3変数の対称式 | 3次方程式の解を因数定理によって係数とつなぐと得られる3つの等式たち

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" 3変数の対称式 “について、三次方程式の解を因数定理によって、その係数とつなぎます。

因数定理から、等式が三つできます。この等式を利用することで、様々な高校数学の問題が作られます。

輪環の順で、公式として覚えたいところですが、忘れるかもしれません。

そこで、因数定理を使って、等式を自力で導くことが大切になります。

数学IIで学習する大切な基本内容から、等式を導く課程を理解しつつ、役に立つ等式を押さえるのが良いかと思います。

まず、基本となる因数定理を述べておきます。

3変数の対称式 :解を代入すると0

【因数定理】

方程式 f(x) = 0 の解を x = α とするとき、多項式 f(x) は、一次式 (x - α) で割り切れる。


「(x - α) が多項式 f(x) を割り切る」ということを、「f(x) は (x - α) を因数にもつ」とも言います。

(x - α) で f(x) を割ったときの商を q(x) とすると、f(x) = (x - α)q(x) となります。

q(x) の次数は、f(x) よりも 1 だけ小さいことになります。

この因数定理を使って、三次方程式の係数と解についての等式を導きます。

三つの等式が得られるので、それらを押さえておき、必要なときに使えるようにしておくことが大切になります。

まず、一般論で等式を導きます。その後で、具体的な三次方程式で、導いた等式について確認をするようにします。

三つの解を用いて

ax3+bx2+cx+d = 0 という x についての三次方程式の三つの解を p, q, r とします。係数の a, b, c, d は定数とし、a は 0 ではないという設定です。

このとき、(x - p), (x - q), (x - r) は、
多項式 ax3+bx2+cx+d を割り切るので、次の等式が得られます。

ax3+bx2+cx+d =
a(x - p)(x - q)(x - r) です。

最高次数である 3 次の項の係数が a なので、
a(x - p)(x - q)(x - r) となっています。

一次式で多項式を割ったとき、余りは定数項となりますが、解なので、代入すると 0 になることから、割り切れているということになります。

ここで、因数定理を使いました。

また、展開したときに、x3 の係数が a ということから、先頭に a を掛けています。

2 次や 1 次や定数項についても係数を比較することで、係数 b, c, d と解の間に成立する等式を導きます。

つまり、解と係数の関係の 3 変数版を導きます。このときに、場合の数の発想が効いてきます。

(x - p)(x - q)(x - r) を展開したときに、x2 の項となる場合を考えます。


3変数の対称式-xの二乗の係数

この 3 通りが、x2 の項が出現する全ての場合です。

よって、(x - p)(x - q)(x - r) を展開したときに、x2 の項の係数は、

-p - q - r = -(p + q + r) です。

先頭に a を掛けた状態だと、
a(x - p)(x - q)(x - r) を展開したときに、x2 の項の係数は、-a(p + q + r)

この係数は、
ax3+bx2+cx+d の x2 の項の係数に等しいので、-a(p + q + r) = b

すなわち、
p + q + r = -b/a … (1)

これで、一つ等式が得られました。

残りの等式は、同じ要領で、x の係数や定数項を比較することで得られます。

残り二つの等式

(x - p)(x - q)(x - r) を展開したときに、x の項が現れるのは、次の三つの場合です。

■ pq × x
■ x × qr
■ p × x × r

よって、(x - p)(x - q)(x - r) を展開したときに、x の項の係数は、
pq + qr + rp となります。

ちょうど、輪環の順になっています。

ゆえに、a(x - p)(x - q)(x - r) を展開したときに、x の項の係数は、
a(pq + qr + rp) となります。

これが、ax3+bx2+cx+d の x の係数 c に等しいので、a(pq + qr + rp) = c

つまり、
pq + qr + rp = c/a … (2)

最後に定数項を比較します。

a(x - p)(x - q)(x - r) を展開したときの定数項は、-apqr

これが、ax3+bx2+cx+d の定数項と等しいので、-apqr = d

つまり、pqr = -d/a … (3)

