3の倍数判定法の証明 | 各位の和が3の倍数ならば、その自然数が3の倍数である

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「 3の倍数判定法の証明 」を解説しています。

具体的な3桁くらいの自然数で、各位の和が3の倍数となっていれば、その数が3の倍数であることを確認しておくと、内容が理解しやすいかと思います。

ただ、一般的な桁数で、3の倍数判定法が正しいことを証明するためには、10進数表示に慣れておくことが必要になります。

二項展開と合わせて、大学受験で頻出の考え方が練習できるので、正確な証明を解説します。

まずは、具体的な自然数を用いて、3の倍数判定法というものを理解しておくと、一般的な証明を理解する良い準備になります。

具体例で要領を掴んでおき、一般的な桁数について、正確な証明へ臨みます。

10進数表示と位取り記数法という二つの自然数の表し方も認識しておくと、証明の理解が円滑になります。

3の倍数判定法の証明 :具体例で準備

513 という3桁の自然数を使って、3の倍数判定法が主張している内容を確認します。

「各位の和が3の倍数となっている」ということは、次の意味です。

百の位が 5、十の位が 1、一の位が 3 となっています。これらの数字が各位に現れている数です。

これらの和がが、3 の倍数になっていると、513 が3の倍数ということが、判定法が示している内容になります。

【各位の和】
5 + 1 + 3 = 9 = 3 × 3

確かに、各位の和が 3 の倍数となっています。

このときに、513 を3の倍数と断定できるということです。

実際、513 = 3 × 171 なので、513 は3の倍数です。

自然数 n について、n × 整数 という形で表されている整数のことを n の倍数といいます。

ですので、n の倍数であることを証明するときのゴールの形が、「n × 整数」という形です。

では、次に自然数を表す二つの記号について説明します。

10進数表示

513 という表し方は、算数の頃から使っている自然数の表し方です。

見慣れた表し方を位取り記数法といいます。名前の通り、数を記す方法です。

この記数法に対して、もう一つの記数法があります。それが10進数表示です。

513 だと、百円5枚と十円1枚と一円3枚というように考えます。

5×100 + 1×10 + 3×1 という式になります。

ここで、さらに指数を使って、10の何乗の係数が、どの数かを明確に記します。

102 = 100, 101 = 10, 100 = 1 ということを用います。

【10進数表示】
513 = 5×102+1×101+3×100

3の倍数判定法の証明で、ネックになるのが、一般の桁数のときに、どのように表すのかということです。

整数を用いた大学受験の証明問題で出題されることが考えられるので、513 から理解を広げておくと良いかと思います。

一般の桁数で

m を 0 以上の非負整数としたとき、(m+1)桁の自然数を次のように10進数表示できます。

am, … , a1, a0 を 0 以上 9 以下の非負整数とし、
am10m+…+a1101+a0

ただし、最高位の係数 am は 0 ではないとします。

そして、一の位ですが、100 は 1 なので、100 を省略して、単に a0 と表すこともできます。

状況によっては、100 を書いておいた方が都合が良いときは、省略せずに 100 を明記するときもあります。

先ほどの 513 という 3桁の自然数で、確認しておきます。

3桁なので、m = 2 で、(2+1)桁の自然数です。

そして、最高位の数は 5 で 0 ではありません。

つまり、a2 = 5 ≠ 0 です。

また、a1 = 1, a0 = 3 となっています。

したがって、
513 = a2102+a1101+a0
= 5×102+1×101+3

こういったシンプルな例で10進数表示に慣れておくと良いかと思います。

では、この10進数表示を用いて、一般の桁数で3の倍数判定法の証明をします。

3の倍数判定法の証明 :二項展開の利用

k を自然数とするとき、ak10k は、
3zk + ak (zk は整数) という形に表されます。

いきなり 3 が出てきましたが、よく使う式の変形になります。

10 = 9 + 1 です。

10k = (9 + 1)k を二項展開します。

3の倍数判定法-証明で二項展開

r に 0 から k までの非負整数を代入し、そうして出現した(k+1)個の項を全て足し合わせるのが二項展開です。※シグマ記号を使って表すこともできます。

0 ≦ r ≦ k-1 のとき、9k-r は 9 の倍数なので、3 の倍数となっています。3 の倍数どおしの和も 3 の倍数なので、その部分を 3tk と自然数 tk を用いて表すことにします。

