合成関数の微分 | 公式の証明と例題を用いた練習

合成関数の微分-表紙

" 合成関数の微分 “について、公式の証明と具体例を用いた微分の計算について述べています。

合成関数は、数学3で学習しますが、高校一年の段階から実質的に使われています。そのことを利用すると、既に知っているシンプルな例で合成関数の微分を練習することができます。

具体例自体が複雑だと学習しにくいですが、既に知っている例を用いることで、学習の始めの段階のハードルを下げることができます。

実際に合成関数を具体的に公式に当てはめて微分することから学習を始め、慣れてきたら正確な証明の理解へと進むことができます。

自分で公式を導出できるようになると、数3の公式を暗記する量を減らすことができるので、証明まで頑張って理解をしておくと良いかと思います。

合成関数の微分 :単純な例で公式を使う練習

【合成関数の微分の公式】

関数 t = g(x) が、x = a において微分可能であり、関数 y = f(x) が t = g(a) において微分可能であるとする。

このとき、
合成関数 y = (f・g)(a) は、x = a において微分可能であり、
(f・g)'(a) = f'(g(a))×g'(a) である。

いきなり証明から学習をすると、大変そうな雰囲気なので、既に知っている合成関数を例にして、公式を使う練習から始めます。

ある程度、合成関数の微分の公式に慣れてきたら、証明へと学習を進めるようにすると、スムーズに理解ができるかと思います。

高校一年の頃から知っている合成関数を使って、まずは具体的に微分の公式を適用してみます。

高一から知っている例で微分

t = g(x) という微分可能な関数の例として、
t = g(x) = x+1 を考えます。

y = f(t) = t2 という二次関数との合成関数は、平行移動を通じて高一のときから既に知っています。

実数 x を関数 g によって移した値が、
t = g(x) = x+1 で、
この実数 t を f で移した値が y なので、
y = t2 = (x+1)2 となっています。

これが、合成関数 f・g で x を移した値です。

つまり、
y = (f・g)(x) = (x+1)2 です。

y = (x+1)2 のグラフは、頂点が (-1, 0) である放物線で、どの実数においても微分可能な連続関数です。

x = a という実数において、合成関数のとる値は、
y = (f・g)(a) = (a+1)2 です。

微分の公式では、
(f・g)'(a) = f'(g(a))×g'(a) が、x = a における微分係数の値となります。

実数 t について、
f'(t) = (t2)’ = 2t です。

今、t として、g(a) という実数を考えているので、
t に g(a) を代入すると、
f'(g(a)) = 2g(a) です。

実数 x について、
g(x) = x+1 だったので、
x に a を代入すると、
g(a) = a+1 です。

そのため、
f'(g(a)) = 2g(a) = 2(a+1) = 2a+2 となっています。

さらに、g'(x) = (x+1)’ = 1 なので、
g'(a) = 1 です。

よって、
(f・g)'(a) = f'(g(a))×g'(a)
= (2a+2) × 1 = 2a+2 となっています。

これで、合成関数 f・g の x = a における微分係数の値を求めることができました。

ちなみに、導関数を求めたいときは、x = a の a を x にすると、
(f・g)'(a) = 2x+2 です。

この導関数の x に a を代入すると、今、求めた値である 2a+2 となります。

まとめると、
f(t) の導関数に t = g(a) を代入してから、g'(a) を掛けると、合成関数の x = a における微分係数の値となるということです。

今度は、数3の内容も使って合成関数の微分の例を、もう一つ扱います。

(f・g)'(a) = f'(g(a))×g'(a) を数3で扱うサインの微分を使って求める練習をしてみます。

二つ目の例題

【例題】

y = f(t) = sin t,
t = g(x) = 3x+1 の合成関数を x = a において微分します。


実数 x について、t = 3x+1 が対応しています。
また、実数 t に対して sin t が対応します。

f'(t) = cos t です。これは、サインの微分がコサインとなるという数3で学習する微分の公式です。

この f'(t) の t に代入する値が、
t = g(a) = 3a+1 です。

そのため、
f'(g(a)) = sin(3a+1) となっています。

そして、g'(x) = (3x+1)’ = 3 なので、
g'(a) = 3 です。

g'(a) = 3 を掛けることで、
(f・g)'(a) = f'(g(a))×g'(a)
= sin(3a+1) × 3
= 3sin(3a+1) となります。

