指数関数の連続性 | 実数列の収束を用いた実数値関数の連続の定義を確認

指数関数の連続性-表紙

「 指数関数の連続性 」を証明するためには、x = a において連続であることを、a に収束する任意の実数列について連続の定義を確認する必要があります。

指数が無理数のときに、底 r (0 < r < 1 または 1 < r) の無理数乗を定義するのに用いたのは、その無理数に収束する有理数列でした。

a という無理数に収束する実数列について、連続かどうかを判断しなければならないので、指数が実数のときの定義からギャップがあります。

このギャップを解消して、指数関数が連続であることを示します。

この記事では、実数全体の集合を R と表すことにします。まずは、数列を使った関数の連続性の定義です。

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指数関数の連続性 : 数列を用いた連続の定義

【連続の定義】

S ⊂ R が空集合でないとする。

f を S を定義域とする R への関数(写像)とする。

このとき、a∈S について、a に収束する S 内の任意の数列 {an} に対して、数列 {f(an)} が a に収束するとき、f は a において連続であると定義する。

また、任意の x∈S について、f が x で連続であるとき、S において f が連続であるという。


これが、関数 f の連続であることの定義です。イプシロンデルタ論法を用いた距離関数を用いた連続の定義と同値になります。

同値になることについては、この記事の後半部分で証明を述べています。

この数列を使った連続の定義について、実数全体 R を定義域とする指数関数が、R において連続であることを示します。

なお、底 r (0 < r < 1 または 1 < r) について、r の実数乗の定義です。

実数 a に収束する任意の有理数列 {an} に対して、数列 {ran} は収束します。そして、a に収束する有理数列の取り方に関わらず、同じ値に収束します。

この内容は、関連記事の実数乗というブログで解説をしています。

この実数乗の定義では、有理数列についての内容です。一方、連続の定義では、有理数列に限定することなく、任意の実数列について、連続が定義されています。

そのため、有理数列の収束値を用いた実数乗の定義から、さらに議論を進めることになります。

状況の補足

実数全体を定義域とする指数関数を定義するという段階では、イプシロンエヌ法やイプシロンデルタ論法を用いて導かれる極限や連続関数についての一般論が整備されているという状態です。

