正弦定理 | 証明と例題を用いての定理の使い方【高1の三角比】

" 正弦定理 “の証明を記事の前半で解説し、後半で例題を用いて定理の使い方を説明しています。

定理の証明では、中学の数学で学習する円周角についての内容を使います。

三角形ABC の外接円の半径が R のとき、
a/sin A = 2R, b/sin B = 2R,
c/sin C = 2R というのが正弦定理です。

三角形の一つの内角の大きさは、0°から180°の間です。そのため、着目する角の大きさが 90°のとき、90°未満の鋭角のとき、90°より大きい鈍角のときに場合分けて証明をします。

定理を証明してから、例題を使って、具体的な数字で定理の使い方について解説をします。

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正弦定理 :証明は円周角が決め手

三角形ABC について、頂点 A に向かい合う辺 BC の長さを a とします。

また、頂点 B に向かい合う辺 CA の長さを b, 頂点 C に向かい合う辺 AB の長さを c とします。

角 A に着目して、正弦定理を証明します。


【命題1】

三角形ABC の外接円の半径を R とし、外接円の中心を点 O とする。

角 A の大きさが 90°のとき、
a/sin A = 2R である。


<証明>

角 A は、直径 BC についての円周角となっています。

そのため、2R = BC = a です。

よって、
sin A = sin 90° = 1 より、
a/sin A = a = 2R 【証明完了】

この【命題1】から、他の比率は自動的に導かれます。

つまり、三角形BCA について、
B = 90°のときに【命題1】を適用すると、
b/sin B = 2R です。

三角形CAB について、
C = 90°のときも同様に、
c/sin C = 2R です。

このように、正弦定理は一つの角に着目して命題を証明すると、他の角に着目したときに、証明した命題を使うことで、同様にして結果が得られます。

では、次に A ≠ 90°の場合についての命題を証明します。

三角形の内角の大きさは 0°より大きく、180°より小さいことから、
0° < A < 90°の場合、
または 90° < A < 180° の場合が残っています。

角 A に着目するときに、弧 BC の状況で場合分けをしています。

先ほどは、弧 BC が外接円の円周の半分の長さになっているという特別な場合で証明をしました。

一般に弧 BC というと、長い方の弧 BC と短い方の弧 BC が現れます。

長い方の弧のことを優弧といい、短い方の弧のことを劣弧といいます。

優弧と劣弧で場合分け

0° < A < 90°の場合、つまり角 A が鋭角のときに次の【命題2】が成立していると仮定すると、角 A が鈍角の場合も次のようにして、自動的に成立します。


【命題2】

三角形ABC の外接円の半径を R とし、外接円の中心を点 O とする。

0° < A < 90° のとき、
a/sin A = 2R である。


90° < A < 180° の場合は、角 A は優弧 BC に対する円周角となっています。

そのため、優弧 BC 上に点 D を取ると、角 D は鋭角になります。

そのため、三角形DCB について鋭角のときの【命題2】が使えます。

a/sin D = 2R です。

また、円に内接する四角形の向かい合う角の和が 180° です。

つまり、D = 180° - A です。

そして、三角比の定義から、
sin D = sin (180°-A) = sin A です。

そのため、a/sin A = 2R となります。

したがって、0° < A < 90° のときに正弦定理が成立しているということを示せば、角 A が鈍角の場合にも自動的に成立します。

では、0° < A < 90°、つまり角 A が劣弧 BC に対する円周角である場合について証明をします。

<命題2の証明>

半径 BO の延長と外接円の交点を D と置くと、BD は外接円の直径となります。

劣弧 BC に対する円周角は等しいので、
A = D です。

そのため、sin A = sin D …(1)

三角形DBC は角 C が 90°の直角三角形なので、
角 D に着目すると、
三角比の定義から、
BC÷BD = sin D です。

両辺に BD を掛けると、
BC = BD × sin D です。

BC = a, BD = 2R だから、
a = 2R × sin D です。

両辺に 1/sin D を掛けると、
a/sin D = 2R となります。

(1) より、sin D = sin A だから、
a/sin A = 2R 【証明完了】

これで、角 A が鋭角のときの証明が完了しました。

先ほど述べたことから、自動的に次の【命題3】も成立しています。


【命題3】

三角形ABC の外接円の半径を R とし、外接円の中心を点 O とする。

90° < A < 180° のとき、
a/sin A = 2R である。


角 B や角 C が鋭角のときには、
それぞれ三角形BCA, 三角形CAB に【命題2】を適用すると、
b/sin B = 2R, c/sin C = 2R が得られます。

