特殊線形群 SL(n,F) | q元体F上の元を成分とするときの位数を求める

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q個の元から成るq元体F上のn次の" 特殊線形群 SL(n, F) “は、n次の正方行列で行列式の値が1となっています。

F上のn次の一般線形群 GL(n, F) の位数から、準同型定理を使って、特殊線形群の位数を導きます。

GL(n, F) の位数を求めるときに、行列式の性質を使って、位数が等しい数えやすい有限集合を考えます。

有限集合の位数が等しいということは、全単射が存在するということです。

この記事では、F の乗法単位元 1 を成分とする n 次の単位行列を E と表しています。

特殊線形群 :GL(n,F)の位数との関係

F を位数が q である有限体とします。

|F| = q と、有限集合の位数は |・| という記号で表すことにします。

M(n, F) という記号で、F の元を成分とする n 次正方行列全体を表すことにします。

{A∈M(n, F) | det A ≠ 0} を、
GL(n, F) という記号で表し、F 上の一般線形群といいます。

GL(n, F) の行列で、行列式が 1 となっているものを全て集めると特殊線形群です。

{A∈GL(n, F) | det A = 1} が、
SL(n, F) という特殊線形群です。

※ 一般線形群という記事で、正規部分群となっていることを示しています。

ここで、GL(n, F), SL(n, F) は、有限体 F の元を成分としているので、位数は有限です。

|GL(n, F)| と |SL(n, F)| の関係を位数についての等式で表すことを考えます。

準同型で位数の関係式

F× = F-{0} という F から加法的単位元 0 を除いたものは、F の乗法についての乗法群となります。

A∈GL(n, F) に対して、
f(A) = det A∈F× と定義します。

f : GL(n, F) → F× は、行列式の性質から、群準同型写像となっています。

実際、A, B∈GL(n, F) に対して、
f(AB) = det (AB)
= (det A)(det B) = f(A)f(B) です。

このため、f は群としての準同型写像です。

そのため、準同型定理を使うことができます。

F× の単位元は 1 なので、
ker f は、
{A∈GL(n, F) | f(A) = 1} となります。

これは、SL(n, F) そのものなので、
ker f = SL(n, F) です。

準同型定理から、
GL(n, F)/ker f ≅ F× です。
第二同型定理という記事で、群の準同型定理を証明しています。

群同型写像は全単射なので、位数が等しいということになります。

つまり、
|GL(n, F)/ker f| = |F×| = q-1

ker f = SL(n, F) だったので、
|GL(n, F)/SL(n, F)| = q-1 です。

よって、
|GL(n, F)| = |SL(n, F)|×(q-1)

すなわち、
|SL(n, F)| = |GL(n, F)|÷(q-1) です。

これで、F 上の一般線形群の位数と F 上の特殊線形群の位数を結ぶ等式が得られました。

そのため、一般線形群の位数が分かると、この等式から特殊線形群の位数も分かります。

特殊線形群 :行列式の性質を利用

GL(n, F)∋X = (xij) は det X が 0 でない n 次の正方行列です。

この X の第 i 行の成分の値を用いて、
xi = (xi1, … , xin) という F の元を成分とする行ベクトルを定理します。
(i = 1, … , n です。)

det X ≠ 0 より、行列式の性質から、
x1, … , xn は F 上 1次独立となっています。

このことから、F の元を成分とする 1行n列の行ベクトルを n 個とって、それら n 個が 1次独立となっている n 個の組全体を考えます。

そのような n 個の組全体を V と置きます。

つまり、
(v1, … , vn)∈V は、
各 vi が F の元を成分とする 1行n列の行ベクトルで、
v1, … , vn が F 上 1次独立ということです。

