長方形 – 定義 | 4つの内角が全て直角【対角線との関係で反例を理解する】

長方形 – 定義 「4つの内角が全て直角である四角形」ということと、2本の対角線の長さが等しいことについての考察を通じて、命題の反例とは何かということを解説しています。

算数もしくは公立の中学2年の数学で知っている図形を用いることで、高校の数学の論理を理解しやすい形で学習するという目的で投稿した記事になります。

「四角形について、長方形ならば2本の対角線の長さが等しい」という命題は正しい真なる命題です。

しかし、その逆である「四角形について、2本の対角線の長さが等しいならば長方形」という命題は正しくない偽である命題です。

ここで、偽であるということは反例が存在するということですが、その反例とは何かということを説明します。

まずは、反例についての解説をし、その後で長方形と平行四辺形の関係について説明をするという流れになります。

長方形 – 定義 :反例について考える

【定義】

四角形ABCD について、
4つの内角が全て直角になっているとき、四角形ABCD を長方形という。


この定義の条件を角についての式で述べると次のようになります。

∠DAB = 90° かつ ∠ABC = 90°
かつ ∠BCD = 90° かつ ∠CDA = 90° となっている四角形が長方形という定義です。

この長方形ABCD について、対角線AC, BD の長さについて考えます。

後で証明しますが、「四角形ABCD が長方形ならば、2本の対角線AC, BD の長さが等しい」という命題は真です。

しかし、この逆である「四角形ABCD の2本の対角線AC, BD の長さが等しければ、四角形ABCD が長方形である」という命題は偽です。

なぜ偽かというと反例が存在するからです。

ちゃんとした命題の形で述べておきます。

【偽である命題】

四角形ABCD について、
AC = BD ならば、四角形ABCD は長方形である。

文章だけだとイメージするのが大変なので、図を用いて説明をします。

この命題の反例となる四角形の図を述べます。

反例とは、命題の仮定の条件を満たすけれども、結論の条件を満たさないもののことです。

図も使いつつ反例を理解する


この【図1】の四角形ABCD が反例となります。

仮定の条件である「2本の対角線が等しい」ということを満たしています。

しかし、4つの内角を見ると、全てが直角ではありません。

長方形の定義に当てはまらないので、結論である「長方形である」という条件を満たしていません。

仮定の条件を満たすけれでも、結論の条件を満たしていたないということから、命題の反例というわけです。

1つでも反例が存在すれば、その命題は偽(正しくない)ということになります。

今度は、この偽である命題の逆について考えます。

「四角形ABCD について、四角形ABCD が長方形ならば、その2本の対角線の長さが等しい」という命題です。

【図2】の長方形の定義から、【図3】の長方形の2本の対角線の長さが等しいということが導けるという命題になります。

実は、この命題は真です。

なぜ真かというと証明ができるからです。

この命題を証明するために、平行四辺形についての知識を使います。

数学では、証明をしようとしている命題の真偽に関わらずに既に証明がされている命題を、適用できるときには使って良いというルールがあります。

そこで、平行四辺形についての命題を使います。

目指す命題の証明のために、長方形と平行四辺形についての関連について、土台となる内容を導いておきます。

長方形 – 定義 : 2本の対角線の長さについて

【平行四辺形について】

四角形ABCD について、次の①から③は、どの二つも必要十分条件となっている。

① 向かい合う2組の辺がそれぞれ平行(定義)
② 向かい合う2組の辺がそれぞれ等しい
③ 向かい合う2組の角の大きさがそれぞれ等しい

ブログ平行四辺形-定義より

この①の条件が、四角形が平行四辺形であることの定義となっている条件です。

どの二つの条件も必要十分条件になっているので、どれか1つでも条件を満たすと、残りの2つの条件も自動的に満たしていることになります。

必要十分条件なので、「③ならば①」、「①ならば③」というように自由に状況に合わせて使いやすい条件へと書き換えることができます。

この以前に投稿したブログ記事で証明した①から③が必要十分条件となっているということを利用して長方形と平行四辺形を関連づけます。

【命題1】

四角形ABCD について、
四角形ABCD が長方形ならば、平行四辺形である。

<証明>

仮定より、四角形ABCD は長方形になっています。

そのため、長方形の定義である「4つの内角が全て直角」という条件を満たしています。

4つの内角が全て 90°なので、向かい合う2組の角の大きさがそれぞれ等しくなっています。

そのため、平行四辺形であることの定義の条件と必要十分条件となっている条件を満足しています。

よって、四角形ABCD は平行四辺形です。【証明完了】

①、②、③が必要十分条件となっていることを利用した証明でした。

③が成立しているので、①が成立ということで、平行四辺形の定義を満たしたというわけです。

長方形が平行四辺形ということを示したので、平行四辺形についての②から、長方形の向かい合う2組の辺がそれぞれ等しいということになります。

算数では、長方形の4つの内角が全て 90°ということと、向かい合う2組の辺がそれぞれ等しいということを常識的に使っていたわけですが、正確に論理を使って内容をフォローできました。

必要条件-十分条件は高校の数学を議論するときに基本となるので、早い段階で慣れておくと良いかと思います。

この【命題1】から、平行四辺形について成立する内容も使って、長方形の2本の対角線の長さが等しいことを証明します。

満たしている条件を意識する

【命題2】

四角形ABCD について、
四角形ABCD が長方形ならば、対角線AC と対角線BD の長さが等しい。


<証明>

三角形ABC と三角形DCB が合同であることを示します。

共通の辺より、
BC = CB …(1)

四角形ABCD が長方形より、
∠ABC = 90°,
∠DCB = 90° だから、
∠ABC = ∠DCB …(2)