すると、
10k = (9 + 1)k
= 3tk + 1k = 3tk + 1

よって、ak10k = 3aktk + ak

ここで、aktk を zk と置くと、
ak10k = 3zk + ak という形になります。

この式の書き換えを使って、メインの内容を証明します。

メインの証明

【定理】

n を非負整数とし、an, … , a1, a0 を 0 以上 9 以下の非負整数とする。

ただし、an ≠ 0 とする。

このとき、an+…+a1+a0 が 3 の倍数であるならば、an10n+…a1101+a0 も 3 の倍数である。


<証明>

1 ≦ k ≦ n について、
ak10k = 3zk + ak (zk は整数) と表せます。

そのため、
an10n+…a1101+a0 =
3(zn+…+z1)+an+…+a1+a0

an+…+a1+a0 は仮定より3の倍数だから、
an10n+…a1101+a0 は 3 の倍数です。【証明完了】

補足ですが、n = 0 のときは、
一の位の数 a0 が 3 の倍数ならば、a0 が 3 の倍数ということで、n が 0 のときにも成立しています。

先ほど、9k-r は 9 の倍数なので、3 の倍数だから、3tk と自然数 tk を用いて表しました。

この部分を 9tk としておくと、同じ要領で 9 の倍数判定法の証明となります。

すなわち、「各位の和が 9 の倍数ならば、その自然数も 9 の倍数である」ということです。

今、示した3の倍数判定法の証明ですが、合同式を用いると、より簡潔に述べることができます。

旧課程の数学の整数単元の発展内容でしたが、ずっと前から知っている人は知っている便利な高校数学の知識でした。

3の倍数判定法の証明 :合同式の利用

an+…+a1+a0 が 3 の倍数であるならば、
an10n+…a1101+a0 も 3 の倍数であることの別証明です。


<別証>

a = an10n+…a1101+a0 と置いておきます。

10 = 3 × 3 + 1 より、
10 ≡ 1 (mod 3) となります。

mod 3 は、割る数を 3 として考えているということを表しています。10 を 3 で割った余りが 1 ということです。

よって、どんな自然数 k に対しても、
10k ≡ 1k = 1 (mod 3)

これは、合同式についての性質を使っています。

ゆえに、
a ≡ an+an-1+…+a1+a0 (mod 3)

an+…+a1+a0 は仮定より3の倍数だから、
an+an-1+…+a1+a0 ≡ 0 (mod 3)

よって、a ≡ 0 (mod 3)

すなわち、a を 3 で割った余りが 0 なので、
an10n+…a1101+a0 は 3 の倍数です。【証明完了】

【整数の関連記事】

3の倍数判定法の証明をしましたが、
7の倍数判定法になると、もっと議論が複雑になります。

リンク先の記事で、合同式を使わない証明と、合同式を使った証明を解説しています。

この合同式ですが、大学の数学の初等整数論や可換環論へとつながります。

そのため、合同方程式の解き方については、他のブログ記事で基本的な性質を解説しています。

今回の証明で、使った合同式の変形は、その基本的な性質に依ります。

これらの記事で、高校の数学に関連させながら合同式に慣れておくと、可換環論の入門へとつながります。

一次不定方程式という記事を以前に投稿しました。

剰余環について言及した大学の数学科の2年くらいで学習する合同式についての内容も解説しています。

これで、今回のタロウ岩井の記事を終了します。

読んで頂き、ありがとうございました。