1の3乗根 ω(オメガ) | 3乗すると1になる虚数オメガについての等式
" 1の3乗根 “は、3 乗すると 1 になる数です。
このうち、1 ではない数をオメガ(ω)とギリシャ文字で置きます。
すると、この ω について、基本的な等式が導けます。
また、ω についての複数の等式と、因数定理を合わせて高校の数学IIBCの内容がつながります。
多項式の因数についての理解も深めつつ、オメガを学習です。
まず、オメガの定義から述べ、ω についての等式を導きます。
数学IやIIで学習した基礎的な計算で、足場を固めます。
1の3乗根 :ω(オメガ)とは何か
1 の 3 乗根とは、3 乗すると 1 になる数のことです。
すなわち、方程式 x3 = 1 の解のことです。
もちろん、x = 1 も解の一つなので、1 は、1 の 3 乗根のうちの一つです。
1 の 3 乗根のうち、1 ではない数が、今回のブログ記事の主役です。
それらは、具体的に計算して、どんな数になっているのかを見ることができます。
x3 = 1 の解であることは、
x3 - 1 = 0 の解であることと同値です。
x3 - 1 に 3乗の因数分解公式を使うと、
x3 - 1 = (x-1)(x2+x+1)
1 の 3 乗根のうち、1 ではない数は、
x2 + x + 1 = 0 の解ということになります。
この二次方程式の解は、異なる二つの虚数解となっています。この虚数解のうち、一つを ω(オメガ)とします。
これで、ω が定義できました。
実際に計算をして、ω がどのような虚数になっているのかを見てみます。
1ではない1の3乗根
x2 + x + 1 = 0 の解は、虚数単位 i を用いた虚数となっています。
どちらでも良いので、片方の解を ω とします。
図の一番下に書いている式から、片方の虚数解を二乗すると、もう片方の虚数解に一致します。
そのため、ω2 について、
(ω2)2 + ω2 + 1 = 0 … (1)
ω2 も x2 + x + 1 = 0 の解なので、x に ω2 を代入すると、0 になり、等式 (1) が成立しています。
x2 + x + 1 は x3 - 1 の因数だったので、
x2 + x + 1 の解であるということは、x3 - 1 の解であることになります。
そのため、ω3 - 1 = 0
つまり、ω3 = 1 … (2)
ここで、指数法則から、
(ω2)2 = ω4
= ω × ω3 = ω × 1 = ω
これを、先ほどの (1) に代入し、降べきの順にすると、ω2 + ω + 1 = 0 … (1)’
ここまでで得られた内容をまとめます。
【ω の性質】
■ x3 - 1 = 0 の三つの解は 1, ω, ω2
■ ω の 3 乗の値は ω3 = 1
■ x2+x+1 = 0 の解より ω2+ω+1 = 0
ω2 と ω について、解と係数の関係を考えても、
ω2 + ω = -1, ω2 × ω = 1 となっていることが分かります。
ω は 3 乗すると 1 になることから、周期性があります。
次に、この周期に着目した考察をしてみます。
1の3乗根 :ωの周期性
ω4 = 1 となることを、先ほど指数法則を使って導きました。
ω5 についても、同様に、
ω5 = ω2 × ω3 = ω2 × 1 = ω2
よって、次のように周期的な繰り返しが起きています。
1, ω, ω2
ω3=1, ω4=ω,ω5=ω2
ω6=1, ω7=ω,ω8=ω2
・・・
指数が 3 ズレても、
1 = ω3 = ω6 = … と同じ値が繰り返されます。
ω = ω4 = ω7 = … という指数を 3 で割った余りが 1 のグループは、どの値も ω となっています。
ω2 = ω5 = ω8 = … という指数を 3 で割った余りが 2 のグループは、どの値も ω2 です。
これで、ω の指数が大きな自然数となっているときに、その指数を 3 で割った余りによって、どの値になっているのかを調べることができます。
周期を利用する例題
【例題】
x2 + x + 1 = 0 の解を ω とするとき、
ω10 + ω 5 + 3 の値を求めてください。
解の公式を使って導いた値を代入して計算をするのは困難です。そこで、ω についての周期性を利用して計算を進めます。
10 を 3 で割ったときの余りが 1 なので、
ω = ω4 = ω7 = … のグループです。
