対数方程式 | 底の条件と真数条件を意識して論理を使用する【数II】

" 対数方程式 “を解くときに、真数条件がいらないときもあれば、真数条件が必要なときがあったりと、状況によって様々です。

他にも、底の条件を考えるときもあります。

表面的な解法の記憶をしようとすると大変なので、毎回、論理的に考察を進めることに慣れておくのが良いかと思います。

難しい大学の問題では、論理と合わせて議論を進めることが余儀なくされることが多いので、対数関数のグラフの概形と合わせて、論理的に考察を進めるためのシンプルな練習問題を取り挙げました。

具体的な数字を使って、どういった条件について論理規則を使っているのかを解説していきます。

対数方程式 :条件と論理を考える

底 a が、0 より大きい 1 ではない実数だとします。

次のような対数について見てみます。

loga2+loga3 = loga6 です。

この左辺と右辺の書き換えは、特に真数条件を考えなくても成立しています。

ところが、次については、真数についての条件を考慮にいれなければなりません。

log3x+log3(x+1) と
log3x(x+1) の書き換えには、x の範囲に注意します。

log3x+log3(x+1) は、
x > 0 かつ x+1 > 0 という x の範囲内でなければ成立しません。

つまり、x > -1 という範囲内で、
log3x+log3(x+1) が成立することになります。

一方、log3x(x+1) は、
x(x+1) > 0 の範囲で成立します。

つまり、
x < -1 または 0 < x の範囲で、
log3x(x+1) が成立しています。

ここで、変数の x の範囲が、
x < -4 だったとします。

log3x(x+1) は成立していますが、
log3x と log3(x+1) が成立していません。

そのため、
x < -4 という範囲内で議論をしているときのことを考えてみてください。

つい、
log3x(x+1) = log3x+log3(x+1) と書き換えてしまうと、数学的に誤りとなります。

簡単な例を挙げましたが、真数条件と論理を合わせた考察を基礎として議論を進めることになるわけです。

連立不等式や論理規則を高校の一年のときに学習しますが、数IIになっても、それらを使うので、日頃からのトレーニングが大切になります。

このような論理を押さえた上で、対数のとる値と底と真数についての関係を考察することが対数方程式を解くための基本となります。

logab = c のとき、
ac = b という関係です。

ただし、a > 0, a ≠ 1, b > 0 という実数の範囲での関係となります。

例えば、
log4(x+5) = 2 という x についての対数方程式を解いてみます。

x+5 = 42 = 16 より、
x = 11 となります。

とくに真数条件を考えなくて良いタイプの問題でした。

しかし、底や真数についての条件を考慮するタイプの問題もあるので、毎回の論理的な考察は、日々の練習で磨いておくと良いかと思います。

では、次に底の条件を意識する練習問題を扱ってみます。

底の条件を考慮する問題

【練習問題1】

logx9 = 2 を解いてください。


与えられた方程式の底の条件から、
x は x > 0 かつ x ≠ 1 という範囲内にある実数です。

底と真数の関係から、
x2 = 9 です。

そのため、
x = 3 または x = -3 です。

しかし、底の条件から x > 0 より
x = -3 は不適です。

よって、x = 3 のみが、与えられた対数方程式の解ということになります。

このように、底の条件が効いてくる問題もあるので、対数が出てきたら文字の範囲には注意です。

よく使う注意すべき範囲をまとめておきます。


実数 a, x, y について、
a > 0 かつ a ≠ 1 かつ
x > 0 かつ y > 0 のとき、
logax+logay = logaxy と書き換えができます。


