特性方程式 なぜ同じ文字 | 隣接2項間漸化式の解き方【3項間漸化式も】

「 特性方程式 なぜ同じ文字 」と隣接二項間漸化式を学習したときに思うかもしれません。

どうして添え字が違うのに同じ文字で方程式を作るのかという隣接二項間漸化式の特性方程式に関連する疑問を解消するための解説をしています。

中学数学で馴染みのある文章問題で未知数を文字で表して方程式を解けば、未知数が求まるということとは発想が違います。この部分を、しっかりと解説します。

私が、はじめて隣接二項間漸化式を知ったときに、an+1 と an をどちらも x とおいて特性方手式を作るのを見て混乱したものです。

先入観で、中学のときに、未知数を文字で置いて、方程式を作って解いたときの記憶と混乱したからです。

第(n + 1)項の値と、第 n 項の値が異なるときにも、第(n + 1)項の値と第 n 項の値をどちらも x と表していると誤解をしたまま、学習を進めたことが理解できなかった原因です。

たとえば、第(n + 1)項の値が 12 で、第 n 項の値が 9 のときに、どちらの項も同じ文字 x と表すと、12 と 9 が同じ数となってしまいエラーを起こしています。

この状態で漸化式の学習を進めると、当然わからなくなります。初期設定がおかしい状態でプログラムを頑張って作っているような感じです。

この誤解を修正することができると、漸化式の学習が、かなり楽になるかと思います。

当時の私と同じ疑問を持たれる読者の方がいらっしゃいましたら、このブログ記事で、その疑問を解決して頂ければと思います。

それでは、隣接二項間漸化式の解法の根本部分を解説します。

記事の後半では、隣接三項間漸化式について、特性方程式を用いて、なぜ解けるのかということを示しています。

特性方程式 : なぜ同じ文字

どの自然数 n に対しても、
an+1 = 5an + 20 … ★
となっている実数列 {an} の一般項を求めたい。
ただし、初期値 a1 = 3 とします。


この漸化式から、数列の一般項を求めるときに、
x = 5x + 20 … ◆ という特性方程式を使います。

この方程式の x は、数列 {an} の第(n + 1)項の値や第 n 項の値が何であるかということとは独立に存在するものです。

少し難しい言い方を書きました。

独立命題といって、議論している命題の真偽に関わらず、既に成立している真である命題を独立命題とでも思って頂くと良いかと思います。

漸化式 ★ から、数列 {an} の一般項が求められようが、求められまいが、そのこととは無関係に既に方程式 ◆ と、その解が存在しています。

漸化式の解き方まで数学の理論体系を構築するよりも以前の段階で、中学一年の数学で方程式 ◆ の内容は既知となっています。

もっというと、次の等式は、中学一年の正負の数の計算の段階で成立することが分かっています。


-5 = 5 × (-5) + 20 … (1)


方程式 ◆ の解が、x = -5 ということです。

この等式 (1) は、漸化式 ★から数列の一般項が求められるかどうかに関わらずに成立している真である命題ということになります。

数学の推論規則で、既に成立している独立命題を適用することができます。

実数についての等式

an+1 = 5an + 20 … ★
-5 = 5 × (-5) + 20 … (1)


★と (1) は、どちらも実数についての等式です。よって、連立方程式の加減法の計算をすることができます。

★ - (1) より、an+1 + 5 = 5(an + 5)

ただし、n = 1, 2, 3, …

これは、第 1 項が a1 + 5, 第 2 項が a2 + 5, … , 第 n 項が an + 5 となっている数列 {an + 5} についての漸化式です。

