二つの円の位置関係 | 三角形が存在するかどうかを辺の長さに考察
" 二つの円の位置関係 “をイメージしながら、三角形が存在するかどうかについての考察を行っています。
二つの円について、「①離れている、②外接する、③2点で交わる、④内接する、⑤内部にある」という場合が考えられます。
それぞれについて、二つの円の中心間距離と二つの円の半径の和や差から、客観的な等式や不等式が得られます。
これらを利用することで、三角形が存在するかどうかについて考えます。
それでは、高校数学で学習する平面図形と論理を使って説明を進めます。
二つの円の位置関係 :中心間距離
半径 x の円と半径 y の円について、位置関係について重要となる式を述べておきます。
その後で、二つの円の位置関係を基礎とした命題を証明します。
ただし、 x > y という設定で述べることにします。
そして、二つの円の中心間距離を d とします。
【①離れている】
x+y < d という状況になります。
二つの円の半径を足し合わせても二つの円の中心間距離に届かないので、二つの円は離れています。
【②外接する】
x+y = d となっています。
このときは、二つの円が1点のみを共有している状態になります。
【①離れている】という状態よりも二つの円が近づいて、1点で接した状況をイメージしたものになります。
【③2点で交わる】
x-y < d < x+y となります。
二つの円の半径の差が中心間距離 d よりも小さく、かつ、二つの円の半径の和が d よりも大きいという状態になっています。
【④内接する】
x-y = d となっています。
半径が大きい方の円の内側に、半径が小さい方の円が入っていて、1点のみを共有しているという状況です。
【⑤内部にある】
x-y > d となっています。
半径が大きい方の円の内側に、半径が小さい方の円が入っていて、共有点が無いという状態になります。
これらの等式や不等式は、忘れたら簡易に図を描いてみると、図から自然と分かります。
図を描くときには、中心間距離となる線の上に二つの円の中心を描き、半径どうしの和や差を確認します。
これら5つのタイプの二つの円の位置関係ですが、数IIでも円の方程式の単元で出てきます。
※ 円の内部という記事も投稿していまして、不等式と論理を合わせて解説をしています。
ここから、次の命題を証明することを考えます。
示したい命題について
【命題】
3つの正の実数 a, b, c について、
c < a + b かつ b < a + c
かつ a < b + c であるとする。
このとき、a, b, c を3辺とする三角形が存在する。
仮定の3つの不等式を満たす正の実数を3つ設定すると、それらの実数を辺の長さとする三角形が必ず存在するという内容です。
例えば、1つの線分の長さが 5 で、残り線分の長さが 1 と 2 だと、それら3本の線分で三角形が形成されません。
理由は、長さ 5 の線分の両端に半径 1 の円と半径 2 の円を描くと、それら二つの円が交わらないからです。
※ 中心間距離 5 に対して、1+2 が小さい状態です。
このように、二つの円の位置関係が関係してきます。
今の例では、仮定条件の不等式を満たさないように正の実数を考えました。
この【命題】は、仮定の3つの不等式を満たすように3つの実数を設定すると、必ず三角形ができるという内容です。
仮定と結論の間にはギャップがあるので、しっかりと論証をしたいところです。
ここからは、図からの情報と高校数学の論理を使って、命題を証明します。
二つの円の位置関係 :命題の証明
c < a + b かつ b < a + c
かつ a < b + c であるように、3つの正の実数 a, b, c が与えられたとします。
仮定されている正の実数 a を長さとする線分を BC とします。
下の図では、左端を点 B として描くようにします。
そして、点 B を中心とする半径 c の円と、点 C を中心とする半径 b の円を考えます。
この二つの円の交点を点 A とすると、三角形ABCは、a = BC, b = CA, c = AC となります。
ただし、三角形が存在するためには、円 B と円 C が 2 点で交わることを示す必要があります。
証明の要点は、仮定の3つの不等式と二つの円の位置関係から、必ず2点で交わるということが導かれるということです。
※交点のどちらを点 A としても、直線BC について、上下の三角形が合同になるので、大丈夫です。
ここからは、【命題】の仮定である3つの不等式を満たしているときに、起こり得ない状況を除外することを考えます。
まずは、図1の内容が除外されます。
仮定されている a, b, c についての不等式から、2円が離れているということと、2円が外接するということは起こらないということになります。
よって、
中心間距離 a に対し、
b+c > a の場合を考えることになります。
b+c > a の場合の詳細を図2で考えます。
この図2の左側の状態が、2点で交わる場合です。
