絶対値 – 外し方 | 高校数学で学習をするときに場合分け【グラフについても】

高校数学で" 絶対値 – 外し方"を学習するときに、場合分けをして考えます。

さらに、場合分けと実数の範囲についての集合を、部分集合の和集合として分割するところまで深く解説をしています。

敢えて、少し努力を加えることで、論理的に安定するかと思います。

そうすると、他の単元とも連動して、数学がより理解できるように思います。

このブログ記事が、少しでも読者の方が、絶対値を通じて、集合や論理を扱うことの手助けになれば幸いです。

定義から説明します。0 以上のときと、0 未満のときを場合分けて把握します。

絶対値 – 外し方:定義で場合分け

実数 a について、場合分けをして絶対値が定義されています。

絶対値とは、実数 a に対して、|a| という値を対応させる関数(写像)です。そして、実数 a の範囲によって、|a| の値が決まってきます。
 
変数 a が、a ≧ 0 という範囲にあるときには、a に対して a をそのまま対応させます。

a < 0 の範囲にあるときには、-a を対応させます。
 
変数が、0 以上の範囲内か、0 未満の範囲内かによって、対応させる値に「マイナス-」がつくか、つかないかが違ってきます。

絶対値を用いた関数

絶対値とは、実数全体を定義域とする実数値関数です。関数なので、定義域に含まれている実数 a に対して、ただ一つの値を対応させています。
 
この関数としての見方は、数学3 の関数の極限の単元で扱われますが、実質的に関数として数学1 のときから扱っています。
 
関数らしい記号を使って、絶対値のことを表すと次のようになります。

・実数 a が 0 以上の値のとき
  f(a) = a

・実数 a が 0 未満の値のとき
  f(a) = -a

|a| と表すかわりに、f(a) と表しました。実質的に同じことを定義しています。

この関数としての捉え方をしておくと、シンプルに絶対値を扱うことができます。

絶対値 : 関数の定義域

R を実数全体から成る集合とします。絶対値という関数は、定義域という集合である R に含まれている各要素(元)a に対して、f(a) という値を対応させています。
 
この絶対値という関数 f の定義域 R という集合を、さらに細かく見てみます。

マイナスをつけるか、マイナスをつけないかで大きく分けることができます。


以下、f(a) = |a| (a は実数) という関数について、考察を進めていきます。

a が、どういう範囲内のときに、関数 f が、どんな値を対応させてくるかに注目します。


P = { x ∈ R | x < 0 } とおくことにします。この集合 P は、負の実数全体から成る集合です。実数全体 R の部分集合になっています。

※ P ⊂ R については、集合の要素というブログで詳しく説明をしていまして、よろしければ、ご参照ください。
 
実数 a が a ∈ P のときに、f(a) = -a です。

変数 a が具体的な実数のときにも見てみます。

-5 ∈ P に対して、
絶対値という関数 f は、「-」をつけた値を対応させます。

絶対値という関数の定義より、
f(-5) = -(-5) = 5 ということになります。

これは、-5 ∈ P に対して、
f が対応させた値が 5 ということです。

今度は、Q = {x ∈ R | x ≧ 0} という R の部分集合を考えます。0 以上の実数をすべて集めた集合が Q です。

a ∈ Q に対して、f(a) = a です。Q に含まれている要素(元)については、その実数を、そのまま対応させています。

今度も具体的な実数で、対応具合を見てみます。3 ∈ Q です。

f の対応の定義から、f(3) = 3 です。Q の要素については、その数をそのまま対応させているので、f が対応させる値が、すぐにわかります。

絶対値 : 関数の値域

絶対値という関数 f の定義域は、実数全体の集合 R でした。

では、絶対値という関数の値域はどうなっているのかを見てみます。


A = { -x | x ∈ P } ,
B = { x | x ∈ Q }


負の実数に対してマイナスをつけた値を対応させるか、0 以上の実数に対してそのままの値を対応させるかでした。

そのため、絶対値という関数 f によって対応してくる実数は、A に含まれるか、または、B に含まれるかということになります。

よって、関数 f の値域は、A ∪ B
すなわち、A と B の和集合ということになります。

絶対値 – 外し方 :集合の分割

ここで、高校数学の発展的な内容で、集合の分割という考え方を紹介します。

単なる和集合とは何が違うのかということに注意して説明をしていきます。

集合 W が、W の部分集合 S と T の和集合となっているときを考えます。

W = S ∪ T というのが、以下の議論の前提です。

さらに、S ∩ T が空集合となっているときに、集合 W は、2 つの部分集合 S と T の和集合に分割されるといいます。

※ 大学の数学で整数単元で頻出の同値関係で類別するということについて、リンク先で、中学の数学で学習する内容をベースに解説しています。同値関係を使って、集合を分割するという内容になります。

