平行条件と垂直条件 :直線の傾きと切片の話【一致条件と無限個の解も】

平行条件と垂直条件-表紙

" 平行条件と垂直条件 “は、数学IIの図形と方程式の単元で昔から扱われる有名な内容になります。

それだけに、高校数学の多くの分野と関連して出題される基礎的な内容です。

逆に考えると、この基礎を着実に押さえることで高校数学に手応えを得ることができます。

直線の傾きと切片という中学数学で学習した内容を、さらに数IIの内容へと広げて解説しています。

直線とは、どの2点で計測しても、変化の割合が常に一定となっている特殊な図形です。

この一定の値を傾きといい、グラフを考察するときに重要になります。

グラフと y 軸との交点の y 座標の値である切片にも注目して、基礎となる内容を解説します。

平行条件と垂直条件 :傾きと切片

「y = 傾き・x + 切片」という中学の数学で学習した内容を、さらに深く高校の数学では考察します。

この等式を満たす組 (x, y) を座標平面で考えると、グラフは直線という図形になっています。

直線が二つあったときに、傾きが等しいということは、二直線が平行ということです。

この平行という図形的な内容と、傾きという数値を結び付けて、問題が作られることもあります。

典型的な問題を解きながら、理解を広げていけるので、具体的な練習問題を使って傾きと切片についての考察をしてみます。

【練習問題1】

点 (3, 6) を通り、
直線 y = -2x+10 に平行な直線の方程式を求めてください。

平行ということは、傾きが等しいということです。

そのため、求めたい直線の傾きは -2 です。

求めたい直線の切片が未知数です。

そこで、未知数を文字で置き、方程式を作り、それを解くことで未知数を求めるということをします。

求めたい切片の値を b とします。

y = -2x+b …①

点(3, 6) は、この直線①の上にあるので、
x = 3, y = 6 は①の解となります。

つまり、代入したときに、左辺と右辺が等しいということです。

6 = -2・3+b …②

②より、b = 12 となり、切片の値が分かりました。

そのため、y = -2x+12 が求める直線の方程式です。

このように、「平行であるという条件は、傾きが等しいということ」を利用して、問題が作られるときもあります。

中学の数学では、聞きなれない用語ですが、x 切片というものもあります。

理系の方にとっては、ベクトルとも合わせて使うことがあるので、述べておきます。

x切片について

直線と x 軸との交点の x 座標の値を、直線の x 切片といいます。

y 軸との交点の y 座標の値は、正確には y 切片です。

点 (s, 0) と点 (0, t) を通る直線の方程式は、整頓された形で、表されます。

x/s + y/t = 1 が、この二点を通る直線の方程式となっています。

ただし、s ≠ 0, t ≠ 0 とします。

この内容も示しておきます。

二点を通る直線の方程式を、
y = ax+b だとします。

点 (s, 0) を通るので、
0 = as+b …①

点 (0, t) についても同様に、
t = a・0+b = b …②

②を①に代入すると、
0 = as+t です。

移項して、-as = t となります。

今、s ≠ 0 より、
a = -t/s です。

よって、y = ax + b は、
y = -t/s・x+t となっています。

さらに、t ≠ 0 より、
1/t を両辺に掛けると、
y/t = -x/s+1 です。

移項すると、
x/s+y/t = 1 が得られます。

覚えやすい等式なので、知っておくと役に立つこともあります。

方向ベクトル・法線ベクトルという記事で、この内容をベクトルと合わせて理系の内容として解説をしています。

ベクトルを使わない方も、x 切片について知っていると、次のような思考を行うことができます。

点 (1/2, 0), (0, 1/3) を通る直線の方程式を作ります。

1/2 と 1/3 の逆数を考えて、
2x+3y = 1 が、この直線の方程式になります。

1 秒くらいで方程式が得られるので、問題を解く見通しが立てやすくなるかと思います。

では、今度は垂直条件について考察をします。

平行条件と垂直条件 :傾きの積

【2直線が垂直】

y = ax+b, y = cx+d が垂直に交わっていたとする。

このとき、ac = -1 である。

ブログ二直線が垂直より

二つの直線が垂直に交わっているときに、二つの傾きで積をとると、-1 となります。

この内容を使った問題も、よく出題されます。

内容の証明はリンク先の記事で、三角形の証明を用いて解説しています。

たとえば、
y = x/3 + 2 と、
y = -3x+5 という二つの直線は、傾きを見ると、垂直に交わっていることが分かります。

