写像による像と逆像 | 包含関係についての証明を定義に基づいて述べる練習

写像による像と逆像

写像による像と逆像 「f(S) や、像の部分集合に対する逆像」についての包含関係を考えることがあります。

定義に基づいて論理的に記述し、どのようなプロセスで結論が導かれているのかを把握することは数学の基礎を築く上で大切になります。

よく数学で使われる内容を例題にし、論理を使う練習をすると良いかと思います。

途中の証明を省略せずに述べておきますので、大学の数学で集合論の入門的な内容を学習する際の参考になれば幸いです。

大学に入学した当時、高校の数学で、あまり使わない論理の記号に慣れるのに苦労した記憶があります。

定義を正しく把握し、論理を適切に使うために、省略のない記述を参考にすると良いかと思います。

大学受験のときは、早く楽に記述する方法が、時間制限の中での答案の作成に役立ちます。

一方、大学の数学を学習し始めたときに、数学独特の表現に慣れていないために、端的な証明の内容を追えないこともあるかと思います。

数学の表現に慣れるために、焦らず、きっちりと基本となる論理の運用を身につける練習をすると良いかと思います。

まずは、写像による像について、大学の数学で頻出の内容を記述証明します。

写像による像と逆像 :基礎となる例題

共通部分と和集合の定義を押さえておくことが必要になります。

定義に基づいて記述をするので、定義を知ることからスタートになります。


【共通部分と和集合の定義】

A と B を集合とする。

x ∈ A ∩ B とは、
x ∈ A かつ x ∈ B

x ∈ A ∪ B とは、
x ∈ A または x ∈ B

ブログ共通部分と和集合より

この内容が、写像についての定義域や値域の部分集合について用いられます。

高校の数学から使っている定義域と値域ですが、これらも集合の言葉で記述された定義があります。

定義を押さえ、数学の論理に基づいて推論を進めることになります。

【像と逆像の定義】

S と T を空でない集合とする。

f : S → T という写像と、S の部分集合 X について、{f(x) | x ∈ X} を X の f による像といい、f(X) と表す。

すなわち、a ∈ f(X) とすると、ある x ∈ X が存在して、f(x) = a となる。

また、T の部分集合 Y について、
{x ∈ S | f(x) ∈ Y} を Y の f による逆像(原像)といい、f-1(Y) と表す。

すなわち、任意の b ∈ f-1(Y) に対し、
f(b) ∈ Y である。

f(X) は、f について、定義域の部分集合 X に含まれている元に対応するものを全て集めた集合です。

そのため、f の値域の部分集合となっています。

X が定義域 S そのもののときは、f(S) は f の値域です。

そして、
定義域に含まれている元で、f で移すと必ず Y に含まれるものたちを全て集めたものが、f-1(Y) です。

そのため、f-1(Y) は、定義域 X の部分集合となっています。

ここまでで述べた定義を使う練習となる例題です。


【例題1】

写像 f : S → T について、
S の部分集合 A, B と T の部分集合 C, D について次が成立します。

(1) f(A ∪ B) = f(A) ∪ f(B)

(2) f(A ∩ B) ⊂ f(A) ∩ f(B)


これら二つの命題を証明します。

和集合の像

f(A ∪ B) = f(A) ∪ f(B) を証明します。
 
<(1) の証明>

任意の a ∈ f(A ∪ B) を取ります。

像の定義から、
ある x ∈ A ∪ B が存在して、a = f(x)

和集合の定義より、
x ∈ A または x ∈ B

x ∈ A の場合、像の定義から、f(x) は f(A) の元なので、a = f(x) ∈ f(A)

x ∈ B の場合、像の定義から、f(x) は f(B) の元なので、a = f(x) ∈ f(B)

よって、起こり得るすべての場合について、
a ∈ f(A) ∪ f(B)

したがって、部分集合の定義から、
f(A ∪ B) ⊂ f(A) ∪ f(B) … (あ)

逆に、任意の b ∈ f(A) ∪ f(B) を取ります。

和集合の定義から、

b ∈ f(A) または b ∈ f(B)

b ∈ f(A) の場合、像の定義から、
ある t ∈ A が存在して、
b = f(t) ∈ f(A)

ここで、A ⊂ A ∪ B より、
f(A) ⊂ f(A ∪ B) となっているので、
b = f(t) ∈ f(A ∪ B)

b ∈ f(B) の場合、像の定義から、
ある s ∈ B が存在して、
b = f(t) ∈ f(B)

B ⊂ A ∪ B だから、同様に、
b = f(t) ∈ f(A ∪ B)

よって、いずれの場合にせよ、
b ∈ f(A ∪ B) となっています。

部分集合の定義から、
f(A) ∪ f(B) ⊂ f(A ∪ B) … (い)

(あ), (い) より、二つの集合が等しいことの定義から、f(A ∪ B) = f(A) ∪ f(B)【証明完了】

部分集合の定義と、二つの集合が等しいということの定義も使いました。

集合 K1 が集合 K2 の部分集合であることの定義は、任意の x ∈ K1 に対して、x ∈ K2 となることです。

要素(元)というブログ記事でも、高校の内容について部分集合の解説をしています。

K1 ⊂ K2 かつ K2 ⊂ K1 となることが、
K1 = K2 の定義です。

部分集合の定義と、二つの集合が等しいということの定義は、大学の数学で頻繁に使うので、押さえておくと良いかと思います。

「または」が出てくると、場合分けの発想をします。高校の場合の数・確率のときの考え方が、大学の数学を学習するときにも役立ちます。

では、次に共通部分と写像による像についての命題である (2) の証明をします。

共通部分の像

f(A ∩ B) ⊂ f(A) ∩ f(B) を示します。

<証明>

任意の x ∈ f(A ∩ B) に対し、像の定義から、
ある t ∈ A ∩ B が存在し、x = f(t)

t ∈ A ∩ B ⊂ A なので、
x = f(t) ∈ f(A)