W = S ∪ T かつ S ∩ T = Φ という状況だと、W の要素は、S に含まれているか、T に含まれているのかのいずれか一方のみとなります。重複を考慮しないで良いので楽です。

では、この分割の発想で、絶対値という関数の定義域と値域を、もう一度見てみます。


実数全体 R が定義域で、
P = { x ∈ R | x < 0 } が負の実数全体、
Q = | x ∈ R | x ≧ 0 } が 0 以上の実数全体でした。


R = P ∪ Q で、P と Q の共通部分は空集合ですから、定義域が二つの部分集合 P と Q に分割されています。

値域についても、分割になっています。

A = { -x | x ∈ P },
B = { x | x ∈ Q } とおくと、
A ∪ B が絶対値という関数 f の値域でした。

A ∩ B が空集合となっていることを背理法を使って、確かめてみます。

a ∈ A ∩ B が存在したとして、矛盾を導きます。

a ∈ A なので、ある負の実数 x ∈ P が存在して、-x = a です。

一方、a ∈ B より、a ∈ Q となり、a は 0 以上の実数ということになります。

よって、a ≧ 0 です。

まとめると、-x = a ≧ 0 となっています。

つまり、-x ≧ 0

この両辺に -1 を掛けると、x ≦ 0

となります。

これは、x が負の実数全体 P の要素であることに矛盾します。

a ∈ A ∩ B が存在したとすると、矛盾が生じてしまうので、背理法より、 A ∩ B に含まれる要素は存在しないということになります。

すなわち、 A ∩ B は空集合ということになります。

ここまで、絶対値という関数について、土台となる内容を述べました。

※ちなみに、複素数の絶対値については、虚数-複素数-違いというブログに書いています。

原点からの距離についての定義について、押さえておくことは大切かと思われます。

実数についての絶対値と、数学2 の複素数についての絶対値の定義を合わせて理解しておくと、良いかと思います。

では、ここから実践練習です。

絶対値の実践練習

【問題】

|a + 4| = 3 を満たす実数 a を求めてください。


絶対値という関数のとる値が 3 となっています。

関数によって、実数 (a + 4) に対応する値が 3 ということです。

a + 4 が、定義域 P ∪ Q の部分集合 P と Q のどちらに含まれているのかで、場合分けをします。

起こり得る可能性として、P という負の実数全体に含まれているのか、Q という 0 以上の実数全体に含まれているのかのいずれかになります。

先ほど定義域が P と Q の分割になっていることを確認しているので、重複する共通部分が空集合なので、気分が楽です。

場合1 : a + 4 ∈ P
(a + 4 が P に含まれている場合)

このとき、a + 4 は負の実数なので、絶対値という関数によって対応する値には、マイナス「-」がつきます。

|a + 4| = f(a + 4)
= -(a + 4) となっています。

したがって、-(a + 4) = 3 より、
a + 4 = -3 だから、
a = -7 ・・・①

場合2 : a + 4 ∈ Q
(a + 4 が Q に含まれている場合)

