放物線の軸 M(a) という関数 | 場合分けで端が動く最大値問題を解く練習

" 放物線の軸 “と M(a) という関数の最大値問題について、場合分けをする問題が出題されることがあります。

起こり得る可能性を論理的に場合分けて、すべての場合について結論を求めることが大切になります。

また、背後にある関数の対応についての考察は、数学2や数3へとつながるので、高校一年の段階から、考える練習をしておくと良いと思われます。

まさに、高校の数学らしい関数の対応を、論理で考える問題になります。

関数の対応ということを意識し、何に対して、何を対応させるのかということを捉えることが決め手になります。

はじめに、問題の背景となる関数の対応について説明をします。

その後で、典型的な二次関数のグラフである放物線の最大値についての具体的な問題を解説します。

記事の後半では、関数の横軸に関するグラフの折り返しを、場合分けの観点から解説をしています。

放物線の軸 : M(a) は何と何が対応する関数なのか

【問題】

a を正の実数とし、0 ≦ x ≦ a における関数
f(x) = x2 -4x + 2 の最大値を M(a) とします。

このとき、M(a) という a に応じて定まる関数を a の式で表してください。


高校一年の数学1で出てきそうな問題です。

この問題で、y = f(x) と二次関数は、具体的に係数が設定されてあるので、計算をすると軸の方程式や、頂点の座標を求めることができます。

ただ、中学の数学のときには、意識しないような関数の対応が背後にあります。

正の実数 a に応じて、M(a) という実数を対応させる関数について問われています。

関数を a の式で表すということですが、学習し始めた頃には、イマイチ分かりにくい内容かと思います。

この関数を定める式というものについて、理解を深めてから、問題に臨みます。

y = f(x) という関数だと、各実数 x に対して、f(x) という値を対応させています。

f(x) の値は、x2 -4x + 2 の x に具体的な実数を代入することで定まります。

一方、関数 M(a) だと、
正の実数 a に対して、「0 ≦ x ≦ a における関数 f(x) = x2 -4x + 2 の最大値」を対応させると問題文に書いてあります。

この内容を理解することができると、関数 M(a) を定めている式が見えてきます。

M(a) という関数

今回の問題では、正の実数 a の値に応じて、
0 ≦ x ≦ a の右端の値が変化します。

そのため、f(x) = x2 -4x + 2 の最大値が、a の変化に連動して変化します。

ここで、「a の値に応じて 0 ≦ x ≦ a における f(x) の最大値を対応させる」という関数 M(a) の定義が効いてきます。

f(x) = (x - 2)2 - 2 なので、x = 2 が軸を表す方程式で、(2, -2) が頂点の座標です。

二次関数のグラフである放物線は、軸に対して線対称な図形です。そのことから、図形的に、どこで二次関数が最大値をとるのかということを場合分けて考えます。

そうすることで、a に応じて変化する二次関数の最大値というものが分かってくるかと思います。

ここからは、図を使って、二次関数の最大値が、どんな x に対してとるのか。そして、最大値と a の関係が、どうなっているのかを解説します。

放物線の軸 :グラフで図形的に考察

【練習問題】

a を正の実数とし、0 ≦ x ≦ a における関数
f(x) = x2 -4x + 2 の最大値を M(a) とします。

このとき、M(a) という a に応じて定まる関数を a の式で表してください。


a の値によって、二次関数の定義域が変化し、そのために f(x) の最大値をとる場所が変わるということを図から考察します。

f(x) = (x - 2)2 - 2 (0 ≦ x ≦ a) の軸は、
x = 2 です。

f(x) の定義域 0 ≦ x ≦ a の中央の値 a/2 が
[1] 2 より小さいとき、
[2] 2 に等しいとき、
[3] 2 より大きいとき
と場合分けをして考えます。

a/2 という正の実数の値は、[1]、[2]、[3] のうちのどれかに必ずなるということが論理的に分かります。

そこで、図を用いて、f(x) の定義域の中央の値 x = a/2 より左側での y 座標の増減と、右側での y 座標の増減を見比べます。

[1] の場合、定義域の中央の値 a/2 と a の間に軸の x 座標 2 が来ています。

a/2 から a までの変化は、a/2 から 2 までの y 座標の値が減少した後で、上昇します。

一方、0 から a/2 までの y 座標の変化は、ずっと y 座標の値が減少しています。
 
よって、[1] のとき関数 f(x) の値域は -2 ≦ f(x) ≦ 2 となり、最大値は 2 です。

[2] の場合は、a = 4 ということで、左右対称です。
-2 ≦ f(x) ≦ 2 が値域になり、最大値は 2 です。

[3] の場合は、-2 ≦ f(x) ≦ a2 -4a + 2 が値域になります。この中で、x = a で最大となるのは、やはり放物線のグラフの対称性からです。[1] のときとは、軸の左右で起きていることが反対になっている感じです。

x = 2 から x = 4 まで、
(a/2 - 2) + a/2 の幅で、放物線上の y 座標が増加し続け、x = 2 から x = 0 までの y 座標の増加よりも大きくなっています。

