フィボナッチ数列 | 一般項を求め第n+1項と第n項の比率を調べる【隣接3項間】

フィボナッチ数列-表紙

" フィボナッチ数列 “の一般項を隣接3項間漸化式の理論を使って求めます。

一般項が求まると、第n+1項と第n項の比率を計算することができます。

その比の値の極限値は、有名な比の値となります。

この記事で扱うフィボナッチ数列は、a1 = 1, a2 = 1 を初期値としています。

具体的な数列に理論を使う良い練習になるかと思います。

フィボナッチ数列 :隣接する項の関係式

フィボナッチ数列 {an} は第1項と第2項の値を初期値として、漸化式によって定義されています。

a1 = 1, a2 = 1 を初期値として、
各自然数 n について、
an+2 = an+1+an と帰納的に各項の値を定めています。

この隣接3項間漸化式に基づいて、第3項からの値が順に決まっています。

第3項の値 a3 だと、
a3 = a2+a1 = 1+1 なので、a3 の値は 2 となっています。

同じく第 4 項の値 a4 だと、
a4 = a3+a2 = 2+1 = 3 となっています。

このように、
{an} : 1, 1, 2, 3, 5, … と自然数が並びます。

n が小さいときには、第 n 項を初期値から順に計算して求めることができますが、一般項を定める n についての式を求めたいところです。

そこで、隣接3項間漸化式についての理論を使います。

特性方程式という以前に投稿した記事で、この理論で、どうして一般項を理論上は求めることができるのかということを解説しています。

今回の記事では、この理論を使って、フィボナッチ数列の一般項を求めます。

関係式を等比型へ変形

an+2 = an+1+an(n = 1, 2, …)という漸化式(関係式)を等比型の漸化式へと変形します。

そのときに利用するのが、隣接3項間漸化式の特性方程式です。

移項すると、
an+2-an+1-an = 0 となりますが、
x2-x-1 = 0 という二次方程式を特性方程式として、この方程式の解を使って変形をします。

具体的な二次方程式なので、解の公式を使って特性解を計算で求めることができます。


フィボナッチ数列-特性解

具体的に異なる二つの実数解が求まりましたが、後で使うために、解と係数の関係をまとめておきます。

s + t = 1, st = -1 となっています。

1 - t = s, 1 - s = t という等式は、一般項を求めるときに役立ちます。

また、|t ÷ s| = |t/s| について、
0 < |t/s| < 1 となっています。

この範囲内の実数ということを、後で極限値を求めるときに使います。

それでは、漸化式を書き換えます。

s+t = 1 より、
-1 = -(s+t) です。

そして、-1 = st です。

これらを使って、漸化式の数字を s と t を使った等式に置き換えます。

an+2-an+1-an = 0 より、
an+2-(s+t)an+1+stan = 0 となります。

括弧を外して移項すると、
an+2-san+1-tan+1 = -stan となります。

ここで、tan+1 を右辺に移項するか、san+1 を右辺に移項するかによって、二通りの漸化式が得られます。

すなわち、
an+2-san+1 = t(an+1-san) …★
an+2-tan+1 = s(an+1-tan) …☆

★と☆は、どちらも等比型の漸化式となっています。

そのため、一般項を求めることができます。

フィボナッチ数列 :一般項を求める

an+2-san+1 = t(an+1-san) …★より
数列 {an+1-san} は、
初項 a2-sa1 = 1-s = t で、公比 t の等比数列となっています。

a1 = a2 = 1 という初期条件と、
1-s = t という解と係数の関係から得られた等式を利用しました。

等比数列の初項と公比が分かったので、一般項が等比数列の一般項の公式から得られます。

an+1-san = t・tn-1 です。

つまり、
an+1-san = tn …(1)

さらに、
an+2-tan+1 = s(an+1-tan) …☆より
数列 {an+1-tan} は、
初項 a2-ta1 = 1-t = s で、公比 s の等比数列となっています。

よって、
an+1-tan = sn …(2)

(2)-(1) より、
(s-t)an = sn-tn です。

s ≠ t だったので、
両辺を s-t で割ると、
an = (sn-tn)÷(s-t) となります。

s, t は定数だったので、これがフィボナッチ数列の一般項です。

第n項と第n+1項の値

フィボナッチ数列の一般項を表す n の式が求まったので、理論上は、数列のどの項の値も計算で求めることができます。

そこで、n に n+1 を代入し、第n+1項の値も n を用いて表すことができます。

任意の自然数 n について、
第n項と第n+1項の値はそれぞれ、
an = (sn-tn)÷(s-t),
an+1 = (sn+1-tn+1)÷(s-t) です。

フィボナッチ(Fibonacci)というイタリアの数学者の名前のついた数列ですが、この二つの項の比率についての極限値から、有名な比率が現れます。

フィボナッチ数列 :第n+1項と第n項の比率

an+1 : an の比を簡単にすると、
(sn+1-tn+1)÷(s-t) : (sn-tn)÷(s-t)
= (sn+1-tn+1) : (sn-tn) となります。

an+1 : an という比の値を計算します。

比の値は、
an+1 ÷ an の値です。

つまり、
an+1 / an の値が比の値です。

この比の値について、
n → ∞ とすると、黄金比が現れます。

数学IIIで、しばしば使う分数式の書き換で、比の値の極限値が収束することを示します。

分数は、分母と分子が同じ実数だと値は 1 で、1 を掛けても値が同じということを利用した式の変形をします。

そして、0 < |t/s| < 1 だったことを活用することで収束値が求まります。

比の値の極限値

フィボナッチ数列-比の値-極限値

これで、極限値が求まりました。

フィボナッチ数列の第n+1項と第n項の比の値に関する極限値が、黄金比となっています。

この比の値は世界的に有名で、パリの凱旋門やレオナルド・ダ・ヴィンチのモナリザなどで使われている比率となります。

隣接3項間漸化式についての理論を使って一般項を求めてから、数列の極限を求めるという内容でした。

フィボナッチ数列の各項を辺の長さとする正方形を使って、長方形を作るという視覚的な捉え方もあるのですが、漸化式から一般項を求めるということに焦点を当てて述べました。

高校数学の数列単元の発展的な内容ですが、理論を理解して使うという良い練習になるのがフィボナッチ数列かと思います。

他にも特殊な漸化式についての理論を使う発展内容がありまして、一次分数型の漸化式という記事で、その理論について解説をしています。

また、群数列という数列単元の記事も投稿しています。

数学IIIの数列の極限で、
0 < |r| < 1 のときに、
n → ∞ のとき、
rn → 0 ということをしばしば使います。

この内容の厳密な証明には、大学数学の内容が関連していまして、アルキメデスの性質という記事で、その内容を解説しています。

先ほどの極限値を求めるときの最後の部分で、この極限操作を使いました。

はじめは初期値が a1 と a2 が 1 という小さい自然数でしたが、n が大きくなるにつれて大きくなりました。

まさに、塵も積もれば山となるという内容での極限操作と、その先に現れた黄金比でした。

黄金比ですが、正五角形の辺の長さと対角線の長さの比が黄金比となることが知られています。

リンク先の記事で、この内容も解説しています。

それでは、これで今回のタロウ岩井の記事を終了します。

読んで頂き、ありがとうございました。