合同な放物線 |二次の係数が等しいときの交点座標と面積問題【数2】

合同な放物線-表紙

" 合同な放物線 “に関して、二次の係数が等しい式の放物線どうしの交点座標の求め方を解説します。

この内容が理解できると、数学IIの定積分と面積の内容へと理解を広げることができます。

放物線を表す式の二次の項の係数が等しい、必ず合同となるということを計算アルゴリズムをもって、明確に導きます。

なんとなくの感覚から、さらに進んで客観的な正しさを押さえることは、数学の学習を自信をもって進める上で大切になるかと思います。

片方の放物線を平行移動して、もう片方にピッタリと重なるということの証明から始めます。

y = ax2+bx+c が表す放物線を①とします。

そして、y = ax2+dx+e が表す放物線を②とします。

どちらも a ≠ 0 が二次の項の係数となっているという設定です。

合同な放物線 :重なる理由

合同な放物線-全体イメージ

最終的には、S1 と S2 の面積比が 1:1 であることを証明します。

共通接線と面積の議論をする前に、数学Iの段階の議論を示しておきます。

y = ax2+bx+c が表す放物線①を平行移動すると、どうして放物線②に、ぴったりと重なるのかということの証明を述べます。

そのために、放物線の頂点の座標を求めます。

平方完成をすると、
y = ax2+bx+c
= a(x+b/2a)2-(b/2a)2+c となります。

(-b/2a, -(b/2a)2+c) が頂点の座標となります。

そのため、
x 軸方向へ b/2a,
y 軸方向へ (b/2a)2-c だけ平行移動すると、頂点が原点となります。

この平行移動後の放物線は、
y = ax2 という (0, 0) を頂点とする放物線です。

同様に計算して

y = ax2+dx+e についても、同様の議論をします。

同じく、平行移動後の放物線が、
y = ax2 です。

よって、放物線①と放物線②は、どちらも放物線 y = ax2 と合同な放物線です。

すなわち、放物線①と放物線②が合同な図形ということです。

これで、平行移動をすることで、重なり合うということが分かりました。

さらに、平行移動をするときに、放物線①の頂点がスライドする後にできる線を左右に永遠に延長すると、共通接線となっています。

そこで、先ほどの図のように、放物線①と共通接線の接点の x 座標の値を α と置きます。

そして、共通接線と放物線②の接点の x 座標の値を β と置きます。

すると、放物線①と放物線②の交点の x 座標の値が求まります。

実は、(α+β)/2 という α と β の平均値になっています。

※ ただし、α < β という設定です。

今度は、この内容を証明します。

合同な放物線 :交点のx座標

y = ax2+bx+c …①

y = ax2+dx+e …②


y = mx+n …③ を放物線①と②の共通接線の式とします。

直線③と放物線①の唯一の共有点である接点の x 座標の値が α です。

直線③と放物線②の接点の x 座標の値は β です。

①-③で得られる
ax2+bx+c-(mx+n) = 0 という x についての二次方程式の解が x = α です。

唯一の共有点ということから、接点の x 座標の値は、重解となっています。

そのため、因数定理から、
0 = ax2+bx+c-(mx+n)
= ax2+(b-m)x+c-n
= a(x-α)2 と書き換えることができます。

移項すると、
ax2+bx+c =
a(x-α)2+mx+n …④

②-③で得られる二次方程式についても、同様の議論を行います。

すると、
0 = ax2+dx+e-(mx+n)
= ax2+(d-m)x+e-n
= a(x-β)2 となります。

移項すると、
ax2+dx+e =
a(x-β)2+mx+n …⑤

これら④と⑤を利用して、放物線①と②の交点の x 座標の値を求めます。

和と差の因数分解公式

①-②より、
0 = ax2+bx+c-(ax2+dx+e)
…⑥

この x についての方程式⑥の解が、放物線①と②の交点の x 座標の値です。

ここで、右辺を先ほどの④と⑤で書き換えることができます。

ax2+bx+c-(ax2+dx+e) =
a(x-α)2+mx+n-{a(x-β)2+mx+n}
=a(x-α)2-a(x-β)2
= a{(x-α)+(x-β)}{(x-α)-(x-β)}
= a{2x-(α+β)}(β-α)