ここまでの内容から、GL(n, F) から V への写像 φ を定義することができます。

位数が等しいことを示す写像

GL(n, F)∋X = (xij) に対して、
xi = (xi1, … , xin) と置き、
φ(X) = (x1, … , xn) と定義します。

先ほど述べた行列式の性質から、
x1, … , xn が 1次独立なので、
(x1, … , xn)∈V です。

GL(n, F)∋X = (xij), Y = (yij) が、
X ≠ Y のとき、
ある n 以下の自然数 s, t が存在し、
(s, t) 成分の値が異なります。

xst ≠ yst なので、
xs ≠ ys となるため、
(x1, … , xn) ≠ (y1, … , yn) となります。

これで、φ が単射であることが分かりました。

GL(n, F) の行列が与えられると、第 1 行目から第 n 行目までのそれぞれを行ベクトルにすれば、それらの行ベクトルが F 上 1 次独立でした。

そのため、φ は全射にもなっています。

これで、GL(n, F) から V への全単射 φ が定義できたので、位数が等しいということになります。

つまり、
|GL(n, F)| = |V| です。

位数が等しいことが分かったので、V の位数の方を数えることにします。

重複順列で樹形図の発想

(v1, … , vn) という n 個の F の元を成分とする n 次の行ベクトルの組で、v1, … , vn が F 上 1次独立となっているもの全体が V でした。

v1 = (x11, … , x1n) の n 個の成分に F の元を配置する方法が何通りあるのかを数えます。

各 (1, j) 成分に |F| = q 通りの元を配置すると、v1 の作り方として、qn 通りの配置の仕方があります。

しかし、V の元なので、1次独立にならないといけないため、v1 は零ベクトルではありません。

そのため、(0, … , 0) という 1 通りの配置の仕方を除きます。

よって、v1 の作り方は、
(qn-1) 通りです。

次に、
v2 = (x21, … , x2n) の各成分への F の元の配置の仕方を数えます。

Fv1 という v1 で生成される 1次元の行ベクトルからなる空間に、v2 が含まれてしまうと、1次独立であることに反してしまいます。

また、f1, … , fq を q元体 F の q 個の元とすると、
これらがスカラー倍となるため、
Fv1 = {f1v1, … , fnv1} となっています。

よって、v2 への F の元の配置 qn 通りから、
v1 = (x11, … , x1n) を定める F の 1通りの配置の仕方に対して、
(f1x11, … , f1x1n),
・・・
(fqx11, … , fqx1n) という q 通りの配置の仕方を除かなければなりません。

したがって、
v1 と v2 の各成分への F の元の配置の仕方は、
(qn-1)(qn-q) 通りとなります。

次に、v1, v2, v3 は 1次独立になるということを考えます。

v3 に配置する qn から、
v1 と v2 への F の元を配置した 1 通りに対する
Fv1⊕Fv2 のスカラー倍の部分の可能性である q2 通りを除かなければなりません。

よって、v3 への F の元の配置の仕方は、
(qn-q2) 通りで、
v1, v2, v3 への F の元の配置の仕方は、
(qn-1)(qn-q)(qn-q2) 通りとなります。

正確に述べると帰納法ですが、この考え方を繰り返すと、
v1, … , vn への F の元の配置の仕方は、
(qn-1)・・・(qn-qn-1) 通りとなります。

