開と階差数列のキャンセルの発想で書き換えるところから解説します。

Σk2=1/6n(n+1)(2n+1),
Σk3={1/2n(n+1)}2 =1/4n2(n+1)2

という2乗の和と3乗の和の公式も、途中で使います。

実は、既に知っている公式を求めたときの流れで、4乗のシグマの和が求まります。

4乗のシグマ :二項展開と移項

14 + 24 + … + n4 が Σk4 です。n 個の項の和ですが、その計算結果は一つの数なのです。

x = Σk4 と置いて議論を進めます。

この x を含んだ等式を二項展開から作ることを考えます。n 個の等式を作っておいて、それらを辺々足すことで得られます。

(k + 1)5 を二項展開すると、
k5+5k4+10k3+10k2+5k+1 と等しくなります。

この二項展開した等式で、k5 を移項すると、次のようになります。

(k + 1)5 – k5
= 5k4+10k3+10k2+5k+1 …(k)

自然数 k について、等式 (k) が得られました。k に 1 から n までの自然数を代入すると、n 個の等式ができていることになります。

これら n 個の等式を辺々足すことを考えます。

左辺は打ち消し発生

(1) + (2) + … + (n) の左辺は次のようになっています。

25 – 15
35 – 25

n5 – (n – 1)5
(n + 1)5– n5

これらをすべて足すと、階差数列のときの発想で、色のついている部分たちがキャンセルする(打ち消し合う)ことが分かります。

そのため、(1)+(2)…+(n) を計算したときの左辺は、
(n + 1)5 – 1 です。

今度は、(1)+(2)+…+(n) の右辺をシグマ記号を使って表します。

右辺はシグマで

5k4+10k3+10k2+5k+1 が (k) の右辺です。k に 1 から n までを代入して全て足し合わせます。

Σk=1n(5k4+10k3+10k2+5k+1) となるので、シグマ記号についての性質を使って、Σを分配し、定数倍は外にくくり出します。

5Σk4+10Σk3+10Σk2+5Σk+n となります。

n 個の定数の 1 を足したので、
Σk=1n1 = n に注意です。
シグマ記号についての基本的な公式は、リンク先の記事で解説をしています。

ここで、求めたい値である Σk4 を x と置いていたので、
(1)+(2)+…+(n) の右辺は、
5x+10Σk3+10Σk2+5Σk+n です。

n 個の等式を辺々足したので、左辺と右辺は等しくなっています。

そのため、左辺の (n + 1)5 – 1
右辺の 5x+10Σk3+10Σk2+5Σk+n が等号で結ばれます。

左辺を 5x にし、残りの項を移項して、計算を進めます。

4乗のシグマ :計算は大切

4乗のシグマ-途中式

この青で囲った等式の右辺を整理します。

-n – 1 = (n + 1) なので、(n + 1) でくくり出せます。

よって、5x に等しい右辺は、

(n+1){(n+1)4-5/2n2(n+1)-5/3n(2n+1)-5/2n-1}
… ★

となります。

この中括弧の中ですが、4乗を展開すると、数字の 1 が打ち消されるので、さらに n でくくり出せることが分かります。

中括弧の中だけを計算し、後で、5x に等しい ★ に代入します。

(n+1)4-5/2n2(n+1)-5/3n(2n+1)-5/2n-1 =
n4+4n3+6n2+4n-5/2n2(n+1)-5/3n(2n+1)-5/2n
= n{n3+4n2+4-5/2n(n+1)-5/3(2n+1)-5/2}

これが中括弧の値なので、★に代入します。

因数定理も注意

4乗のシグマ-途中式-part2

x = Σk4 の値は、図の赤色で囲っている部分です。この中括弧の中は、n についての 3 次の多項式です。

15n(n+1)=15n2+15n,
-10(2n+1)=-20n-10 なので、さらに中括弧の中だけを計算します。

すると、6n3 + 9n2 + n – 1 が、中括弧の部分だと分かります。

6n3 + 9n2 + n – 1 の n に -1/2 を代入すると、0 になります。

そのため、(n + 1/2) を因数にもつことが分かります。

n + 1/2 = 1/2 × (2n + 1) なので、
(2n+1) で 6n3 + 9n2 + n – 1 が割り切れることが分かります。

実際に多項式の割り算を計算すると、
6n3 + 9n2 + n – 1
= (2n+1)(3n2+3n-1)

これが、赤色で囲った部分の中括弧だったので、代入をすると、
1/30 × n(n+1)(2n+1)(3n2+3n-1)
が x = Σk4 の値ということになります。

これで、4乗のシグマの値が求まりました。

ここまでの要領で、Σk5 の値も求まります。ただ、この計算は、かなり複雑になるので、流れだけを述べることにします。

4乗のシグマ :Σ(kの5乗)

(k + 1)6 を二項展開し、k6 を移項します。

すると、(k + 1)6 – k6 が、
6k5+15k4+20k3+15k2+6k+1 と等しくなります。

この式を (k) とし、先ほどと同じく k に 1 から n までを代入してできる n 個の等式を足し合わせます。階差数列の要領で打ち消しの処理をし、右辺はシグマ記号を使って表します。

