【 max min 】 微分積分学などでよく使われる最大値と最小値の基本を解説
専門学校や大学の数学で微分積分学を勉強するときに、最大値と最小値( max min )はよく使われます。Excel関数でも、この考え方は大切になります。
実数たちを集めた集合 S 内の元(要素)について、その集合 S 内の最大値や最小値は、不等式と関連しながら、様々な議論で使われます。
集合や論理と合わせてmaxとminの記号を解説していきます。これらの記号を使いこなせると、数学の学習が円滑になります。
なお、このブログでは、実数全体から成る集合を R と表すことにします。
ここでいう最大・最小は、実数についての順序関係に関する意味での最大値と最小値のことです。
max min :最大値と最小値の記号
【定義と記号】
任意の x∈S に対して、
max S ≧ x である。
任意の x∈S に対して、
min S ≦ x である。
最大値や最小値を考えるときに、どういった範囲内において最大もしくは最小かということを考えます。
そのために、値たちを含んでいる集合という枠組みを設定しておく必要があります。
この集合 S は、その枠組みを与えています。
max S は、集合 S における最大値という意味です。
min S だと、集合 S における最小値ということになります。これから、より細かい定義を詰めていきます。
max の記号
まず、最大値を表す max の定義と、記号について説明します。
a ∈ S ⊂ R が、集合 S における最大値とは、「どんな S の要素 x に対して、a ≧ x 」ということです。
論理記号を使って、この内容を表すと、次のようになります。
【最大値の定義】
S を集合とする。
「a ∈ S 」であり、かつ「どんな x ∈ S に対しても a ≧ x」となっているとき、a を S における最大値という。
a ∈ S が、S の最大値であることを a = max S と表します。この記号を使って、さらに不等式を使うこともあります。
x ∈ S について、max S ≧ x というような使い方をします。
最大値の定義から、S のどのような元(要素)と大小関係を比較しても、最大値なので、「≧」となります。
また、a ∈ S なので、x として a 自身のときは、a = max S とイコールになります。
さらに、max S ∈ S と、あえて強調されるときもあります。
記号の使い方には、学習のはじめの段階で慣れておくと良いかと思います。
min の記号
今度は、最小値の定義と、その表し方についてです。
b ∈ S ⊂ R が、集合 S における最小値であることの定義は、「どんな x ∈ S に対して、b ≦ x 」となることです。
論理記号を使って表すと、次のようになります。
【最小値の定義】
「b ∈ S」であり、かつ「どんな x ∈ S に対しても b ≦ x」となっているとき、b を S における最小値という。
最大値のときと同じく、S という範囲内において最小ということです。
S に含まれていない実数については、何の情報も定めていないので、S に含まれていない実数との大小関係には注意です。
最小値を表す記号は、b = min S です。
x ∈ S に対して、必ず min S ≦ x となります。
max min :注意点
最大値や最小値は、常に存在するとは限りません。具体例を挙げて、このことについて述べます。
S = { x ∈ R | 0 < x < 3 } という R の部分集合を考えます。図の上に描いている範囲です。
0 よりも大きくて、3 よりも小さい実数をすべて集めた集合が S です。
どんな x ∈ S に対しても、3 ≧ x となっていますが、3 は S の元ではないので、最大値の定義に当てはまりません。
「かつ」がついているので、両方の条件を満足しないと S における最大値とはならないので、ご注意ください。
最小値についても、0 は S に含まれていないので、S における最小値にはなりません。
もちろん、最大値が存在する R の部分集合の例もあります。図の下に描いている範囲が、そうです。
A = { x ∈ R | 0 < x ≦ 3} ⊂ R について、3 ∈ A であり、なおかつ「任意の A の元 x に対して、3 ≧ x 」となっているので、3 は A の最大値です。
※ しかし、最小値は存在していません。
このことを、最大値の記号を使って表すと、
3 = max A となります。
※ 0 は A に含まれていないので、A の最小値ではありません。
ちなみに、この A のように、片方の端点が含まれているけれども、もう片方の端点で含まれていない区間を半閉区間といいます。
どちらの端点も含まれている区間を閉区間といいます。閉区間については、最も小さい値の端点が最小値になり、最も大きい値の端点が最大値となります。
具体的な閉区間で、集積点や閉集合に触れておくと、n 次元ユークリッド空間についての一般論を学習するときの足掛かりになるかもしれません。
高校一年で出てくる最大値と最小値
実数 t を二乗した t2 は、0 以上となります。このことを使って、二次関数の最大値と最小値が議論されます。
二次関数を平方完成した標準形を見ると、どうして頂点の y 座標が最大値もしくは最小値となるのかが分かります。