この内容は、対数方程式を解くときに、よく使うので押さえておくと良いかと思います。

底の条件と真数条件は、よく使うので、対数を学習し始めたときに出てきた定義をしっかりと押さえておく必要があります。

その上で、数学の論理を適切に使って、正しい計算を進めるという流れになります。

対数方程式 :真数条件を考慮する問題

【練習問題2】

log4x+log4(x-3) = 1 を解いてください。


与えられた方程式の真数条件から、次の x の範囲が得られます。

x > 0 かつ x-3 > 0 です。

つまり、
x > 0 …①という範囲内で議論を進めることになります。

今、底 4 > 0 で、
x > 0 かつ x-3 > 0 だから、
log4x+log4(x-3)
= log4x(x-3) です。

そのため、
log4x(x-3) = 1 です。

底と真数の関係から、
x(x-3) = 41 です。

つまり、
x2-3x-4 = 0 です。

これより、
(x+4)(x-1) = 0 です。

この x についての二次方程式の解は、
x = -4 または x = 1 です。

しかし、x = -4 は、x > 0 という①の範囲外の実数です。

x = 1 は①の範囲内の実数です。

そのため、x = -4 は除外します。

よって、x = 1 のみが与えられた対数方程式の解となります。

次に文字を置き換えると計算しやすい式になるタイプの問題です。

置き換えた文字の範囲にも注意が必要になるときがあるので、置き換えたときには、新しい文字の範囲も注意しておくと良いかと思います。

対数方程式 :文字の置き換え

【練習問題3】

{log2(x+1)}2-2log2(x+1)-3 = 0 を解いてください。


真数条件から x+1 > 0 です。

つまり、x > -1 …①

ここで、t = log2(x+1) と置きます。

この t の範囲は、すべての実数となっています。

すると、与えられた方程式は、

t2-2t-3 = 0 となります。

すなわち、
(t+1)(t-3) = 0 です。

これより、
t = -1 または t = 3 となります。

t をもとに戻すと、
log3(x+1) = -1, log3(x+1) = 3 です。

よって、
x+1 = 3-1, x+1 = 33 です。

つまり、
x = -2/3 または x = 26 です。

どちらも①を満たしているので、
x = -2/3, 26 が求める対数方程式の解です。

ここで、対数関数の値域について復習をしておきます。

対数関数の値域

y = log3x という対数関数のグラフは y 軸を漸近線として、+∞ から -∞ までの実数をとります。

つまり、この値域は、すべての実数全体となっています。

先ほどの【練習問題3】で、
log3(x+1) を t 置きました。

y = log3x を
x 軸方向に -1 だけ平行移動すると
y = log3(x+1) です。

そのため、y = log3(x+1) の値域は、すべての実数全体ということになります。

これが、先ほど t のとる値の範囲をすべての実数と述べた理由です。

次は、既に学習している底の変換を絡めた問題を扱います。

対数方程式 :底を変換する問題

【練習問題4】

logx9-log9x = 1 を解いてください。


底の条件と真数条件から、

x > 0 かつ x ≠ 1 …①

さらに底の変換公式を使います。

次のように底を x から 9 へ変換します。

よって、与えられた方程式は
1/log9x-2log9x-1 = 0 となります。

両辺に -log9x を掛けると、
2(log9x)2-log9x+1 = 0 です。

ここで、k = log9x と置くと
2k2+k-1 = 0 です。

つまり、
(2k-1)(k+1) = 0 より、
k = 1/2 または k = -1 です。

k をもとに戻すと、
log9x = 1/2, -1 です。

すなわち、
x = 91/2, 9-1 です。

91/2 = (32)1/2 = 3 より、
x = 3, 1/9 は、どちらも①を満たすため、求める対数方程式の解となります。

ここからは、対数についての不等式を扱います。

底や真数についての条件を考慮しつつ、不等式と論理についての議論を進めることになります。

対数不等式 :満たすべき条件と論理

f(x) = loga x という対数関数について、真数条件から x > 0 という範囲で考えることになります。

また、底 a ですが、
0 < a < 1 のとき、y = f(x) のグラフは単調減少、
a > 1 のとき、グラフは単調増加します。

このグラフの概形を押さえ、不等式を連立させながら議論を進める流れになります。

【練習問題5】

log2(x+5) < 3 を満たす x の範囲を求めてください。


まず、真数条件から、
x+5 > 0 より、
x > -5 …①

次に右辺を同じ底の対数で表します。

3 = 3×log22
= log223 = log28 です。

よって、与えられた不等式は、
log2(x+5) < log28 と書き換えることができます。

ここで、底 2 > 1 より、
y = log2 x のグラフは単調増加ということを考えます。

すると、
x+5 < 8
すなわち、x < 3 …②

①かつ②がともに成立するため、
-5 < x かつ x < 3 です。

これは、すなわち、
-5 < x < 3 ということです。

これが、求める x の範囲です。

連立不等式を考えることが多いので、高一のときからの論理の考え方が大切になります。

次は、もう少し複雑なタイプを練習してみます。

さらに練習

【練習問題6】

log1/2(x2-5x+4) > log1/2(x+4) を満たす x の範囲を求めてください。


今度は、底が 1/2 < 1 なので、グラフが単調減少のときの内容となります。

まず、真数条件から考えることにします。

x2-5x+4 > 0 より、
(x-1)(x-4) > 0 です。

つまり、
x < 1 または 4 < x …①

さらに、x+4 > 0 より、
x > -4 …② です。

①と②が同時に成立するので、「かつ」を使い論理的に不等式を同時に成立させる範囲を考えます。

ここで、論理規則を使います。

①かつ②より、
「x < 1 または 4 < x」
かつ「x > -4」だから、
「x < 1 かつ x > -4」
または「4 < x かつ x > -4」となります。

x < 1 かつ x > -4 は
-4 < x < 1 ということです。

4 < x かつ x > -4 は、
4 < x ということになります。

よって、①かつ②は、
-4 < x < 1 または 4 < x …③となります。

次にグラフが単調減少ということを考えます。

log1/2(x2-5x+4) > log1/2(x+4)
で、底 1/2 < 1 だから、
x2-5x+4 < x+4 となります。

右辺を左辺に移項し、
x2-6x < 0 です。

つまり、
x(x-6) < 0 です。

これより、
0 < x < 6 …④

③かつ④より、
-4 < x < 1 かつ 0 < x < 6
または
4 < x かつ 0 < x < 6 が求める不等式の範囲となります。

-4 < x < 1 かつ 0 < x < 6
は、0 < x < 1 が共通部分です。

4 < x かつ 0 < x < 6
は、4 < x < 6 が共通部分です。

よって、
0 < x < 1 または 4 < x < 6 が求める x の範囲となります。

この問題で連立不等式を解くときに、論理規則が活躍しました。

【論理規則】

「p または q」かつ r と、
「p かつ r」または「q かつ r」は数学の論理では同じと考えます。

数直線を描いて重なっているところといっても、どこが求める範囲か見ただけでは複雑で分かりにくいときは、客観的な論理規則で推論を進めます。

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それでは、これで今回のタロウ岩井の記事を終了します。

読んで頂き、ありがとうございました。

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