f や g の関数が複雑になってくると、公式に当てはめて計算するだけでも大変になってきます。

そこで、ややこしくなったときに、原点に立ち戻れるように、合成関数の微分の公式を証明しておきます。

合成関数の微分 :公式の証明

【命題】

関数 t = g(x) が、x = a において微分可能であり、関数 y = f(x) が t = g(a) において微分可能であるとする。

このとき、
合成関数 y = (f・g)(a) は、x = a において微分可能であり、
(f・g)'(a) = f'(g(a))×g'(a) である。


<証明>

関数 g は、x = a で微分可能なので、x = a で連続です。

Δt = g(a+Δx)-g(a) と置くと、
Δx → 0 のとき、Δt → 0 です。

ゆえに、
Δy = (f・g)(a+Δx)-(f・g)(a)
= f(g(a+Δx))-f(g(a)) … (1)

ここで、Δt = g(a+Δx)-g(a) だったので、
f(g(a+Δx)) = f(g(a)+Δt) … (2)

(1) に (2) を代入すると、
Δy = f(g(a)+Δt)-f(g(a)) です。

Δx → 0 のとき、Δt → 0 です。

ここで、十分小さいすべての Δx に対して、
① Δt ≠ 0 か ② Δt = 0 です。

① Δt ≠ 0 のときは、次のように考えます。

合成関数の微分-証明

①の場合には、公式が証明できました。

②の場合は、
0 = Δt = g(a+Δx)-g(a) なので、
g'(a) = 0 ということになります。
※ x = a における微分係数の分子の値が 0 なので 0 に収束しています。

また、
Δy = f(g(a)+Δt)-f(g(a))
= f(g(a))-f(g(a)) = 0 となっています。

よって、Δy/Δx の分子が 0 なので、
Δx → 0 としたとき、微分係数の値は 0 となります。

よって、(f・g)'(a) = 0

一方、g'(a) = 0 なので、
f'(g(a))×g'(a) = 0 です。

したがって、
(f・g)'(a) = 0 = f'(g(a))×g'(a) となり、命題の結論が②の場合にも成立しています。【証明完了】

注意点

t = g(x) について、
Δt = g(a+Δx)-g(a) を考えました。

Δx → 0 というときに、Δx 自体は 0 ではありません。

そのため、
Δt/Δx の分母は 0 でない状態です。

分子の Δt = g(a+Δx)-g(a) が 0 のときには、
Δx → 0 のときに、Δt/Δx → 0 ということを先ほどの証明で使いました。

このときは、x = a における微分係数の値が 0 ということになります。微分係数の定義に基づく証明問題で、分子が 0 だからということを使うときもあるので注意です。

導いた合成関数の微分の公式と n 乗の微分の発想から、すぐに導ける公式を述べておきます。

すぐに導ける公式

合成関数の微分の公式を導関数の形で表しておきます。

(f(g(x))’ = f'(g(x)) × g'(x) となります。

f の導関数である f’ に g(x) を代入してから、g'(x) を掛けます。

これは、一回微分したときの公式ですが、n 乗の微分も合わせて考えると、次の公式が導けます。n 乗が絡んだときに使える公式です。

y = tn(n は自然数)と、
t = g(x) の合成関数は、
y = {g(x)}n となります。

よって、y’ = ntn-1 なので、
t に g(x) を代入し、g'(x) を掛けると、
y’ = n{g(x)}n-1 × g'(x) となります。

では、n 乗が絡んだタイプの練習問題を扱ってみます。

合成関数の微分 :n乗が絡んだ微分

【練習問題】

y = (3x2+x)4 を x で微分してください。


何と何の合成関数となっているのかを認識することから始めます。

y = t4 と t = 3x2+x の合成関数です。

そのため、dy/dt = 4t3 の t に 3x2+x を代入し、その後で、dt/dx(3x2+x) を掛けるという計算をします。

dt/dx(3x2+x) = (3x2+x)’ = 6x+1 です。

よって、
y’ = dy/dx = dy/dt × dt/dx
= 4(3x2+x)3 × (6x+1)

