部分積分 | 公式の証明と例題を通じて使い方を練習

数学IIIの" 部分積分 “の公式の証明と、典型的な例題を用いて公式の使い方を解説しています。

ライプニッツ則という積についての微分の公式から、微分積分学の基本定理から部分積分の公式を導きます。

微分したものを積分すると、もとの関数と定数だけのズレということから、不定積分をすると積分定数を C として使います。

例題を通じて、部分積分を具体的に練習することで、積分を練習しつつ微分の復習にもなるので、部分積分を学習すると良い効果があるかと思います。

まずは、部分積分の公式の導き方から説明します。

※ 目次の項目を選択すると該当箇所へ移動します。

部分積分 :公式の証明

y = f(x) という x についての関数を x で微分してから、x で不定積分します。

y’ = f'(x) を x で不定積分すると、
∫f'(x) dx = f(x)+C(ただし、C は積分定数)となります。

積分定数 C だけズレることになります。

このことを利用して、積の微分公式から、部分積分の公式を導きます。


【ライプニッツ則】

{f(x)g(x)}’ = f'(x)g(x)+f(x)g'(x)


微分の単元でも大切な積の微分の公式です。

既に成立している公式を利用して、新しい公式を導くということは、数学の常套手段になります。

公式の証明

積の微分の公式から、
移項すると、
f(x)g'(x) = {f(x)g(x)}’-f'(x)g(x) となります。

この両辺を x で不定積分します。

すると、左辺は、
∫f(x)g'(x) dx … (1)

不定積分後の右辺は、
∫[{f(x)g(x)}’-f'(x)g(x)] dx
= ∫{f(x)g(x)}’ dx-∫f'(x)g(x) dx
= f(x)g(x)-∫f'(x)g(x) dx … (2)

微分してから不定積分をするために、
∫{f(x)g(x)}’ dx は、f(x)g(x) に戻ります。

まだ不定積分の式があるので、まとめて積分定数をつけることから、(2) の式の段階だと、積分定数を書いていません。

具体的な計算で、不定積分の式を計算しきってから、積分定数を書きます。

左辺と右辺は等しいことから、
(1) と (2) より、
∫f(x)g'(x) dx =
f(x)g(x)-∫f'(x)g(x) dx

これが、部分積分についての公式です。


【部分積分の公式】

∫f(x)g'(x) dx =
f(x)g(x)-∫f'(x)g(x) dx


積の微分の公式から、すぐに部分積分の公式が導かれます。

ただ、この公式の形は複雑なので、具体的な例題で練習を積んでおく必要があるかと思います。

部分積分 :例題で練習

∫xex dx を計算します。

部分積分の公式の f(x)g'(x) の f(x) と g'(x) を何と考えるかは重要になります。

(ex)’ = ex なので、
g'(x) = (ex)’ と考えて、部分積分の公式を使います。

すると、
∫xex dx =
xex-∫(x)’ex dx となります。

(x)’ = 1 なので、次のようになります。

∫xex dx = xex-∫(x)’ex dx
= xex-∫ex dx … (3)

(ex)’ = ex なので、
∫ex dx = ∫(ex)’ dx = ex+C … (4)(C は積分定数)となります。

(4) を (3) に代入すると、
∫xex dx = xex-ex+C
= ex(x-1)+C となります。

これが、最終的な計算結果です。

何が微分されているのかを考える

先ほどの例題では、
(ex)’ = ex ということで、g'(x) を見抜きました。

部分積分の公式を使うときに、ストレートに公式に当てはめにくいように、同じ値を変化させたものを問題の式として与えられることが多いです。

まずは、典型的な例で公式を使う練習が大切になります。

今度の練習問題です。

∫log x dx という不定積分を計算します。

f(x)g'(x) が積分される関数ですが、log x と関数が一つしかありません。

こんなときは、1 を掛けても値が変わらないということと、(x)’ が 1 であるということを使います。

g'(x) = 1 = (x)’ と考えて、部分積分の公式を使います。

∫log x dx
= ∫{log x × (x)’} dx
= log x × x-∫{(log x)’×x} dx
= xlog x-∫{(1/x)×x} dx
= xlog x-∫ 1 dx
= xlog x-x+C です。

ex や 三角関数が絡むと、同じ形が再び出てくることがあります。

次の内容は、繰り返し部分積分の公式を適用する練習です。

部分積分 :繰り返し公式を適用する問題

∫x2ex dx を計算します。2回公式を使うと、x の指数が 0 になることを利用します。

∫x2ex dx = ∫x2(ex)’ dx
= x2ex-∫(x2)’ex dx
= x2ex-2∫xex dx … (5)

