返り点 | 一二点などの書き下し文を参考に文の構造を考える【数式へも言及】
" 返り点 “は漢文を学習するときに、白文を書き下し文にするときに出てきます。
レ点や一二点や上下点などが使われます。
言語の構造を客観的に気軽に眺めつつ、漢文や数式の学習に役立つような内容を述べています。
1つの文の中に入り込む返り点が作る構造を把握できるように解説します。
この記事の後半で、言語の構造に関連して、数学の数式の入出力についての内容も述べています。
普段は数学についての記事を投稿していますが、今回は広く考えて漢文と計算や数式で、似たような部分を取り挙げています。
言語の構造と合わせて数学の論理という学習もあるかと思いますので、少し数学も取り挙げます。
返り点 : 一二点の読む順番
白文を書き下し文にすると、その内容は古文となります。
そのため、漢文の内容を理解するためには、古文についての理解や知識も必要になります。
そこまで述べると長く複雑になるので、あくまで白文を書き下し文にするという操作について焦点を当てて述べるように努めます。
一二点の前に、より単純なレ点について準備運動に述べておきます。
①レ② というレ点を読むときの順番です。
レ点が付いている文字は、後から返して読みます。
どこから返るかというと、直後の字を読んだ後で返ります。
ちょっとした例文で見てみます。
【例文】
知レレバ己ヲ
知己を書き下し文に直すと、
「己を知れば」ということになります。
送り仮名が絡んでいますが、レ点についての読み方のルールの通りに、直後の字である「己」を先に読んだ後に、返って読み飛ばしていた「知」を読んでいます。
レ点については、直後の字からすぐに返るので、文の中で使われても、これだけだとシンプルです。
しかし、一二点になると、2つ以上の字から返ることになるので、文の構造を把握するのが難しくなります。
2つ以上の字から返る
①②③非二ザル其ノ有一ニ
①から順に②、そして③へと字を読みます。
ここまでは、返り点が無いので、直進です。
次に、非二と返り点が登場しました。
先を見てみると、有一があります。
そこで、返り点の一二点の構造を認識することになります。
一二点は、二が付いている字を一旦は読み飛ばして、一がついている字まで読んだ後に、二が付いている字へと返ります。
このルールに基づいて読んでみます。
非二ザル其ノ有一ニ は、
「其の有に非ざる」と読みます。
レ点と比べると2つ以上の字から返るので、複雑になっています。
読む字の順番をまとめておきます。
「①②③非二ザル其ノ有一ニ」は、
「①②③⑥二④⑤一」という順になります。
6個の文字について、一二点が文の中で1つの環境を形成しています。
真っ直ぐに文を読めているときは楽ですが、一二点の環境が出てくると、返って読むという特別な読み方をすることになります。
数学の計算でも、カッコの固まりが出てくると、計算が複雑になるように、漢文で書き下し文にするときに一二点で複雑化が起こっています。
1+(2+3)×7
= 1+(5×7)
= 1+35 = 36 というように、特別な環境が内部に入り込んでくると複雑化します。
より複雑な返り点について見てみます。
返り点 :上下点など
まずは、一二点にさらに三が出てくるものを見てみます。
その後で上下点について説明します。
一二点を帰納的に一二三点へとしたものです。
読むルールは、まず三が付いている字を飛ばし二がついている字の直前まで読みます。
それから、二がついている字を飛ばして一が付いている字まで読みます。
一がついている字を読むと、二が付いている字へと返って二の付いている字を読み、その後に三のついている字へと返り、三の付いている字を読むということになります。
一二点の環境を、帰納的に複雑化した一二三点です。
※ 論理的に n 点まで定義することもできますが、大変なので一二三点で止めておきます。
【一二三点の練習】
①②⑨三③④⑤⑧二⑥⑦一
返り点の無い①から②へ真っ直ぐに読みます。
三が付いている⑧の部分は一旦は読み飛ばします。
そのため、次に読むのは③の字ということになります。
まだ返り点が無いので④を読みます。
ここで、二が付いている字なので読み飛ばし、⑥の字を読みます。
そして、⑦を読み、一二三点のラストの一が付いている字を読んで、二がついている字へと返ります。
一から返って読む次の字は二が付いている字である⑧です。
⑧を読んでから、三がついている字⑨へと返り、⑨を読みます。
このように、一二点の構造を帰納的に複雑化した読み方が存在します。
他にも文を複雑化することを考えることができます。
それは、一二点の環境の中に、さらに一二点の構造を形成するということです。