また、長方形は平行四辺形であり、平行四辺形の向かい合う辺の長さが等しいことより、次の等式を得ます。

すなわち、
AB = DC …(3)

(1), (2), (3) より、2辺とその間の角が等しいという三角形の合同条件を満たしています。

そのため、
三角形ABC ≡ 三角形DCB が示せました。

合同な図形の対応する辺の長さは、ぴったり重なるため等しくなっています。

よって、
AC = DB です。

すなわち、
AC = BD です。【証明完了】

この【命題2】の逆が成立しないということで、この記事のはじめの方で【図1】の2本の対角線の長さが等しいけれども長方形となっていない四角形を述べました。

また、この【図1】の四角形は、2本の対角線の長さが等しいけれども、平行四辺形ではないという例にもなっています。

四角形というと多くのものがあります。

そこで、平行四辺形になっている四角形全体という枠を設けて、その中に絞って議論をすることにします。

こういうときに便利なのが、全体集合という考え方です。

長方形 :全体集合の中で

平行四辺形となっている四角形全体からなる集合を U と置きます。

この U の中には、2本の対角線の長さが等しい平行四辺形と2本の対角線の長さが等しくない平行四辺形に分かれます。

つまり、2本の対角線の長さが等しい平行四辺形全体を S、2本の対角線の長さが等しくない平行四辺形全体を T と置くと、S と T の和集合が U となります。

「2本の対角線の長さが等しく」かつ「2本の対角線の長さが等しくない」という平行四辺形は存在しませんから、S と T の共通部分は空集合となります。

ここから、和集合-共通部分という高校の数学の集合の考え方も積極的に使って議論を進めることにします。

すなわち、
U = S ∪ T,
S ∩ T は空集合という状況になっています。

平行四辺形全体の U において、「2本の対角線の長さが等しい」ということを否定すると、「2本の対角線の長さが等しくない」という平行四辺形になります。

平行四辺形全体を全体集合 U と考えているときは、U における S の補集合が、T に一致しています。

つまり、Sc = T ということです。

四角形全体を全体集合と考えるという設定では、2本の対角線の長さが等しくない四角形で平行四辺形となっていない四角形が存在します。

そのため、補集合を考えるというときには、全体集合をどういった範囲で考えているのかということを意識するための練習として、平行四辺形全体を全体集合 U とした設定を扱ってみました。

今度は、長方形全体から成る集合を V と置きます。

【命題1】から、V は U の部分集合となっています。

しかも、【命題2】から長方形の2本の対角線の長さが等しいことから、V は S の部分集合にもなっています。

包含関係を整理すると、
V ⊂ S ⊂ U という状況になっています。

要素(元)と集合の部分集合についての考え方で状況を押さえることは、論理的な考察をするときに、よく使います。

2本の対角線の長さが等しくない平行四辺形は存在するので、S は U の真部分集合になっています。

ここで、一つ疑問が出てきます。

V は S の真部分集合となっているのか、それとも V と S が一致しているのかということです。

実は、V と S は一致しています。

このことを意味している次の【命題3】を証明します。

限定した条件の下で

【命題3】

平行四辺形ABCD について、
2本の対角線の長さが等しいならば、平行四辺形ABCD は長方形である。


<証明>

∠DAC = x, ∠BAC = y と置き、半直線AD の延長上に点 P をとります。

平行四辺形の向かい合う2組の辺がそれぞれ平行なので、
AB // DC より、
∠PDC = ∠BAD
= x+y …(1)

次に、三角形ADC と三角形DAB が合同であることを示します。

仮定より、2本の対角線の長さが等しいため、
AC = DB …(2)

平行四辺形の向かい合う2組の辺がそれぞれ等しいため、
DC = AB …(3)

共通の辺より、
AD = DA …(4)

(2), (3), (4) より、3組の辺に長さがそれぞれ等しくなっています。

よって、三角形の合同条件より、三角形ADC と三角形DAB は合同です。

合同な図形の対応する角の大きさが等しいことから、
∠ADC = ∠DAB となっています。

∠DAB = ∠BAD = x+y より、
∠ADC = x+y …(5)

直線AP は点 D を通る直線より、
∠ADC+∠PDC = 180° です。

(1), (2) より、
(x+y)+(x+y) = 180°

つまり、
2(x+y) = 180° です。

これより、x+y = 90°です。

よって、
∠BAD = x+y = 90° です。

また、(5) より、
∠ADC = x+y = 90° です。

平行四辺形の向かい合う2組の角の大きさがそれぞれ等しいため、
∠BCD = ∠BAD = 90°,
∠ABC = ∠ADC = 90° となっています。

これで、平行四辺形ABCD の4つの内角が全て直角であることが示せました。

長方形の定義より、平行四辺形ABCD は長方形です。【証明完了】

この【命題3】は、S ⊂ V ということを示しています。

V ⊂ S も成立していたので、
V = S となっています。
※ 二つの集合 V, S の相当関係の定義は、
V ⊂ S かつ S ⊂ V です。

中高一貫でない公立の中学2年で扱われる図形を題材として、高校の論理と集合について解説をしました。

関連する記事として、
命題-仮定-結論という記事で、高校で扱う命題について解説をしています。

また、対角線が中点で交わる四角形という記事でも、論理と集合について、平行四辺形の対角線を用いて解説をしています。

高校や大学で使う数学の論理と合わせて補集合や差集合を考えることがあります。

そういった内容を補集合という記事で解説しています。

それでは、これで今回の記事を終了します。

読んで頂き、ありがとうございました。

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