2平面のなす角 – 定義 | 三垂線の定理の証明も

" 2平面のなす角 “の定義から説明をはじめ、三垂線の定理を証明しています。
立体図形の内容ですが、数Cのベクトルとも関連する内容になります。
そのため、適宜、ベクトルも用いて解説を進めています。
理解をするために、使う立体図形の単元の用語について述べてから、最後に三垂線の定理の証明を述べます。
2平面のなす角 :関連する用語
【事実】
同一直線上にない相異なる3点を含む平面はただ1つである。
立体図形の考察を行うときに、この事実から理論が作られています。
空間内で、たとえ相異なる3点だとしても、それら3つの点が同じ直線の上にあるときは、それらを全て含む平面は無数にあります。
その直線を軸に平面を回転させることができるからです。
立体図形を考えるときには、回転するなどの想定外のことが起きないように、定義に基づいて、しっかりと基礎を押さえることが大切になります。
中学1年の頃に学習した内容も、高校の数学では、さらに正確に議論されます。
「ねじれの位置にある2直線」といって、共有点がなく、しかも同じ平面の上にない2直線についても、なす角が定義されています。
※ 2つの直線が平行のときは、同じ平面の上に、それらの2本の直線があることになり、ねじれの位置とは区別されています。
この定義は、立体図形の単元だけでなく、後の数Cのベクトルにも関わってきます。
なす角はねじれの位置でも定義
【定義1】
直線 l, k が、ねじれの位置の関係にあるとする。
そして、l, k を平行移動して交わらせ、その平行移動後の直線をそれぞれ l', k’ とする。
このとき、直線 l', k’ のなす角を直線 l, k のなす角と定義する。
このように、ねじれの位置にあっても、2本の直線のなす角が定義されています。
この平行移動をして交わらせてから、平行移動後の2つの直線のなす角を考えるということは、ベクトルにもつながります。
ベクトルについて、平行移動してぴったり重なり合うものどうしを等しいと定義しています。
そのため、ねじれの位置にある直線のなす角の定義は、ベクトルで捉え直すことができます。
2つのベクトルのなす角を考えるときには、平行移動をして、始点を揃えてから、なす角を考えます。
このことが、直線を平行移動して交わらせてから、なす角を考えるということと結びついています。
つまり、直線 l 上から異なる2点 A, B を取り、直線 k から異なる2点 C, D を取りベクトルを考え、ベクトルAB とベクトルCDのなす角を2直線のなす角とするということです。
このように、直線の方向ベクトルを用いて2直線のなす角を考えるということを数Cでは行います。
いずれにせよ、なす角という大きさを考えるので、三角比の内容も絡めて考察をすることは多いです。
ここまでで、ねじれの位置にある2直線についても、なす角が定義されました。
この内容は、2平面のなす角を定義するときにも使われます。
2平面のなす角 : 定義
【定義2】
平面 α と平面 β の交線上の点から、平面 α と平面 β のそれぞれに交線と垂直になるように引いた2直線のなす角を θ とする。
このとき、この θ と2つの平面 α, β のなす角と定義する。
2つの平面が交わっているときに、どちらの平面の上にもある点たちは、1つの直線を形成しています。
それが、交線です。
この交線上から点 P と点 E を取ったとします。
平面 α に含まれる直線で、点 P において交線と垂直に交わる直線を l とします。
平面 β に含まれる直線で、点 E において交線と垂直に交わる直線を k とします。
点 P と点 E が同じ点の場合は、点 P において l と k が交わっているので、そこでのなす角の大きさが2平面のなす角の大きさということになります。
点 P と点 E が異なっている場合だと、l と k がねじれの位置になっています。
この場合は、先ほど定義したねじれの位置にある2直線のなす角が、2平面のなす角となります。
このように、交線と垂線の交点が異なるときに、ねじれの位置が出てきます。
その際、なす角は、交線に垂直な2つの直線を平行移動させ、交わらせてからなす角の大きさを求めることになります。
定義から文章だけで述べましたので、具体的な図を使って、内容を練習してみます。
具体的な図で確認
△ABC を含む平面 ABC と、
△CBD を含む平面 CBD があったとする。
直線 BC が、これら2平面の交線です。
そして、下の図のように、平面 ABC に含まれる直線 PQ が、点 P において交線と垂直に交わり、平面 CBD に含まれる直線 EF が点 E において交線と垂直に交わっていたとします。

