偶関数 – 奇関数 | 上端と下端に注目して奇数次の項を消せるときがある【数2】
" 偶関数 – 奇関数 “の定義を把握しておくと、定積分について計算を効率よく進められるときがあります。
偶関数と奇関数の定義の部分が抽象的な数学の記号と言葉で述べられるので、この部分を理解できるようにていねいに解説をします。
その後で、特徴的な積分区間のときに役立つ公式を証明し、最後に練習問題で示した理論を使うことについて解説します。
まずは、偶関数について説明をし、その後で奇関数について説明をするという流れで議論を進めます。
偶関数 – 奇関数 :まず偶関数から
y = f(x) という関数が偶関数というのは、グラフが y 軸(縦軸)について対称となっている関数のことです。
y 軸について対称なので、x に -x を代入しても値が同じになっています。
つまり、
f(-x) = f(x) です。
ここまでの内容ですが、記号と言葉だけだと抽象的なので、定義域に含まれている値として具体的な数字を使って、y 軸について対称ということを説明します。
x が 2 のとき、対応する実数は f(2) です。
そのため、点 (2, f(2)) がグラフ上の点となります。
次に x が -2 のときを考えます。
点 (-2, f(-2)) もグラフ上の点です。
x = 2 と x = -2 が y 軸について対称な値なので、偶関数の定義から、グラフが y 軸対称となっているため、y 座標の値が等しくなります。
つまり、
(2, f(2)) と (-2, f(-2)) は、y 座標の値が同じとなっています。
このことを、
f(-2) = f(2) と表しています。
2 と -2 という具体的な数字を使いましたが、より一般的な文字で数学では表されます。
実数 x について、
偶関数だと、
点 (x, f(x)) と (-x, f(-x)) が y 軸について対称な点となります。
そのため、
f(-x) = f(x) となっています。
この偶関数の定義ですが、積分区間が原点について対称となっているときに、定積分の計算に関する公式が得られます。
偶関数についての公式
y = f(x) を偶関数とします。
そして、[a, -a] という積分区間において定積分を計算します。
すると、
∫-a f(x) dx = 2∫0 f(x) dx となります。
一般的な証明は数学3で行われますが、数2では、指数が偶数となっている x2n についての公式となります。
ただし、n は 0 以上の整数とします。
∫-a x2n dx = 2∫0 x2n dx が数2で使う公式です。
[a, -a] という積分区間において偶関数を定積分するときは、上端だけを考えて下端を 0 とし、その代わりに定積分の値を 2 倍するということです。
下端を 0 にして、後で 2 倍をする方が計算が楽になります。
この内容を証明しておきます。
この公式は、最後に具体的な関数の定積分で使います。
また、偶関数について、偶関数と偶関数の和も偶関数です。
y = f(x), y = g(x) のどちらもが偶関数とします。
このとき、y = f(x)+g(x) も偶関数になっています。
これは、x に -x を代入することで確かめられます。
実際、
f(-x)+g(-x) = f(x)+g(x) となっています。
つまり、y = f(x)+g(x) の x に -x を代入しても値はそのままということになります。
※ 数学3でも関数の和について微分などを考えることは多いです。
次に、奇関数について説明します。
偶関数 – 奇関数 :奇関数について
y = f(x) が奇関数とは、そのグラフが原点について対称なグラフとなっている関数のことです。
この原点について対称ということから、x に -x を代入すると、次のようになります。
すなわち、奇関数では、
f(-x) = -f(x) となります。
これについても、具体的な数値で見てみます。
奇関数なので、
点 (2, f(2)), (-2, f(-2)) は、原点について対称な点となっています。
一方、
(2, f(2)) と原点について対称な点は、
(-2, -f(2)) です。
そのため、
(-2, f(-2)) = (-2, -f(2)) です。
つまり、
f(-2) = -f(2) ということになります。
このことを文字を使って一般的に表すと、
f(-x) = -f(x) です。
この奇関数についての性質から、偶関数のときのように公式が得られます。
奇関数についての公式
y = f(x) を奇関数とします。
そして、[a, -a] という積分区間において定積分を計算します。
すると、
∫-a f(x) dx = 0 となります。
この一般的な証明は数学3で行われます。
数2で扱う奇関数の例は、
f(x) = x2n-1 です。
ただし、n は 0 以上の整数とします。
これについて、
∫-a x2n-1 dx = 0 となることを証明します。
∫-a x2n-1 dx = [x2n/2n]-a
= 1/2n × {a2n-(-a)2n}