傾き 1/3 と傾き -3 の積は、-1 だからです。

この垂直条件に関連する典型的な練習問題で、内容を詳しく見てみます。

未知数を求める

垂直条件-練習問題

傾き -1/5 の直線と垂直ということから、求める直線の傾きが 5 ということが分かります。

求める直線の方程式を、
y = 5x+b と置きます。

点 (2, 4) を通ることから、
4 = 5・2+b より、
b = 4-10 = -6 です。

これで、
y = 5x-6 が求める直線の方程式だと分かります。

高校の数学では、傾きと通る点の座標から、直線の方程式を表す公式を学習します。

それを使うと、
y-4 = 5(x-2) となります。

これから計算しても、
y = 5x-6 と同じ結果になります。

ここまで、平行条件と垂直条件についての典型的な問題を扱いました。

食塩水の濃度のように、方程式を作り未知数を求めました。

次に、図形の状況を論理的に考える問題を扱います。

平行条件と垂直条件 :三角形にならない場合

【練習問題3】

次の三つの直線が、三角形を作らないように定数 p の値を求めてください。

l : x+y-2 = 0,
m : x-2y+7 = 0,
n : px+y+4 = 0


まず、文字が使われていない直線について、確定している状況を押さえます。

直線 l と m について、傾きが異なることから、交わっていることが分かります。

その交点の座標を求めておきます。

x+y-2 = 0,
x-2y+7 = 0 を辺々引きます。

3y-9 = 0 より、y = 3 です。

x+y-2 = 0 だから、
x+3-2 = 0 より、x = -1 です。

これで、(-1, 3) が直線 l と m の交点の座標だと分かりました。

ここまでの内容は確定していますが、p と文字が使われているため、場合分けが発生します。

まず、㋐直線 n が、交点 (-1, 3) を通る場合と、㋑通らない場合に大別されます。

交点を通るか、通らないかのいずれかが起きるため、起こり得る全ての場合を考えていることになります。

㋐の場合は、座標の値を直線 n の方程式に代入すると、すぐに p の値が求まります。

n : px+y+4 = 0 より、
-p+3+4 = 0 より、p = 7 となります。

ややこしいのは、㋑の場合です。

三角形を作らないという条件を満たす状況だけを考えるので、さらに細かく場合分けをすることになります。

条件を満たす場合

㋑直線 n が、交点 (-1, 3) を通らない場合について、三角形を作らないという条件を満たすことから、次の二つの場合に分岐します。

このとき、「直線 n が直線 l と平行でない」かつ「直線 n が直線 m と平行でない」場合については、三つの直線が三角形を作ることになります。

そのため、この否定が成立することになります。

「かつ」を否定すると「または」になることから、次のようになります。

つまり、
「直線 n が直線 l と平行である」または「直線 n が直線 m と平行である」という場合に分かれます。

では、それぞれの場合について、p の値を求めます。

【直線 n が直線 l と平行な場合】

l : x+y-2 = 0 の傾き -1,
n : px+y+4 = 0 の傾き -p で、平行なので傾きが等しくなっています。

そのため、p = 1 となります。

【直線 n が直線 m と平行な場合】

m : x-2y+7 = 0 の傾き 1/2 と直線 n の傾き -p が等しくなっています。

そのため、p = -1/2 となります。

これで、㋐の場合と合わせて p の値を全て求めることができました。

p = 7, 1, -1/2 が答えになります。

ここからは、二つの直線が平行でないということについて、さらに考察を進めます。

グラフの図形的な状況を踏まえて論理的に考察を進めることが多いのが、この単元の特徴になります。

平行条件と垂直条件 ; 一致条件も

同一平面内にある二つの直線について、「平行でない」という条件には注意が必要です。

二つの直線が平行でないときには、次の二つの場合が考えられます。

【場合1】

二つの直線が、1点のみで交わる。

【場合2】

二つの直線が一致する。

空間内で考えると、もう一つ「ねじれの位置」という場合も発生しますが、この記事では座標平面という同一の平面内で考えています。

とにかく、二つの直線が平行でないときには、場合分けが発生するので注意です。

【場合1】について、具体的な例を見てみます。

y = -4x+6 …①
y = 2x-3 …②

この二つの直線は、一致していません。

このときに、1点のみで交わることを確かめてみます。

(s, t) を①と②で表される直線たちの交点の座標とすると、連立方程式の解となっています。

