等比数列の和 | 和の公式の導き方【文字を使って一般的な内容を表す練習に】

等比数列の和-表紙

" 等比数列の和 “についての公式を導くことについて解説をしています。同じ操作を繰り返すということを文字を使って表現しています。

そのため、等比数列の和の公式を自分で導くことは、繰り返し処理についての良い学習にもなります。

また、文字を使った計算の良い練習にもなります。文字を使って一般的な内容を表すことは大切になりますので、等比数列の和の公式を導出すると、その後の学習の基礎となってくれます。

数学的帰納法という数学において定められている推論規則を意識した内容も記事の最後で述べています。

等比数列の和 :公式の導き方

数列 {an} を初項 a、公比 r の等比数列とします。ただし、r ≠ 1 としています。

等比数列は、第 k 項の値に公比を掛けると、第(k+1)項の値となります。

漸化式で表すと、
ak+1 = r × ak (k = 1, 2, … ) となります。

この内容を利用して、初項から第 n 項までの和 Sn を考えます。

ズラして辺々引く

n を自然数として、第 1 項から第 n 項までの和を Sn と表すことにします。

初項が a で、公比が r の等比数列について議論をしているので、
Sn = a+ar+ar2+…+arn-1 … (1)
となっています。

この (1) の右辺は、n 個の項についての和となっています。

この等式 (1) の両辺に r を掛けます。

rSn = ar+ar2+…+arn-1+arn … (2)

(1) × r を計算することで、項の値が右に一つ分だけズレた状態にしました。やはり、n 個の項の和となっています。

ここで、(1)-(2) を計算します。

左辺は、Sn-rSn = (1-r)Sn です。

(1)-(2) の右辺の値も考察します。

a+(ar+ar2+…+arn-1)
-(ar+ar2+…+arn-1)-arn なので同類項をそれぞれ一つにまとめます。

すると、(1) の項と (2) の項で打ち消しが起こるところが多数です。

括弧でくくっている (n-1) 個の項がキャンセルします。

よって、(1)-(2) の右辺は、
a-arn = a(1-rn) となります。

以上より、(1)-(2) により、
(1-r)Sn = a(1-rn) … (3)

r ≠ 1 だったので、1-r ≠ 0 です。

よって、(3) の両辺に 1/(1-r) を掛けると、
Sn = a(1-rn)/(1-r) となります。

この r の指数ですが、n 個の項についての和ということについて議論をしたので、項数 n となっています。

これが、等比数列の和の公式です。

等比数列の和 :もう一つの和の公式

今、示した第 n 項までの和の公式は、公比 r の絶対値が 1 未満のときに使う公式になります。

r の絶対値が 1 よりも大きいときに使う、もう一つの和の公式も導きます。

等式が与えられたときに、よくする文字式の書き換えです。

(1-r)Sn = a(1-rn) … (3) を先ほど導きました。この両辺に -1 を掛けます。

等比数列の和-公式-another

r の絶対値が 1 よりも大きいときに、こちらの公式を使うと計算がスムーズになることが多いです。

公式を使う例を述べておきます。

具体例で公式を使う練習

{an} : 2, 6, 18, 54, …

この初項が 2 で公比が 3 の等比数列について、第 5 項までの和を求めてみます。


公比が 3 で、絶対値が 1 よりも大きいので、
Sn = a(rn-1)/(r-1) の方の公式を使うと計算が円滑に運びます。

第 5 項までの和なので、項数 5 です。n には 5 を代入します。

S5 = 2 × (35-1)(3-1)
= 35-1 となります。

35 = 32×32×3
= 9×9×3 = 81×3 = 243 です。

よって、
S5 = 243-1 = 242 となります。

この 242 は、
2+6+18+54+162 を計算した値となっています。

数列の単元は、よく整数の約分や文字式の計算を使うので、数列の学習は計算分野の強化にもつながるかと思います。

最後に、帰納的な繰り返し処理について述べておきます。

等比数列の和 :帰納的な繰り返し

【繰り返しの仕組み】

ak+1 = r × ak (k = 1, 2, … )


これが、等比数列の隣接する二項についての関係式です。

自然数 k を 1 から順に動かすことで、同じ手順を繰り返します。

第 2 項の値は、r × a1 と、第 1 項の値から導かれます。

第 3 項の値だと、r × a2 と、やはり第 2 項の値から導かれます。

「r を掛けると、次の項の値となる」ということが繰り返されています。このことを利用して、ズラして等比数列の公式を導きました。

実は、大学の数学の論理学の内容ですが、数列という内容の前に、数学的帰納法という推論規則が先に定まっています。

その推論規則に基づいて、数学の各単元の論理体系が構築されています。

高校数学のカリキュラムでは、等比数列の学習の後で、シグマ計算などを学習してから数学的帰納法を学習しますが、実際には、帰納法が先に定まっています。

このことから、帰納法の練習として、等比数列の一般項の値を帰納法で証明します。

第n項の値を帰納法で証明

【命題】

初項 a、公比 r の等比数列について、
どの自然数 n に対しても、第 n 項の値は、
arn-1
である。


<証明>

【n = 1 の場合】

ar1-1 = ar0 = a×1 = a なので、成立しています。

【n ≧ 2 の場合】

n = k のとき、第 k 項の値が ark-1 だと仮定します。

等比数列の規則から、第 k 項の値に公比を掛けると、第(k+1)項の値となるので、
ark-1 × r = ark が第(k+1)項の値となります。

ここで、
ark = ar(k+1)-1 なので、n = k+1 のときにも【命題】が成立していることが確認できました。

以上より、数学的帰納法より、どの自然数 n についても【命題】が成立しています。【証明完了】

※ この繰り返し処理の発想は、大学の数学でも、よく使います。

【関連する記事】

等比の次の内容として、階差数列について解説をしています。

数列の和について、第n項までの和という高校数学の内容の記事も投稿しています。

この記事では、シグマ計算の公式を使って、等差や等比ではない数列の和を求めることもしています。

それでは、これで今回の記事を終了します。

読んで頂き、ありがとうございました。