さらに、t ∈ A ∩ B ⊂ B なので、
x = f(t) ∈ f(B)

よって、x = f(t) ∈ f(A) ∩ f(B)

部分集合の定義から、
f(A ∩ B) ⊂ f(A) ∩ f(B)【証明完了】

今、f(A ∩ B) ⊂ f(A) ∩ f(B) を示しました。これについては、等号が成立するとは限りません。等号が成立しない例を示しておきます。

A = {0, 1}, B = {0, -1} とし、
f(x) = 3x2 という二次関数を考えます。

A ∩ B = {0} なので、f(A ∩ B) = {0}

一方、f(A) = {0, 3}, f(B) = {0, 3} なので、
f(A) ∩ f(B) = {0, 3}

よって、f(A ∩ B) ≠ f(A) ∩ f(B)

このように、一つでも反例があると、命題は偽となってしまうので、この例題の (2) は等号になっていません。

それでは、次に逆像についての基礎的な例題を扱います。

写像による像と逆像 :逆像についての例題

【例題2】

写像 f : S → T について、S の部分集合 A, B と T の部分集合 C, D について次が成立します。

(3) f-1(C∪D)=f-1(C)∪f-1(D)
(4) f-1(C∩D) = f-1(C)∩f-1(D)


逆像について、
f-1(C∪D), f-1(C), f-1(D) たちは、定義域の S の部分集合となっているということから議論を進めます。

それぞれの元を f で移すと、
C∪D, C, D に含まれます。

それでは、(3) から証明をします。

和集合の逆像

任意の a ∈ f-1(C∪D) を取ります。

この a ∈ S の f による像は、
f(a) ∈ C ∪ D

和集合の定義より、
f(a) ∈ C または f(a) ∈ D

f(a) ∈ C の場合、a ∈ S は f(a) ∈ C となっているので、C の f による逆像の定義を満たしているので、a ∈ f-1(C)

f(a) ∈ D の場合、
同様に、a ∈ f-1(D)

よって、起こり得るすべての場合について、
a ∈ f-1(C)∪f-1(D)

部分集合の定義から、
f-1(C ∪ D) ⊂ f-1(C) ∪ f-1(D) … (う)

次に、任意の b ∈ f-1(C)∪f-1(D) を取ります。

和集合の定義から、
b ∈ f-1(C) または b ∈ f-1(D)

b ∈ f-1(C) の場合、
f(b) ∈ C ⊂ C ∪ D なので、b ∈ S について、f-1(C ∪ D) の定義から、
b ∈ f-1(C ∪ D) となります。

b ∈ f-1(D) の場合についても、
f(b) ∈ D ⊂ C ∪ D なので、
f-1(C ∪ D) の定義から、
b ∈ f-1(C ∪ D) です。

よって、いずれの場合についても、
b ∈ f-1(C ∪ D) となっています。

すなわち、
f-1(C) ∪ f-1(D) ⊂ f-1(C ∪ D) … (え)

(う), (え) より、
f-1(C ∪ D) = f-1(C) ∪ f-1(D)【証明完了】

では、(4) の証明に移ります。

共通部分の逆像

f-1(C∩D) = f-1(C)∩f-1(D) を証明します。

やはり、逆像なので、定義域 S の部分集合となっているということを利用して証明を進めます。

<(4)の証明>

任意の a ∈ f-1(C∩D) を取ります。

a ∈ S について、
f-1(C∩D) の定義から、f(a) ∈ C ∩ D

共通部分の定義から、
f(a) ∈ C かつ f(a) ∈ D

a ∈ S は f(a) ∈ C だから、a は f-1(C) に含まれています。

さらに、f(a) は D にも含まれているので、a は f-1(D) にも含まれていることになります。

よって、共通部分の定義から、
a ∈ f-1(C) ∩ f-1(D)

つまり、
f-1(C ∩ D) ⊂ f-1(C) ∩ f-1(D) … (お)

また、任意の b ∈ f-1(C)∩f-1(D) を取ります。

共通部分の定義から、
b ∈ f-1(C) かつ b ∈ f-1(D)

よって、
f(b) ∈ C かつ f(b) ∈ D

共通部分の定義より、
f(b) ∈ C ∩ D

b ∈ S は、f(b) ∈ C ∩ D となっているので、逆像の定義から、b ∈ f-1(C ∩ D)

したがって、
f-1(C) ∩ f-1(D) ⊂ f-1(C ∩ D) … (か)

(お), (か) より、
f-1(C ∩ D) = f-1(C) ∩ f-1(D)【証明完了】

像と逆像-まとめ

数学では、定義に基づいて、論理を適切に使うことで示すことができる命題もあります。

できそうなところから、着実に理解を深めていくと、大学数学の入門内容が分かってくるかと思います。

関連する内容について、全単射という記事も投稿しています。

また、写像についての基礎的な内容を使う練習として、実数列全体が実数体上の無限次元のベクトル空間(線形代数)になっていることを解説しています。

それでは、これで今回のタロウ岩井のブログ記事を終了します。

読んで頂き、ありがとうございました。