そのため、x = a で最大値 a2 - 4a + 2 をとります。

図が微妙なときは、論理的に放物線が左右対称であることから、y 座標の値の大小を判断することが大切になります。

※ テストのときに、自分で図をフリーハンドで描くと、微妙なときが出てきます。

その際に、論理的に考察を進められるかがポイントになる単元です。

では、正の実数 a に応じて対応させる f(x) の最大値 M(a) のことをまとめます。

場合分けのまとめ

【まとめ】

[1] 0 < a/2 < 2 または [2] a/2 = 2 の場合
つまり、0 < a < 4 または a = 4 の場合
M(a) = 2

[3] 2 < a/2 の場合
つまり、4 < a の場合
M(a) = a2 - 4a + 2


0 < a ≦ 4 のときには、M(a) = 2 という定数関数です。
4 < a のときは、M(a) = a2 - 4a + 2 と二次関数になっています。

このように、f(x) の軸と定義域の関係から、M(a) の関数の対応を与える式が変化することがあります。

この問題は、関数 M(a) の式を a を用いて表すことだったので、
M(a) = 2 (0 < a ≦ 4 のとき),
M(a) = a2 - 4a + 2 (4 < a のとき)
が、答えとなります。

正の実数 a に対して、0 ≦ x ≦ a における関数 f(x) = x2 -4x + 2 の最大値 を対応させるという関数が M(a) でした。

関数の対応では、何に対して、何を対応させるのかということを把握することが大切になります。

場合分けをして考察する内容を述べたので、同じような考え方で議論を進められる内容を解説しておきます。

グラフの折り返しについて


f(x) = |x2 - 4| という絶対値つきの二次関数のグラフを考えます。

この関数 f は、実数 x に対して、|x2 - 4| という実数を対応させています。

絶対値の定義から、 x2 - 4 の値が、負であるか、0 以上であるかによって、マイナスをつけるか、そのままの値で良いのかに分かれます。
※ 絶対値については、一つ前の記事で解説をしています。

