階差数列 | もとの数列の一般項とのつながりを表す等式を理解する

" 階差数列 “は、もとの数列の項を利用して定義された新しい数列です。

そのため、もとの数列の一般項と階差数列の一般項が、どのように結びついているのかを理解することが大切になります。

公式の導出の考え方自体が、大学受験の数学で使う考え方になるので、基礎から丁寧に理解をしておくことが、遠回りなようで近道になるかと思います。

はじめに与えられた数列 {an} をもとにして、新しい階差数列 {bn} を定義するところから解説します。

階差数列 :もとの数列の一般項からの定義

数列 {an} が与えられたとき、各自然数 n に対して、bn = an+1-an と定義します。

既に数列 {an} が与えられているので、
その第(n+1)項と第 n 項の差を bn と定義します。

この bn を第 n 項の値とする数列が {bn} です。

<例>
{an} : 1, 4, 9, 16, …

このように数列 {an} が与えられているときに、階差数列の第 2 項の値 b2 は数列 {an} の第 3 項と第 2 項の値の差となっています。

b2 = a3-a2
= 9-4 = 5 です。

具体的な数字で、第 2 項と第 3 項の値を見ましたが、自然数 n を変数とする文字式で一般項が分かっていると、一般項が計算できます。

実は、an = n2 が一般項となっています。

n に 1, 2, 3, 4 と代入すると、
{an} : 1, 4, 9, 16, … というように各項の値が得られます。

階差数列の一般項の定義から、
bn = an+1-an
= (n+1)2-n2
= 2n+1 となっています。

このように、もとの数列の一般項を表す n の式が分かっていると、階差数列の一般項が文字式の計算で求まります。

この記事では、この逆で、階差数列の一般項から、もとの数列の一般項を求める等式を導出することを目指します。

その前に、階差数列についての記号をまとめておきます。

階差数列の記号

もとの数列 {an} の第 n 項の値のことを一般項とよび、an と表しています。

そして、{an} の階差数列の一般項を bn と表しています。

それぞれの自然数 n に対して、
bn = an+1-an と定義しました。

つまり、数列 {bn} の第 n 項の値のことを一般項とよび、
その値が、bn = an+1-an ということです。

ここまでの階差数列の一般項の定義から、もとの数列 {an} の一般項を表す等式を導くことができます。

そのときに、シグマ記号を使って表します。

b1+b2+…+bn-1 だと、
k bk で、添え字 k が 1 から n-1 まで走ります。

もとの数列の一般項と階差数列を結び付ける等式の導き方自体が、大学受験の数列分野で頻出の考え方になるので、しっかりと証明と向き合っておくと良いかと思います。

階差数列 :nが2以上のときの等式

n を 2 以上の自然数とします。

このときに、階差数列の一般項の定義から、次のように (n-1) 個の等式が得られます。

b1 = a2-a1 …(1)
b2 = a3-a2 …(2)
・・・
bn-1 = an-an-1 …(n-1)

これら (n-1) 個の等式を連立方程式の加減法のように辺々足すと、左辺の値は次のようになります。

b1+b2+…+bn-1 です。

公式では、これをシグマ記号を使って表します。

また、右辺の値も計算で求まります。

左辺と右辺が等しいことから、等式が得られます。

右辺は途中がキャンセルする

これで、もとの数列の一般項と階差数列の一般項が結びつきました。

右辺については、打ち消し合う項たちを消すと、
an-a1 が残ります。

階差数列の一般項が 3 次以下の多項式で表されていると、bk が k を用いた 3 次以下の多項式となり、シグマの公式を使って計算ができます。

さらに、a1 の値が分かっていると、
n ≧ 2 に対して、{an} の第 n 項の値が計算で求められます。

ただし、この等式は、
n ≧ 2 の場合についてのものです。

そのため、a1 の値については、検証が必要になります。

それでは、この等式を使って、具体的に階差数列の一般項から、もとの数列の一般項を求める練習問題を解説します。

階差数列 :具体的な練習問題

数列 {an} の階差数列 {bn} について、
一般項が、bn = 2n+1 だとします。

また、a1 = 1 だとします。

このとき、もとの数列の一般項 an を求めてください。


n ≧ 2 の場合について、先ほどの等式を使って、シグマ計算で an の値を求めます。

その後で、n = 1 のときにも、その an の式が成立しているのかを検証します。

n ≧ 2 のとき、
1 ≦ k ≦ n-1 に対して、
bk = 2k+1 となっています。

そのため、
an = a1+∑k bk
= 1+∑k (2k+1) です。
(ただし、k は 1 から n-1 まで動きます。)