0 以上の実数全体 Q の要素に対しては、そのままの値を対応させるというのが、絶対値という関数の定義でした。

よって、
|a + 4| = f(a + 4) = a + 4

したがって、a + 4 = 3 より、
a = -1 ・・・②

a + 4 が P に含まれているときと、Q に含まれているときという二つの分岐があるため、a についての絶対値つき方程式の解が二つ出てきました。

①と②から、
a = -7 または a = -1答えとなります。

数学1で、絶対値について、xy 座標平面にグラフを描くときもあります。絶対値をとるという関数と二次関数の合成関数のときは、ややこしくなります。

定義域と値域の対応を基本に、この対応をていねいに見ていくことが大切になります。

x 軸よりも下側の部分を折り返すといった内容が出てきます。

そのような応用的な問題のときにも、定義域である x 軸の範囲をうまく分割して、状況を正確に確認することが大切になります。

絶対値 :絶対値つきの関数のグラフ

ここからは、さらにグラフ(graph)を使って、定義域という集合を分割することについて説明します。

ここまで説明した内容と合わせると、高校数学で学習する絶対値についての根本的な理解に役立つかと思います。

f(x) = |x - 3| という絶対値つきの関数のグラフを、後ほど図に描いています。

関数なので、定義域という集合の各要素(元)に対して、ただ 1 つの値を対応させます。
※ 定義域は、実数全体で考えています。

f(x) = |x - 3| は、定義域に含まれている実数 x に対して、|x - 3| という実数を対応させている実数値関数です。

x = 3 の前後で、グラフの式が絶対値を外して表すと、変化していることが分かります。

この理由は、絶対値の定義のためです。「負の実数については、その実数にマイナスをつけた実数を対応させる」という定義です。

また、「0 以上の実数については、その実数そのものを対応させる」という定義です。

これらの内容を考慮してグラフ(graph)を表す式を導いています。

グラフ ; 記号の導入

絶対値の定義に基づき、定義域である実数全体から成る集合 R を分割するにあたって、記号を導入します。


R<3 = { a ∈ R | a < 0 },
R3≧ = { a ∈ R | a ≧ 0}


R<3 は 3 よりも小さい実数全体から成る R の部分集合です。

そして、 R3≧ は 3 以上の実数全体から成る R の部分集合です。

R = R<3 ∪ R3≧ というように、定義域である実数全体 R を部分集合どおしの和集合で表すことができています。

しかも、 R<3 と R3≧ の共通部分が空集合になっています。

※ どの二つの部分集合も共通部分が空集合となっている部分集合たちの和集合で表すことを集合の分割といいます。

定義域 R を分割

R = R<3 ∪ R3≧ と定義域を二つの部分集合で分割したことによって、青色のグラフの式と赤色のグラフの式が明確に分かれます。

x ∈ R<3 のときは、x < 3 です。

つまり、x - 3 < 0 となります。

|x - 3| の値を考えたときに、x - 3 が負の実数なので、絶対値の定義から、マイナスがつきます。

よって、
x ∈ R<3 のとき、
f(x) = |x - 3|
= -(x - 3) = -x + 3

これが、青色のグラフの式です。

一方、x ∈ R3≧ のとき、x - 3 ≧ 0 となるので、
f(x) = |x - 3| = x - 3 となっています。

これが、赤色のグラフの式です。

グラフの平行移動

二次関数の単元などで出てくるグラフの平行移動を考えてみます。

先ほどの f(x) = |x - 3| を横軸である x 軸方向に -3 平行移動した関数 g を考えます。

x に x + 3 を代入すると、平行移動後の式となります。

すなわち、
g(x) = f(x + 3) = |(x + 3) - 3| となります。

つまり、平行移動後の関数の式は、
g(x) = |x| となります。

f(x) = |x - 3| は、点(3, 0) の位置で折れているグラフでした。

しかし、
x 軸方向に -3 平行移動した g(x) = |x| のグラフだと、点(0, 0) の位置で折れることになります。

絶対値を使った文字式の式変形と、平行移動に関する関数を表す式が、うまい具合に連動しています。

平行移動の公式

実数 x に対して、h(x) という実数を対応させる関数を h とします。

この関数のグラフを x 軸方向に p だけ平行移動してできるグラフを表す式は、h(x - p) となります。

また、y = h(x) のグラフを縦軸方向に q だけ平行移動してできるグラフを表す式は、
y - q = h(x) となります。

この公式を証明するには、数学2 で学習する軌跡の内容を使います。

ただ、この内容まで理解しなくても、数学1 の段階では、平行移動の公式として使えば良いかと思います。

絶対値 :数学3の関数の合成

数学3で、関数を合成した合成関数を学習します。

昔の高校数学のカリキュラムを見ると、数学1や数学2の内容で、関数の合成についての説明がありました。

かつてのカリキュラムだと、文系の方も、合成関数についての認識を学習していたようなので、もう少し頑張ると理解できるかもしれません。