よって、ω10 = ω
また、5 を 3 で割ったときの余りは 2 なので、
ω2 = ω5 = ω8 = … のグループです。
そのため、ω5 = ω2
よって、
ω10 + ω 5 + 3
= ω2 + ω + 3
= (ω2 + ω + 1) + 2
= 0 + 2= 2
これが、求める値です。
ω2 + ω + 1 = 0 という ω についての等式も使いました。
この周期性ですが、旧課程の整数の性質で扱われていた余りで類別するという内容です。
整数の性質が扱われていなかったときも、このような計算を複素数がらみの問題で出題されていたので、押さえておくと良いかと思います。
最後に、ω に関連する証明問題で役に立つ定理を証明します。
1の3乗根 :ωに関連する証明問題
ここからは、ω と因数定理を合わせた考察が大切になります。
【因数定理】
方程式 f(x) = 0 の解が、x = a のとき、
多項式 f(x) は (x - a) を因数にもつ。
(つまり、f(x) は (x - a) で割り切れる)
この因数定理を使って、命題を一つ証明します。
x2 + x + 1 で多項式 f(x) が割り切れるかどうかというときに、役に立つ命題です。
直接、多項式の計算ができないときに力を発揮する命題です。
方程式の解と、次数 1 の因数と、割り切れるということをつなげて、数学IIBの復習をしつつ、数学Cの内容を学習するという姿勢が大切になるかと思います。
役に立つ命題
【命題】
多項式 f(x) が、多項式 x2 + x + 1 で割り切れるための必要十分条件は、
f(ω) = 0 かつ f(ω2) = 0 である。
<必要性の証明>
f(x) が x2 + x + 1 で割り切れたとします。
すると、ある多項式 Q(x) が存在して、
f(x) = (x2 + x + 1)Q(x)
ω と ω2 は、x2 + x + 1 の解だから、
f(ω) = f(ω2) = 0
<十分性の確認>
逆に、f(ω) = 0 かつ f(ω2) = 0 だとします。
因数定理より、ある多項式 Q(x) が存在して、
f(x) = (x - ω)(x - ω2)Q(x)… (あ)
ここで、
(x - ω)(x - ω2)
= x2 -(ω2 + ω)x + ω3
ω についての性質から、
ω2 + ω + 1 = 0 なので、
ω2 + ω = -1 です。
そして、ω3 = 1 だったので、
(x - ω)(x - ω2)
= x2 + x + 1 … (い)
(い) を (あ) に代入すると、
f(x) = (x2 + x + 1)Q(x)
よって、x2 + x + 1 は f(x) の因数なので、
f(x) は x2 + x + 1 で割り切れます。【証明完了】
ω(オメガ)という 1 の 3 乗根の内容は、
数学Cのド・モアブルの定理と合わせて見ておくと良いかと思います。
複素数平面も合わせて
この ω は、それ自身が 1 ではなく、3 乗すると初めて 1 となる数です。そのため、正確には、「1 の原始 3 乗根」といいます。
cos120°+ i sin120°,
cos240° + i sin240°,
cos360° + i sin360°
これら三つの複素数に対応する複素数平面上の点は、原点中心の単位円の円周上の点です。
ω = cos120°+ i sin120° として、ド・モアブルの定理を使って計算をします。
絶対値が 1 なので、二乗すると、偏角の大きさが 2 倍となることから、
ω2 = cos240° + i sin240°
同様に、
ω3 = cos360° + i sin360° = 1
よって、cos120°+ i sin120° は、それ自身は 1 ではなく、3 乗すると 1 となることから、
x3 - 1 = 0 の解です。
しかも x2 + x + 1 = 0 の解です。
このように、ω は複素数平面の内容とつながります。
さらに、大学の内容にもつながります。
それ自身は 1 でなく、n 乗すると初めて 1 となる数を「1 の原始 n 乗根」といいます。
この 1 の原始 n 乗根の内容は、円分多項式の定義に使われます。
大学の内容へ踏み込むためには、重根の判定方法と、オイラーのファイ関数の知識が大切になります。
それでは、これで今回の記事を終了します。
読んで頂き、ありがとうございました。