この記事では、対数関数については、一切の定義をしていないという設定です。

そのため、対数関数が連続で、連続関数の逆関数も連続だから指数関数は連続という考察ができません。

指数が無理数のときについて、無理数乗を定義して、収束する有理数列の取り方に依らないことまでを押さえた状態から、指数関数が連続であることを示します。

そのために、定義域内の異なる二つの実数 a, b について、
a < b のとき、ra と rb の大小関係を比べることから議論します。

指数関数の連続性 :大小関係の比較から

底 r が 0 < r < 1 または 1 < r のときに、
y = f(x) = rx(x は実数)という指数関数は定義できています。

しかし、実数 a, b について、
a < b のときに、f(a) と f(b) の大小関係が、まだ示されていません。

連続というミクロな議論をする前段階で、この大小関係について押さえておきます。

まず、1 < r のときに、
a < b ならば f(a) < f(b) となることを示します。

有理数の稠密性といって、任意の実数 t に対して、t に収束する単調増加な有理数列が存在します。

実数 a と b について、
a < b のとき、ある有理数 q1 が存在して、
a < q1 < b となります。

実際、数列 {bn} を b に収束する単調増加な有理数列とします。

任意の自然数 k について、bk ≦ a だとすると、数列の極限についての性質から、数列 {bn} の収束値が a 以下の実数となってしまいます。

数列 {bn} は a よりも大きい実数 b に収束するので、これは矛盾です。

そのため、ある自然数 k が存在して、
a < bk となります。

有理数列 {bn} は単調増加なので、
n ≧ k のときに、a < bk ≦ bn となっています。

この bk を先ほどの q1 とします。

そのため、1 < r なので、定義域を有理数全体に制限している指数関数については単調増加だから、
limn→∞ bn = b なので、
rq1 ≦ rb です。

a < q1 について、同様の考察をすると、
a < q2 < q1 を満たす有理数 q2 が存在します。

有理数全体に定義域を制限したときの単調性から、
rq2 < rq1 です。

この部分で、小さいと大きいの区別がつきます。

また、a に収束する単調増加な有理数 {an} は、任意の自然数 n に対して、
an < q2 なので、ran < rq2 です。

そのため、limn→∞ an = a だから、
ra ≦ rq2 です。

これらの内容を合わせると、
ra ≦ rq2 < rq1 ≦ rb です。

これで、f(a) < f(b) となっていることが示せました。

0<r<1のときも同様に

実数 a, b について、a < b のとき、
同様に有理数 q1, q2 が存在し、
a < q2 < q1 < b となっています。

底 r が 0 < r < 1 のときなので、定義域を有理数全体に制限している指数関数は、単調減少です。

そのため、
ra ≧ rq2 > rq1 ≧ rb です。

そのため、y = f(x) = rx について、
0 < r < 1 のときは、
a < b だと、f(a) > f(b) となっています。

この f(a) と f(b) についての大小関係を利用して、実数全体を定義域とする指数関数の連続性を示します。

指数関数の連続性 :連続の証明

【命題

実数 r を 1 < r とし、任意に実数 a が与えられたとする。

そして、a に収束する任意の実数列を {bn} とする。

このとき、数列 {rbn} は ra に収束する。


<証明>

数列 {an} を a に収束する単調増加な有理数列とします。
※ 実数乗という記事で述べた a の近似列が存在するので、このような数列 {an} が存在します。

そして、一般項 tm = 1/m である有理数列 {tm} は 0 に収束します。

自然数 m を任意に一つ取り、固定すると、
tm/2 = 1/(2m) は正の有理数です。

数列 {an}, {bn} は a に収束するので、
この正の有理数 tm/2 に対して、ある自然数 N1, N2 が存在して、
n ≧ N1 ならば |an-a| < tm/2,
n ≧ N2 ならば |bn-a| < tm/2

N = max{N1, N2} と置くと、
n ≧ N に対して、
|bn-an| = |bn-a+a-an|
≦ |bn-a|+|a-an|
= |bn-a|+|an-a|
< tm/2+tm/2 = tm

したがって、n ≧ N のとき、
-tm < bn-an < tm

つまり、
an-tm < bn < an+tm

f(x) = rx という実数全体を定義域とする指数関数について、先ほど示した単調性から、
ran-tm < rbn < ran+tm

n を十分大きくすると、an は a に収束するので、
ra-tm ≦ limn→∞ rbn ≦ ra+tm

固定していた m を十分大きくすると、tm は 0 に収束するので、
limn→∞ rbn = ra です。■

この【命題1】から、
f(x) = rx (1 < r) という定義域を実数全体とする指数関数は、任意の実数 a において、a に収束する任意の実数列 {bn} に対して、
f(bn) = rbn が f(a) = ra に収束しているということになります。

よって、f(x) = rx (1 < r) は、実数全体において連続であることの定義を満たしています。

0 < r < 1 についても、同様に連続であることを示すことができます。

底rが0<r<1のときも連続

【命題2】

実数 r を 0 < r < 1 とし、任意に実数 a が与えられたとする。

そして、a に収束する任意の実数列を {bn} とする。

このとき、数列 {rbn} は ra に収束する。


<証明>

数列 {an} を a に収束する単調増加な有理数列とします。
※ 実数乗という記事で述べた a の近似列が存在するので、このような数列 {an} が存在します。

そして、一般項 tm = 1/m である有理数列 {tm} は 0 に収束します。

自然数 m を任意に一つ取り、固定すると、
tm/2 = 1/(2m) は正の有理数です。

数列 {an}, {bn} は a に収束するので、
この正の有理数 tm/2 に対して、ある自然数 N1, N2 が存在して、
n ≧ N1 ならば |an-a| < tm/2,
n ≧ N2 ならば |bn-a| < tm/2

N = max{N1, N2} と置くと、
n ≧ N に対して、
|bn-an| = |bn-a+a-an|
≦ |bn-a|+|a-an|
= |bn-a|+|an-a|
< tm/2+tm/2 = tm

したがって、n ≧ N のとき、
-tm < bn-an < tm

つまり、
an-tm < bn < an+tm

指数関数の連続性-証明

つまり、
数列 {rbn} は ra に収束です。■

この【命題1】から、
f(x) = rx (0 < r < 1) という定義域を実数全体とする指数関数は、任意の実数 a において、a に収束する任意の実数列 {bn} に対して、
f(bn) = rbn が f(a) = ra に収束しているということになります。