角 B や角 C が鈍角のときにも、同様に【命題3】から求める結果が得られます。

これらの内容をすべて一つにまとめたものが正弦定理です。

まとめると正弦定理

【正弦定理】

三角形ABC の外接円の半径を R とする。

このとき、
a/sin A = b/sin B = c/sin C = 2R


この正弦定理から、三辺の長さについての連比が得られます。

正弦定理より、
a = 2Rsin A, b = 2Rsin B,
c = 2Rsin C です。

そのため、
a : b : c =
2Rsin A : 2Rsin B : 2Rsin C

2R > 0 より、2R で割って比を簡単にできます。

すなわち、
a : b : c =
sin A : sin B : sin C です。

連比については、note記事でも基礎的な内容を解説しています。

それでは、ここから例題を使って、具体的に正弦定理の使い方を説明します。

正弦定理 :例題で定理を使う練習

ここまで、中学の数学で学習する円周角についての内容を利用して、正弦定理を導きました。

中学で学習する三平方の定理は、三角比の単元で余弦定理へと拡張されます。

正弦定理と余弦定理は、お互いが相方になっていると思って、どちらも押さえておくと良いかと思います。

この記事では、どちらの定理も使って、練習できる問題を取り挙げることにします。

角 A に着目すると、対辺 BC の長さ a と合わせて、
a/sin A を考えます。

この値は、外接円の直径の長さである 2R です。

また、角 A に着目して余弦定理の方を考えるときもあります。

a2 = b2+c2-2bc×cos A です。

次の練習問題では、三辺の長さから余弦定理でコサインの値を求め、そのコサインの値から三角比の相互関係を使ってサインの値を求めます。

例題で定理を使う練習

【例題】

三角形ABC について、
AB = 6, BC = 14, CA = 10 とします。

また、三角形ABC の外接円の半径を R とします。

(1) cos A を求めてください。
(2) sin A を求めてください。
(3) R の値を求めてください。


(1) で cos A の値を求め、それを利用して (2) を導きます。
(2) から (3) の正弦定理で外接円の半径を求めます。

では、(1) の値を余弦定理で求めます。

角 A に着目しているので、対辺は BC です。

この BC の長さが公式で使われる a のことです。

BC = a = 14 と公式を使うための数値を正しく認識してから余弦定理を使います。

142 = 62+102-2・6・10・cos A となります。

196 = 36+100-120・cos A
つまり、
120・cos A = -60 です。

両辺を 120 で割ると、
cos A = -1/2 です。

さらに、(2) の sin A を求めます。

sin2A+cos2A = 1 を利用して求めることもできます。

その一方で、有名角については、角の大きさがコサインの値から分かるときもあります。

三角形の内角の大きさから、
0° < A < 180° なので、
cos A = -1/2 より、
A = 120° と分かります。

よって、
sin A = sin 120°
= 31/2/2 です。

どの辺の長さがaか

sin A の値が求まったので、正弦定理を使いたいところです。

ここで、角 A に着目しているので、対辺 BC の長さが公式の a ということに注意です。

AB = 6, BC = 14, CA = 10 でしたが、角 A の対辺の長さは 14 です。

正弦定理の a の値として、14 を使います。

2R = 14/sin 120° となります。

両辺を 2 で割ると、
R = 7÷sin 120° です。

ここで、連分数の計算が得意な方は良いのですが、ややこしいときは、分子を分母で割ると考え、算数で学習したように÷を逆数を掛ける掛け算に直すと計算し易いかと思います。

答案として提出する最終的な答えとして、有理化をして分母にルートがない状態にするのにも注意です。

これで、(3) の外接円の半径 R の値も求まりました。

正弦定理と合わせて、着実な計算をすることが大切になります。

その一方で、外接円についての図形的な内容も、平面図形の基礎として重要になります。

さらに、中学で学習した扇形ですが、弧の長さからラジアンという単位で角の大きさが定義されます。

弧度法という記事で、この数学IIの内容を解説しています。

三角比から三角関数へと発展したときに、角の大きさがラジアンで表されるので、その基礎を押さえるための内容が、弧度法についての内容となります。

次の記事はベクトルについての内容です。

内心-外心という記事では、外接円の中心を位置ベクトルで表すことについて解説をしています。

それでは、これで今回の記事を終了します。

読んで頂き、ありがとうございました。

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