左辺は、(n + 1)6 – 1 です。

右辺は、
6Σk5+15Σk4+20Σk3+15Σk2+6Σk+n
となります。
※ 右辺で、1 を n 個足しているので、n が現れています。

この等式について、Σk5 を x と置いて計算を進めます。

Σk4 の値として、先ほど導いた4乗のシグマの式を当てはめます。
Σk3, Σk2, Σk も既に知っているシグマの公式を使います。

ここからが、複雑な計算になるのですが、整理すると、
x は
1/6n6+1/2n5+5/12n4-1/12n2 と等しくなります。

分母に現れている整数の最小公倍数は 12 なので、
1/12n2 でくくり出します。

1/12n2 × (2n4+6n3+5n2-1) が求める x の値となります。

2n6+6n5+5n4-n2 は、因数定理を使って因数分解をする良い練習になるかと思いますので、5乗のシグマの計算を取りあげた次第です。

1/6公式という数学2の定積分の記事を以前に投稿しました。数学2Bを合わせて、因数定理は大切な基本となるので、因数定理の練習に続きの計算を述べます。

2n4+6n3+5n2-1 を因数分解します。

因数定理の練習

2n4+6n3+5n2-1 の n に -1 を代入すると 0 になるので、因数定理から、
2n4+6n3+5n2-1 は (n+1)で割り切れることが分かります。
 
割り算をしてみると、
2n4+6n3+5n2-1
= (n+1)(2n3+4n2+n-1)

 
もう一度、因数定理の適用を試みます。
 
2n3+4n2+n-1 の n に -1 を代入すると 0 になるので、因数定理から、
2n3+4n2+n-1 は (n+1) で割り切れることが分かります。
 
割り算を計算すると、
2n3+4n2+n-1
= (n+1)(2n2+2n-1)

以上の因数分解の結果をまとめると、
1/12n2(n+1)2(2n2+2n-1) が、
x = Σk5 の値ということになります。

このように、Σk, Σk2, … , Σkn の値を利用して、
Σkn+1 が計算できるようになっています。

一般の Σkm という形については、ベルヌーイ数というものを定義して言い換えることができることも知られていますが、これ以上は高校の内容をこえてくるので、5乗までで止めます。

ここからは、3乗和や2乗和を求める内容を復習に述べることにします。上で述べた手順の通りになっていることが分かります。

4乗のシグマ :2乗や3乗のシグマ

Σk は、1+2+…+n なので、初項 1 で交差 1 の等差数列の和です。

Σk=1+2+…+n,
Σk=n+(n-1)+…+1

n から 1 に向かって足しても値は同じことから、二つの等式ができます。これらを辺々足すと Σk の値の 2 倍となります。

2Σk は、(n+1) を n 個足し合わせたものなので、2Σk = (n+1) × n

つまり、Σk = 1/2 × n(n+1)

この1乗のシグマを利用して、2乗のシグマを計算します。

Σ(kの2乗)の公式

(k+1)3 を二項展開(3乗の展開公式)で展開すると、
k3+3k2+3k+1 となります。

k3 を移項すると、
(k+1)3 – k3 = 3k2+3k+1

この等式の k に 1 から n までを代入してできる n 個の等式を辺々足し合わせます。左辺は階差数列の要領で打ち消しが起こり、
(n+1)3 – 1 = 3Σk2+3Σk+n

ここで、Σk2 = x と置くと、3x は、
3x = (n+1)3-3Σk-n-1 となります。

Σk = 1/2n(n+1) として右辺を計算します。ここが重要な計算になります。

(n+1)3-3Σk-n-1
= (n+1)3-3/2n(n+1)-(n+1) となります。

1/2(n+1) で右辺をくくり出すと、
1/2(n+1) と {2(n+1)2-3n-2} の積が右辺だと分かります。

中括弧の部分は、2n2 + n,
つまり、n(2n+1) なので、
3Σk2 = 3x = 1/2n(n+1)(2n+1)

よって、
Σk2=1/6n(n+1)(2n+1) が導けました。

Σk3 も同じ流れです。

Σ(kの3乗)の公式

(k+1)4-k4 は、
4k3+6k2+4k+1 となっています。

k に 1 から n まで代入してできる n 個の等式を辺々足すと、
(n+1)4-1 = 4Σk3+6Σk2+4Σk+n

※ 1 を n 個足し合わせたので、右辺に n が現れています。

Σk3 が左辺にくるように変形すると、
4Σk3 = (n+1)4-1-6Σk2-4Σk-n

Σk2 = 1/6n(n+1)(2n+1),
Σk = 1/2n(n+1) という公式を当てはめると、右辺は次のようになります。

(n+1){(n+1)3-n(2n+1)-2n-1}
= (n+1)(n3+n2)
= (n+1)×n2×(n+1)
= n2(n+1)2 が右辺の式です。

よって、4Σk3 = n2(n+1)2

つまり、Σk3 = 1/4 × n2(n+1)2

この右辺を指数法則を使って変形します。

(1/2)2 × {n(n+1)}2 は、{1/2n(n+1)}2

よって、Σk3 = {1/2n(n+1)}2

これで、3乗のシグマの値も求まりました。

n = 1 のときの値から順に、n が 2 のとき、n が 3 のときと順に大きくしていく問題が大学受験で出題されることがあります。

この帰納的な同じ手順の繰り返し問題として n 乗和についてのブログ記事を関連記事として投稿しています。

解と係数の関係から x + y, xy

の値を求め、xn+yn の値を最終的に求めるという内容です。

中学の頃に学習するような例題から始めて徐々にレベルを上げて、最後はn乗和までを求めています。

数列単元の記事では、階差数列などについての内容を投稿しています。

それでは、これで今回の記事を終了します。

読んで頂き、ありがとうございました。