この式は、⑥の左辺の 0 に等しいので、
a{2x-(α+β)}(β-α) = 0 です。

α < β より、β-α ≠ 0 です。

a ≠ 0 でもあるので、
2x-(α+β) = 0 となっています。

x について解くと、
x = (α+β)/2 です。

方程式⑥の解が、放物線①と②の交点の x 座標の値でした。

そのため、接点の x 座標の値どうしの平均値が、二つの放物線の交点の x 座標の値ということを示すことができました。

x = (α+β)/2 という縦線によって、放物線①と②と共通接線で囲まれた部分の面積が、S1 と S2 に分けられています。

ここから、
S1 : S2 = 1: 1 となることを証明します。

t = (α+β)/2 と置いて議論を進めることにします。

面積を求めるときの積分区間に、t の値を使うので、少し記述を楽にできます。

合同な放物線 :面積比と積分

x = t, 放物線①、共通接線で囲まれた部分の面積が S1 です。

接点の x 座標から交点の x 座標までが積分区間になります。

そのため、
S1 = ∫αt {ax2+bx+c-(mx+n)}dx となります。

ここで、
ax2+bx+c-(mx+n)
= a(x-α)2 と、先ほど書き換えたことを再び使います。

S1 = a∫αt (x-α)2dx です。

ここで、
1/3 × (x-α)3 を x で微分すると
(x-α)2 となるので、被積分関数と原始関数の関係から次のようになります。

S1 = a∫αt (x-α)2dx
= a[1/3 × (x-α)3]αt
= a/3{(t-α)3-0}
= a/3 × (t-α)3
= a/3 × {(α+β)/2-α}3
= a/24 × (β-α)3

これで、S1 の面積が求まりました。

同じ様に、S2 の面積も求めます。

x = t, 放物線②、共通接線で囲まれた部分の面積が S2 です。

S2 = ∫tβ{ax2+dx+e-(mx+n)}dx です。

ax2+dx+e-(mx+n)
= a(x-β)2 という書き換えを使います。

S2 = a∫tβ (x-β)2dx となります。

1/3 × (x-β)3 を x で微分すると
(x-β)2 となるので、被積分関数と原始関数の関係から次のようになります。

S2 = a∫tβ (x-β)2dx
= a[1/3 × (x-β)3]tβ
= a/3 × {0-(t-β)3}
= -a/3 × {(α+β)/2-β}3
= -a/24 × (α-β)3
= -a/24 × (-1)3・(β-α)3
= a/24 × (β-α)3

比を簡単にする

以上より、
S1 = S2 = a/24 × (β-α)3 です。

どちらの面積も同じ値なので、
S1 : S2 = 1 : 1 です。

これで、放物線①と放物線②と共通接線で囲まれた部分の面積が x = t について左右で等しく分けられていることが分かりました。

S1 = S2 なので、
片方の面積の値を計算すると、もう片方の面積も同じ値になっているということです。

接点の x 座標の値どうしで平均値をとると、二つの放物線の交点の x 座標の値となるということと合わせて、面積比まで理解を広げておくと、数IIの定積分の学習にもなります。

定積分の学習をするときに、合同な放物線が二つ出てきて、共通接線とで囲まれる部分の面積を求める問題が出題されることがあります。

今回は、一般的な文字を使って、背景となる内容を解説しました。

関連する積分問題として、
1/6公式という記事を投稿しています。

基礎的な定積分の内容で、
偶関数-奇関数の定積分について数学2の範囲で解説をしています。

定積分を使って、面積を求めるときに、役に立つことが多い公式なので、導出の仕方から解説をしています。

それでは、これで今回のタロウ岩井の記事を終了します。

読んで頂き、ありがとうございました。