食塩水の濃度 – 数学 | 未知数を表す文字が2個のとき方程式は2つ必要

" 濃度-数学-食塩水 “を例に、未知数を表す文字が2個のとき、方程式が1個だけだと解が1つに定まらないということを解説しています。

未知数が2個のときは、それらの文字を使った方程式で本質的に異なるものを2個だけ作らないと、解が1つに定まりません。

この内容は、高校の数学や大学の数学にも関わってくるので、早い段階から意識をしておくと良いかと思います。

それでは、具体的な例を用いて、解が一つに定まらないということを説明します。

まずは、理科の用語の説明から始めます。

食塩水の濃度 :理科の用語と数学の式

食塩水の濃度というと、理科で定められている濃度の内容を押さえておく必要があります。

理科における内容を数学の式を使って表すため、理科の内容を知らないと、内容を正しく数学を使って表現することができません。

そのため、まずは理科の用語から説明します。

食塩水は、水に食塩が溶けた水溶液のことです。

このことから、「水の重さ」と「溶けている食塩の重さ」の合計が「食塩水の重さ」ということになります。

重さといっても、水の重さなのか、食塩の重さなのか、食塩水の重さなのかを区別しています。

文章だけだと複雑なので、具体的な例で、重さについての内容を説明します。

水 80g に食塩が 20g 溶けている食塩水があったとします。

このとき、(80+20)g が食塩水の重さになります。

水の重さ 80g と溶けている食塩の重さ 20g の合計が食塩水の重さ 100g となっています。

食塩水の濃度とは何か

水溶液である食塩水の重さに対して、水に溶けている食塩の重さが占める割合が食塩水の濃度です。

水 80g に食塩が 20g 溶けている食塩水 100g を例に、食塩水の濃度を計算してみます。

食塩水の重さ 100g に対して、水に溶けている食塩の重さ 20g が占める割合を計算します。

全体の重さ 100g を、もとにする量として基準とします。

基準である 100g で、20g を割ると、割合を表す小数(割り切れないときは分数)が得られます。

20 ÷ 100 = 0.2 です。
※ 高校の化学だと、割られる数の単位の g と割る数の単位の g が約分されているということです。

この 0.2 という割合を表す数が濃度です。

また、濃度を表す小数を百分率を使って表すときもあります。

0.2 だと、20% ということです。

では、ここまでの理科や算数の内容から、未知数を文字で表す方程式の内容へと話を進めます。

食塩水の濃度 – 数学 :未知数と方程式の個数

【問題】

5% の食塩水と 15% の食塩水を混ぜると、10%の食塩水 500g となったとします。

このとき、5% の食塩水と 15% の食塩水が、それぞれ何 g だったかを求めてください。


5% の食塩水の重さと、15% の食塩水の重さが未知数です。

そこで、5% の食塩水の重さを a(g)、15%の食塩水の重さを b(g) と置きます。

この a と b に当てはまる数を求めたいので、方程式を作り、その解を求めるということを考えます。

等しい数量を見つけて、イコールでつなぐことで方程式が得られます。

この問題の設定から、すぐに分かることがあります。

5% の食塩水と 15% の食塩水を混ぜると、10%の食塩水 500g となったということなので、次の等式が得られます。

食塩水の重さの合計が 500g ということについての等式です。

a + b = 500 …①

この ① という方程式が得られたのですが、未知数が二つに対して、方程式が一つだけだと解が定まりません。

① だけだと、
a = 10, b = 490 や a = 20, b = 480 と様々な可能性があり、a と b の値が特定できません。

未知数が二つに対して、方程式が一つのみしかないという状況は、大学で学習する数学の言葉を使うと解の自由度1という状況です。

名前の通り、a と b のうち、片方の値が自由に動く余地があるため、a と b の値が一つに定まりません。

そこで、未知数が二つあるときには、二つ目の方程式を作り、a と b の値を規定します。

未知数の個数と方程式の個数が同じ

この問題だと、もう一つ方程式を作ることができます。

今度は、水に溶けている食塩の重さについて、等式を作ります。

5% の食塩水 a(g) に溶けている食塩の重さを計算します。

0.05a が、その重さということになります。

同じく、15% の食塩水 b(g) に溶けている食塩の重さも計算できます。

0.15b が、その重さです。

そのため、0.05a+0.15b が、混ぜ合わせたときに水に溶けている食塩の重さです。

混ぜ合わせると、10% の食塩水 500g です。

そのため、水に溶けている食塩の重さが計算できます。

0.1×500 = 50 です。

これが、混ぜ合わせた後の食塩水の水に溶けている食塩の重さです。

この同じ合計の重さを先ほど a と b を使って表していました。

そのため、
0.05a+0.15b = 50 …②

① だけだと、片方の文字の値を変えることで、a と b の値が確定しませんでした。

しかし、a と b は ① の等式を満たし、なおかつ ② の等式も満たすという状況になると、a と b の値が確定します。

では、a と b の値を計算して求めます。

食塩水の濃度 :値が一つに確定する

a + b = 500 …①
0.05a+0.15b = 50 …②


②×100 より、
5a+15b = 5000 …③

③÷5 より、
a+3b = 1000 …④

この ④ と ① で辺々引くと b の値が得られます。

これで、もう b の値は動くことができません。

b の値が 250 と確定しました。

この b = 250 を ① に代入し、a の値も確定させます。

a +250 = 500 より、
a = 250 です。

これで、
a = 250, b = 250 と連立方程式の解が求まりました。

方程式の解が、問題の内容に合っているのかを確認しておきます。

