平行線と線分の比 – メネラウスの定理 – 高校 | 比の値を用いて平面図形の証明
" 平行線と線分の比 " に関連して、高校の数学の証明では比の値についての情報を図形から引き出しつつ、さらに計算規則と合わせて結論を導くことをしばしば行います。
線分の長さが正の実数であるということから、比の値という正の実数についての計算規則が使えます。
高校の平面図形の単元で学習するメネラウスの定理を、平行線と線分の比の観点から証明しています。
この記事では、2点 A, B を結んだ線分の長さを AB というように表しています。
AB と BA は同じ線分の長さなので、等しい正の実数となっています。
適宜、AB と BA を書き換えることを行うので、その際は同じ長さということによる書き換えになります。
平行線と線分の比 :準備の内容
算数で比を学習したときに、身近な事柄を通して、「ミリンと醬油を 2 : 3 で混ぜる」というようなことを学習します。
この a : b = c : d という表し方は、相似な三角形について、どの線分と線分の長さが対応しているのかということを把握するのに役立ちます。
さらに、比の値を考えることができます。
高校の平面図形で登場する線分の長さは、正の実数値となっています。
正の実数なので、分数の分母に置くことができます。
AB : CD = EF : GH だと、
AB/CD = EF/GH と比の値の形で表すことができます。
この分数の形にしておくと、実数なので、実数についての計算規則に基づいて議論を進めることができます。
図形からの情報にプラスアルファして、実数についての計算で議論を進めるのが常套手段となります。
この例として、メネラウスの定理を証明します。
図形の用語に慣れておく
直線(線分)についての議論を今回の記事で扱います。
ここで、同一の平面上にある異なる2点が与えられているときに、その2点を通る直線が1本だけ存在するということになります。
直線(線分)が出てきたら、どういう点を通っているのかということを意識すると良いかと思います。
異なる2点 A, B に対して、直線AB は、端点 A と B を、どちらも貫通して理論上は永遠に線が伸びている状態です。
それに対して、線分AB は、端点 A と B を結んだ線で、どちらの端点も貫通していない状態になります。
三角形ABC が与えられているときには、三角形の3辺は、どれも線分ということになります。
ただし、線分AB などの辺について、端点を貫通した(半)直線を考えるときもあります。
その際には、辺AB の延長という言い方をします。
それでは、平行線と線分の比についての準備となる内容を述べたので、ここからはメネラウスの定理の証明を解説します。
メネラウスの定理は、与えられた1個の三角形と、その3つの頂点を通らない1本の直線についての定理になります。
高校の数学なので、この状況について場合分けが発生します。
平行線と線分の比 :メネラウスの証明
三角形ABC と、その三つの頂点 A, B, C のどの点も通らない直線 l が与えられたというのがメネラウスの定理の仮定になります。
この仮定を満たす状況を場合分けして考えます。
【3辺との交点が 0 個】という場合が考えられます。
この場合については、3辺をすべて延長して、直線 l との交点を考えることになります。
辺の外分点が3個という状況になります。
三つの頂点を通らないという仮定条件から、辺AB と辺 CA について l との交点が A のみという場合は除外されます。
同じく l との交点が B のみ、C のみという状況も除きます。
さらに、三角形と直線の交点ですので、l と3辺がそれぞれ1点ずつ交点をもつということは起こりません。
よって、残された可能性は、【3辺との交点が 2 個】という場合になります。
どちらの場合についても、若干の表面的な言葉の調整だけなので、本質的には同じ証明の内容となります。
ここからは、今の考察で得た2つの場合についての図を用いて、メネの証明について述べます。
定理の証明
【定理】
三角形ABC と、点 A, B, C のいずれも通らない直線 l が与えられたとする。
そして、辺BC, CA, AB もしくは、その延長と l との交点をそれぞれ P, Q, R とする。
このとき、
BP/PC・CQ/QA・AR/RB = 1 となる。
※ 点 C を通り直線 l に平行に引いた緑の補助線と直線AB との交点を S としています。
<証明>
まず【辺との交点 0 個】の場合を示します。
CS と l が平行なので、同位角が等しいことから、次の三角形が相似になります。
三角形BRP と三角形BSC が相似となっています。
ここで、
中学で学習した内容から、
BP : PC = BR : RS です。
そのため、比の値について、
BP/PC = BR/RS …①
次に三角形ARQ と三角形ASC に注目します。
やはり、
中学で学習した内容から、
CQ : QA = SR : RA となっています。
比の値について、
CQ/QA = SR/RA …②
①と②という実数についての等式を辺々掛け合わせます。
すると、
BP/PC・CQ/QA
= BR/RS・SR/RA です。
