一次分数型の漸化式 | 解き方を事前に知っておき、テストまでに使えるように練習
" 一次分数型の漸化式 “を特性方程式を用いて解くことについて説明しています。
この特性方程式は、特殊なので、事前に知っておかないとテストの時間内に思いつくのは厳しいです。
解き方の流れを押さえ、具体的な数字を使った練習問題で、テストまでに練習しておくと良い漸化式となります。
事前に解き方を知っておかないと、自力で考えると試験時間が終了してしまうかもしれません。昔から、出るときは出る漸化式です。
幸い、特性方程式は覚えやすいので、試験までに余裕をもって解き方を知った上で、練習しておくと得点できるかと思います。
特性方程式は二次方程式で、異なる二つの解をもつ場合と、重解をもつ場合に分けて解き方を把握します。
見た目が難しそうなので、手つかずになりそうですが、既に知っている計算手順たちです。
一次分数型の漸化式 :覚えやすい解き方
図の一番上に書いてあるのが、分数型の漸化式です。そして、下から二行目に書いているのが、その特性方程式です。
特性方程式は、覚えやすいです。
an+1 と an を他の文字で x とでも置くと、係数 r, s, p, q は、そのままです。
x = (rx + s) / (px + q) が特性方程式です。
出だしの特性方程式が覚えやすいので、余裕をもって練習をしておくと、得点につながります。
特性解も楽勝
出だしの特性方程式が覚えやすく、しかも、すぐに特性解を求めることができます。
x = (rx + s) / (px + q) と覚えやすい特性方程式
→ 分母を払うと二次方程式
→ 二次方程式を解くと特性解
出だしが覚えやすく、既に知っている二次方程式の解き方で特性解が得られます。
x = (rx + s) / (px + q) の両辺に x を掛け整理すると、
px2 + (q - r)x - s = 0 … ★
この二次方程式が、異なる二つの解をもつときに、漸化式がスムーズに解けます。
学習の始めは、シンプルな例で、スムーズに漸化式が解ける異なる二つの解をもつタイプで練習すると習得しやすいかと思います。
一次分数型の漸化式 :異なる二つの解のとき
px2 + (q - r)x - s = 0 … ★ の二つの解が、x = a と x = b のときについて、漸化式の解き方を説明します。
x = a は★の解なので、
代入すると、pa2 + (q - r)a - s = 0
ここで、分配法則を使って括弧を外すと、
pa2 + qa - ra - s = 0 となります。
少し技巧的ですが、左辺を変形し、
(pa - r)a + qa - s = 0 とします。
括弧がある項を右辺に移項すると、
qa - s = -a(pa - r) となります。
両辺を -1 倍すると、
s - qa = a(pa - r) … (あ) となります。
与えられた漸化式の両辺に -a を加えてから、導いた等式の左辺を右辺に置き換えます。その後、分数を通分すると、(あ) から分子が因数分解できます。
すると、次のように等式 (1) が得られます。
このようにして、
px2 + (q - r)x - s = 0 … ★の解 x = a から、(1) という等式が得られます。
解 x = b についても、a の代わりに b として、全く同じ議論をすると、等式 (2) が得られます。
※ 文字式の計算手順で、解 a が解 b に置き換わった状態で議論が進むので、機械的に a を b に置き換えた結論に達します。そのため、(1) の解 a の部分を解 b に置き換えると (2) になります。
後は、(1) ÷ (2) をすると、等比型の漸化式になります。
pan + q の部分が約分されて無くなります。
(1) ÷ (2) より、
(an+1 - a) / (an+1 - b) =
(r - pa) / (r - pb) × (an - a) / (an - b)
よく見ると、左辺の添え字は n + 1 で、右辺の添え字が n です。
(r - pa) / (r - pb) は、定数なので、等比型の漸化式になっています。
よって、数列{(an - a) / (an - b)} は、
初項が (a1 - a) / (a1 - b) で、
公比が (r - pa) / (r - pb) の等比数列です。
既知の公式に帰着
これで、既に学習した等比数列の一般項を求める公式から、
(an - a) / (an - b) を、与えられた定数と a, b と自然数 n を用いて表すことができます。
その後、an について整理すると、
an が、与えられた定数と a, b と自然数 n を用いて表わされた等式が得られます。
これが、一次分数型の漸化式の特性方程式が、異なる二つの解をもつときの解き方です。
この特性方程式から、特性解を使って、an を定数と n を用いて表すまでを、具体的な数字を使った練習問題で練習しておくと、テストで得点ができます。
学習の始めの段階では、難し過ぎる問題ではなくスムーズに練習できるものを使うと習得しやすいです。
p, q, r, s が整数で、しかも特性方程式の解が異なる二つの実数となっているもので、具体的に手を動かしながら、上で述べた解法を繰り返します。
そうすると、型にはまった分数型の漸化式の問題を確実に得点できるようになるかと思います。