= 1/2n × (a2n-a2n)
= 0 ということが証明になります。
上端と下端が絶対値が同じ実数で符号だけが異なるという状況で奇関数を定積分すると、その値が 0 ということです。
数2で扱う奇関数は指数が奇数の x2n-1 です。
積分区間が [a, -a] だと、定積分の値が 0 になるので、消すことができ、計算が楽になります。
それでは、偶関数と奇関数についての公式を踏まえた上で、練習問題で公式が役に立つことを見てみます。
偶関数 – 奇関数 :実践練習
【練習問題】
∫-2(37x3+6x2+59x+3)dx を計算してください。
積分区間が [-2, 2] ということで、偶関数と奇関数の公式を使うチャンスです。
さすがに4つも項があると、そのまま定積分の計算をするのは大変です。
そこで、奇関数の定積分の値が 0 になるということで、消せないかと考えるわけです。
y = 37×3 は奇関数なので、3 次の項を消します。
インテグラルが分配できることを利用し、奇関数の公式をダイレクトに使える状況に式を書き換えてみます。
∫-2(37x3+6x2+59x+3)dx
= ∫-2 37x3 dx+∫-2(6x2+59x+3)dx
= 0 + ∫-2(6x2+59x+3)dx
= ∫-2(6x2+59x+3)dx
これで、3 次の項が消えて計算が楽になりました。
ただ、奇関数はこれだけではなく、まだ消すことができる項があります。
y = 59x = 59x1 は指数が奇数なので奇関数です。
加法を計算する順番を替えて、1 次の項も消せることを示します。
∫-2(6x2+59x+3)dx
= ∫-2(59x+6x2+3)dx
= ∫-2 59x dx+∫-2(6x2+3)dx
= 0 +∫-2(6x2+3)dx
= ∫-2(6x2+3)dx
ここまでの内容を一つにまとめてみます。
奇関数の公式から、式が簡単になったことが実感できるかと思います。
∫-2(37x3+6x2+59x+3)dx
= ∫-2(6x2+3)dx
とても式が簡単になっています。
この段階でも計算ができますが、さらに簡単にすることができます。
今度は偶関数の公式を使う
y = 6x2 と y = 3 = 3x0 は、どちらも指数が偶数で偶関数となっています。
上で述べたように、偶関数と偶関数の和も偶関数です。
そこで、さらに偶関数についての公式を使うことができます。
∫-2(6x2+3)dx
= 2∫0(6x2+3)dx となります。
下端が 0 なので、計算が楽になります。
それでは、ここまでの内容をまとめます。
∫-2(37x3+6x2+59x+3)dx
= 2∫0(6x2+3)dx です。
ここまで式を簡単にしておいてから定積分の値を計算します。
慣れてくると、ここまで暗算で一瞬です。
2∫0(6x2+3)dx
= 2×[2x3+3x]0
= 2×(2・23+3・2-0)
= 2×(16+6)
= 2×22 = 44 です。
下端が 0 なので計算がスムーズでした。
以上より、
∫-2(37x3+6x2+59x+3)dx
= 44 となりました。
最後に、数3で使う偶関数と奇関数の一般的な公式を証明しておきます。
数3で使う一般的な公式
y = f(x) が偶関数のとき、
∫-a f(x) dx = 2∫0 f(x) dx となる。
<証明>
∫-a f(x) dx =
∫-a f(x) dx+∫0 f(x) dx です。
ここで、x = -t と置くと、
dx/dt = -1 で、
f(x) が偶関数なので、
f(-t) = f(t) です。
また、x が -a から 0 へ変化するとき、t は a から 0 へと変化します。
これで、数3の置換積分の公式が使えます。
そのため、
∫-a f(x) dx = -∫a f(-t) dt
= ∫0 f(t) dt
= ∫0 f(x) dx となります。
これを先ほどの式へ代入すると、
∫-a f(x) dx =
∫-a f(x) dx+∫0 f(x) dx
= ∫0 f(x) dx+∫0 f(x) dx
= 2∫0 f(x) dx 【証明完了】
これで、y = cos x のような偶関数についても公式をカバーしました。
次に奇関数についての公式も証明します。
y = f(x) を奇関数とすると、
∫-a f(x) dx = 0
<証明>
∫-a f(x) dx =
∫-a f(x) dx+∫0 f(x) dx です。
x = -t と置き、先ほどと同じように置換積分をします。
このとき、f(x) が奇関数なので、
f(-t) = -f(t) となります。
そのため、
∫-a f(x) dx =
∫-a f(x) dx+∫0 f(x) dx
= -∫0 f(x) dx+∫0 f(x) dx
= 0 【証明完了】
奇関数なので、
-∫0 f(x) dx となり、
偶関数のときと違ってキャンセルが起き、定積分の値が 0 となるわけです。
【関連する記事】
・合同な放物線(面積と積分)
・1/6公式(数学2の積分)
・部分積分(数学3)
これで今回のタロウ岩井の記事を終了します。
読んで頂き、ありがとうございました。