点 P と点 E が一致している場合だと、
直線 PQ と直線 EF のなす角が、2平面 ABC, CBD のなす角ということになります。
ただ、この図のように、点 P と点 E が異なり、直線 PQ と直線 EF が「ねじれの位置」になるときは、【定義1】で述べた「ねじれの位置にある2直線のなす角」を求めることになります。
ねじれの位置にあるときは、2つの垂線を平行移動させ、交わらせてから、なす角を求めます。
参考に、ベクトルを使った内容も図に描いておきました。
数Cだと、ベクトルPQとベクトルEFのなす角を内積の定義などを利用して求めるといった問題が出てくるときもあります。
ねじれの位置になる2つの垂線を平行移動して交わらせるということは、ベクトルで考えているときには、始点を揃えてから2つのベクトルのなす角を求めるということに当たります。
ベクトルについても述べましたが、平面 ABC に含まれる交線との垂線と、平面 CBD に含まれる交線との垂線のなす角を求めることになります。
それらの2つの直線のなす角が、2平面のなす角というのが、定義になります。
ここからは、2平面のなす角の定義から、さらに議論を進め、三垂線の定理の証明を目指します。
その前段階となる重要な考え方を先に述べます。
平面と直線が垂直とは
【直線と平面の位置関係】
① 平行(共有点なし)
② 直線が平面に含まれる
③ 1点で交わる
直線と平面が「① 平行」のときには、共有点が1つも無い状態になります。
それに対して、②だと、直線上にある全ての点が平面上にあるという状況です。
これらのどちらともいえないのが③です。
③の直線が平面と1点で交わるときは、直線がその1点で平面を貫通しているときになります。
ここで、この③の状況ですが、1点のみ直線と平面が共有点をもつわけですが、「直線が平面と垂直に交わっている」という特別な状態が考えられます。
高校の数学では、直線が平面と垂直に交わっていることを正確に定義しています。
まずは、その定義です。
【定義3】
直線 l が平面 α 上に含まれるすべての直線と垂直であるとき、直線 l は平面 α に垂直であるという。
また、そのときに l ⊥ α と表す。
この【定義3】ですが、直接の確認が困難です。
それは、1つの平面に含まれる直線は無数にあるからです。
そこで、この条件さえ満たすことが確認できると、直線が平面と垂直だと断定できる重要な定理が発見されています。
重要な定理
【定理1】
直線 l があったとする。
また、平面 α に含まれる2直線 k, m が点 O において交わっていたとする。
このとき、
直線 l が、点 O において、k, m のいずれとも垂直であるならば、
直線 l は平面 α に垂直である。
教科書や参考書で立体図形の単元で、必ずといっていいほど扱われる有名な定理になります。
「三角形の≡」を利用した証明が一般的かと思います。
そこで、その証明は省き、この記事では試験の最中に忘れかけたときのために、ベクトルで考え復元することを狙って、ベクトルを使った証明を述べておきます。
<証明>
平面 α に含まれる直線 h が任意に与えられたとします。
また、直線 l, k, m 上の点で O と異なる点をそれぞれ1つ決め、それを P, A, B と置きます。
仮定より、
垂直だから、
OP・OA = OP・OB = 0 です。
さらに、直線 h 上から異なる2点 S, T を取ります。
すると、
ST = OT-OS …★
OA, OB は一次独立(それぞれが零ベクトルでなく平行でもない)だから、これらの一次結合で、OSとOTを表すことができます。
そのため、★の右辺と OP の内積の値は 0 です。
つまり、OP・ST = 0 です。
これは、直線 OP と直線 ST が垂直ということです。
すなわち、直線 l と直線 h は垂直に交わっています。【証明完了】
確かに、平面 α に含まれるどんな直線 h を取っても、直線 l に垂直になっています。
数IAでは、複雑な立体図形の証明になりますが、ベクトルの単元を理解していると、「内積が 0 と垂直の言い換え」を使って、ほぼ自明です。
【定理1】の仮定条件を満たすと、方向ベクトルどうしの内積の値が 0 になってしまうということが決め手になりました。
この【定理1】は重要なので、試験の最中に忘れかけていたら、ベクトルを使って考え、正確に復元できるようにしておくと良いかと思います。
【定理1】は、直線と平面が垂直だと断定する根拠として使えます。
では、いよいよ三垂線の定理を証明します。
三垂線の定理:証明
【三垂線の定理】
平面 α と、その上にない点 A があったとする。
また、平面 α 上に直線 l がり、点 H は直線 l 上にはない平面 α 上の点だとする。
さらに、l 上の1点を B とする。
このとき、
AB ⊥ l, HB ⊥ l, HA ⊥ HB であるならば、直線HA は平面 α に垂直である。

<証明>
直線AB と直線HB は、平面ABH において、点 B で交わっています。
仮定より、l は点 B において、AB, HB の2直線と垂直です。
このため、【定理1】の仮定を満たすことから、直線 l は平面ABH と垂直です。
よって、直線と平面が垂直であることの定義(定義3)から、
直線 l は平面ABH に含まれている直線HA と垂直です。
また、仮定より、
HA ⊥ HB でした。
今、直線 l と直線HB はどちらも平面 α に含まれており、平面 α における点 Bで交わっています。
そのため、HA を平面ABH 内で平行移動し、始点 H を点 B に重ねた後のベクトルを BA' と置くと、直線 BA’ は、点 B において、直線 l と直線HB のどちらとも垂直です。
よって、【定理1】の仮定条件を満たしたので、直線BA’ は平面 α に垂直です。
直線BA’ の定め方から、直線BA’と直線HA は平行です。
ゆえに、直線HA は平面 α に垂直となっています。【証明完了】
この三垂線の定理の証明では、ねじれの位置にある HA と l のなす角が、証明のはじめの段階では分かっていませんでした。
それを考察して、「直線 l が平面ABH と垂直」と導ければ、
l ⊥ HA となります。
ここまで来ると、ねじれの位置になっているので、【定理1】の仮定に合うように、ベクトルHA を平行移動して始点を点 B へと持ってくると、証明完了です。
※ ベクトルを未修の方だと、HA に平行な直線を平行移動して点 B を通るように線分HBに沿ってスライドさせた直線を BA’ と考えれば大丈夫です。
空間のイメージで判断に迷うときには、次の2点を意識しておくと良いかと思います。
・平行移動してぴったりと重なり合う2つのベクトルは同じベクトル
・2つのベクトルが垂直だと内積の値が 0
関連する記事として、空間ベクトルやトレミーの定理という記事も投稿しています。
これで、今回の記事を終了します。
読んで頂き、ありがとうございました。