ただ、読みやすくするために、返り点を付けているので、一二点の構造の中に一二点を付けると混乱してしまいます。
そこで、数学でもよく使う文字の置き換えの発想です。
一二点の中に一二点があるという構造を扱うときは、上下点という構造の中に一二点の構造を形成すると考えます。
一を上に、二を下に置き換えることで、一二点の中に一二点があるという文の構造を考えてみます。
下を一旦は読み飛ばし、上を読んでから下に返るという順になります。
ただ、記号を置き換えただけなので、一二点と同じ読む順になります。
ただ、その中に一二点があるという、より複雑化した文の構造を扱います。
1つの環境の中に他の環境
【上下点の練習】
①⑨下⑤二②③④一⑥⑦⑧上
まず①の字を読んだ後、⑨の字に返り点がついていることに着目します。
上下点ですから、上がついている字を読んでから下の付いている字へと返るという順になります。
そのため、⑨の字は、この文の最後に読む字となります。
そこで、⑨から⑧までの間を読みます。
すると、⑤の字に、また返り点がついています。
一二点ですから、⑤から⑧までを読むときに、既に知っている一二点の読み方を実行します。
⑤の字を一旦は読み飛ばし、②③④と真っ直ぐに読みます。
④に一の返り点があるので、④を読んだ後に、二が付いている⑤へと返ります。
これで、上下点の環境の中にある一二点の環境の部分を読む処理ができました。
一二点の環境を突破したので、残りの⑥⑦⑧の字を読みます。
⑧に上の返り点があるので、⑧の字を読んだ後に、下の返り点が付いている⑨の字へと返ります。
このように、上下点の環境の中に一二点の環境が入っているという文構造になると、読む処理が複雑になります。
この1つの環境の中に、他の環境が入り込んでいるという構造は、様々なプログラミング言語の入門段階を学習するときにも現れます。
これをネスト構造(入り子構造)といいます。
厳密な用語の内容は、さておき、よく出てくる構造なので、知っておくと良いかと思います。
最後に、参考までにラテフの数式の入力コードについて、環境を述べておきます。
一二点の環境のように、特別な出力を行う環境を使ってみます。
参考までにラテフ
ラテフという数式を出力する内容についての内容です。
$ ~ $ と、2つのドルマークで挟まれた部分に数式を出力する命令文を入力します。
$A+B+C$ というように入力すると、
A+B+C という数式が出力されます。
このような単純な命令文に加え、2つのドルマークで挟まれた部分に特別な出力をするための環境を入力します。
上の図で、行列を出力しています。
単純な A+ ではなく行列という特別なものを出力するために、pmatrix環境を使います。
漢文の一二点のように、特別な環境を扱うことで、多彩な出力ができるというわけです。
$A+\begin{pmatrix}~\end{pmatrix}$ と、命令文を入力します。
この \begin{pmatrix}~\end{pmatrix} が行列を出力するための環境です。
より詳細な行列の出力内容は、次のようになっています。
\begin{pmatrix}
1 & 2 \\
3 & 4 \\
\end{pmatrix}
1 & 2 \\ で 1 行目の成分を指定します。
(1, 1)成分の値が 1 で、(1, 2)成分の値が 2 ということです。
2 行の行列にしたので、
□ & △ \\ を二つ入力しました。
3 行以降を出力したいときは、
□ & △ \\ をさらに入力します。
図では 2 列の行列でしたが、
1 & 2 & ▲ \\ とすると、
3 列目の値を ▲ で指定することができます。
漢文では、一二点のような環境を1つの文で使うことができました。
ラテフでは、1つの数式を出力する2つのドルマークのところに、pmatrix環境を使うことができます。
一二点の中に一二点の構造を入れるというために、上下点について先ほど説明しました。
これと同じように、pmatrix環境の中にpmatrix環境を入りこませたものが、上の図の右下の行列です。
行列の成分が行列になっています。
これは、□ & △ \\ の□や△の所に pmatrix環境を入力したものになります。
中学や高校の国語の授業で学習する返り点の内容の類似で、このようなネスト構造を意識するというのも良いかと思います。
関連するラテフの記事として、
分数指数という記事を投稿しています。
ルートや分数についての数式の入力について述べています。
この記事のように、高校や大学の数学の内容をストレートに扱っていない記事たちの一覧を平行四辺形-定義という記事にまとめています。
これで今回の記事を終了します。
読んで頂き、ありがとうございました。