ここで、
∫xex dx にもう一度、部分積分の公式を使います。

∫xex dx =
ex(x-1)+C’ … (6)(C’ は積分定数)

これは、先ほど計算した不定積分でした。(6) を (5) に代入します。

すると、
∫x2ex dx =
x2ex-2{ex(x-1)+C’}

ここで、2C’ = C と置くと、
∫x2ex dx =
x2ex-2xex+2ex+C

定数のズレは、置き直して最終的に一つの文字で積分定数を表すとスッキリします。

繰り返し処理が出てくるということは、数列との融合問題も考えられます。

部分積分の定積分は、不定積分を求めて、上端の値を代入したものから、下端の値を代入したものを引きます。

定積分では、積分定数どおしがキャンセルされます。

数列との融合問題

m を 0 以上の非負整数とします。

am = ∫0 π/2 sinmx dx と定義します。

積分区間は、0 ≦ x ≦ π/2 です。

m = 0 のときは、
a0 =
0 π/2 1 dx = [x]0 π/2 =π/2

m = 1 のときは、
a1 =
0 π/2 sin1x d = [-cos x]0 π/2
= 1

m ≧ 2 のときを考えます。

部分積分の公式を利用して、漸化式を導き特性方程式を考えることが決め手になります。

am = ∫0 π/2 sinm-1x・sin x dx
= ∫0 π/2 sinm-1x・(-cos x)’ dx
= [sinm-1x・(-cos x)]0 π/2
 +(m-1)∫0 π/2 sinm-2x・cos2x dx
= 0+(m-1)∫0 π/2 sinm-2x(1-sin2x) dx
= (m-1)∫0 π/2 sinm-2x dx-∫0 π/2 sinmx dx
= (m-1)(am-2-am)

よって、
am = (m-1)(am-2-am)

括弧を外して移項すると、
am = (m-1)/m × am-2 となります。

これで、漸化式が得られました。

この数列 {am} から、
第0項、第2項、第4項 … と偶数の項だけを取り出した数列を考えることができます。

また、
第1項、第3項、第5項 … と奇数の項だけを取り出した数列を考えることもできます。

これは、大学の数学で詳しく学習する部分列の発想です。

高校で使われる部分列

0 以上の非負整数 m に対して、
f(m) = 2m と定義します。

すると、n = f(m) という非負整数全体を定義域とする関数ができます。

そして、{af(m)} という数列を考えます。

m = 0, 1, 2, … について、
f(m) = 0, 2, 4, … なので、
数列 {af(m)} は、数列 {am} の第0項、第2項、第4項 … と偶数の項だけを取り出したものになっています。

数列 {af(m)} の第0項は数列 {am} の第0項、
数列 {af(m)} の第1項は数列 {am} の第2項、
数列 {af(m)} の第2項は数列 {am} の第3項、
・・・
となっています。

この数列 {af(m)} は、数列 {am} の部分列です。

m について、
0 < 1 < 2 < 3 < … のとき、
f(0) < f(1) < f(2) < f(3) < … という増大列になっています。

0 < 2 < 4 < 6 < … と 0 以上の偶数が順に並んでいます。

今度は、奇数項だけを取り出す部分列を関数 g を定義して考えます。

0 以上の非負整数 m に対して、
g(m) = 2m-1 と定義します。

同様に数列 {ag(m)} が定まります。

この数列 {am} から、
第1項、第3項、第5項 … と奇数の項だけを取り出した数列になっています。

ここで、数列 {af(m)}, {ag(m)} について、帰納的に成立する命題を証明します。

am = (m-1)/m × am-2 が、それぞれの非負整数 m に対して成立していたことから、一般項の値を予想して、数学的帰納法で示すものです。

部分積分 :予想して帰納法で示す

まず、数列 {af(m)} について、各項の値を予想します。

n = f(m) = 2m について、
an =
(n-1)/n・(n-3)/(n-2)・…・3/4・1/2・π/2 と予想されます。

これは、a0 = π/2, a1 = 1 で、
漸化式から
a2 = (2-1)/2・a2-2 = (2-1)/2・π/2 となり、これを続けると、一般に n が 2m のときが順に予想できるための予想です。