等比型漸化式といって、どんな自然数 k についても、第 k 項の値に 5 を掛けると第(k + 1)項の値になるという関係を表しています。

このことから、数列 {an + 5} は、初項 a1 + 5 = 3 + 5 = 8, 公比 5 の等比数列です。はじめの設定で、初期値 a1 = 3 でした。

よって、等比数列の一般項を求める公式より、
an + 5 = 8 × 5n-1

5 を右辺に移項すると、数列 {an} の一般項の値となります。

つまり、an = 8 × 5n-1 - 5

これで、数列 {an} の一般項が求まりました。

ここから、数学の論理も使い、漸化式を解くということについて解説します。

特性方程式 :既知の漸化式へ帰着させるために

はじめに与えられた漸化式を見ただけでは、すぐに数列 {an} の一般項を表せる状態ではありませんでした。

そこで、各自然数 n について成立している漸化式が、実数についての等式ということで、扱いやすい式へと同値変形をしました。

このときの変形に利用したのが、
「-5 = 5 × (-5) + 20」という等式でした。

そして、はじめの漸化式から辺々引いたわけです。

漸化式 ★ - (1) の内容

★ - (1) をすることで、+20 の部分が消えて、等比型漸化式となって、すぐに一般項が分かりました。

この工夫は、中学一年のときに学習した点の平行移動です。


数列という関数のグラフは離散的。

等差数列は一次関数より

実数列は、各自然数 n に対して、実数値 an を対応させる関数(写像)のことです。

この観点から、an と an + 5, an+1 と an+1 + 5 のことを観察してみます。

(n, an) +5 (n, an + 5) というように、
xy-座標平面上で、点 (n, an) を縦軸方向に 5 だけ平行移動すると、点 (n, an + 5) となります。

点(n + 1, an+1) についても同様に、縦軸方向に 5 だけ平行移動すると、点 (n + 1, an+1 + 5) となります。

この平行移動をするメリットは、+ 20 が消えて等比型の漸化式になって、すぐに等比数列の一般項を求める公式を適用できるようになることです。

この隣接二項間漸化式というタイプの漸化式は、中学一年生の数学で学習した内容を適用することで、既に学習した解けるタイプの漸化式に帰着させることで解けます。

今、図形的なアプローチを述べましたが、図形を必ず考えるというわけではないです。計算が得意な方なら、次のようなことを思いつくかもしれません。

an+1 = 5an + 20 の式から、+ 20 の部分を消せれば等比型の漸化式です。

何とかしたいので、
◇ = 5 × ◇ + 20 という形の式があれば、辺々引ける!

「あっこれは、方程式じゃないか」ということで、
x = 5x + 20 を解けば、利用できる等式が作れるというわけです。

この方程式を、隣接二項間漸化式の特性方程式といいます。

上で述べたように、数列のそれぞれの項の値や一般項が、どのようになっているかに関わりなく議論して良い方程式です。

方程式を別に作っておいて、それを解くということができます。

そのため、-5 = 5 × (-5) + 20 という等式が得られたわけです。

特性方程式 :隣接2項間漸化式

ある程度の計算力が備わってくると、具体的な計算から、それらの手順を一般化することができるときもあります。

先ほどの漸化式の 5 を定数 p, 20 を定数 q として、次のようにまとめておきます。


実数 p, q を定数とする。
各自然数 n に対して、
 an+1 = pan + q … ☆
となっている数列 {an} の一般項を求めることができる。
ただし、初期値を a1 = a とする。
 
利用する特性方程式は、
 x = px + q
で、その解 x = t を利用した
 t = pt + q
という等式と☆を辺々引く。
 
すると、等比型漸化式が得られ、一般項が求められる。


隣接二項間漸化式から数列の一般項を求める手順になります。

注意点

今回扱ったのは、隣接二項間の漸化式です。ただ、漸化式から一般項を求めるときの特性方程式は、上で述べたものになるとは限りません。 

隣接三項間漸化式だと、特性方程式は二次方程式になります。

ここから、隣接三項間漸化式について、その解法で、どうして解けるのかということの仕組みを解説します。

特性方程式 :隣接三項間漸化式

s, t, p, q を定数とします。
a1 = s, a2 = t とし、各自然数 n について
an+2 = pan+1 + qan で定められている数列 {an} の一般項の求め方を扱います。


項が三つ出てくるので、隣接三項間漸化式です。s, t, p, q が具体的な数字になっているものを想定した解き方になります。

特性方程式は、x2 = px + q
つまり、x2 - px - q = 0 です。

機械的に an+2 の部分を x2 に、an+1 の部分を x に変えた二次方程式をつくります。

先ほどの隣接二項間漸化式のときと同じ発想で、数列とは別に二次方程式の理論があるということなので、利用します。

二次方程式の解を α と β とすると、
解と係数の関係から、
α + β = p, αβ = -q
(-αβ = q)
となります。

※問題を解くときには、解の公式(もしくは因数分解)で、二次方程式の解を計算して求めます。

漸化式に使われている p と q を α と β を用いて書き換えると、
an+2 = (α + β)an+1 - αβan

つまり、
an+2 = αan+1 + βan+1 - αβan です。

ここで、αan+1 を左辺へ移項すると、
an+2 - αan+1 = β(an+1 - αan) … (1)