導いた (1), (2), (3) をまとめてから、具体的な三次方程式で様子を確認します。

3変数の対称式 :具体例で確認

ax3+bx2+cx+d = 0 の解を x = p, q, r とすると、

■ p + q + r = -b/a,
■ pq+qr+rp = c/a,
■ pqr = -d/a

ただし、a ≠ 0 です。


これら 3 つの等式が、3変数の解と係数の関係です。

三つの解の和が x2 の係数に関連します。輪環の順が x の係数に関連します。三つの解の積が定数項に関連しています。

x3 の係数が a のとき、a が分母に来るので注意です。

この三つの等式について、具体例で確認をします。この等式は、重解があっても、重解がなくても成立しています。

まずは、重解がない場合について見てみます。

重解が無い場合

【具体例1】

2x3-12x2+22x-12 = 0 という三次方程式について。


x = 1, 2, 3 が解です。

因数定理から、(x-1), (x -2), (x-3) は、
2x3-12x2+22x-12 を割り切ります。

そのため、
2x3-12x2+22x-12
= 2(x-1)(x -2)(x-3)

2(x-1)(x -2)(x-3) を展開したときの x2 の係数は、2 × (-1-2-3) = -12 です。

確かに、2x3-12x2+22x-12 の x2 の係数に等しくなっています。

三つの解の和は、
-1-2-3 = -6 = -12 ÷ 2

(x-1)(x -2)(x-3) を展開すると、x の係数は、
(-1)×(-2)+(-2)×(-3)+(-3)×(-1) と輪環の順に計算できます。

よって、この値 (2 + 6 + 3) を 2 倍すると、x の係数となります。

2x3-12x2+22x-12 の x の係数 22 に一致しています。定数項の -12 についても一致しています。

2×(-1)×(-2)×(-3) が、定数項の値です。

今度は、重解が有るときについて見てみます。やはり、解と係数の関係が成立しています。

重解が有る場合

【具体例2】

3x3-12x2+15x-6 = 0 という三次方程式について。


x = 1 が重解で、x = 2 が残りの解となっています。

多項式を割ると、
3x3-12x2+15x-6
= 3(x - 1)2(x - 2) となります。

x2 の係数について、解と係数の関係を見てみます。

-(-12 ÷ 3) = 4 です。

重解を含めた三つの解の和は、
1+1+2 = 4 なので、確かに一致しています。

今度は、x の係数についてです。

15 ÷ 3 = 5 です。

輪環の順に解たちを計算すると、
1×1+1×2+2×1 = 1 + 2 + 1 = 5 なので、確かに一致しています。

最後に定数項について、
-(-6÷3) = 2 です。

重解を含めた三つの解の積は、
1 × 1 × 2 = 2 です。

やはり、一致しています。

マイナスや最高次係数が分母に来ることを考慮して等式を使うので、うる覚えだと厳しくなります。

導いたときの内容を考えながら、注意深く適用するとミスなく使えるかと思います。

最後に、大学受験の問題を見据えた実践的な練習問題を扱います。

3変数の対称式 :実践練習

【練習問題】

x + y + z = 5, xy + yz + zx = 2,
xyz = -8 のとします。

このとき、
x2 + y2 + z2 の値と、
x3 + y3 + z3 の値を求めてください。


<解説・解答>

3変数の二乗和について、よく使う式変形です。
高校一年のときに学習した展開公式を使います。

x2 + y2 + z2 =
(x+y+z)2 -2(xy+yz+zx)

よって、x + y + z = 5,
xy + yz + zx = 2 だったので、

x2 + y2 + z2 =
52 - 2 × 2 = 25 - 4 = 21

先に求めた、この二乗の和の値も使って、三乗の和の値を求めます。

3変数の3乗和

三次方程式の解と係数の関係から、x, y, z は、
t3-5t2+2t+8 = 0 の解となっています。

この t に x, y, z をそれぞれ代入し、移項をすると、次の等式たちが得られます。

x3 = 5x2-2x-8,
y3 = 5y2-2y-8,
z3 = 5z2-2z-8

これらを辺々足すと、

x3 + y3 + z3 =
5(x2+y2+z2)-2(x+y+z)-(8+8+8)

x2 + y2 + z2 = 21 で、
x + y + z = 5 だったので、

x3 + y3 + z3 = 5×21-2×5-24 =
105 - 10 - 24 = 71

次数下げを利用して、既に求めた式たちの和へと帰着させました。

他に数IIの記事として、常用対数という記事も投稿しています。

これで、今回の記事を終了します。

読んで頂き、ありがとうございました。