等差中項 | 公式の導出から解説し典型な問題で練習

等差中項-表紙

" 等差中項 “という数列の単元を学習し始めたときに出てくる内容について、その公式の導出から解説をしています。

その公式を導くときの過程を押さえておくと、具体的な数字を使った問題を練習するときに等差数列についての理解が深まるかと思います。

同じ数であっても、未知数を文字を使って表すときに、文字での表し方が複数通り考えられます。

そのため、どのような文字式で未知数を表すと効率良く等式(方程式)が作れるのかということを意識する練習も大切になります。

等差中項の内容は、まさに文字の置き方が決め手になります。

公式として暗記をするというよりも、その導き方にこそ力点が置かれる内容となっています。

それでは、一般的な文字を使った公式を導きます。

交差から一般項の公式を導くことや和の公式の証明は、記事の最後で解説をしています。
※ 目次の該当箇所を押すとジャンプします。

等差中項 :公式の導出

等差中項は、等差数列についての公式になります。

そのため、等差数列についての基礎を押さえておきます。

等差数列という数列は、隣り合う項の値どうしの差が、常に一定となっている数列のことです。

この一定の差のことを交差といいます。

数列 {an} が交差 d の等差数列となっていたとします。

a5-a4 = d ですし、
a9-a8 = d でもあります。

右の項から左の項を引いた値が一定値 d という数列になります。

この一定の差を利用して導かれる公式が等差中項になります。

公式の証明

【等差中項】

x, y, z という三つの数が、この並びの順に交差 d の等差数列となっているとする。

このとき、
2y = x + z となっている。


この公式を証明します。

証明で、どのように文字で表すのかということに注目しておくと、練習問題などを解くときに、その文字の置き方が役立ちます。

真ん中の数を中心に、交差が一定ということに注意して、次のような等式を考えます。

y - x = d,
z - y = d となっています。

この二つの等式は、差が一定値 d ということを式にしたものです。

ここから、y を左辺にした式へと書き換えます。

y = x + d,
y = z - d となります。

連立方程式の加減法の要領で、辺々足し合わせます。

すると、
2y = x + z となり、d を消去した等式が得られます。

これで、導きたかった結論が得られました。

ちなみに、
2y = x + z を y について解くこともできます。

y = (x + z)÷2 となります。

これは、x と z の平均値が、真ん中の数 y の値に等しいということを意味しています。

ちなみに、数学 I のデータの分析について、平均値に関連した期待値E(X) について解説した記事も投稿しています。

それでは、導いた等差中項の公式を使う練習問題を扱ってみます。

等差中項 :典型的な問題

【練習問題】

x, y, z という三つの数が、この並びの順に等差数列をなしていたとします。

そして、y = 5 で、三つの数の積が 80 となっていたとします。

このとき、x, z の値たちを求めてください。


等差中項の公式を使います。

すると、
2y = x+z で、
y = 5 だから、
x+z = 10 …(1)

これで、一つ方程式が得られました。

また、問題文の内容を式にしてみます。

三つの数の積について、
xyz = 80 です。

y = 5 なので、
5xz = 80, つまり、
xz = 80÷5 = 16 …(2)

ここまでで得られた式をまとめておきます。

x+z = 10 …(1)
xz = 16 …(2)