x = s, y = t は、点 (s, t) が直線①の上にあることから、①の解となっています。

同様に、②の解ともなっています。

この点 (s, t) が一つに決定されることを確かめてみます。

t = -4s+6 …③
t = 2s-3 …④

この状況なので、
③+④×2 を計算すると、次の等式が得られます。

つまり、3t = 0 です。

これから、t = 0 です。

t = 0 を④に代入すると、
0 = 2s-3 です。

これより、s = 3/2 です。

これで、
(s, t) = (3/2, 0) と分かりました。

確かに、交点の可能性が、この1点のみということが分かりました。

【場合1】のときには、連立方程式の解が、唯一でした。

今度は、【場合2】について考えます。

高校一年のときにも、軸と定義域の内容などで場合分けをしながらグラフの状況を考えましたが、数IIでも場合分けを考えるときがあります。

無限個の解について

y = 2x+4 …①
y = 2x+4 …②

この二つの連立方程式の解について考えてみます。

①と②は、一致している同一の直線を表しています。

r を実数として、
点 (r, 2r+4) の座標を当てはめてみます。

2r+4 = 2r+4 なので、
(x, y) = (r, 2r+4) は、①と②の解のなっています。

r に実数を代入すると、連立方程式の解が得られます。

例えば、r = 1 とすると、
(1, 6) です。

6 = 2×1+4 と確かに解となっています。

実数は無限個あるので、連立方程式①と②の解が無限個あることになります。

このように、二つの直線が平行でないときには、一致するという場合も起こり得ます。

そのため、文字を使った問題では、場合分けが必要になるときもあるので注意です。

では、このことを具体的な問題で練習してみます。

どの場合に該当するのか

次の連立方程式が無限個の解をもつときの p と q の値を求めてください。

2x+5y+1 = 0 …①
px+3y+q = 0 …②


連立方程式が無限個の解をもつということは、二つの直線が平行でないときで、さらに一致しているという場合です。

二つの直線が一致しているということは、傾きと y 切片が等しい値になっています。

① について、
傾きは、-2/5 です。

② について、
傾きは、-p/3 です。

そのため、
-p/3 = -2/5 です。

ゆえに、p = 6/5 となります。

今度は、y 切片についてです。

①について、
-1/2 が y 切片です。

②について、
-q/3 が y 切片です。

そのため、
-q/3 = -1/2 より、
q = 3/2 です。

これで p と q の値が決定しました。

最後に注意点です。

大学受験のレベルだと、ややこしいですが、混乱しないように 2 変数関数について言及しておきます。

f(x, y) = 2x+5y+1 と
g(x, y) = px+3y+q が恒等的に等しいということと、先ほどの問題の内容は異なる内容になります。

どんな実数の組 (x, y) について、関数 f と関数 g が等しいと、p と q は先ほどの値と異なります。

実は恒等的に等しくはなりません。

このことを背理法を用いて確認しておきます。

もし f と g が同じ 2 変数関数だとすると、

(x, y) = (0, 0) において同じ値を取ります。

そのため、
1 = f(0, 0) = g(0, 0) = q です。

これで、g(x, y) = px+3y+1 です。

(x, y) = (1, 0) においても同じ値を取ることになります。

そのため、
2+1 = f(1, 0)
= g(1, 0) = p+1 です。

そのため、p = 2 となります。

これで、g(x, y) = 2x+3y+1 です。

(x, y) = (1, 1) においても、
f(1, 1) = g(1, 1) となります。

しかし、
f(1, 1) = 2+5+1 = 8,
g(1, 1) = 2+3+1 = 6 です。

そのため、f(1, 1) ≠ g(1, 1) です。

これは、f(1, 1) = g(1, 1) であることに矛盾です。

2 変数関数が、どんな実数 x と y についても恒等的に等しいという内容と、連立方程式が無限個の解をもつということは違うので、混乱しないように注意です。

①と②が恒等式ではない状況だったので、安易に係数を比較することができない場面だったというわけです。

【関連する記事】

円の内部という記事で、図形と方程式と不等式を合わせた内容について解説をしています。

直線については、変化の割合が一定な図形でした。

3次関数などでは、どこで計測するかによっては、変化の割合が異なる値となることもあるので注意です。

これで、今回のタロウ岩井の記事を終了します。

読んで頂き、ありがとうございました。