AR/RB は実数なので、こうして得たこの等式の両辺に掛けることができます。
よって、
BP/PC・CQ/QA・AR/RB
= BR/RS・SR/RA・AR/RB
= BR/SR・SR/AR・AR/BR
= BR/AR・AR/BR
= BR/BR = 1 です。
同じ線分の長さが分母と分子に置かれいるので約分されて、示したい結論の等式が得られました。
残りの場合についても同じ要領で証明をすることができます。
残りの場合も証明
次に【辺との交点 2 個】の場合を示します。
三角形BRP と三角形BSC の部分について、先ほどと同様に中学で学習した内容を使います。
BP/PC = BR/RS …③
また、三角形ARQ と三角形ASC の部分に中学で学習した内容を使います。
CQ/QA = SR/RA …④
③と④を辺々掛け、
BP/PC・CQ/QA
= BR/RS・SR/RA を得ます。
AR/RB を両辺に掛け、
BP/PC・CQ/QA・AR/RB
= BR/RS・SR/RA・AR/RB
= BR/SR・SR/AR・AR/BR
= BR/AR・AR/BR
= BR/BR = 1 【証明完了】
これで、メネの定理を証明することができました。
今の証明では、頂点 B から左回りに一回りするように考えました。
三角形が出てきたら、どの頂点からでも良いので、1つの頂点を決めてから、落ち着いて議論を1周させると良いかと思います。
定理の逆も証明
【メネラウスの定理の逆】
三角形ABC の辺BC, CA, AB もしくはその延長線上に3点 P, Q, R があるとする。
そして、
BP/PC・CQ/QA・AR/RB = 1 となっていたとする。
このとき、P, Q, R は同一直線上にある。
<証明>
BC と QR の交点を P’ と置きます。
この P’ が与えられた点 P と一致していることを示します。
仮定より、
CQ/QA・AR/RB
= PC/BP …①
また、メネラウスの定理より、
BP’/P’C・CQ/QA・AR/RB
= 1 …②
①を②に代入すると、
BP’/P’C・PC/BP = 1 です。
つまり、
BP’/P’C = BP/PC です。
点 P’ と点 P は BC 上の点なので、分点比が等しいことから一致しています。
P’ は直線QR 上の点でした。
P と P が一致しているので、点 P は直線QR 上にあるということになります。
これで、P, Q, R が同一直線QR 上にあることが示せました。【証明完了】
今回、平面図形の有名な定理を証明しました。
三角形ABC と、直線 l との分点を P, Q, R と規則的にアルファベット順に設定をしていました。
しかし、実際は、使われるアルファベットが不規則なものとなっています。
そこで、メネラウスの定理を使うときに、与えられた三角形と、その3頂点を通らない直線について、どのように点たちを認識して結論の等式を導くのかということについて説明します。
計算機が認識するように、その認識手順を機械的に述べておきます。
メネラウスの定理 – 使い方
三角形AKRと、直線DIが与えられたとします。
このとき、直線 DI が、三角形 AKR のどの頂点も通っていないならば、三つの分点比の積が 1 になる」というのが、メネラウスの定理です。
定理が適用できるかどうかを判断することを中心にブログの内容を進めていきますので、各頂点を表すアルファベットをランダムに書いてあります。
この図で、青色の点 D, P, I が分点です。つまり、変数として考えている三角形と直線について、「三角形の各辺もしくは、その辺の延長と直線の交点」のことを分点といいます。
変数として使っている三角形の頂点と、これらの分点は異なる点になっていることに注意です。
メネラウスの定理の仮定で「直線は、三角形の三つのどの頂点も通らないという」ということが効いています。直線が、三角形のどれかの頂点を通ってしまうと、分点と頂点の区別がつかなくなってしまいます。
メネラウスの定理という命題に使われている変数として、一つの三角形と、一つの直線の組が命題に使われている変数となります。
この変数に当てはまらない状況では、メネラウスの定理を使うことができません。つまり、一つの三角形と、一つの直線が存在しない状況だと、メネラウスの定理は適用できません。
また、 一つの三角形と一つの直線について、その三角形の三つの頂点のうち、どれか一つを直線が通っている状況があったとします。これは、仮定条件に当てはまっていないので、定理が適用できないときになります。
一つの三角形があり、一つの直線が存在すると、命題に使われる変数に当てはまるものが存在したということになります。
そして、三つの頂点のどれも通っていない状況だと、仮定条件を満たし、メネラウスの定理が適用できます。
三角形と直線が複数あるときは、変数に当てはまるどの三角形と直線について定理を適用するかを指定します。
さらに、命題に使われている分点について具体的に説明をします。
二種類の分点
先ほどの図で、辺 AK と直線の交点 D のように、三角形の辺と直線が直に交わっている点が内分点です。辺 AR については、点P が内分点です。