(1) から z = 10-x です。

これを (2) へ代入します。

すると、
x(10-x) = 16 です。

10x-x2 = 16 より、
x2-10x+16 = 0 となります。

左辺を因数分解することができます。

(x-2)(x-8) = 0 です。

場合分けをして求める

これで、
x = 2 または x = 8 ということになります。

「または」なので、二つの可能性があります。

このようなときには、場合に分けて答えを求めます。

【x = 2 の場合】

x = 2 より、
xz = 16 から、z = 8 です。

このとき、
(x, y, z) = (2, 5, 8) です。

2, 5, 8 と、確かに交差 3 の等差数列となっています。

一つの答えが、
x = 2, z = 8 です。

残りの場合についても考えます。

【x = 8 の場合】

(1) より、x+z = 10 だから、
8+z = 10 より、z = 2 となります。

(x, y, z) = (8, 5, 2) という状況です。

8, 5, 2 は、確かに交差 -3 の等差数列となっています。

これで、もう一つの答え
x = 8, z = 2 が得られました。

このように、数とだけしか問題文で述べられていないときだと、二次方程式の解が二つ出てきて、場合分けをして答えを求めることもあります。

今回は、x = 2 でも x = 8 でも、どちらも答えが得られましたが、中には片方が問題文の設定に合わないということが起きるかもしれません。

未知の数値が求まったら、本当に等差数列となっているのかまで確かめておくことも大切になります。

もし、等差数列になっていなかったら、そのときの場合を除外することになります。

今、スムーズに答えまで辿り着きましたが、万が一、等差中項の公式を忘れたときのために、交差に注目した解き方も述べておきます。

真ん中の数を中心に交差を利用して等式を作ります。

x+z = 10 …(1)
xz = 16 …(2) という式が、同じように導けます。

公式を忘れたときのために

x, y, z という三つの数が、この並びの順に等差数列をなしていたとします。

そして、y = 5 で、三つの数の積が 80 となっていたとします。

このとき、x, z の値たちを求めてください。


この等差数列の交差を d と置きます。

等差数列なので、
y-x = d,
z-y = d です。

辺々引き未知数 d を消去します。

(y-x)-(z-y) = 0 です。

y = 5 を代入すると、
5-x-z+5 = 0 です。

-(x+z) = -10 より、
x+z = 10 …(1)

これで、先ほどの等式の一つが得られました。

今度は、三つの数の積が 80 ということを使います。

xyz = 80, y = 5 なので、
xz = 16 …(2)

これで、先ほどと同じ状態となりました。

結果は同じになります。

忘れても、自力で復元できるレベルの公式になります。

ただ、真ん中の数に注意して、うまく等式を作ることが必要なので、等差中項の内容に慣れておくと良いかと思います。

等差中項の公式をまとめておきます。

等差中項-公式

真ん中の数の2倍が、左の項と右の項の和という等式になります。

交差から一般項へ

等差数列は、隣り合う二つの項の差が一定となっています。

すなわち、右隣りの項の値から左隣りの項の値を引くと、必ず一定の値となります。

この一定の値を交差といいます。

逆に述べると、初項から順に交差の値を足していくと、どんどんと項の値が分かります。

初項 a、交差 d の等差数列を {an} とします。

第 1 項の値は a です。

この a に交差 d を加えると第 2 項の値となります。

つまり、
a+d が第 2 項の値となっています。

さらに、d を加えると第 3 項の値となります。

すなわち、
(a+d)+d = a+2d が第 3 項の値です。

一般に、n を自然数としたときに、第 n 項の値を初項 a と交差 d を用いて表すことができます。

第 n 項の値は、
第 1 項の値 a に、
(n-1) 個の d を加えたものとなっています。

d ばかり (n-1) 個を足し合わせた値は、
d × (n-1) = (n-1)d です。

そのために、
a+(n-1)d が第 n 項の値です。

各自然数 n に対して第 n 項の値を表す式のことを一般項といいます。

そのため、初項 a、交差 d の等差数列の一般項は、a と d と n を用いて次のように表すことができます。

すなわち、
an = a+(n-1)d が数列 {an} の一般項となっています。

和の公式の証明

等差数列の一般項を表す式を求めたついでに、等差数列の和の公式を示しておきます。

初項 a, 交差 d の等差数列の第 k 項の値は、a に d を (k-1) 個だけ加えることで得られます。

ak = a + (k-1)d となります。

初項から第 n 項までの和を S として、逆向きに和をとっても同じ S ということを等式で、次のように表します。

S = a1+…+an,

S = an+…+a1

ここで、1 以上 n 以下の自然数 k について、上と下の和が一定になっていることを確かめます。

ak + an-k+1 は、

(a+(k-1)d) + {a+(n-k+1-1)d} となります。

文字式の計算を整理すると、

2a + (n-1)d となります。

ここで、a と d と n は、はじめに与えられた定数としていることに注意です。

値が動く変数 k がキャンセルして、消えていることが公式を導く決め手となります。

ここで、1 以上 n 以下のどの自然数 k についても、
ak + an-k+1 = 2a + (n-1)d と一定数です。

k を 1 から n まで動かして足し合わせたものが、2S = S + S です。

よって、2S は、2a + (n-1)d を n 個分だけ足し合わせたことになります。

つまり、
2S = n×{2a+(n-1)d} です。

両辺に 1/2 を掛けると、
S = n/2 × {2a+(n-1)d} となります。

これが等差数列の和の公式です。

ちなみに、
2a+(n-1)d
= a+{a+(n-1)d} で、
a1 = a, an = a+(n-1)d です。

そのため、
S = n/2 × {a1+an} と書き換えることもできます。

これは、初項の値と末項である第 n 項の値の平均値を n 倍したものとなっています。

今回は、等差数列についての論点の一つを扱いましたが、他の内容も等差数列にはあります。

関連する記事

今回の記事で扱った等差数列に関する他の論点として、調和数列があります。

逆数が絡む内容ですが、等差数列の定義が土台となっています。

ここまで等差数列に慣れてくると、次は等比へと進みます。

等差数列と交差の関係は、隣り合う二項についての差です。

これを隣り合う二項の商について考えると等比数列の内容となります。

そのため、等差数列の要領で、自然と等比数列の内容へと議論を進めることができるかと思います。

これで、今回の記事を終了します。

読んで頂き、ありがとうございました。