βan+1 を左辺へ移項すると、
an+2 - βan+1 = α(an+1 - βan) … (2)

ここで、次の可能性が考えられます。

起こり得る可能性を場合分け

[I] α または β が 1
[II] α と β がどちらも 1 でない


少なくともどちらか一方は 1 か、どちらも 1 でないかと論理的に分岐を考えることができます。

[II] の場合には、さらに α = β (つまり特性方程式の解が重解)か、α ≠ β (つまり特性方程式が異なる 2 解をもつ)かに分けて考えます。

まずは、[I] のときに、数列 {an} の一般項が求められることを示します。

α = 1 のときは、先ほど変形した (1) の漸化式に α = 1 を代入すると、
an+2 - an+1 = β(an+1 - an) … (1)

各自然数 n について、bn = an+1 - an とおくと
bn+1 = βbn … (1)

これは、数列 {an} の階差数列 {bn} についての等比型漸化式です。

初項が b1 = a2 - a1 = t - s で、公比が β です。

階差数列の一般項が n の式で表されたことになるので、シグマ計算をすることで、もとの数列 {an} の一般項が n の式で表されたということになります。

今、α = 1 のときを考えましたが、β = 1 のときには、(2) の方の漸化式を使って同様の考察をします。

やはり、階差数列が n の式で表されたことになり、もとの数列 {an} の一般項が求まるということになります。

今度は、[II] の場合を考えます。特性方程式が「重解なし」にせよ、「重解あり」にせよ、変形した漸化式 (1) と (2) の両方を使って次のように考えます。

an+2 - αan+1 = β(an+1 - αan) … (1)
an+2 - βan+1 = α(an+1 - βan) … (2)

(1) より、数列 {an+1 - αan} は公比 β 、初項 a2 - αa1 = t - αs の等比数列です。

(2) より、数列 {an+1 - βan} は公比 α 、初項 a2 - βa1 = t - βs の等比数列です。

したがって、
an+2 - αan+1 = βn-1(t - αs) … (1′)
an+2 - βan+1 = αn-1(t - βs) … (2′)

(2′) - (1′) より
(α - β)an+1 =
αn-1(t - βs) - βn-1(t - αs)

ここから、α ≠ β (特性方程式が重解なし)のときと、α = β (特性方程式が重解あり)のときに分けて考えます。

α ≠ β のときは、両辺に (α - β) の逆数を掛ければ完了です。α = β のときは、これだと分母が 0 になってしまうので、(1) の β に α を代入して議論を進めます。

これで、理論上は隣接三項間漸化式の一般項が求められるということが示せました。

実際に隣接三項間漸化式を解くことを次の解と係数の関係というブログ記事の最後の問題で扱っています。

今、示した内容は理論上は一般項が求められるということです。実際に計算をすると、ルートが処理できないといったことが起きるときがあります。

そのようなときは、問題の内容から他のアプローチをして何とかするという難しい問題になります。

他にも、逆数をとっても、うまくいかないタイプの分数の形の漸化式などもあります。論理的に必ず漸化式が解けるときに、そのときに使う特性方程式は、さまざまです。

※一般項を求める一般的な方法が存在するのかどうかが定かではない漸化式もあります。

一次分数型の漸化式、そして連立漸化式という記事を投稿しています。

隣接三項間漸化式のように、特殊な特性方程式を使うタイプの漸化式について、解説をしています。

隣接三項間漸化式を使う例として、
フィボナッチ数列という記事も投稿しています。

具体的な数列で、理論を使う実践をすると、より理解が深まるかと思います。

食塩水の濃度という中学で学習する等しい数量をイコールで結ぶ内容からも、漸化式(関係式)をつくる内容を解説しています。

これで、今回のタロウ岩井のブログ記事を終了します。

読んで頂き、ありがとうございました。

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