一本の辺と直線が、直接に交わっていないときには、辺の延長と直線の交点を考えます。
辺 KR と直線 DI は、直接交わっていません。
KR を延長した赤い部分と直線 DIが点 I で交わっています。
このように、辺の延長と交わった点が外分点です。三つの分点のうち、点 I が外分点です。これで、内分点と外分点が認識できました。
分点には、内分点と外分点があります。ベクトルの単元でも使うので、平面図形を通じて慣れておくと良いかと思います。
分点まで認識ができると、結論となる分点比の然るべきところに点を書きます。次に、この点を書くことについて、2つ判断して決定することがあります。
① 左回りか右回りか
② スタート地点の決定
結論の三つの分点比の積が 1 となるという等式について、それぞれの分点比を作るにあたって、この①と②を決定します。
※ 最終的に同じ結果になります。見た目の式が異なるかもしれませんが、式を適切に書き換えると同じになります。
では、①について、左回りで議論を進めることにします。スタートする頂点は、三角形 AKR のどこからでも結論は同じです。今回は、頂点 K からスタート(開始)することにします。
等式の「頂1」と書いているところに、頂点 K を書きます。ここがスタートになります。
左回りを選択しているときは、頂点 K から左回りに三角形の頂点を順に見て、頂点 R と A を頂点〇のところに配置します。
頂1→K, 頂2→R, 頂3→A
これで、図の下に書いている公式の頂〇のところに、定理を適用する三角形の頂点を配置されました。
それぞれの分点比を表す分数の斜めに配置された頂点を見ると、変数として考えている三角形の辺になっています。
変数として考えている直線との分点を、分1, 分2, 分3 の位置に配置すると、結論の分点比についての等式が完成します。
頂1 と頂2 が辺 KR なので、KR と直線についての分点 I を分1 のところに配置します。
※ 辺と直接に交わっていないときには、辺の延長との交点である外分点を配置することになります。
残りの分2 と分3 のところに配置する分点も、それぞれの分点比の斜めに現れている辺と直線とでできる分点を配置します。
真ん中の分点比について、頂2 が R で、頂3 が A なので、辺 RA と直線についての分点 P を分2 に配置します。
一番右の分点比については、頂3 が A で、頂1 が K なので、辺 AK と直線についての分点 D を分3 に配置します。
うまくできたかの確認として、スタート地点とした頂 1 と、最終の到達地点の頂 3 が同じアルファベットになっているかを見るのも良いかと思います。
この定理の結論となる分点比の積について、等式への各点の配置の手順をまとめておきます。
【点の配置手順】
・左回りを選択しているときは、頂点Kから左回りに三角形の頂点を順に見て、RとAを「頂1→K, 頂2→R, 頂3→A」に配置する。
・3個の分数のそれぞれの斜めに、頂1頂2、頂2頂3、頂3頂1がそれぞれ辺KR、辺RA、辺AKとなる。
・辺KRの分点Iを分1に、辺HAの分点Pを分2に、辺AKの分点Dを分3に配置する。
※分点は、内分点もしくは外分点のことです。
これが、いはゆる数学的アルゴリズム(手順)というものになります。
数学の思考回路は、プログラミングとも関係しまして、大学の数学科では、計算機数学の練習問題として、メネラウスの定理を使われることもあるかと思います。
手順を正確に認識することは、プログラミング関連のことを考えると、重要かと思います。
先ほどは、左回りに三角形の頂点を眺めました。練習に、今度は右回りに考えてみます。
先ほどの逆回りについて
スタート地点を同じ点 K として、右回りに回りに考えることもできます。点 K から右に頂点を見ていくと、「K → A → R」の順になります。
「頂1→K, 頂2→A, 頂3→R」となります。
頂1 が D, 頂2 が A なので、一番左の分点比の斜めに現れる辺が KA です。この辺もしくは、その延長と直線の交点となる分点 D を分1 に配置します。左回りのときと同じ要領で、残りの分点 P と I を配置すると完成します。
手順をまとめておきます。
【点の配置手順】
・右回りを選択しているときは、頂点Kから右回りに三角形の頂点を順に見て、AとRを「頂1→K, 頂2→A, 頂3→R」に配置する。
・3個の分数のそれぞれの斜めに、頂1頂2、頂2頂3、頂3頂1がそれぞれ辺KA、辺AR、辺RKとなる。
・辺KAの分点Dを分1に、辺ARの分点Pを分2に、辺RKの分点Iを分3に配置する。
※分点は、内分点もしくは外分点のことです。
【関連する記事】
高校の数学の平面図形では、チェバの定理も有名です。
三角形の面積比という記事で、チェバの定理の証明を解説しています。
さらに、比に関連して、方べきの定理についても投稿しています。
今回の証明でも使った「比が等しい」ということの定義については、比の相等という記事で解説をしています。
比の値の形にすることで、分数を使った実数の計算も議論を後押しすることが多いので、比についての理解を押さえておくと良いかと思います。
これで、今回の記事を終了します。
読んで頂き、ありがとうございました。