次の偶数項の第4項の値だと、
a4 = (4-1)/4・a4-2 なので、
a2 の値に 3/4 を掛けた値になります。

直観的に予想をしておいて、数学的帰納法で示すということです。

第0項について、
a0 = π/2 で成立しています。

そこで、n = 2m のときに、
an =
(n-1)/n・(n-3)/(n-2)・…・3/4・1/2・π/2 が成立しているとして、
af(m+1) = a2m+2 についても成立することを示します。

m についての帰納法から、
n についての 0, 2, 4, … という奇数を飛ばしたものについての変則的な帰納法になります。

帰納法の仮定と漸化式から、
an+2 = af(m+1) =
a2m+2 = (2m+2-1)/(2m+2)×a2m
= (2m+2-1)/(2m+2)×an =
(2m+2-1)/(2m+2)×
(n-1)/n・(n-3)/(n-2)・…・3/4・1/2・π/2

ここで、
2m+2 = f(m+1) = f(m)+2 = n+2 より、
an+2 =
(n+2-1)/(n+2)×
(n-1)/n・(n-3)/(n-2)・…・3/4・1/2・π/2 となっています。

これで、数学的帰納法による証明が完成しました。

結局、漸化式から、
an の値である
(n-1)/n・(n-3)/(n-2)・…・3/4・1/2・π/2 に、
(n+2-1)/(n+2) を掛けると、
次の an+2 の値になるというものです。

はじめの数列 {am} の偶数項だけを考えている部分列なので、
an の次は、an+2 ということに注意です。

途中プロセスを明らかにするために、大学で扱う部分列の定義の通りに、関数 f(m) = 2m を絡ませて議論を進めました。

直観的に明らかな内容で、正確な証明の練習をしておくと、大学の数学でも役に立つかと思います。

予想して、漸化式という等式を利用して帰納法で証明するという同じ考え方で、奇数の方についても証明ができます。

ただ、すべてを述べると長くなってしまうので、直観的にも明らかなので、奇数についての証明は省略して結果をまとめておきます。

まとめ

n が偶数のとき、
つまり、n = 2m のとき、
an = a2m = ∫0 π/2 sin2mx dx の値は、
(n-1)/n・(n-3)/(n-2)・…・3/4・1/2・π/2

また、n が奇数のとき、
つまり、n = 2m-1 のとき、
an = a2m-1 = ∫0 π/2 sin2m-1x dx の値は、
(n-1)/n・(n-3)/(n-2)・…・4/5・2/3・1


部分積分の公式を利用して、漸化式を作るという例になります。

ちなみに、cos x = sin(π/2-x)なので、
置換積分より、
0 π/2 sinmx dx = ∫0 π/2 cosmx dx となるので、cos についても同じ結果になります。

実際、次のように変形します。

0 π/2 cosmx dx
= ∫0 π/2 sinm(π/2-x) dx

ここで、t = π/2-x と置くと、
x : 0 → π/2 のとき、
t : π/2 → 0 です。

そして、x = π/2-t より、
dx/dt = -1 です。

ここで、積分変数ですが、一般的な文字として、u を使うことにすると、
0 π/2 sinmt dt = ∫0 π/2 sinmu du です。

結局、使う変数の見た目が異なるだけで、本質的な値は同じです。

そのため、
0 π/2 cosmx dx = ∫0 π/2 sinmx dx と変数を x に揃えて述べておきます。

関連する数IIIの記事として、曲線の長さという記事も投稿しています。

それでは、これで今回の記事を終了します。

読んで頂き、ありがとうございました。

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