f(x) = (x - p)2 + q という標準形から、グラフの頂点座標が (p, q) と分かります。
x 座標の値が実数 p で、y座標の値が実数 q となっています。
この二次関数の定義域が実数全体のとき、f(x) がとり得る最小の値は q となります。
これは、どんな実数 x についても、実数 (x - p) を二乗した値 (x - p)2 が 0 以上だからです。
先ほど、最大値や最小値を考えるときに、どういう範囲内においてかということを考える必要があるということを述べました。
この二次関数の最小値 q は、どういう集合において最小かということを述べておきます。
結論から述べますと、関数 f(x) の値域という集合内における最小値です。
S = {f(x) | x は実数} が、関数の値域です。それぞれの実数に対応する値たちをすべて集めた集合です。
この集合における最小値が q だったので、
min S = q となっています。
これで、値域 S における最小値が q と表すことができました。
ちなみに、g(x) = -(x - a)2 + b という二次関数だと、b が最大値となります。
T = {g(x) | x は実数} が値域を表す集合だとすると、max T = b です。
※ 平方完成という記事で、二次式を基本形に書き換える手順について解説をしています。
無限集合における最小値と最大値について述べました。ただ、少ない有限個数の値たちについて、最大値や最小値を議論するときに、便利な表記もあります。
次に、集合の表し方について説明します。
max min :外延的表記
集合の表し方ですが、外延的表記といって、含まれている元(要素)を列挙して表す表し方があります。
この表記と合わせて最大値や最小値を表すことがあります。
※ 要素(元)というブログに、外延的表記や内包的表記という集合の表し方についての説明を書いています。
{1, 3, 8} という 3 個の元から成る集合があったとします。
8 というこの集合に含まれている要素は、他のどの元と大小関係を比べても、「≧」となっています。
8 = max {1, 3, 8} と表すときもあります。
表している意味は、先ほどの最大値の定義と全く同じです。
集合の範囲内に含まれている元であり、かつ、他のどの元と大小関係を比較しても「≧」となっています。
最小値についても、1 = min {1, 3, 8} と表されるときもあります。
もちろん、S = {1, 3, 8} と集合を表しているときに、8 = max S, 1 = min S と表しても、同じ内容になります。
抽象的な記号のとき
先ほどは、3 点集合について、最大値と最小値を表しました。数学で、理解がややこしくなるのは、文字が使われてきたときになります。
数学の学習を進めていくために、いろいろな数学的な表現方法を経験しておくことが、大切になります。
{a1, a2, a3} ⊂ R について、
ai = max {a1, a2, a3} とおく。
ただし、i は 1, 2, 3 のいずれか。
先ほどの 3 点集合を、抽象的な文字を使って表しました。3 個の要素について、大小関係を調べ尽くすと、必ず最大値が存在します。
その最大値を ai と表すということを記述しています。
使われている添え字(そえじ)について、この最大値は、何者かわかりませんが、 a1, a2, a3 のどれかであることは、最大値の定義から確かなことです。
起こり得る可能性を考えて、添え字の i について、「1, 2, 3 のいずれか」と念を押しています。最小値についても、同じ要領で表すことができます。
「aj = min {a1, a2, a3} とおく。ただし、j は 1, 2, 3 のいずれか。」と、同じ要領で、最小値を表すことができます。
一般個数 n の有限集合についても、同じ要領で最大値や最小値を表すことができます。
{a1, ・・・, an} ⊂ R について、
ai = max {a1, ・・・, an} とおきます。
ただし、i は 1, ・・・, n のいずれかです。
n 個の元について、最も大きい値を ai とおいたということです。最小値についても、同じ様に表すことができます。
「R の空集合ではない有限部分集合 S について、S における最大値と最小値が必ず存在する」ということを、S に含まれている元の個数についての帰納法で証明をすることができます。
ただ、明らかなアルゴリズムを難しい言い回しで証明するだけになるので、このブログでは割愛します。
そのかわりに、もっとシンプルな練習問題を扱うことにします。
数学の厳密証明は大切ですが、やり過ぎると学習をやり始めるときに折れてしまうこともあるかもしれません。
適度に抽象論の証明と向き合うのが良いかと思います。
最大値の練習
【練習問題】
a, b, c, d という実数について、
「a > b かつ c > d」となっているとします。
このとき、max{a, c} > max{b, d} となることを証明してください。
算数などで、感覚的にアプローチできる内容を敢えて論理的に証明してみます。
これくらいのシンプルなもので、学習のやり始めに練習をしつつ、徐々に複雑な証明へチャレンジしていくと良いかと思います。
