三角関数の微分 | 導関数の公式の証明と具体的な微分の練習問題

三角関数の微分-表紙

「 三角関数の微分 」の公式を証明するときに、数学2で学習した和積変換公式や、
θ → 0 について、 sin θ / θ が 1 に収束することを使います。

sin x / x の極限値については、はさみうちの原理(定理)が効いていました。三角関数の微分の公式の証明の段階になると、すでに証明された内容も使うので、復習しつつ、新しい内容を学習するということになります。

微分の定義に基づいて、平均変化率と x の増加量を限りなく近づけるのですが、既に学習した基本となる内容が絡むので、導関数を求める公式の証明は、良い学習機会になるかと思います。

平均変化率の形と三角関数の式の変形を合わせて、うまく極限操作を計算することが大切になる証明です。

三角関数の微分 :証明で使う公式たち

【和積変換公式】

sin a-sin b
= 2cos{(a+b)/2}sin{(a-b)/2}

ブログ和積変換公式より

数学2で既に学習した和積変換公式を使います。

平均変化率を考えるときに、Δx という限りなく 0 に近づく x の増加量が出てきますが、sin の各の部分に使われている実数なので、和積変換公式が使えます。

a として x+Δx, b として x を考えて和積変換公式を使います。

sin (x+Δx)-sin x
= 2cos{(2x+Δx)/2}sin Δx/2 となります。

後で三角関数の微分の公式を導く際、平均変化率を考え、Δx を限りなく 0 に近づける前に、分子の部分を和積変換公式で書き換えます。

もう一つ三角関数の極限値についての公式も使います。

三角関数の有名な極限値の公式

【三角関数の極限値】

θ → 0 のとき、
sin θ / θ → 1

つまり、limθ→0 sin θ / θ = 1

ブログはさみうちの定理より

はさみうちの定理(原理)から導かれる公式です。扇形の面積と三角形の面積を比べて、はさみうちの定理を使って導かれる公式です。

数学3の三角関数の微分の公式の内容になると、既に証明した公式が使われるので、復習をしつつ、新しい内容の理解を進めることになります。

和積変換公式も三角関数の極限も、しばしば使うので、こまめに内容を復習しておくと良いかと思います。

今回の証明では、θ として、
Δx/2 を考えます。

Δx → 0 のとき、
Δx/2 → 0 となり、
limΔx→0 (sin Δx/2)/(Δx/2) =
limΔx/2→0 (sin Δx/2)/(Δx/2) = 1 となります。

それでは、y = sin x を x で微分するときの導関数を求める公式を証明します。

サインの微分の公式が得られると、合成関数の微分の公式を使って、コサインの微分の公式が得られます。

その後で、商の微分の公式を使って、タンジェントの微分の公式が得られます。

三角関数の微分 :まずはサインの微分から

【サインの微分の公式】

y = sin x を x で微分すると、
y’ = dy/dx = d/dx(sin x)
= (sin x)’ = cos x


<証明>

y = sin x について、Δy と Δx を使って、平均変化率を表す式を変形するところから議論を始めます。

Δy = sin(x+Δx)-sin x より、
1/Δx を両辺に掛けると、
Δy/Δx
= {sin(x+Δx)-sin x}/Δx

ここで、和積変換公式より、
sin (x+Δx)-sin x
= 2cos{(2x+Δx)/2}sin Δx/2 です。

また、Δx → 0 のとき、
Δx/2 → 0 となり、
limΔx→0 (sin Δx/2)/(Δx/2) =
limΔx/2→0 (sin Δx/2)/(Δx/2) = 1 となります。

そのため、次のようになります。

Δy/Δx =
[2cos{(2x+Δx)/2}sin Δx/2]/Δx
= [cos{(2x+Δx)/2}sin Δx/2]/(Δx/2)

よって、Δx → 0 のとき、
limΔx→0 (sin Δx/2)/(Δx/2) = 1 より
Δy/Δx → cos(2x+0)/2×1

cos(2x+0)/2 = cos x より、
Δy/Δx → cos x です。

これらの内容をまとめます。

三角関数の微分-sinxの微分の証明

すなわち、微分の定義より、
y’ = dy/dx = d/dx(sin x)
= (sin x)’ = cos x 【証明完了】

このサインの微分の公式と合成関数の微分の公式から、コサインの微分の公式が導かれます。

y = sin x を横軸方向に -π/2 だけ平行移動するとコサインになることから、
y = cos x = sin(x+π/2) です。

※ 忘れたときには、加法定理で確かめられます。
sin(x+π/2)
= sin x cos π/2+cos x sin π/2
= sin x × 0+cos x × 1
= cos x です。

サインの微分の公式を導いたので、合成関数の微分を用いて、コサインの微分の公式が得られます。

コサインの微分の公式も

y = cos x を x で微分すると、
y’ = dy/dx
= (cos x)’ = -sin x


<証明>

y = cos x = sin(x+π/2) です。

ここで、t = x+π/2 と置くと、
y = sin t です。

合成関数の微分の公式から、
dy/dx = dy/dt×dt/dx … (1)

サインの微分の公式を
y = sin t に適用すると、
dy/dt = cos t … (2)

t = x+π/2 を x で微分すると、
dt/dx = 1 … (3)