ここで、シグマの公式から、
an = 1 + 2∑k k + ∑k 1
となります。

k 1 は、定数 1 を (n-1) 個だけ足し合わせるということです。

すなわち、次のようなシグマの計算となります。

これで、n ≧ 2 のとき、
an = n2 と求まりました。

n = 1 のときにも成立するのかどうかを確かめます。

12 = 1 で、
a1 = 1 なので、
n = 1 のときにも成立しています。

よって、数列 {an} の一般項は、
an = n2 です。

n に 1, 2, 3, 4, … と値を代入すると、
{an} : 1, 4, 9, 16, … となっています。

階差数列の一般項をもう一度

b1 = a2-a1 = 4-1 = 3,
b2 = a3-a2 = 9-4 = 5,
b3 = a2-a1 = 16-9 = 7 となっています。

そのため、
{bn} : 3, 5, 7, …

感覚的に初項 3, 交差 2 の等差数列のようです。

先ほどの問題では、客観的な根拠として、
一般項が bn = 2n+1 と与えられていました。

n = 1, 2, 3, … と代入したものが、
3, 5, 7, … です。

実際、
bn = 3+(n-1)・2
= 2n+1 です。

このように、階差数列の一般項と、もとの数列の一般項がシグマを用いた等式で結ばれています。

ただし、この等式は n ≧ 2 の場合についてなので、a1 の値については一致しているのかどうかを検証する必要があります。

今回の練習問題では、n = 1 のときにも成立していました。

しかし、一致していないときは、場合分けをして、
n ≧ 2 のとき、an = 「n の式」,
n = 1 のときは、a1 の値というように記述します。

ちなみに、階差数列の一般項を定義するときに、
各自然数 n に対して、
bn = an+1-an と定義しました。

このように、数列とは、各自然数に対して値を対応させる関数と考えることができます。

※ 大学の数学を学習するときに、この関数としての見方をするときもあります。

そのようなことを考えて、
等差数列は一次関数という記事を以前に投稿しました。

数列とは、定義域を自然数全体を定義域とする関数という見方が、役に立つときもあるので、押さえておくと良いかと思います。

ここまで、階差数列の定義から議論を進めてきましたが、漸化式を用いて階差数列の内容を表すこともできます。

階差型漸化式

数列 {an} について、自然数 n を用いた多項式 p(n) を用いて、
a1 = α,
an+1 = an+p(n) (n = 1, 2, … ) が成立しているとする。

このとき、数列 {an} の階差数列の一般項は p(n) である。


このように、漸化式を用いて階差数列の内容が述べられることもあります。

n = 1, 2, … について、
an+1 = an+p(n) という等式が成立しているということです。

移項すると同値に変形できるので、
an+1-an = p(n) が成立しています。

bn = an+1-an と各自然数について置くと、数列 {bn} が得られます。

この数列 {bn} の一般項が p(n) で、{bn} は {an} の階差数列です。

先ほどの練習問題では、
p(n) = 2n+1 となっていました。

この多項式 p(n) は、n = k のとき、p(k) という値になっています。

n についての多項式なので、n に k を代入した値が p(k) です。

ここで、もとの数列の一般項と階差数列の一般項をつなぐ等式を使うと、次を得ます。

階差型漸化式から一般項へ

階差型漸化式 a1 = α,
an+1 = an+p(n) (n = 1, 2, … ) から、数列 {an} の一般項を求めるために、階差数列の考え方を使います。

bn = an+1-an = p(n) を一般項とする階差数列 {bn} に、上で述べた等式を適用します。

すると、n ≧ 2 のとき、
an = a1+∑k bk
= α+∑k p(k)
(k は 1 から n-1 を走ります。)

これで、数列 {an} の第 2 項以降の値が得られました。

ただし、n ≧ 2 のときに成立する内容なので、第 1 項の値については検証する必要があるので注意です。

このように、階差型の漸化式については、階差数列をクッションにすることで一般項を求めることができます。

<補足>
難しい大学受験の問題では、
k p(k) の部分が直接に計算できないような式になっているものが出題されることもあります。

そんなときには、設定されている数列についての状況を観察して、臨機応変にアプローチすることになりますが、基本は階差数列を利用したシグマ計算です。

※ 階差数列に焦点を当てて述べてきましたが、漸化式と特性方程式については別の記事で解説をしています。

【関連する記事】

さらに発展的な内容として、
一次分数型の漸化式という記事も投稿しています。

それでは、これで今回の記事を終了します。

読んで頂き、ありがとうございました。

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