よって、f(x) = rx (0 < r < 1) は、実数全体において連続であることの定義を満たしています。

最後に、この数列を用いた連続の定義とイプシロンデルタ論法での連続の定義が同値であることを示します。

指数関数の連続 :連続の同値な定義

【定義1】

a∈S ⊂ R について、a に収束する S 内の任意の数列 {an} に対して、数列 {f(an)} が a に収束するとき、f は a において連続であると定義しました。

【定義2】

a∈S ⊂ R について、
任意に与えられた正の実数 ε に対して、ある正の実数 δ が存在し、
|x-a| < δ を満たす任意の実数 x∈S について、
|f(x)-f(a)| < ε となるとき、f が a において連続とするのが、イプシロンデルタ論法での連続の定義です。


【定義1】の内容が成立しているときに、【定義2】が成立することを背理法を用いて示します。

論理記号と否定について運用することになります。

【定義1】が成立しているときに、【定義2】が成立しないと仮定します。

すると、
ある正の実数 ε が存在し、どんな正の実数 δ に対しても、
|x-a| < δ を満たす実数 x∈S が存在して、
|f(x)-f(a)| ≧ ε を満たすということになります。

ここで、自然数 1 に対して、
この |x-a| < δ であり |f(x)-f(a)| ≧ ε となる実数 x∈S を、
u1 = x と置きます。

この x は |f(x)-f(a)| ≧ ε > 0 を満たすので、
x ≠ a でなければなりません。

そのため、|x-a| > 0,
つまり、|u1-a| > 0 です。

よって、δ として |u1-1|/2 > 0 を考えると、
|u2-a| < |u1-1|/2 であり |f(u2)-f(a)| ≧ ε を満たす実数 u2∈S が存在します。

順に、自然数 k について、
δ として |uk-a|/2 > 0 を考えると、
|uk+1-a| < |uk-1|/2 であり |f(uk+1)-f(a)| ≧ ε を満たす実数 uk+1∈S が存在します。

これで、数列 {un} が定義できました。

ここで、
|un+1-a| < |un-1|/2 < |un-1-1|/22 < …
… < |u1-1|/2n

となっています。

0 < 1/2 < 1 なので、公比 1/2 で初項 1 の等比数列が収束することがアルキメデスの性質から導かれます。

そのため、n を十分大きくすると、
|u1-1|/2n は 0 に収束します。

0 < |un+1-a| < |u1-1|/2n だから、
|un+1-a| は 0 に収束します。

つまり、数列 {un} は a に収束します。

すると、今、【定義1】が成立しているという前提なので、
a に収束する S 内の任意の数列 {an} に対して、数列 {f(an)} が a に収束します。

数列 {un} は a に収束しているので、【定義1】の内容から、
数列 {f(un)} は f(a) に収束することになります。

よって、ある自然数 N が存在し、
n ≧ N のとき |f(un)-f(a)| < ε

しかし、どの自然数 n についても、
|f(un)-f(a)| ≧ ε となっています。

これは矛盾です。

背理法より、【定義1】が成立しているとき、【定義2】も成立しなければならないということになります。 ■

これで、指数関数について、数列を用いた連続の【定義1】を示しましたが、イプシロンデルタ論法を用いての【定義2】の連続の定義を満たすことが分かりました。

今度は、【定義2】が成立しているときに、【定義1】も成立するという、先ほどの逆を示します。

逆も示して同値

【定義2】が成立しているとします。

すると、任意に与えられた正の実数を ε とすると、ある正の実数 δ が存在し、
|x-a| < δ を満たす任意の x∈S に対して、
|f(x)-f(a)| < ε … (1)

a に収束する S 内の数列 {an} を任意に取ります。

a に収束することから、正の実数 δ に対して、ある自然数 N が存在し、
n ≧ N のとき、|an-a| < δ

n ≧ N のとき、
an∈S は、|an-a| < δ を満たしているので、
(1) から、
|f(an)-f(a)| < ε

よって、数列 {f(an)} は f(a) に収束しています。

これで、a に収束する S 内の任意の数列 {an} に対して、数列 {f(an)} が a に収束することが示せたので、【定義1】が成立しています。 ■

これで、【定義1】と【定義2】が同値であることが示せました。

今回の記事では、実数全体を定義域とする指数関数が、【定義1】を満たすということを示し、連続であることを示しました。

状況によって、示しやすい【定義】の方で、連続を証明するということになります。

なお、複素指数関数についての記事も投稿しています。

それでは、これで今回の記事を終了します。

読んで頂き、ありがとうございました。