赤色の点線で描いている部分は、横軸よりも下側にある部分です。絶対値の定義から、横軸と対称に折り返されます。

その折り返したグラフが青色の実線部分です。緑色の実線で描いている部分のグラフは、x2 - 4 の値が 0 以上なので、そのままの値が対応しています。

これらの内容を踏まえてグラフを描くときに、定義域である実数全体 R を 3 つの部分集合に分割します。

分割して考えるから

A = { a ∈ R | a ≦ -2 } という R の部分集合を考えます。グラフを描いた図の左側の緑の実数部分に関連する定義域の部分集合です。

実数 a ∈ A に f よって、
対応する実数は、|a2 - 4|

ここで、A に含まれている要素が満たしている条件が効いてきます。

a < -2 なので、 a2 - 4 ≧ 0 となっています。

よって、絶対値の中身の実数が 0 以上なので、
|a2 - 4| = a2 - 4 です。

今後、さらに、残りの分割部分として、先ほどの図の真ん中の部分(赤色の点線の折り返し部分)と、右の実線の緑色の部分を説明します。

真ん中と右端

B = { b ∈ R | -2 < b < 2 } という R の部分集合を考えます。

この部分集合 B の要素について、絶対値の中身が負の実数となるので、マイナスがつくときになります。

-2 < b < 2 なので、b2 - 4 < 0 となるため、
|b2 - 4| = -(b2 - 4) となります。

つまり、f(b) = -b2 + 4 です。

今、b ∈ B について、f(b) の値を表しました。

関数を表す式のときには、定義域の要素として x をよく使います。

「-2 < x < 2 のとき f(x) = -x2 + 4」と表されるときが多いかと思います。

f(x) = -(x2 - 4) と、二次関数の式全体を -1 倍しています。

このため、x2 - 4 のグラフを横軸について対称に折り返すという図形的な意味となります。

これで、先ほどの図について、左側の実線の部分と真ん中の折り返し部分についての説明を完了しました。

もう一息、残りの右端について解説をします。

C = { c ∈ R | c ≧ 2 } が最後の分割に現れる部分集合です。

C の各要素について、c2 - 4 ≧ 0 となります。

このため、
絶対値の中身が 0 以上より、
f(c) = c2 - 4 と、そのまま絶対値が外れることになります。

右側の緑の実線部分の関数の式は、そのまま絶対値を外した形になります。

変数のアルファベットを x と書くことにすると、
x ∈ C に対し、f(x) = x2 - 4 となります。

折り返しのまとめ

A ∪ B ∪ C = R となっています。

しかも、A と B と C のどの二つの部分集合も、共通部分が空集合となっています。

このように、定義域である実数全体から成る集合 R を三つの部分集合に分割すると、グラフを正確に描くことができます。

p ∈ A ∪ C のときは、絶対値の中身が 0 以上の値なので、絶対値がそのまま外れます。

よって、f(p) = p2 - 4 です。

q ∈ B のときは、絶対値の中身が負の実数なので、絶対値を外すときに、マイナス「-」がつきます。

よって、f(q) = -(q2 - 4)
つまり、f(q) = -q2 + 4 となります。

x2 - 4 < 0 という不等式を満たす範囲内の x が、先ほどのグラフを描くときに考えた部分集合 B です。

この B の要素に対応する値が折り返しに関連していました。

不等式の同値変形と論理を使って、部分集合 B をどうやって見つけ出したかを説明します。

x2 - 4 < 0 すなわち、
(x + 2)(x - 2) < 0 と因数分解して同値変形することができます。

上の不等式を満たす実数の範囲と、下の不等式を満たす実数の範囲は一致します。

さらに、(x - 2)(x + 2) < 0 ということは、「正の実数と負の実数の積」or(または)「負の実数と正の実数の積」ということになります。

中学 1 年の数学で学習した異符号どおしの積が負の値という内容から、
(x - 2)(x + 2) < 0 となります。

これは、「x - 2 > 0 かつ x + 2 < 0」または「x - 2 < 0 かつ x + 2 > 0」ということです。

さらに、同値に書き換えると、
「x > 2 かつ x < -2」
または「x < 2 かつ x > -2」

ここで、 「x > 2 かつ x < -2」 を満たす実数は存在しません。

このことから、この連立不等式を満たす実数の範囲は空集合です。要素が存在しないから、まさに空集合です。

そして、

「x < 2 かつ x > -2」と「-2 < x < 2」は同値です。

この連立不等式を満たす実数の範囲を集合で表すと、{x ∈ R | -2 < x < 2} となります。

実数の範囲についての集合について、or(または)ということは、和集合です。空集合 Φ と和集合をとっても、集合は変化しません。

つまり、
Φ ∪ { x ∈ R | -2 < x < 2 }
= { x ∈ R | -2 < x < 2 }

それでは、上の考察をまとめます。

x2 - 4 < 0 つまり、
(x + 2)(x - 2) < 0 だから、
{ x ∈ R | -2 < x < 2 } という範囲を考えます。

この同値変形の結果、辿り着いた集合が、グラフを描くときに使った真ん中の集合 B です。

{ x ∈ R | -2 < x < 2 }
= { b ∈ R | -2 < b < 2 } = B

集合の要素を表すのに使っていた文字は、x でも b でも、表している意味は全く同じです。

二次関数については、グラフからの視覚的な情報把握と、今回のブログで扱った定義域の分割のように論理的にアプローチすることの両方が大切になります。


【関連する記事】

今、関数 M(a) の式を a を用いて表しました。

この関数 M(a) の定義域は、正の実数全体となっています。そのため、a は正の実数全体を動きます。

このように、定義域に含まれている各要素(元)に対して、値を対応させるものが関数です。

抽象的な関数で、どんな式によって値を対応させているのかが不明なこともありますが、具体的に式で表せるときには、今回のように式で表したいものです。

式で表せると、対応する値が、具体的に計算できるようになります。

例えば、今回の M(a) だと、
a = 5 のときの値をすぐに求めることができます。

5 > 4 なので、
M(a) = a2 - 4a + 2 (4 < a のとき) の式を使います。

a = 5 を代入すると、
M(5) = 25 - 20 + 2 = 7 となります。

こういった、関数の対応について、数学3で合成関数や逆関数を学習します。

今回の内容は、そのような関数の対応を考えるための前段階の具体例になります。

※ 関連する記事として、定義域-値域という数学3についての内容のものを投稿しています。

定義域の各要素に対して、どのようにして値を対応させているのかということを意識することは、数学3の理解へとつながります。

二次関数の単元で基本となる平方完成の式の変形についても、解説をしています。

平方完成という記事では、整数係数の式から、基本形への式の書き換えについて説明をしています。

それでは、これで今回の記事を終了します。

読んで頂き、ありがとうございました。

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