題意を満たすことの確認

5% の食塩水 250g と 15% の食塩水 250g を混ぜると、10%の食塩水 500g となっているのかを確かめます。

5% の食塩水 250g に溶けている食塩の重さは、
0.05 × 250 = 12.5 (g) です。

15% の食塩水 250g に溶けている食塩の重さも計算します。

0.15 × 250 = 37.5 (g) です。

よって、混ぜ合わせた後の水に溶けている食塩の重さは、これらの合計となります。

12.5 + 37.5 = 50 (g) です。

50 ÷ 500 = 0.1 で、
0.1 は 10% だから、
確かに 10% の食塩水 500g となっています。

これで、題意を満たすことを確認することができました。

今、方程式の解が、題意を満たすことも確認しました。

ちなみに、中学一年の数学の計算については、四則計算という記事を投稿しています。

この思考の流れは、高校の数学の論理へとつながります。

食塩水の濃度について、上で述べた流れを、整理してみます。

高校の数学へのつながり

■ 題意を満たすならば、方程式の解である。
■ 方程式の解ならば、題意を満たす。


「p ならば q である」ということが正しい(真である)とき、p を十分条件、q を必要条件といいます。

さらに、「q ならば p である」ということが正しいときは、q を十分条件、p を必要条件といいます。

上で述べた食塩水の濃度についての文章の内容を満たすことが、方程式の解であるということが同時に成立している状態です。

この、必要条件であり、なおかつ、十分条件であるというときに、必要十分条件といいます。

必要条件-十分条件という記事で、高校の数学の内容で必要条件や十分条件について解説をしています。

また、論理だけでなく、途中の濃度の計算過程も大学受験の問題として出題されることもあります。

高校の数列の内容ですが、大学の受験のレベルの内容を参考までに述べておきます。


【数列の問題】

濃度 r % の食塩水 100 [g] が与えられたとします。(この r は定数です。)

ここから 10g をくみ出して捨て、その代わりに 10 [g] の水を入れます。

この操作を n 回繰り返したとき、食塩水に溶けている食塩の重さを an [g] とします。

(n+1) 回後について、an+1 を an を用いて表してください。


ここで、n 回目の操作でくみ出される 10 [g] の食塩水に含まれている食塩の重さを xn [g] と置くことにします。

中学の数学で述べたことと同じく、食塩水の重さ、溶けている食塩の重さ、水の重さを区別して追いかけるのが基本となります。

はじめに与えられた 100 [g] の食塩水に溶けている食塩の重さは、濃度の定義から次のようになります。

つまり、
100 × r/100 = r [g] です。

初期値となる n = 1 のときについて、具体的に与えられた定数を用いて把握します。

x1 = 10 × r/100
= r × 10/100 [g] となります。

よって、1 回目の操作の後に食塩水に溶けている食塩の重さ a1 は次のようになります。

すなわち、r [g] から
r × 10/100 [g] が取り除かれるので、
a1 = r - r × 10/100
= r × (1-10/100)
= r × 90/100 [g] です。

ここから、n ≧ 2 について、繰り返し操作を漸化式で追跡します。

n回の操作と関係式

n 回目の操作の後に食塩水に溶けている食塩の重さ an [g] から、(n+1) 回目の操作でくみ出される食塩水 15 [g] に溶けている食塩の重さ xn+1 [g] が取り除かれます。

そして、(n+1) 回目の後に食塩水に溶けている食塩の重さ an+1 [g] となるという仕組みです。

つまり、
an+1 = an-xn+1 [g] …★です。

さらに、理科(化学)についての知識も使います。

どの段階についても同じ食塩水のままなので、溶けている食塩水の濃度は一定ということです。

このことを数学の等式に反映させます。

n 回目の操作の後の食塩水の重さは 100 [g] のままです。

この 100 [g] に溶けている食塩の重さが an [g] なので、100 [g] 中に an [g] の食塩が溶けていることになります。

比率を述べると、
an/100 です。

また、(n+1) 回目の操作でとり除く 10 [g] の食塩水についても、溶けている食塩の重さが xn+1 [g] で、溶けている食塩の重さと水溶液の重さ 10 [g] との比率は、xn+1/10 です。

食塩水の濃度が一定という理科の知識より、次の等式が得られます。

すなわち、
an/100 = xn+1/10 です。

この等式を変形すると、
xn+1 = an × 10/100 です。

ここで、★より、
an+1 = an-xn+1
= an-an × 10/100
= an × (1-10/100)
= 0.9an です。

つまり、
an+1 = 0.9an というシンプルな関係式となっています。

n 回目の操作の後に食塩水に溶けている食塩の重さ an [g] を 0.9 倍すると、(n+1) 回目の操作の後に食塩水に溶けている食塩の重さ an+1 [g] になるというわけです。

このように、等しいという関係に着目すると、大学受験のレベルの特性方程式と漸化式の内容にもなります。

今回の記事では、未知数が2個のときに、方程式が1つだけだと、解の自由度が1で、未知数の値が一つに定まらないということを述べました。

未知数の個数と方程式の個数について、連立方程式の解を厳密に論じることが、大学数学の線形代数学で扱われます。

高校の化学と数学の融合的な内容については、アボガドロ定数という記事で解説をしています。

数IIIの関数の対応が、背後で効果を発揮しています。

物質量についての基礎的な高校の化学の内容は、原子量-分子量という記事で解説をしています。

それでは、これで今回の記事を終了します。

読んで頂き、ありがとうございました。

フォローする