(1) に (2) と (3) を代入すると、
dy/dx = cos t × 1
= cos t = cos(x+π/2)

すなわち、
y’ = dy/dx
= (cos x)’ = cos(x+π/2)
= cos x cos π/2-sin x sin π/2
= cos x × 0-sin x × 1
= -sin x 【証明完了】

これで、サインとコサインについて、微分の公式が得られました。

tan x = sin x÷cos x
= sin x / cos x なので、商の微分の公式を使うと、タンジェントの微分の公式が得られます。

タンジェントの微分の公式も

y = tan x を x で微分すると、
y’ = d/dx(tan x)
= (tan x)’ = 1 / cos2x


<証明>

y = tan x
= sin x / cos x に商の微分の公式を適用します。

{f(x)/g(x)}’ =
{f'(x)g(x)-f(x)g'(x)}/{g(x)}2
の公式に、f(x) = sin x, g(x) = cos x を当てはめます。

よって、
y’ = (tan x)’ = (sin x / cos x)’
= {(sin x)’cos x-sin x(cos x)’}/cos2x
= (cos2x+sin2x)/cos2x
= 1 / cos2x 【証明完了】

sin2x+cos2x = 1 ということを最後に使いました。よく使う相互関係の等式です。

ここからは、具体的な三角関数を使って微分の公式の練習です。累乗や合成関数が関連することが多いので、迷ったら基礎となる公式に基づいて着実に計算を進めます。

三角関数の微分 :具体的な練習問題

【問題1】

y = 1 / tan x を x について微分してください。


先ほどの商の微分の公式が使えます。分子が定数関数なので、微分をすると 0 を掛けることが出てくるので、ある程度は計算が楽という見通しをつけます。

tan x の微分の公式を使いつつ、
tan x = sin x / cos x の逆数との掛け算で約分できる部分を約分します。

y’ = (1 / tan x)’
= {(1)’・tan x-1・(tan x)’}/tan2x
= {0・tan x-(tan x)’}/tan2x
= 1 / cos2x × 1 / tan2x
= 1 / cos2x × cos2x × 1 / sin2x
= 1 / sin2x【答え】

1 / cos2x × cos2x が約分されて 1 になり、スッキリとした結果になりました。

連分数の形も出てくるので、割る式と割られる式を正確に認識することが大切になります。

次は合成関数の微分を使う問題です。

既に知っている公式を利用

【問題2】

y = sin 7x を x で微分してください。


t = 7x と置きます。

すると、y = sin t となり、y は t の関数で、t は x の関数です。

よって、y を x で微分することについて、合成関数の微分の公式を適用します。

dy/dx = dy/dt × dt/dx です。

dy/dt = d/dt(sin x) = cos x,
dt/dx = d/dx(7x) = 7 を当てはめます。

y’ = dy/dx
= cos x × 7
= 7cos x【答え】

次は、合成関数の微分を2回使う内容です。


【問題3】

y = cos43x を x で微分してください。


u = cos3x と置きます。

y = u4 なので、y を x で微分するときに、合成関数の微分の公式を使います。

y’ = dy/dx
= dy/du × du/dx
= 4u3 × du/dx … (1)

ここで、t = 3x と置きます。

u = cos t を x で微分します。

du/dx = du/dt × dt/dx
= d/dt(cos t) × d/dx(3x)
= -sin t × 3
= -3sin3x … (2)

(2) を (1) に代入すると、
y’ = 4u3 × (-3sin3x)
= -12sin3xcos33x 【答え】

※ 気軽な練習問題のつもりでして、状況に応じて結論の形を他の形に変形するかどうかは、状況次第になります。これを答えということで計算を止めておきます。

【問題3】で、合成関数の微分の公式を2回使いました。

結構、記述量が増えるので、角の部分の定数倍についての微分をまとめておきます。

k を定数とします。

■ (sinkx)’ = coskx × (kx)’
■ (coskx)’ = -sinkx × (kx)’
■ (tankx)’ = 1/cos2x × (kx)’

合成関数の微分の公式から、(kx)’ を掛けることになります。

タンジェントの微分の公式で、逆数との積を計算することが多いので、よく観察することが大切になります。

タンジェントの微分の計算

【問題4】

y = tan2x を x で微分してください。


u = tan x と置きます。

y = u2 を x で微分します。

y’ = dy/dx
= dy/du × du/dx
= d/du(u2) × d/dx(tan x)
= 2u × 1/cos2x
= 2tan x × 1/cos2x
= 2tan x / cos2x【答え】

今回の記事では、微分の定義に基づいてサインの微分の公式を導きました。微分の定義に基づいて証明を進める問題も出題されることがあるので、サインの微分の公式を導くのは良い練習になるかと思います。

サインの微分の公式を導くと、コサインとタンジェントの微分の公式は、既に学習している微分の公式から導かれます。

合成関数の微分や商の微分の公式を絡めた練習問題をいくつか述べました。

数3の微分の計算で、役に立つ公式なので、関連記事を置いておきます。

関数の和という記事では、定義に基づいてf(x)+g(x)の導関数を求めています。

それでは、これで今回のタロウ岩井の記事を終了します。

読んで頂き、ありがとうございました。