後は、三乗の展開を使って、
27x6+27x5+9x4+x3 としてから文字式の計算で同類項を整理します。

さすがに、長くなるので、同類項をまとめる部分は省略しておきます。

それよりも大切なのは、y’ と書いたときに、y をどの文字で微分しているのかということを意識することになります。

dy/dt = 4t3 ですが、
dy/dx = 4(3x2+x)3 × (6x+1) と全く異なる式になっています。

y’ が y を t で微分したものか、y を x で微分したものかを区別して認識する必要があるので注意です。

合成関数の微分の応用

中心 (0, 0)、半径 r の円の接線の方程式を合成関数の微分を使って求めることを考えます。

x2+y2 = r2 (r は定数) 上の点 (s, t) における接線の傾きを求めます。

t = 0 のときは、x = s が接線の方程式なので、y が 0 でないという状況で以下を議論します。

y2 = r2-x2 なので、
u = y2 = r2-x2 と置きます。

u は y の関数なので、u を y で微分すると、
du/dy = dy2/dy = 2y です。

また、u は x の関数でもあるので、
du/dx = d/dx(r2-x2) = -2x

また、合成関数の微分の公式を使うと、
du/dx = dy2/dy・dy/dx

よって、
-2x = 2y・dy/dx となり、
dy/dx = -x/y … ★

点 (s, t) における接線の傾きは、★について、x に s を代入し、y に t を代入すると、求まります。

-s/t が求める接線の傾きです。

この接線は、点 (s, t) を通るので、
y-t = -s/t×(x-s) が求める接線の方程式です。

右辺の括弧を外すと、
y-t = -sx/t+s2/t です。

両辺に t を掛けると、
ty-t2 = -sx+s2

よって、
sx+ty = s2+t2 … (1)

点 (s, t) は、x2+y2 = r2 上にあるので、
s2+t2 = r2 … (2)

(2) を (1) に代入すると、
sx+ty = r2 となります。

以上より、y ≠ 0 のとき、
円 x2+y2 = r2 上の点 (s, t) の接線の方程式は、
sx+ty = r2
です。

今度は中心が原点以外の一般的なときについてです。

中心が(a,b)のとき

x2+y2 = r2 を x 軸方向へ a、y 軸方向へ b だけ平行移動をすると、
(x-a)2+(y-b)2 = r2 が中心 (a, b)、半径 r の円の方程式です。

この中心 (a, b)、半径 r の周上の点 (x1, y1) における接線の方程式を求めます。


y1 = 0 のときは、x = x1 が求める接線の方程式です。

そのため、以下では y が 0 でないという設定で議論を進めます。

この円と接点と接線を x 軸方向へ -a, y 軸方向へ -b だけ平行移動します。

すると、
x2+y2 = r2 の接点 (x1-a, y1-b) における接線となります。

中心 (0, 0)、半径 r の円の接線の方程式の公式は、先ほど導出しているので、それを使います。

x2+y2 = r2 の接点 (x1-a, y1-b) における接線の方程式は、
(x1-a)x+(y1-b)y = r2 です。

この接線を x 軸方向に a、y 軸方向に b だけ平行移動すると、中心 (a, b)、半径 r の周上の点 (x1, y1) における接線の方程式となります。

y1 ≠ 0 のとき、
(x1-a)(x-a)+(y1-b)(y-b) = r2が中心 (a, b)、半径 r の周上の点 (x1, y1) における接線の方程式です。


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媒介変数の微分
円の接線の方程式(数Cの矢印で)
二次曲線


それでは、これで今回の記事を終了します。

読んで頂き、ありがとうございました。