<証明>
case 1 : a ≧ c のとき
a = max {a, c} ≧ c となっています。
すなわち、a ≧ c です。
仮定より、c > d なので、a > d が成立します。
※ 不等式の推移律を適用しました。
さらに、仮定から a > b だったので、a > b かつ a > d が成立します。
したがって、
「a > b ≧ max{b, d}」かつ
「a > d ≧ max{b, d}」です。
ゆえに、max{b, d} の値が b であれ、d であれ、
max{a, c} = a > max{b, d} が成立します。
case 2 : a < c のとき
c = max{a, c} > a となっています。
仮定より、a > b なので、c > b となります。
また、仮定より、c > d
よって、max{b, d} の値が b であれ、d であれ、
max{a, c} = c > max{b, d} が成立します。
以上 case 1 と case 2 から、
max{a, c} > max{b, d} が示せました。
ここまでの max min の考え方で、エクセル関数への応用を説明します。
数学の関数のグラフをエクセルで出力するという内容です。
max min :ビジネス分野への応用
最大値の考え方は、集合に対して、その範囲内の最大値を対応させるということです。この一つの応用として、エクセル関数に触れておきます。
アンケート結果を集めたデータの集合をまず設定します。
{5, 8, 3, 9, 6} という集合に対して、範囲内の最大値 9 を対応させるのが、MAX関数です。
MAX関数
{5, 8, 3, 9, 6} という範囲を認識して、関数で最大値を対応させます。
MAXの後ろに (C4:C8) と記述すると、対応させる範囲が認識されます。
この考え方と操作方法を最小値へと考えを展開します。
MIN関数
MAX を MIN に横展開します。考え方と操作は、MAX関数のときと同じです。
これで、合わせてMIN関数も押さえることができました。
範囲内の最小値を対応させるというエクセル関数です。
数学の学習を通じて、仕事でよく使うエクセルに親しんでおくのも良いかと思います。
max min :よく使う論理
最大値や最小値についての証明をするときに、よく使う論理があります。
二つの実数 x, y があったとき、
x ≧ y か x < y のいずれか一方のみが成立する。
先ほどの練習問題について、a と c という二つの実数について、case 1 と case 2 で場合分けをしたのが、この観点からです。
細かく起こり得る状況を大きく分けておいてから、分岐をていねいに押さえていくと、すべての起こり得る場合について結論へ辿り着けるのかどうかを確認できます。
また、x ≧ y とは、x > y または x = y という内容です。
このような論理を絡めつつ、大学数学でよく使う基本となる内容を一つ解説します。
min の定義をうまく使って議論を進めます。
積 fg も連続関数
【命題】
実数全体を定義域とする実数値関数 f と g が連続であるとする。
このとき、関数の積 fg も連続関数である。
【関数の積の定義】
実数 x に対して、fg という関数によって対応する実数は、(fg)(x) = f(x)g(x) となります。
この関数の定義と、min の定義を利用して、命題を証明します。
<証明>
任意に正の実数 ε が与えられたとします。このとき、min を使って新しい正の実数 ε0 を作ります。
次の式変形を利用します。
(fg)(x) - (fg)(y) =
f(x)g(x) - f(y)g(y) =
(f(x)-f(y))(g(x)-g(y)) +
(f(x)-f(y))g(y)+f(y)(g(x)-g(y))
最後の式を導くのは難しそうですが、f(x), f(y), g(x), g(y) はどれも単なる実数です。
括弧を展開して整理すると、f(x)g(x)-f(y)g(y) に一致します。
この等式の両辺に絶対値をつけてから、三角不等式を使うと「≦」を使った不等式になります。
後は、順に値を大きくしていきます。
これで、|(fg)(x) - (fg)(y)| < ε となりました。
よって、イプシロンデルタ論法より、関数 fg が連続であることを証明できました。【証明完了】
<補足説明>
f と g が連続であることから、途中で関数の連続であることの定義を使って、
|f(x) – f(y)| と |g(x) – g(y)| を ε0 より小さくなるように変形しました。
その後に min の定義を使って ε0 以上に値がなるように書き換えています。
はじめに ε0 を複雑な形で作りましたが、最後に分数の足し算をしたときに、ちょうど ε になるように逆算したからです。
不等式で、値をどんどん大きくするときに、1 を使って大胆に式を単純にするのも手です。
f(x)f(y) - g(x)g(y) を複雑に変形するには、式の変形にある程度の慣れがあることと、ちょっとした計算パズルです。
高校の不等式の証明について、三角不等式を証明しています。
これで、このブログの内容を終了します。
読んで頂き、ありがとうございました。