c < a + b, b < c + a の仮定が効いて、円B と円C が2点で交わっています。
ここで、注意しておく必要があるのが、円C が円B の内側に入って内接する可能性と、円B が円C の内側に入って内接する可能性です。
これら2つの可能性が、起きてしまうと、三角形が存在しません。
しかし、2円の位置関係を考えると、円C が円B の内側に内接する場合は、図2の右の図のようになり、このときには円B の半径である c が (a + b) と等しくなっています。
これは、仮定の c < a + b に反します。
したがって、この内接は起こり得ないということになります。
三角形が存在することを考慮して、3つも不等式を用意しているわけです。
残りの円B が円C の内側に入って内接してしまう可能性が起こらないことも確かめておきます。
これが図3の内容になります。
図3のような内接が起きると、円B の半径 c と中心間距離 BC = a の和である c+a が、円Cの半径である b に等しくなってしまいます。
このときは、b = c+a となり、
仮定の b < a+c に反します。
したがって、このような内接が起きないということが背理法より示されました。
証明のまとめ
以上から、円B と円C の二つの円の位置関係について、起こり得る場合をすべて考察した結果、不等式の仮定から、二つの円が2点で交わる状態に必ずなるということに辿り着きました。
よって、どちらでも良いので、二つの円の交点の1つを点 A とすると、三角形ABCは、
a = BC, b = CA, c = AC となります。
これで、与えられた a, b, c を3辺とする三角形の作図が必ずできるということが証明されました。
上述のように、正の実数 a, b, c が、
3つの不等式 c < a + b,
b < a + c, a < b + c を満たすとき、3辺の長さが a, b, c である三角形が存在します。
実は、この3つの不等式をすべて満足することは、
|b - c| < a < b + c という不等式を満たすことと同値になります。
このことを以下で示しておきます。
同値であることの証明
【命題2】
正の実数a, b, cについて、
|b - c| < a < b + c であることの必要十分条件は、
c < a + b かつ b < a + c
かつ a < b + c である。
<証明の方針>
|b - c| < a < b + c とは、
|b - c| < a かつ a < b + c ということです。
3つの不等式にも、同じ a < b + c の部分があるので、
|b - c| < a が、「c < a + b かつ b < a + c」と同値であることを示せば良いということになります。
一般に「p ⇔ q」のとき、「p かつ r ⇔ q かつ r」となります。
この p の部分が|b - c| < a で、
q の部分が「c < a + b かつ b < a + c」で、
r の部分が「a < b + c」です。
したがって、どちらにも後で「かつ」をとる r の部分である「a < b + c」は置いておいて、先に「p ⇔ q」を示せば良いということになります。
ゆえに、次の【命題2’】を証明すれば、証明したい不等式が自動的に完成ということになります。
書き換えた命題を証明
【命題2’】
正の実数a, b, cについて、
|b - c| < a であることの必要十分条件は、
c < a + b かつ b < a + c である。
<証明>
まず、|b - c| < a を仮定して、
c < a + b かつ b < a + c を導きます。
仮定より、-a < b - c < a
b - c < a の両辺にcを加えると、
b < a + c …(1)
また、-a < b - c の両辺に
(a + c) を加えると、
c < a + b …(2)
(1) と (2) が同時に成立するため
c < a + b かつ b < a + c
次に、c < a + b かつ b < a + c を仮定して、
|b - c| < a を導きます。
c < a + b の両辺に(-a - c)を加えると、
- a < b - c …(3)
また、b < a + c の両辺に-aを加えると、
b - c < a …(4)
(3) と (4) が同時に成立したので
-a < b - c かつ b - c < a
すなわち、
|b - c| < a 【証明完了】
これで、同値な【命題2】も証明ができたことになります。
不等式の証明は、数学の様々な単元で使われるので、リンク先の記事で、そういった内容の練習として絶対値についての不等式を証明しています。
また、数学の論理の使い方も大切になります。
平行四辺形-定義という記事で、中学で学習した図形を使って高校の数学の論理の解説をしています。
それでは、これで今回の記事を終了します。
読んで頂き、ありがとうございました。