f(x)=|x-3|とg(x)=「xの二乗」を合成

g(x) = x2 という二次関数は、定義域に含まれている実数 x に対して、x2 という実数を対応させる関数です。

f(x) = |x - 3| は、実数 x に対して、
|x - 3| という実数を対応させる関数です。

f(x) は x - 3 が負の実数のときには、マイナス「-」をつけて -(x - 3) を対応させます。

x - 3 が 0 以上の実数のときは、
そのまま x - 3 を対応させるというのが絶対値の定義でした。

合成関数 f・g という関数は、定義域に含まれている実数 x に対して、まず g(x) を対応させます。

そして、さらに 実数 g(x) に f(g(x)) を対応させます。

and という英語ですが、論理の「かつ」を表すのですが、A をしてから、and (そして)、連続して B を行うという意味を表すときもあります。

and という接続詞についての英文法の内容ですが、この連続して動作を二つ行うという要領で、合成関数を考えると分かりやすいかと思います。

定義域に含まれている実数 x をまず関数 g で移します。

x に対して、g(x) という値である x2 が対応します。

そして、x2 も実数なので、
この実数 x2 を関数 f で移すことができます。

x2 に対して、
f(x2) の値である |x2 - 3| を対応させます。

ややこしいときには、x2 = u とでもおいて見てください。

f(u) = |u - 3| が f の対応の定義でした。この後、u を再び x2 に戻すと、
f(x2) = |x2 - 3| となります。

関数 g の記号を使うと、x2 に対して f(x2) を対応させることを、
f(g(x)) = |x2 - 3| と表します。

ゆえに、実数 x に対して結局、
|x2 - 3| を対応させたということになります。

この対応のことを合成関数の記号では、
f・g(x) と表します。

大切なので、もう一度書きます。

まず、実数 x に対して g(x) を対応させます。そして、実数 g(x) に対して f(g(x)) を対応させます。

したがって、結局、定義域に含まれている実数 x に対して f・g(x) = f(g(x)) を対応させるということになります。

すなわち、x → |x2 - 3| という対応です。

最後に、大学で使う記号を使った論理的な考察について述べておきます。

論理的に式変形

【大学の内容】

x, y という二つの実数について、
(x + y + |x – y|) ÷ 2
= max{x, y} である。


max min という記事で最大・最小の定義について解説をしています。

<証明>

次のように場合分けをします。

【場合1】 x ≧ y のとき
【場合2】 x < y のとき

二つの与えられた実数 x と y について、【場合1】の可能性と、【場合2】の可能性しかありえないので、すべての場合が出尽くしたことになります。

今回の場合分けでは、同時に max {x, y} の値を決定できます。

まず【場合1】のときから議論します。

max {x, y} の定義より、
max {x, y} = x ・・・①

x - y ≧ 0 なので、絶対値の中身が 0 以上となり、絶対値がそのまま外れます。

つまり、|x - y| = x - y です。

よって、分子について、
x + y + |x - y| = x + y + (x - y) = 2x

したがって、右辺について、
「分子 ÷ 分母」を計算すると、
2x ÷ 2 = x となります。

①より、左辺の値も x だったので、左辺と右辺のどちらも値が x なので、【場合 1】のときに、等式が成立していることが確認できました。

【場合2】 x < y のときを次に考えます。

このとき、max {x, y} の定義から、
左辺について、
max { x, y} = y ・・・②

一方、|x - y| について、絶対値の中身が、x - y < 0 なので、マイナスをつけて絶対値を外します。

つまり、|x - y| = -(x -y) となります。

したがって、右辺の分子の値は、
x + y + |x - y|
= x + y -(x - y) = 2y となります。

よって、「分子 ÷ 分母」を計算した右辺の値は、
2y ÷ 2 = y です。

ゆえに、②から左辺の値も y だったので、【場合 2】のときにも等式が成立しています。

以上、【場合1】【場合2】より、与えられた等式が成立していることが証明できました。【証明完了】

最大値と絶対値が使われている等式だけに、見た目が複雑そうでした。

しかし、落ち着いて高校数学で学習したことを使って考えていくと、結局、すべての起こり得る場合について、等式が成立していることに着地しました。

中学の数学でも論理の内容が出てきていまして、中学の図形を使うことで、高校の論理についての理解を深める良い練習になります。

平行四辺形-定義という記事で、そのような論理についての内容を解説しています。

これで、このブログ記事を終了します。

読んで頂き、ありがとうございました。

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