それでは、次に特性方程式が重解をもつ場合についての解き方です。
先ほどは、異なる二つの解があったので、(1) と (2) の二つの等式が得られました。重解のときは、ここが一つしか等式がないため、(1) を (2) で割るということができません。
この部分を乗り越える解法になります。特性方程式が重解をもつときは、途中で漸化式を利用した繰り返し処理を使います。
一次分数型の漸化式 :重解をもつ場合
一般的な解けるという仕組みを述べると複雑になるので、具体的な数字を使った漸化式で、解く手順を説明します。
【具体例】
a1 = 3,
an+1 = (7an-4)/(an+3)
(ただし、n = 1, 2, …)
この数列 {an} の一般項を求めてください。
x = (7x-4)/(x+3) が特性方程式です。異なる二つの解をもつか重解かに関わらず、特性方程式は同じです。
分母を払って整理すると、
x2-4x+4 = 0 となります。
(x-2)2 = 0 より、x = 2 が重解です。
先ほどと同様に、等式を一つ作ります。
与えられた漸化式の両辺を重解の値で引きます。
an+1-2 = (7an-4)/(an+3)-2 となります。
右辺を通分して計算すると、
(7an-4)/(an+3)-(2an+6)/(an+3)
= (5an-10)/(an+3)
= 5×(an-2)/(an+3)
よって、
an+1-2 = 5×(an-2)/(an+3)
(ただし、n = 1, 2, …)
次に、背理法を使って、どの自然数 n に対しても、
an+1-2 ≠ 0 となることを示します。
もし、ある自然数 M が存在して、
aM+1-2 = 0 となったとします。
すると、0 = 5×(aM-2)/(aM+3) となります。
分母を払って、両辺を 5 で割ると、
aM-2 = 0 となります。
つまり、
「aM+1-2 = 0 ならば、aM-2 = 0」が、
n = 1, 2, … について成立しているということになります。
与えられた漸化式は、n = 1, 2, … M について成立しています。
そのため、帰納的な繰り返し処理から、
n+1 以下のどの自然数 k についても、第 k 項の値が 2 ということを示しています。
そうすると、
aM+1 =aM = … = a1 = 2 となります。
しかし、a1 = 3 ≠ 2 なので矛盾です。
よって、背理法から、
どの自然数 n に対しても、
an+1-2 ≠ 0 でなければなりません。
初期値である a1 = 3 ≠ 2 なので、
どの自然数 n についても、
an+1-2 ≠ 0, an-2 ≠ 0 となっています。
よって、
an+1-2 = 5×(an-2)/(an+3) について、両辺の逆数をとることができます。
逆数をとって計算
an+1-2 = 5×(an-2)/(an+3) の両辺について、逆数をとります。
1/(an+1-2) = 1/5×(an+3)/(an-2)
(ただし、n = 1, 2, …)
ここで、an+3 = (an-2)+5 より、
1/(an+1-2) = 1/5×{1+5/(an-2)}
つまり、
1/(an+1-2) = 1/(an-2)+1/5
各自然数 n について、
1/(an-2) = bn と置きます。
bn+1 = bn+1/5
(ただし、n = 1, 2, …)
これは、数列 {bn} が、初項 b1、交差 5 の等差数列であることを示しています。
ゆえに、
bn = b1+1/5×(n-1) です。
※ 土日の過ごし方という記事で、等差数列の一般項について解説をしています。
b1 = 1/(a1-2) = 1/(3-2) = 1 です。
よって、
bn = 1+1/5×(n-1)
= (n+4)/5
bn を元の 1/(an-2) に戻すと、
1/(an-2) = (n+4)/5
両辺の逆数をとると、
an-2 = 5/(n+4) です。
2 を移項して、通分して整理すると、
an = (2n+13)/(n+4)
(ただし、n = 1, 2, …)
これで、数列 {an} の一般項が求まりました。
見た目が複雑ですが、初項の値を確認してみます。
n = 1 を代入すると、
(2+13)/(1+4) = 15÷5 = 3
確かに a1 = 3 と一致しています。
重解の場合には、途中で「任意の・存在する」という大学の数学でよく使う論理記号の内容が絡んでいました。
大学数学を学習し始めるときには、論理を考える高校数学の内容で、慣れておくと良いかと思います。
【関連記事について】
漸化式の学習で、an+1 と an を同じ文字で x と置くことに、戸惑うこともあるかと思います。
これは、数学の推論規則で、既に成立している命題を適用できるということが関わっています。この説明については、特性方程式という記事で、隣接二項間漸化式を用いて解説しています。
発展的な内容としは、連立漸化式という記事も投稿しています。
今回の記事では、分数に関連する漸化式でした。数列について、逆数を考えて分数についての考察をするときがあります。
また、漸化式のように帰納的にドミノ倒しを考えることが多いのが、群数列になります。
仕組みを理解して推論を進めることについて、基本を解説した内容です。
さらに、調和数列について、逆数と分数を通じて解説をしています。
それでは、これで今回のタロウ岩井の記事を終了します。
読んで頂き、ありがとうございました。