これで、|V| は、
(qn-1)・・・(qn-qn-1) だと分かりました。

高校数学の場合の数でトレーニングした樹形図を用いた論理的な内容から、V の位数を数え上げることができました。

ここまでの内容をまとめると、特殊線形群の位数が求まります。

特殊線形群 :さらに射影特殊線形群の位数へも

|GL(n, F)| = |V| でした。

全単射の存在から、位数が等しいということで、V の位数を数えたわけです。

|V| は、
(qn-1)・・・(qn-qn-1) だったので、
|GL(n, F)| =
(qn-1)・・・(qn-qn-1)
です。

GL(n, F) と SL(n, F) の位数を結びつけていたのが準同型定理から得られた等式です。

|SL(n, F)| = |GL(n, F)|÷(q-1) となっていました。

そのため、
(qn-1)・・・(qn-qn-1) を
(q-1) で割った商が求める位数です。

ここで、約分をします。

(qn-qn-1)/(q-1)
= qn-1(q-1)/(q-1)
= qn-1 となります。

よって、
|SL(n, F)| =
(qn-1)・・・(qn-qn-2)qn-1
となります。

これで、目指していた特殊線形群の位数が求まりました。

ここからは、さらに射影特殊線形群の位数を求めます。

中心の位数を考える

中心 Z(GL(n, F)) は、
{aE | a∈F-{0}} である。

ブログ一般線形群より

|F×| = |F-{0}| = q-1 なので、射影線形群の定義から、その位数が求まります。

PGL(n, F) = GL(n, F)/Z(GL(n, F)) という剰余群が、射影線形群です。

そのため、
|PGL(n, F)| =
|GL(n, F)|÷(q-1)
です。

射影特殊線形群 PSL(n, F) の定義は、
SL(n, F)/Z(SL(n, F)) です。

Z(SL(n, F) は、
SL(n, F) ∩ Z(GL(n, F)) ということを、リンク先の一般線形群という記事で証明しています。

そのため、先ほど求めた |SL(n, F)| を、
|SL(n, F) ∩ Z(GL(n, F))| で割った商が射影特殊線形群の位数となります。

有限体の乗法群 F× は 1元生成の巡回群になっています。

x を生成元とすると、
F× = <x> は位数 q-1 の巡回群です。
※ x の位数は q-1 です。

このことから、Z(GL(n, F)) は、
{xE, x2E, … , xq-1E} となっています。

ここで、d = gcd(n, q-1) と置きます。
※ gcd(n, q-1) は、n と q-1 の最大公約数を表す記号です。

d は q-1, n の正の約数なので、
t = (q-1)÷d,
k = n÷d … ★と置きます。

xtE は対角成分が全て x の対角行列です。

そのため、行列式の定義から、
det (xtE) = xtn∈F となります。

tn = {(q-1)/d}×kd
= k(q-1) なので、
tn は (q-1) の倍数です。

そのため、
det (xtE) = xtn = xk(q-1) = 1∈F

特殊線形群の定義から、
xtE∈SL(n, F) です。

ゆえに、
xtE∈SL(n, F) ∩ Z(G(n, F)) となっています。

そのため、<xtE> という巡回群は、
SL(n, F) ∩ Z(G(n, F)) に含まれています。

一元生成であることを示す

ここから、
SL(n, F) ∩ Z(G(n, F))
= <xtE> となっていることを示します。

M∈SL(n, F) ∩ Z(G(n, F)) を任意に取ります。

M∈Z(G(n, F)) なので、
M = xβE (0 ≦ β < q-1) と表すことができます。

1 = det M = (xβ)n より、
βn は x の位数である q-1 の倍数です。

そのため、ある整数 c を用いて、
βn = c(q-1) となります。

★より、
n = kd, q-1 = td でした。

そのため、
βkd = ctd となり、
βk = ct です。

また、d が n と q-1 の最大公約数だったので、k と t は互いに素です。つまり、k と t の最大公約数が 1 です。

t は左辺の βk の約数で、k と t の最大公約数が 1 ということから、t は β の約数ということになります。

つまり、β が t の倍数なので、
M = xβE ∈ <xtE> です。

これで、
SL(n, F) ∩ Z(G(n, F))
= <xtE> が示せました。

以上より、
|PSL(n, F)|
= |SL(n, F)|÷|<xtE>|
= |SL(n, F)|÷gcd(n, q-1) です。

すなわち、射影特殊線形群の位数は、
特殊線形群の位数を n と q-1 の最大公約数で割った商ということになります。

射影特殊線形群-有限体上での位数

これで、今回の記事を終了します。

読んで頂き、ありがとうございました。